イシュガルドのとある部屋で

 2015年8月5日(現地時間)からドイツ・ケルンで欧州最大級のゲームイベントgamescom 2015が開催されている。現地を訪れている『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏から、初の拡張パッケージ『蒼天のイシュガルド』の今後について話を聞く機会を得た。

 2015年6月23日のサービス開始以来、世界中のプレイヤーが『蒼天のイシュガルド』を日々プレイしているところだが、その過程で多くの要望や疑問が公式フォーラムなどを通じて提起されている。占星術師のジョブ調整の詳細や、注目のパッチ3.1の公開時期などを編集部でも尋ねたかったことをドイツで吉田氏に直接聞いてきたのだ。

『FFXIV』占星術師の再調整を前向きに検討中!【gamescom 2015】_01
『FFXIV』占星術師の再調整を前向きに検討中!【gamescom 2015】_02
▲吉田氏へのインタビューは、gamescom会場内の『FFXIV』ブースで行われた。話題は直近のアップデートに留まらず、来るべき次期拡張パッケージ“バージョン4.0”にまで及んだのだ。
▲フォルタン家の邸宅を連想させるブース。その一角には、試遊台とともに『蒼天のイシュガルド』のイラストも掲げられていた。

サブクエストを”経験値リソースにしない”という方針も検討された!?

──ドイツのファンの反応はいかがでしたか?

吉田直樹氏(以下、吉田) 着実に増えている手応えがあります。僕がgamescomに参加するのは今年で4年連続の4回目ですが、当時から熱心に応援してくださっているプレイヤーの皆さんにも変わらずお会いできましたし、それに加え、年々お会いする新たな顔ぶれも多くなっています。今日の夜には、弊社の主催でヨーロッパのプレイヤーの方々に集まっていただき、”ファンギャザリング”というパーティを開く予定になっています。

──サービス開始当時からのコミュニティが継続しつつ、新たな広がりも見せているのですね。

吉田 そうですね。

──彼らの反応は、日本のプレイヤーとは違いますか?

吉田 いっしょです。北米の方々は多少オーバーアクションだったりしますが、ドイツの皆さんは日本とさほど変わりません。僕と会うとき、最初やはり緊張されるみたいですよ(笑)。

──『蒼天のイシュガルド』発売から1ヵ月半ほどが経ちましたが、吉田さんや開発スタッフの皆さんが感じておられる現時点での手応えはどのようなものですか?

吉田 まずは、プレイヤーの皆さんから寄せられた反応が、想像以上にご好評いただけているので何よりと思っています。ビジネス面においては、新規の方がどの程度増えたのか、休止していた方がどれくらい戻ってきてくれたのかという部分がもっとも目に見える部分で、その点についてもビジネスとしてとても満足しています。

──新規プレイヤーや復帰者の多くは、いまでも冒険を続けているのでしょうか?

吉田 『FFXIV』を少しだけプレイして止めてしまうのではなく、しっかりとレベル60まで育てたうえでアカウントを継続して遊んでいただけているのが数字から見てとれます。開発チームに無理を言って、これだけ大きな規模の拡張パッケージを制作した甲斐があったと本当に思っています。

──プレイヤーから寄せられた反応のなかで、想定していた部分とそうではなかった部分をお聞かせください。

吉田 やはりこれだけの規模の拡張となると、細かなミスはあり、バグ修正や細かいジョブの調整によるメンテナンスが多く、この点はご迷惑をおかけしています。しかし、想定していなかった反応というのはあまり多くないと感じています。

──拡張パッケージに盛り込まれたシステムやルールが、すべてプレイヤーに受け入れられたわけですか。

吉田 初の試みも多かったので、配慮が足りていなかった部分はフィードバックを拝見して即時修正しているので、これまで通りのキャッチボールをさせていただいています。やや心配していたのは、開発当初、世界中で起きている“クリック論争”を受け、経験値のリソースとして“サブクエスト”を大量に実装すべきかどうか、開発チーム内で真剣に議論したことがあります。

『FFXIV』占星術師の再調整を前向きに検討中!【gamescom 2015】_03
▲『FFXIV』は、ひとつのジョブ(クラス)に限り、メインクエストやサブクエストを進めるだけでレベルが上がっていくシステムだ。

──サブクエストで経験値を配布するシステムそのものの廃止を検討したのですか?

吉田 サブクエストはストーリーベースとは言え、早くゲームを進めようと思えば、マウスクリックやボタン連打でテキストをスキップすることも可能です。サブクエストは大がかりな仕掛けを用意できないため、モンスターをXX匹倒して来てほしいとか、○○を△△に届けてほしい、など、バリエーションに限界が出てきます。もちろん、バリエーションを増やす努力はしますし、ストーリー自体をおもしろくする努力はします。しかし、結局のところクリックだけで経験値を得られるサブクエストは、「ゲームデザイン的にもう不必要なんじゃないか?」というのが議論になっている点です。

──その議論が開発チーム内でも?

『FFXIV』開発チーム内でも「なくしてもいいんじゃないか?」という議論を実際に交わしましたが、ダンジョンやフィールドでのモンスター狩りや、パーティ戦だけで経験値を稼ぐ流れに絞ってしまうと、すべての要素をひとりでコンプリートしたいというプレイヤーの方のご要望に応えられなくなる恐れが出てきます。賛否はあるにせよ、メインクエストでレベルが上がるシステムが用意されていること自体はデメリットにはならないので、予定どおり実装することを決めました。

──その結果、プレイヤーからどのような反応が?

吉田 「うんざりだよ」ですとか「お遣いが多すぎるよ」という声が、もう少し多く挙がるかなとも思っていましたが、ストーリーをおもしろくすることで展開の単調さをカバーできたおかげで、一部のサブクエストを除いて、実際はそれほど多くありませんでした。この部分はシナリオチームが努力してくれた結果だと思っています。

──シナリオチームにはどう指示をしたのでしょう?

吉田 メインクエストだけでなくサイドストーリーもおもしろくすることで、(シナリオそのものを)ゲーム体験に昇華させようと伝えました。サブクエストを作っているチームも頑張ってくれたおかげで、プレイヤーの方々から「今回のストーリーは、モーグリ族のクエスト以外は本当におもしろいものが多い」という声をたくさんいただきました(苦笑)。

──世界中のプレイヤーから、モーグリが怨まれてしまったかもしれません(笑)。

吉田 そこは大反省です……。モーグリが関係するクエストは、今後挽回するチャンスを作ろうと思っています。

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▲『蒼天のイシュガルド』のメインクエストで、冒険者はとあるモーグリ族の集落を訪れることに。現地で依頼されるアイテムの探索があまりに複雑だっため、一部のプレイヤーから不満の声が漏れていた。

──そのほかの反響についてはいかがですか?

吉田 レベルキャップ開放がやはり大きかったと思います。レベル50時代に無敵に近い状態だった冒険者たちが、これによってある意味、下積みの状態に戻ることになりました。多少の混乱は生じるだろうとは思っていましたが、それについてもおおむね想定の範囲内で推移したかなと思います。機工城アレキサンダー零式:起動編が公開された後、トッププレイヤーたちの研究が進んだことで、それぞれのジョブの可能性も見え始めてきました。これからも皆さんと対話を進めつつ、調整すべきところは手を加えていくつもりです。

──浜村通信(浜村弘一/KADOKAWA・DWANGO取締役)が、『蒼天のイシュガルド』をずっとプレイしています(笑)。

吉田 先日、浜村さんからメインクエストをクリアしたとメールをいただきました。「まさに『FF』だった」という言葉が添えられており、とても喜んだことを覚えています。『FF』というRPGを作っている側の僕たちからすると、「ストーリーがおもしろい」は最高の褒め言葉なので、そこは本当にうれしいです。