シンラ・テクノロジー社 和田洋一社長に聞いてきた!【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第6回】_01

 こんにちはー! “Road to デブートン”第6回目をお送りします! 前回の記事の最後に予告した通り、シンラ・テクノロジー社の和田洋一社長のE3 2015 でのインタビュー記事をお送りします。じつは、E3初日の6月16日(火)にLACC会場近くのJW Marriottホテル でシンラ・テクノロジー社の和田社長とシンラのプラットフォーム上でゲーム開発をしている3スタジオ代表者のラウンドテーブル形式のセッションが行われました。

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 アメリカ向けのセッションで私が下手くそな英語で質問するのもセッションを台なしにしかねないなぁ(笑)と思い、無理にお願いしてその翌日、個別のインタビューの時間を戴きました。つね日頃から、世の中のテクノロジーのオープン化に伴い、エコロジー、エコシステム双方の意味でもクラウドゲーミングへの道は必至と考えていたのと同時に、とくにシュリンクして久しい日本のゲーム市場に、起爆剤として「新風を吹き込む大きな変化になるのでは!」と期待していたからです。

 原稿にするのにこんなに時間が経ってしまったのは本当に申し訳なかったですが、非常におもしろいお話をお聴きできたので、ぜひ読んでみてくださいませ!

シンラ・テクノロジー社 和田洋一社長に聞いてきた!【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第6回】_05
▲シンラ・テクノロジー 和田洋一社長

<ビジネスありきではなくサービスありき

――シンラ・テクノロジー社が考えるクラウドゲーミングとは?

和田洋一社長(以下、和田) 従来のクラウドゲーミングはストリーミング配信ゲームに過ぎないと考えています。我々が考えるクラウドゲーミングとは、もっとテクノロジーに着目しており、サーバ側でスーパーコンピュータを作ってユーザーの方々に新しい体験を提供すること、と考えています。

――シンラ・テクノロジー社が考えるクラウドゲーミングのビジネスモデルを教えてください。

和田 まったく新しい体験を提供するプラットフォームになりたいと考えています。事業準備としては3段階を考えています。まずはテクノロジーを訴え、つぎにコンテンツを示し、その上でビジネスモデルを提案していきます。
 とにかく、新しいものであるがゆえにどういうものなのかが伝わらない。従って、まずはコンテンツを見せることが重要であると考えました。今回のE3ではそこにフォーカスしました。ビジネスの骨格は、コンテンツ、サービスがある程度固まってから最終決定しようと考えています。実際のサービスインは2016年中に行いたいですね。

――新しいプラットフォームにおけるサービスについてどのように考えていらっしゃるかお聞かせください。

和田 ゲームをハブとして、お客様どうしをどうやって結びつけるかという部分ですね。これまでのソーシャル要素とは異なったサービス設計になります。これは、コンテンツのデザインと密接不可分になりますから、プラットフォームを作ってしまって、その上にコンテンツを乗せるということではなく、個別ゲームにつきコンテンツ開発者とよくすり合わせ、それを一般化してプラットフォームを構築していこうという発想なのです。
 また、シンラは、ハードについても、概要のみ決めて最終仕様を固めていない状況でゲームメーカー様と共同開発を始めました。つまりゲームクリエイターたちのゲームに合わせた形でチューニングをしながらプラットフォームの仕様を固めていくつもりです。皆さんにはとても説明しにくいのですが(笑)。

――確かに説明が難しいですね(笑)。

和田 窯に入れる前のやわらかい粘土の状態からいっしょに作らないと。ガチガチに、この大きさと形じゃないと作れません、と言われてしまったら“新しいモノ”にならないですからね。

――GaikaiやOnliveなどの失敗がクラウドゲーミングへの道を阻むことにはならないでしょうか? とくにゲームメーカーさんたちがいいイメージを持っていないことに対して、何か考えていらっしゃいますでしょうか?

和田 過去のクラウドゲーミング業者は“新しいゲーム体験”には無関心でした。既存のゲームがストリーミングで遊べる。つまりゲームの中身ではなく、既存のゲームソフトを届けるひとつのチャネル(販売経路)としてしか意識が向いていなかったのです。
 我々は、クラウドゲーミングだからこそできる遊びかたを提供することが使命だと考えています。

――コンソールとの差別化について前日のラウンドテーブルでおっしゃっていましたが、とくにハードという意味でのプラットフォームは問わないという理解でよいですか?

和田 映像が視聴できる装置があってネットにつないであれば、ブロックされない限り(笑)、コンソールも含めて対象のハードになります。

<あらゆる端末でゲームができる!

――クラウドゲーミングについて初めて考えたのはいつくらいですか?

和田 2000年以降、私はどの端末からでもゲームに接してもらえるように事業展開してきました。ハードやOSがどんどんオープンになってくるに従い、コンテンツが端末から解き放たれる。つまり個々の端末に縛られずゲームとユーザーが直接つながることが重要だと考えてきました。そしてやがて、端末そのものにすら意味がなくなる、その最終形が“クラウド”ですね。
 クラウドそのものを強く意識するようになったのは10年くらい前からですね。当時はグリッドコンピューティングという脈絡で検証していました。新しいゲーム体験を提供するものが必要だと感じていたのでOnliveなどがクラウドゲーミングを始めた時には、ものすごい期待があったのですがね……。
 音楽を伝えるためにレコードがあり、CDがあり、ダウンロード、ストリーミングと移り変わっていったのと同じように、ゲームも手段やメディア、端末から解放されていきます。

――日本のメーカーさんが出ていないようですが何か意図があるのでしょうか?

和田 いえいえ、システムの開発自体をモントリオールで行っている手前、とくに日本が先行じゃなかったというだけで、これから出てまいりますし、働きかけていきます。

<リセットできないゲーム

シンラ・テクノロジー社 和田洋一社長に聞いてきた!【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第6回】_04

――どのようなゲームになるのでしょうか?

和田 現在のマルチプレイゲームは、ゲームの世界を各人のクライアントで各々処理し、サーバーで若干のパラメータを交換することにより同期が取られています。つまり、実際には複数の世界が同時進行しているのを、あたかも同じ世界に“いっしょにいる”ように見せているわけですね。ところが、クラウドゲーミングになると、本当にひとつの世界にいっしょに入り込むことになります。私がログアウトしているあいだに、デブ―チョさんやほかのユーザーたちがいろいろと世界を変えてしまっているかもしれない。ゲームに戻ったら「前に止めたところが別の世界になってしまっていた!」そんな新しい体験がひとつの例です。

――まさにリアリティーですね。

和田 よく「ゲームみたいにリセットできないのだから」と言われますが、クラウドゲームになると、ゲームではありますがリセットできないのです(笑)。いままでゲームは作り手が制御してきたのですが、クラウドゲーミングでは“サーバ=舞台”自体が時間を持って勝手に変わっていくので、開発の手を離れます。これらは、ゲームにとっては画期的なことなのです。
 ですから、いままでにない概念なので……説明しにくいんです!(笑)。

<ワンストップですべてのゲームにアクセス

――では、新しいゲームプラットフォームということで、既存のタイトルの出口としては考えていないということでしょうか?

和田 いえいえ、乗っけたいです!(笑)。ゲームというものをシンラプラットフォームで完結したいという考えかたなので、既存のゲームはやらないということではありません。
 既存のゲームを品揃えするだけが、いままでのクラウドゲーミングだったと思うのですが、そうではなくて、「なんでもあり!」のプラットフォーム、つまり新しいモノ、既存のモノ、ワンストップでユーザーが遊びに来てくれるプラットフォームでありたいと考えています。新しいものを見に来たら「既存のものもあるからこれも遊ぼう!」というのが理想です。