シリーズ完結編への意気込みを語る

アークシステムワークスが2015年冬に稼動予定の対戦格闘ゲーム『ブレイブルー セントラルフィクション』。ぶるふぇすにて衝撃の発表が行われ、先日体験会やロケテストが好評を博した人気シリーズの最新作だ。今回は、本作のプロデューサーである森利道氏とディレクターの石川辰則氏のインタビューをお届けする。
※週刊ファミ通2015年7月16日発売号に掲載したインタビューを再編集したものです。
森利道氏(右)
ディレクター
石川辰則氏(左)
――石川さんはこういったインタビューの機会は初めてですね。まずは自己紹介をしていただけないでしょうか?
石川辰則氏(以下、石川) ディレクターの石川です。『ブレイブルー』シリーズは、第1作の『カラミティトリガー』のころから関わっていまして、開発者としてのキャリアの大半をこのシリーズに捧げています(笑)。ですから、『ブレイブルー』には森に負けないくらいの思い入れがありますよ。
――それだけシリーズには精通しているのですね。
石川 はい。最初はプログラマーとして関わり、『クロノファンタズマ』からはメインプログラマーを務めました。そして本作『セントラルフィクション』からはディレクターという立場で参加しています。
――初めてのディレクター体験、いかがでしょうか?
石川 もともと中心スタッフのひとりとして、制作のあらゆる場面で関与していたのですが、今回はプログラムをほかの者にまかせて、ディレクションのみに専念しました。この立場になって初めて見えてくることは確かに多いですね。ユーザーさんの気持ちを優先に考えて作業に取りかかっています。
――その気持ちの変化は、ディレクターという開発の全体が見える立場だからこそ、なのでしょうか?
石川 プログラマーという立場は、指示に合わせて動くことが業務の基本です。ディレクターになると、まず自分の意見をはっきりと示さなければなりません。本作ではゲームの“方向付け”に情熱を注ぎ込んでいこうかな、と思っています。
――プロデューサーの森さんとの関わりかたにも変化があったのでは?
石川 そうですね(笑)。立場が変わったことで、いままで以上に密にやり取りする機会が増えました。
――森さんから見て石川さんのディレクションはいかがですか?
森 利道氏(以下、森) まだまだですね。僕が思っていることの2パーセントも通じていないかもしれない(笑)。というのは冗談で、彼は十分なキャリアの持ち主。『ギルティギア スラッシュ』のころから10年以上いっしょに仕事をしているので、実力はもう肌で感じています。もう、新入社員として入社して以来の付き合いじゃないかな?
――現場の体制として、大きく変化したという訳ではないんですね。
森 そうですね。石川がディレクターになったような多少の入れ換えはありましたが、基本的には変わりません。そもそも長い間同じスタッフでゲームを作っていますからね。いま、現場でメインスタッフとして動いている人たちも、もともとは新卒社員としてこのシリーズに加わったメンバーだったりします。『ブレイブルー』はごく一部の経験者と多くの新人を集めて作り始めたものなのですよ。このメンバーで試行錯誤をくり返しながら、ここまで成長しました。それでもなお、挑戦すべき課題がたくさんあるのですから、ゲーム作りはおもしろいですよね。
ついにシリーズ完結!?
――そんな強い結束のチームでシリーズを作り続けて約7年。本作でついに完結編を迎えます。その心境をお聞かせください。
森 『ブレイブルー』という物語は、ラグナを中心とした物語。本作の発表と同時に、その物語を終わらせると明言させていただきました。ファンの皆さんも、ラグナの行く末を期待していることでしょう。その点に関しては、きちんと応えられるようにがんばります。シナリオはまだすべてを書き終えてはいないのですが、もう終幕の形は決まっています。シナリオ作業は、フィナーレまでにいかに盛り上げるかが難しいところ。また、広げてしまった風呂敷……つまり仕掛けた謎をどのように明かすかで悩んでいます(笑)。
石川 シリーズの最初から関わり、ひとつの区切りを迎えられるのは開発者として光栄なこと。このシリーズはしかるべき結末を迎えると森から聞いているので、私自身も『ブレイブルー』の結末が気になっているひとりです(笑)。
――ストーリーの話題が出ましたので、ストーリーについてお聞きします。前作では衝撃の結末を迎えました。その後、どう展開するのかが気になります。
森 本作のストーリーの始まりを語るとネタバレになってしまうので、まずは稼動までに『クロノファンタズマ エクステンド』のストーリーモードをプレイしていただきたいです。
――いま話せることだけでもいいので、教えていただけないでしょうか?
森 では、本作のストーリー面で挑もうとしていることをお話しましょう。いままで通りの形で物語を提示しても、初めてゲームに触れる人には「なんだろうコレ?」と思われてしまうでしょう。ですから、ゲームの世界について予備知識がなくてもわかる作りにする予定です。具体的には“総集編”としてひと括りにするのではなく、ストーリー本編の中でこれまでが追える形にします。どのキャラクターとは言えませんが、ネタバレをするシーンがあるので、稼動後にプレイしてみてください。また、いまはまだお話できませんが、アーケードのストーリーモードとしては、“異例の試み”を展開する予定です。
――異例の試みとは楽しみですね。発表を心待ちにしています。ちなみに、本作の舞台はイカルガからふたたびカグヅチに戻るようですね。
森 新規プレイヤーにもなじみやすくすること、ストーリー性をさらに強めるということを踏まえて、ふたたびカグヅチを舞台にしました。「なぜカグヅチで闘うのか?」という点も含めて物語を楽しんでほしいと思います。カグヅチといえば、地下に“釜”がありますよね(笑)。
――本作では、黒鉄ナオトとヒビキ=コハクというふたりの新キャラクターが参戦します。ヒビキは前作のストーリーモードですでにおなじみですが、ナオトは小説『ブラッドエッジ エクスペリエンス』のキャラクター。ゲームでは初登場となり、しかも異世界から来た人物と聞きます。どのように物語に関わってくるのでしょうか?
森 どうなんでしょう。楽しみですよね(笑)。と、ナオトは小説『ブレイブルー ブラッドエッジ エクスペリエンス』の主人公です。この物語は、時間軸で言うと『ブレイブルー』と『エクスブレイズ』の中間あたりが舞台となっています(少しブレイブルーよりのとこと)。ナオトと、ラケルというちょっと不思議な少女のふたりのドラマが小説で描かれています。彼の人となりが気になる人は、ぜひ小説をお読みいただくといいでしょう。ちなみに、そのような時間軸なので、若いヴァルケンハインやレリウスも登場しますよ。
――小説を読むと、本作のストーリーはさらに楽しめそうですね。
森 もちろんです。『ブラッドエッジ エクスペリエンス』に限らずスピンオフ作品を作るときには、ゲーム本編との関連性を意識した上で制作していますからね。