発売は2015年12月
2015年7月9日~7月12日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、Comic-Con International 2015(通称:コミコン)が開催。今年のコミコンで少し意外だったことがある。VRの取り扱いだ。昨年のコミコンでは、映画会社によるVRアトラクションが続々とお目見えしていたが、今年はそれがほとんど見られないのだ。Oculus RiftやProject MorpheusといったVR機器が2016年にお目見えすることから、ガンガン展開してくるかと思っていたのにちょっと拍子抜け……。と、思った矢先に注目のニュースが! Steam VRを搭載したHTC Viveのワールドツアーが、コミコンの開催期間中に、このサンディエゴを皮切りにして実施されるというのだ。HTC Viveと言えば、独特のコントローラーの形状が印象的なアレだ!
ということで、記者は取るものもとりあえず、コンベンションセンターからほど近いところにある、HTC Viveの特設会場に足を運んだところ……、あった! しかも、いきなりコンパニオンのお姉さんが無造作にヘッドマウントディスプレイを脇に抱えているではないか。GDCのときは、ディスプレイに大切に入れられていたというのに、何たるこの扱いの違い! と、記者が物欲しそうに端末を見つめていると、それに気付いたお姉さんから「被ってみますか?」とのひと言が。「おお、被れるんかー!?」と猛る間もあらばこそ、「はい!」と即答していたのは言うまでもない。
で、個人的には『攻殻機動隊』にでてきてもおかしくないような軍事兵器に近いデザインをしているなあ……と思っているHTC Vive。「じつは意外と重いんじゃ……」と思いのほか、案外軽い。Oculus RiftやProject Morpheusとあまり遜色がない軽さ(あくまで主観です)。そしてフィット感もよく、「ああ、なんかふつうにいいな」という感じ。Steam VRはVR関連では少し後発ということもあり、フィット感などで小慣れるまでに少し時間がかかるのでは……と勝手に思っていたのだが、ぜんぜんストレスなし。そのへんは、VR機器自体の基礎研究が進んでおり、ノウハウのシェアが進んでいるのかもしれないなあ……などと感慨にふけっていると、後ろから近づいてきていたらしいロマンスグレーのおじさまから、「遊んでみます?」とのありがたいお言葉。もちろんのこと、食い気味に「は、はい!」とお願いしていたのは、言うまでもない。
試遊が行われていたのは、特設のトレーラーハウス。中に入るとすぐに目についたのは、Steam VR専用のコントローラー。見れば、GDCのときにディスプレイに入れられていたのと、ほぼ変わらない様子。「あのときはプロトタイプと言っていたけれど……」などと思いながらコントローラーを手に取ると、「操作で使うのは、コントローラーの後ろにあるトリガーだけですよ」との説明が。このコントローラーは、トリガーのみで操作を行い、前部にある六角形の突起物で、位置認識をするという仕組みだったのだ。
さて、HTCでは、HTC Viveワールドツアーにあたっては、いくつかのデモを用意しており、参加者にはランダムに3つ程度体験してもらうことになるとのこと。記者がまず体験したのは、潜水服を着たという設定で、海底に沈んだ船の甲板を歩くというデモ。何となくProject Morpheusの『The Deep』を彷彿とさせるが、あちらとの大きな違いは、HTC Viveは自由に歩けるところ。ただ、実際の試遊スペースは限られているので、「壁にぶつかるのでは?」と不安になるかもしれないが、そのへんも心配無用。ある一定地点まで歩くと、ゲーム中で「ここから先は行けません」ということを告げる柵が出現し、これ以上先へは行けない旨を警告してくれるようになっているのだ。で、肝心の感想は……というと、“歩く”ということの効果は大きいようで、相当な没入感。魚の群れの中に歩いて行ったり、腕を振ると魚が逃げたりというインタラクションが楽しい。ふと振り向くと、巨大なクジラが泳いでいて思わずのけぞったりと、迫力満点のデモでありました。
おつぎに体験したのは、簡単に言えばお絵かきツール。右手を絵筆に、左手をパレットに見立てて、絵を描いていくというもの。キャンパスは空中。右トリガーを押したままで、コントローラーを振っていくと、空中に立体的な絵が描けるようになっているのだ。もちろんきめ細かい絵が描けるわけではないが、日ごろ立体的に絵を描くという経験がないものだから(まあ、当たり前ですが)、目の前の立体的な絵(というか、落書き)が出現するのは、ものすごく新鮮。さらには、線は蛍光色で光っているので、とてもキレイ。楽しくて絵筆を振るっていたら、あっという間に時間がきてしまった。
最後に体験したのは、擬似キッチンで料理を作るデモ。グラフィックのクオリティーは、正直初代プレイステーション程度だが、これはあえてそうしているのであって、モノを掴んで移動させて離すというインタラクションを体験してもらうためのデモのよう。冷蔵後にある野菜を掴んで鍋に入れて、さらに胡椒をかけて……と、実際のキッチンみたいに空間を歩きながらの作業が楽しい。
というわけで、デモの時間はあっという間に終了。デモは、そのほかにもValveの名作『ポータル』を思わせるゲームなどもあるようで、「もっと体験したい!というのが率直なところ。トレーラーハウスを出たところに居合わせた、くだんのロマンスグレーのおじさまにお話を聞いてみると、HTC Viveはおそらく12月発売予定で、値段は未定。10月に発表会を開いて価格を発表する方向で検討しているという。同梱物は、ヘッドセットとコントローラーふたつ、それと位置を検出するベースステーションが2個ついてくる。肝心のコンテンツに関してだが、おじさまによると「現状は未定ですが、25アプリくらいは用意したいですね」とのこと。ゲームに関しては、PC向けに立ち上がるSteam VRのポータルサイトからアプリをPCにダウンロードし、それをHTC Viveで楽しむことになるという。
Oculus RiftやProject Morpheusより先行してリリースされるということもあり、VRのシェア競争においては、HTC Viveが見逃せない存在になりそう。