ゲームをプレイするうえで欠かせない音楽と効果音について訊く

 ついに発売されたプレイステーション Vita用ソフト『デジモンストーリー サイバースルゥース』。大人になった『デジモン』ファン、そしてRPGファンに向けて制作された同作を、音楽の面で支える高田雅史氏と福田淳氏へのインタビューを掲載。今回も、同作のプロデューサーである羽生和正氏(文中は羽生)に同席いただき、作品を彩る音楽について語っていただいた。

『デジモンストーリー サイバースルゥース』サウンドを担当した高田雅史氏&福田淳氏にインタビュー_01
■高田雅史氏(写真左)
サウンドプレステージ合同会社代表。長くゲーム音楽を作り続けるサウンドコンポーザー。最近では、『ダンガンロンパ』シリーズの作曲などを手がけている。(文中は高田)


■福田淳氏(写真右)
ジェミニブリーズ合同会社CEO。サウンドデザイナーとして『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』や『NO MORE HEROES(ノーモアヒーローズ)』などのSEを担当する。(文中は福田)

羽生プロデューサーの情熱に突き動かされて参加

――今回、高田さんは楽曲を担当されていて、福田さんは効果音を担当されているということですが、まずは『デジモン』の依頼を受けたときのお気持ちを伺わせていただければと思います。
高田 『デジモン』に対しては“有名なIP”というイメージがあったのですが、じつはあまり遊んだことがない世代だったので、最初は「話だけ、とりあえず聞いてみようかな?」というぐらいの気持ちでした。ただ、羽生さんにお会いして、その情熱に打たれまして(笑)

――わかります(笑)。
高田 「羽生さん、『デジモン』のこと好きすぎだろう!(笑)」と思ったときに、「これはおもしろくなりそうだ」と感じたんです。しかも、大ヒットしたタイトルの再始動に立ち会わせていただけるということで、すごく光栄だなと思ったんですね。だから、その場で「予算がいくらだろうと、やろう!」と決めていました。

――では、決め手は羽生さんだったんですね。
高田 羽生さんが決め手でしたね(笑)。
福田 僕も、高田さんが言われたような状況とほぼほぼいっしょでした。
高田 福田は、もともとSEなどをいっしょにやっていたので、僕が音楽だけではなくSEもまとめて引き受けたときに担当してもらうことになりました。
福田 僕自身、『デジモン』はすいぶん前から知ってはいたものの、遊んだことがなかったんです。でも、「今回いろいろな部分をガラッと変えたい!」という、すごい熱意のあるお話を、直に受けまして
一同 (笑)。

――やっぱり、キッカケは羽生さんだったんですね(笑)。

作品の世界観を音楽で作り上げる

『デジモンストーリー サイバースルゥース』サウンドを担当した高田雅史氏&福田淳氏にインタビュー_02

羽生 高田さんの音楽は、ジャンル的にはテクノとも言い難いし、パンクとも言い難いし、独特なジャンルだと思うんです。とてもデジタル音っぽいのにアナログチックな雰囲気がすごくあって。そういう音楽性が『デジモン』にすごく合うと思っていたんですよね。そこで今回、『デジモン』を新しくするために、ビシっと締めてくれるカッコいい音楽を作っていただける方を探す中で、高田さんがいいと思ったんです
高田 そうでしたね。お話をいただいたのは、けっこう前だったんですよね。
羽生 企画をスタートさせるタイミングで、音楽は高田さんにお願いしたいと決めていたので、いちばん早い段階でオファーを出しているんですよ。だから、意外と納期まで時間があるということで、オファーを受けていただけたのかなと。

――高田さんにとっての『デジモン』の印象は、どんなものでしたか?
高田 今回のゲームの場合は、ステージごとに世界観がすごく変わるのがおもしろいと感じました。ですから、そこを音楽で表現したいというのが、まず最初に思ったことですね。後は、『デジモン』自体がどういう作品なのかという部分は、正直そんなに深いところまでは飲み込めていないんですけれども、空気感というか、作品の世界観というのを、逆に音楽で作ってしまおうというつもりで、楽曲を制作しました。

――自分なりの『デジモン』の世界観を音楽で作り上げて、それこそが今回の『デジモン』の世界であると提示するスタンスですね。
高田 そうです。
羽生 今回は、作品自体が『デジモン』でありながら“オリジナル”の世界観であるというところが非常に大きかったと思います。開発会社さんとかなり綿密にやり取りをしていただいて、作品世界に合っているのはもちろん、各シチュエーションに合った楽曲を作り上げていただきました。逆に、僕は高田さんのファンだったので、高田さんから上がってくるものは、すべてオーケーみたいな(笑)。
一同 (笑)。
高田 たしかに、完全なリテイクなどはほとんどありませんでしたね。少し調整を入れたりとかはしましたけど。
羽生 もちろん、適当にやってるわけではないですよ(笑)。本当にいいものが仕上がってきたので、何の文句もなくオーケーを出させていただきました。たぶん、テーマ曲くらいですね。上がってきたものに、少し注文を出したのは。

――そこまでイメージ通りのものが仕上がってくるのは、やはり綿密な打ち合わせに裏打ちされているのでしょうか? 打ち合わせをするなかで、ディレクターさんからの注文で印象的だったものはありますか?
高田 基本的には、“少しミステリアス”などといいったシチュエーションを細かく提示されて、それに合わせていちばん演出しやすいであろう音楽を作り上げていきました。その中でも印象的なものだと、“リズム感の中に少し神秘性あり”というオーダーですかね。

――なかなかイメージが難しいオーダーですね。
高田 「リズム感があるのに、神秘的?」というところから膨らませて、作っていきましたね。後は、キャラクターの画像や、フィールドのイメージ画などをいただいて、作品世界を膨らませていきました。もともと僕は、作品の世界や物語をそのまま音楽に翻訳するとどうなるか? というところから音楽を作り始めるんです。そういった意味では、今回はかなり素直に作った印象ですね。今回はシナリオに合わせるというよりも、提示されたシチュエーションの場所や、キャラクターに若干寄った曲になっていると思います。
羽生 いちばん最初にできたのは、“EDEN”の音楽ですよね?
高田 そうですね。PVで流れている音楽です。
羽生 2013年の12月に初めてゲーム情報を公開したPVで流れている音楽が“EDEN”の曲なんですが、それがイチバン最初にでき上がった楽曲でした。ムービーを担当してもらっている神風動画さんに電脳空間“EDEN”をデザインしていただいて、この“EDEN”のイメージに合う音を付けてくださいとお願いしました。電脳空間というのは、今回のゲームをいちばん象徴する場所ですからね。実際に高田さんに作っていただいた楽曲が本当にピッタリで、神風動画さんからも「本当にイメージ通りで、すばらしいです」というお言葉をいただきました。その1曲から、いろいろなテーマが決まっていった感じです。
高田 神風動画さんのムービーが大きかったですね。“電脳空間”と言葉だけで言われても、ちょっと漠然としていて、僕の中ではワイヤーフレームが思い浮かぶぐらいだったんですよ。

――(笑)。
高田 そのイメージから、1歩オシャレ感を出すきっかけになったのが、神風動画さんのムービーだったんです。イメージを固めるのに、すごく助かりましたね。
羽生 当時は、まだ完全にフィックスしていたわけではなくて、いろいろなシーンのテストムービーみたいなものをいただいていたんですよ。そのラフ状態のムービーを高田さんにお渡しして、「今回やりたいのは、物質感はありつつも、平面的な、すごく清潔感のあるユートピアみたいな雰囲気の電脳空間なんです」という話をさせていただきました。

――曲を作るときは、絵があるほうがイメージが湧きやすいんですか?
高田 そうですね。絵があれば、まずその絵に合うかというジャッジができるのでとても助かります。やはり、曲の細かいところから合うかどうかというのをチェックしたいですからね。それこそハイハットのピッチぐらいから。そう考えると、絵があると安心です。ないまま作ると、「自分としては青っぽいイメージで作っていたのに、絵が赤だったらどうしよう」みたいなことがあり得るんですよね。だから、絵があるとすんなり曲に翻訳できるので助かります。