『D4』PC版発売決定! マウスひとつで感覚再現は可能かをSWERY氏に聞く

洋の東西を問わずコアなファンを持つ、ゲームクリエーターSWERY氏こと末弘秀孝氏。Kinectによる感情移入や感覚再現の楽しさをふんだんに盛り込んだ氏の最新作、Xbox One専用タイトル『D4: Dark Dreams Don't Die』が、PCでも発売されることが確定した。Kinect以外のデバイスで感情移入や感覚再現は可能なのか? 発売に踏み切った経緯は? など気になるところをSWERY氏にぶつけてみた。

●マウスでの感覚再現は可能なのか?

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▲ここ数年のパートナーであるシャラポワも同席。

 洋の東西を問わずコアなファンを持つ、ゲームクリエーターSWERY氏こと末弘秀孝氏。Kinectによる感情移入や感覚再現の楽しさをふんだんに盛り込んだ氏の最新作、Xbox One専用タイトル『D4: Dark Dreams Don't Die』(以下、『D4』)が、PCでも発売されることが確定した。

 これは2015年3月に催されたGDC 2015(ゲーム開発者のためのカンファレンス。サンフランシスコで開催)の氏のセッションの検証資料として公開され、同月のPAX EAST 2015(ゲームファンのための祭典。ボストンで開催)では、参考出展として会場に展示されていたもの。Kinect以外のデバイスで感情移入や感覚再現は可能なのか? 発売に踏み切った経緯は? など気になるところをSWERY氏にぶつけてみた。

※参考 GDC 2015での記事
※参考 PAX EAST 2015での記事


●Xbox One版との違いは?

──GDCやPAX EASTで参考出展されていた『D4』のPC版が、実際に発売されるという話をうかがいました。発売決定に至った経緯を教えていただけますか?

SWERY氏(以下、SWERY) もともとはGDCで行ったセッションの内容だった、「Kinectがなくても感情移入や感覚再現はできる」ということを証明するため、実験資料としてPC版を作り始めたものでした。マウスだけを使うことを意図してゲームデザインしたのです。そこに、「以前からずっと『D4』を遊びたいけれど、Xbox Oneを持っていない」というユーザーさんが数多くいらしたのですが、GDCで実際に発表すると「PCバージョンがあるのなら、ぜひ発売してくれ」と、ソーシャル上でちょっとしたバズとなったんですよ。

──うれしい反応ですね。

SWERY それでそこまでくすぶっていたような気持ちに火が点き、「実際に出そう」と踏み切ったわけです。嫌らしいですが、実験として作りながらも、「ユーザーの皆さんにお見せして反応を知りたい」という気持ちもありました。

──思惑どおりでしたね(笑)。

SWERY うまくいってよかったですね(笑)。

──GDCやPAX EASTの時点でどこまで完成していたのでしょうか?

SWERY お見せしたそのまま、プロローグの冒頭でアマンダが登場するシーンまでは作っていましたが、それ以降のシーンはその時点からチューニングを始めました。今回はKinectを使わないため、“ジェスチャーを新しいコマンドに置き換える”という作り直しをしているので、その先の部分をすべて作っています。UIもGDCでは仮のものでしたが、マウスで遊んでわかりやすい新しいものを描き起こして修正しています。

──現在も製作中なんですね。

SWERY 4月いっぱいですべての要素を入れられるように、スタッフが日夜製作してくれています。5月にはバグのチェックをしたいなと。

──ゲームの内容に関しては何の違いもないのでしょうか?

SWERY Season1としては変わりません。細かい部分を言うと、アイテムの配置を変えて遊びやすくチューニングしていたり、Xbox Oneのときにダウンロードコンテンツで配信していたものを、ゲーム内のリワードとして実際に取れるアイテムとして配置したり、サイドクエストのご褒美にしたりなどの変更をしています。

──ダウンロードという作業が、遊びに変化しているわけですね。

SWERY すでに半年以上前に一度発売されたゲームなので、いちいちダウンロードしていただくのではなく、ゲーム内で楽しみながら取っていただこうと置き換えています。

──楽しみな変更です。操作方法の変更は実際のところ、どんな感じなのでしょう? Kinectがマウスに置き換わったとき、ゲームプレイの快適さはどれほど保たれるのでしょうか?

SWERY 今回のマウス操作へと移植する中で、とてもよくなった部分と、完全になくなった部分があります。ボイスのコントロールなどKinectにしかない声の判定については、今回、入れられていません。カラダを使ったポーズによるジェスチャーもできませんが、それについてはマウスですべて遊べるように改修しています。

──具体的には?

SWERY たとえば野球のバットを振る部分は、“キャラクターの手の甲をつかんで肩までドラッグすると構える”など、Kinectとはまた違う形での“マウスでの感覚再現”をしています。


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▲GDC 2015のセッションでは、仮UIながらマウス操作の様子を披露。写真の場合、右上の皿のフォーチュンクッキーをクリックでグラブしたままドラッグ、手前にドロップして砕いていた。

──結果として操作の難度は?

SWERY 僕の感覚で言うと、マウスは定点を保持し続けるのがラクなので、より簡単になったと思います。見た目はKinectのほうがキャッチーでしたので、幅広い層に「やってみたい」と思わせられたのですが、じつは手を空間で一定の位置に置いておくにはかなり体力が必要です。

──確かにプレイが長びくとキツくなりますね。

SWERY たとえばPushなどは、マウスだと狙ったところを思いどおりに押せますが、Kinectだとかなり狙う必要がある。そういう特性の差から、“カットシーン中に観察のアイコンが出て、慌てて手を挙げたけど間に合わなかった”という“『D4』あるある”とも言えるシーンでも、マウスはよりクイックに反応できると思います。


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▲マウスであれば、フクロウをポイントすることなど造作ない。

▲メニューのような画面でもストレスなく選択できる。

──ありがちですね(笑)。Kinectだと、操作と画面内のアクションがシンクロすることで没入感がより促される傾向があると思います。マウスだと若干損なわれたりしないのでしょうか?

SWERY 相似性という意味ではスポイルされると思います。ですが、GDCで記号化・シンボル化という理論をお話したように、アクションのシンボル化においては、ユーザーが開けたいと思うドアのノブをKinectで狙って手を握るという行為も、マウスで左クリックするという行為も、ドアを開けるポーズそのままでありませんが、脳内でだんだんドアを開けることと一致し始め、最終的に感覚が再現される、というのが今回やってみて理解したことです。

──マウスでも充分にシンクロは再現されると。QTEはいかがでしょう?

SWERY よくあるQTEよりは断然おもしろく仕上げたつもりです。ですがKinectでプレイするQTEは別格。「Kinectがあったらもっといいのにな」とは正直思いました。

──Kinect for Windowsもあるのでいずれ対応は?

SWERY ユーザーの皆さんに今回の『D4』をたくさん買っていただけたら、対応のアップデートも可能かもしれませんね。ただ、技術とビジネスの両面から考えなければならない部分もありますので、Kinect for Windowsの普及台数次第でもあります。

──可能性はゼロではないと。

SWERY PC版のいいところはアップデートができるところだと思うんですよ。いまはユーザーの皆さんのコミュニティがゲーム業界でも大切になっていて、むかしのように“宣伝して流行らせて売る”のではなく、まずユーザーの皆さんが楽しんで、その楽しんだ体験が横のつながりで共有され、コンテンツが大きくなるという側面がありますよね。

──わかります。

SWERY そういうコミュニティは、家庭用ゲーム機よりPCのほうが強いと思うんです。コミュニティに向けて発信するという意味では、PCがいちばん適している。GDCでテストをさせていただいて反響もあったので、それが今回PC版を発売することになった理由のひとつでもあります。『D4』はエピソディック(連作形式)なコンテンツですから、「このあと、どういうことが期待されているのだろう?」だとか、「どんなことをみんなは思うのだろう?」など、いままで以上にフィードバックを見ながら作れたらなと思っています。

──今後はXbox One版とPC版は同時に配信されていくのでしょうか?

SWERY 「今後のものはがんばって作っているので、ご期待ください」としか言えませんね(笑)。


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