極めて自由度の高いゾンビサバイバルゲーム

 国内で2015年4月16日にプレイステーション4/Xbox One版が発売される『ダイイングライト』は『Dead Island』を手掛けたTechlandが放つゾンビサバイバルゲームだ。雇われのエージェントであるクレインは盗まれたウィルスに関する極秘文章を取り戻すため、ゾンビの徘徊する都市ハランで生存する2大コミュニティーに潜入することになる。広大なオープンワールドでミッションとコミュニティーの存続、そして自分の命を天秤にかけた戦いが始まる。

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軽快なパルクールアクションで絶望を走り抜けろ

 本作ではいわゆる“フリーランシステム”が採用されているので、プレイヤーは背丈以上のフェンスを飛び越え、屋根からゴミ袋を緩衝材に飛び降りられる。ゾンビサバイバルゲームとパルクールアクション、これほどまでにマッチする組み合わせもないだろう。昼間は動きの遅いゾンビが闊歩しているので、必然的に高い位置に逃げることになる。素直にドアを開けて階段を上り、窓から飛び降りたら死んでしまうので籠城戦? それは真の意味でのリアルとは言えない。一瞬一秒を争うというときには、死に物狂いで最短の逃走ルートを選択するはずだ。ゾンビムービーを鑑賞する際、誰しもが追い込まれた登場人物に「そこの窓から屋根に出て逃げればいいのに」と言い放った経験があるだろう。わかりやすく言うと、そこで逃げられるのが『ダイイングライト』だ。

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豊富でユニークなアイテム、そしてクラフト

 本作は、武器には大きく分けて打撃武器と投擲武器があり、マップ上で拾うかクラフトで生産できる。ただの釘が刺さったバットでさえ、この街では心強い武器になる。ゲームの序盤は鈍器、中盤はナイフ、終盤は銃器にお世話になるだろう。また、実用品もクラフトで生産できる。たとえばヘルスを回復してくれる“医療品キット”にはアルコールとガーゼが必要だ。これらの設計図や生産パーツはマップ上で拾うかお金で購入できる。お金はゾンビの死体から漁ってもいいし、都市ハランでは貴重品になるコーヒーやタバコを売って儲けてもいい。

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サバイバルスキルを修得できる3つのスキルツリー

 まずは、ストーリーの進行に沿って与えられるミッションをクリアーするとポイントを獲得できる“サバイバーランク”で生き残るのに必要な基本技術を高めよう。価格交渉の腕からトラップの仕掛けかた、ゾンビの血を使ったカモフラージュまで多種多様なスキルを好みの順番でアンロックできる。

 “スピードレベル”では移動に関する能力を高められる。ぎこちなかったパルクールアクションも、成長するにつれてゾンビを乗り越えられるようになったり、スライディングができるようになったりと手数が増えていく。

 “パワーレベル”では身体能力だけでなく、武器の正しい使いかたを学んで壊れにくくするなど、攻撃に関するあらゆる能力を高められる。いざというときに役に立つのは、けっきょくのところ腕っ節の強さだ。

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昼夜で一変するシチュエーション

 昼間は近づかなければ脅威にならない、とろ臭いゾンビがほとんどだが、夜間は猛スピードで追いかけてくる凶暴なゾンビが登場する。視界が狭まるうえ、直線距離で逃げていてはいずれ追いつかれてしまう絶望に、プレイヤーは恐怖するだろう。その代わり、夜間に得られる経験値はなんと2倍である。修羅場をくぐり抜けた数だけ成長できるわけだ。安全な行動を心がけるか、危険を冒して経験を積むか、選ぶのは君次第だ。

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現実的な恐怖が作り出す自分だけの物語

 パルクールアクションは少々荒削りで、最初は過度のモーションブラーによる“カメラ酔い”は避けられないが、それさえ慣れてしまえばゾンビからあの手この手で逃げまわるのがとにかく楽しい。また、現実的なゾンビの固さやスタミナの切れるタイミングが、より一層の緊迫感を与えてくれる。安全区域は遥か先、傷ついた足を引きずりながら、近くの民家で使えそうな物資をかき集め、長い夜を明かす。そんな頭の中で描いている物語を実現したいなら、『ダイイングライト』を遊ばない手はない。

GOOD NIGHT, GOOD LUCK.

■筆者紹介 VEXATION(べクセイション)
Halo』シリーズの現日本チャンプ。攻めるゲーマーのアイウェア“GUNNAR”オフィシャルアンバサダー。ライティング、動画制作などマルチに活躍中。最近はもっぱら本職のFPSよりホラーゲームにはまっている。

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