盲目の少女は、生きかたを見つける旅に出る……

『Beyond Eyes』は目の見えない少女の旅路を清冽なタッチで表現する独創的な1作【E3 2015】_07
▲tiger & squidのシェリダ・ハラトワさん。ほぼひとりで本作を作り上げたとのこと。

 2015年6月16日~18日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて世界最大のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2015が開催。会期最終日にあたる6月18日に、マイクロソフトによるID@Xboxのプレゼンテーションが行われた。ピックアップされたタイトルは『Beyond Eyes』。Xbox E3 2015 Briefingでお披露目されたタイトル中でも、水彩画を思わせるタッチが極めて印象的だった1作だ。じつを言えば、3月に行われたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)では、記者も同作を取材しており、とても気になるタイトルだった。こうしてE3で取り上げられるのも、この作品の持つ独創性を考えれば当然のことなのだろうなあ……と感慨にふけってみたり。そんなわけで、開発者であるtiger & squidのシェリダ・ハラトワさんとにこやかに握手しつつ、取材させていただいた。

『Beyond Eyes』は目の見えない少女の旅路を清冽なタッチで表現する独創的な1作【E3 2015】_06

 というわけで、改めて『Beyond Eyes』をさらっと紹介すると、本作の主人公は盲目の少女、ブレイ。小さいときに交通事故にあって目が見えなくなった内向的な女の子だ。ブレイには、唯一の友だちとして、赤毛の猫ナニがいたのだが、ある日ナニは突然姿を消してしまう。そこで引きこもりがちだったブレイは、ナニを探すために外に飛び出していく……というのが、本作の内容になる。

 画面はブレイが“音”を聞いて感じた心象風景を表現する形で構成されている。そのため、遠くのものは認識できないので、基本“真っ白”となる。ブレイは、音だけを頼りに猫のナニを探していくことになるわけだが、パタパタはためく音を聞いて洗濯物だと思って近づいていったら、じつはカカシだった……ということもしばしば。という意味では、本作はブレイが音を頼りに世界のいろいろなことを発見していく冒険の旅路とも言える。

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 本作は、エピソードとエピローグを除くと、全部で6つのチャプターから構成されており、それぞれのチャプターごとに農場だったり村だったり、海だったりと舞台が異なる。すべてのチャプターで違うゲームプレイが提供されるという。「パズル的なチャレンジが、それぞれのエリアである」(シェリダさん)なのだとか。

 今回、シェリダさんがプレゼンで披露してくれた海の舞台が印象的だった。海では雨が降っており、雨粒が傘を容赦なく叩く。そのため、ブレイは音を聞き取りづらく、周りに何があるかを感知できないために、周囲は真っ白……となる。このへんの描写は秀逸で、「ブレイの心象風景を見事に表現している」と感心させられる。

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 本作のテーマについてシェリダさんは、「生きかたを見つけて、人生をコントロールするすべを学ぶこと」とコメント。『Beyond Eyes』は、“ゲームに勝つ”ことが目的なのではなくて、“経験”なのだという。新しい感性に溢れた『Beyond Eyes』に触れると、ゲームには幅広い可能性があると思わせられる。そして、こういったタイトルを世に出し得るのがID@Xboxなのだと、改めて実感させられるのだ。

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 本作の配信は今夏とのこと。日本での配信は明らかにされていないが、きっと日本のゲームファンにも受け入れてもらえるに違いない。なにしろ本作は、新海誠監督の『秒速5センチメートル』にも影響を受けているというのだから。最後に、E3に合わせて公開されたトレーラーをお届けしよう。

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