“マチアソビ”会場で、サイバーコネクトツーのキーマンふたりにロングインタビュー!

 2015年5月3日~5日の3日間、徳島県で開催されたイベント“マチ★アソビ”。その会場で、サイバーコネクトツーの代表取締役社長・松山洋氏(文中は松山)と、取締役副社長・宮崎太一郎氏(文中は宮崎)に直撃インタビューを敢行。話題は“マチ★アソビ”の感想から始まって、気になる“あの広告”の話にまで広がった。本記事では、そのインタビューの模様を、2部構成の記事でお届けする。

サイバーコネクトツーのキーマンふたりが語る、“マチ★アソビの魅力”と“これからの戦いかた”【マチ★アソビ vol.14】_01
▲松山洋氏(写真左)と宮崎太一郎氏(写真右)。

第1部サイバーコネクトツーはなぜ“マチアソビ”に参加し続けるのか?

――今日は大きく分けて、ふたつのテーマについてお話を伺いたいと思います。ひとつは、この“マチ★アソビ”についてのお話。もうひとつは、サイバーコネクトツーという会社のことを知るためのヒントを、おふたりから語っていただければと思います。
松山 お手柔らかにお願いします。つい、しゃべりすぎたところは、あとでカットさせてください(笑)
宮崎 私は、取材を受けることがほとんどないので、いまものすごく緊張していますが、よろしくお願いします。

――それではまず、“マチ★アソビ”のお話から聞かせてください。バンダイナムコエンターテインメントとサイバーコネクトツーが“マチ★アソビ”に参加し始めたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
松山 きっかけになったのは第3回の“マチ★アソビ”です。そこからずっと参加しています。第3回のときに、『GOD EATER(ゴッドイーター)』の“トミー”こと、富澤祐介プロデューサーに誘われたのが始まりですね。当時は、弊社に東京オフィスがなかったので、バンダイナムコエンターテインメント(以下、バンダイナムコ)に私の席があったんですよ。富澤さんは、『GOD EATER(ゴッドイーター)』を仕込んでいる時期で、弊社は『Solatorobo それからCODAへ』を作っている時期ですね。両方とも、まだ世の中の人が知らないオリジナルのIPだったのですが、富澤さんから「作品をお披露目する場所としては、いい環境ですよ」と教えてもらったんです。

――最初に参加された“マチ★アソビ”の印象はいかがでしたか?
松山 いまよりずっと規模は小さかったんですが、ユーザーさんとの距離が近いことに驚きましたね。当時は、コンシューマーのゲームメーカーというのはほとんどいなくて、多くのアニメ関係の会社さんの中で異彩を放っていたと思います。雰囲気はすごくよくて、可能性を感じたイベントだったんですが、じつはつぎも出ようと思ったのには、もうひとつ大きな理由があるんですよ(笑)。

――どういった理由だったのでしょうか? 載せられる範囲の出来事であればお願いします(笑)。
松山 いや、そんな危ない話ではないですよ(笑)。“業界関係者クロストーク”というのがいまでも行われているんですが、第3回の“マチ★アソビ”でも小規模ながら、同じ企画があったんです。当時はufotable CINEMAもなかったので、ufotable cafeの会議室のようなところで行っていたんですが、そこにアニメ業界を代表するような獣のような猛者たちが集まってトークをくり広げるんです。そこで聞いたトークがあまりにも濃くて、わからないことや言葉だらけで、トークの熱量に巻き込まれながら敗北感に包まれてしまいました。そこで話していたクロストークというのは、アニメ業界の人たちからすれば当たり前のことで、何も彼らが難しい言葉を意図的に使おうとしていたわけではないのですが、私のレベルがその場に追いついてなかったんですね。スタッフから「“マチ★アソビ”どうでした?」と聞かれて、「何にもわかっていなかった」と白状したこともあります(笑)。しばらくは、迂闊にアニメを好きだとか、オタクだとか言わないようにしようと思うくらいでした。ただ、私が、その敗北感で折れるという人間ではないので、つぎまでに勉強して参加してやるという気持ちになりましたね。

――いきなり熱い話ですね。最初に受けた敗北感が、松山さんにとっては糧になったんですね。
松山 「このまま負けてられねぇ、むしろこの人たちと仲よくなってやる」という方向に気持ちが向かうんですよ、私の場合(笑)。もちろん、交流が楽しかったり、このイベントが好きだったり、自治体との協力というところで勉強させてもらいたいと思っていたり、いろいろと参加する理由はあります。ただ、最初はあのクロストークがあったからこそ、このイベントに大きく心を惹かれたんです。いまはもう、純粋に大好きなイベントですけどね。
宮崎 私は松山からこのイベントを教えてもらったのですが、やっぱり楽しいですよね。これほど近い距離で、交流できるアニメやゲームのイベントって、なかなかないと思うんです。

――たしかに、お客さんとの距離感がこれほど近いのは、“マチ★アソビ”ならではの魅力だと思います。そうして“マチ★アソビ”に参加されていく中で印象的な出来事などはありましたか?
宮崎 “マチ★アソビ”では、不思議な縁ができたりしますね。弊社はいま、スマートフォンのプロジェクトもやらせていただいていてイラストを外注することも増えてきました。そんな流れの中で、結果的にですけど“マチ★アソビ”で遊びにきてくれたユーザーさんが、こちら側からお声がけした方の中に混じっていたということがありました。“マチ★アソビ”でお会いしていた方とは知らず、お仕事の打診をしたら「じつは私、こういった者なんです」といわれて、驚きましたね(笑)。ほかのイベントだと、挨拶してもお互いに忘れていたり、そのままになったりすることが多いんです。でも、このイベントは“アソビ”と名前がついているからか、不思議と挨拶したことや、話したことを覚えているんですね。

――人と人との距離が近い、交流しやすいイベントということで、縁が生まれやすいのかもしれませんね。松山さんはいかがでしょうか。
松山 私のほうが接点がないと思っていても、じつは不思議なつながりがあったと知ることも多いですね。私は今年、星海社さんから本を出させていただくことになったんですが、そのきっかけは“マチ★アソビ”だったんです。星海社の太田克史さんや、今井雄紀さんに“マチ★アソビ”で出会ったことで話が広がっていったんです。『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』という本があるんですが、これを描いているTRIGGERの桝本和也さんも、“マチ★アソビ”がきっかけだっていうんですよ。不思議な縁がつながっていく場所だなぁと、確かに思いますね

――松山さんのお話を聞いていると、たくさんの方のお名前が出てきますよね。キーワードとして“縁”というものが挙がってきましたが、松山さん流のいい“縁”を作るコツというものはあるのでしょうか。いつも、多くの人に囲まれているイメージなので(笑)。
松山 あまりこういう質問をされたことがないのでうまく言えないかもしれませんが、自分の知らない世界に、ものすごく好奇心があるという性格が、私にとっていい縁を作ってくれているのかなと思います。そんな性格だから、すぐにいろいろなことを聞きたがるんです。そして皆がそんな私に教えてくれたり、語ってくれたりするうちに、仲よくなっていくんです。

――何でも知りたいという好奇心が、縁を深めていくんですね。ゲームやアニメといった以外のジャンルに対しても、同じようなスタンスなのでしょうか。
松山 はい(笑)。子どものころの話なんですが、デパートの食品コーナーにあるような、ガラス越しに見えるブースが私は大好きだったんですよ。たこ焼きとかたい焼きとか、クレープとかを作っているのを、1日中見られるんです。物ができていく過程が好きですし、その過程でどういうことにこだわったり、気を付けたりして作っているかというのを知りたいんですね。工場なども大好きです(笑)。自分のよくわからないフィールドに行きたがらないという人もいるかもしれませんが、私は真逆なんです。まったく異業種のお話も、どんどん聞いていきますよ。

――松山さんのまわりに人がたくさんいる理由が少しだけわかったような気がします。“マチ★アソビ”に参加してきたなかで、何か変化を感じたことはありますか。
宮崎 最初に参加し始めたときは、アニメのイベントだなというイメージだったんです。それが最近では、ゲームの会社の出展も多くなってきましたし、アニメとゲームの融合がおもしろい形で進んでいるなと感じますね。人のつながりや縁も、どんどん増えてきていて、さっきの縁の話に少し被りますが、お仕事を依頼していたアニメ会社さんからほかのアニメ会社さんを紹介してもらって、仕事の話になっていくというようなこともありました。
松山 まず規模が変わってきましたね。どんどん人と出展の数が増えています。2014年は台風の影響で、人の数は少し減りましたが、それでも規模や活気はすごかったんです。おそらく、今年は過去最大の数になるんじゃないでしょうか。あとは最初に我々がいいなと思った、ユーザーさんとの距離の近さがイベントのウリとして定着してきて、メーカー側も、ただ商品をアピールする場ではなくて、大人の文化祭のようになりつつあるというのもおもしろいところですね。“マチ★アソビ”で結婚するというような発想が出てくるまで、ユニークなイベントになってきています。

――毎回、新しい試みを盛り込みつつ、年に2回も開催されているイベントはほかにはないですよね。
松山 やはり、“マチ★アソビ”のプロデューサーである近藤光さんがすごいですよね。プロデューサーの定義っていろいろあると思うんですけど、本当のプロデューサーというのは、近藤さんのことを指すのかなと最近は思います。どうやればおもしろくなるか、どうやればお客さんが楽しんでくれるかということを考えながら、イベントを切り盛りしている。これほどの勢いで、規模や人気が出てくるとは、最初にやり始めたときに感じている人は少なかったんじゃないですかね。近藤さんが、この記事を読むと、ちょっとどころじゃなく恥ずかしいですね(笑)。
宮崎 昔は“マチ★アソビ”に参加すると言うと、「どんなイベントなんですか?」と聞かれることが多かったんですが、いまやそんなこともなくなりました。これほど短期間でメジャーになって、オリジナルの味を残しているイベントってほかにはないですよね。参加者の皆様もその空気を察してか、積極的に楽しもうとしたり盛り上げようとしてくれるのを感じます。だからこそ、我々もまた絶対参加したいなと毎回思うんです(笑)。

――今年の出展の手応えはいかがでしたか?
松山 今回は、バンダイナムコエンターテインメントさんと弊社にとって、新しい試みでした。昔はゲームを出すにしても、いままでどこかのイベントなどで使ったバージョンのものを出したりしていたんです。それが今回は、日本で初公開のバージョンを出したんですよ。『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』(以下、『ナルティメットストーム4)も『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』(以下、『ジョジョEoH』)も最新の開発状況のものなんです。『ジョジョEoH』なんかは、“マチ★アソビ”の前日の深夜まで調整したものを持ってきているんです。“体験会”ではなく“モニター会”という名前をとらせていただいたのには、意見を聞く場所として、このイベントを重視しているよというアピールでもあるんです。

――“モニター会”は非常に盛況でしたよね。私も“マチ★アソビ”には毎回のように来ているんですが、いままでにあまり見たことがない規模の行列ができていました。
宮崎 驚くほど多くの人が来てくれましたね。お待たせして申し訳ないと思いつつも、ちょっとした達成感を感じていました。あとは、アンケートの回答率が高かったのも印象的でした。我々としては「2割くらいの方が答えてくれればいいよね」と考えていたのですが、想像よりはるかに多くの方がアンケートに答えてくれたんです。スタッフとしては、隣についてお客様にゲームの遊びかたをレクチャーしつつ様子を見ることができるだけで反応が集められるため、アンケートの回答率が少なくても遊んでくれるだけで意味があるモニター会だったのですが、ものすごい量のアンケート返答をいただきました。会社に持ち帰って、皆でひとつひとつ見させていただきます。
松山 今回のやりかたは、アンケートも含めて『GOD EATER(ゴッドイーター)』の手法から学んでいます。『GOD EATER 2 RAGE BURST(ゴッドイーター2 レイジバースト)』の発売前に、バンダイナムコさんがお客様から意見を集めているのを見たんですよ。お客様と向き合うってことは、こういうことなのかもしれないとそのとき気づかされたんですね。

――直接ユーザーさんからの反応を得られるというのも、距離感の近い“マチ★アソビ”ならではですね。次回の“マチ★アソビ”は、参加されるのでしょうか?
松山 もうホテルを予約しました(笑)。“マチ★アソビ”が行われる限り、参加したいと思っているのでよろしくお願いします。つぎはまた、新しい何かを持ってきて皆をビックリさせたいですね。サイバーコネクトツーの名前を刻めるような出展をしたいと思います。