林編集長「コンシューマーのほうが手堅い勝負ができる」

“黒川塾(二十四)”VRと日本のゲームの未来とは 2014年度の“エンタテインメントの未来を考える会大賞”が決定_01
▲黒川文雄氏

 2015年3月9日、おなじみ黒川文雄氏による“黒川塾(二十四)”が、東京・御茶ノ水 デジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスにて開催された。ここでは、登壇者のトークの模様をお届けしよう。

 黒川塾とは、“すべてのエンターテインメントの原点を見つめ直し、来るべき未来へのエンターテインメントのあるべき姿をポジティブに考える”というテーマのもと、各界の著名人を招いてトークを行う会。今回は2014年度の印象に残ったコンテンツなどを語り合い、その結果としての“エンタテインメントの未来を考える会大賞”を選定することがテーマとなった。

 このテーマに則り、以下のゲーム・エンタメ系のメディアにおける、有識者が登壇した。

林克彦編集長:株式会社KADOKAWA エンターブレイン ブランドカンパニー 週刊ファミ通編集長
西岡美道編集長:株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス ブランドカンパニー 電撃プレイステーション 編集長
佐藤和也氏:朝日インタラクティブ 株式会社 CNET Japan編集記者

ここからは、トピックごとにトークの内容を記していく。

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▲左から黒川文雄氏、林克彦編集長、佐藤和也氏、西岡美道編集長

■GDCで勢いを感じたコンテンツとは

 まず、2015年3月2日~6日(現地時間)にサンフランシスコで開催された、ゲームクリエイターを対象としたカンファレンス、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2015の話題となった。

 西岡編集長と佐藤氏は、GDCにおいてProject Morpheus(プロジェクト モーフィアス)とOculus Rift(オキュラス リフト)というVR(バーチャルリアリティ)に関するコンテンツに勢いを感じていたとのこと。林編集長は「坂口博信さんが生涯功労賞を受賞されたり、小高和剛氏さんが登壇されたりはしていましたが、まだまだ日本のクリエイターの方が目立ってはいないので、もっと日本の方に出てきてほしい」と語った。なお、林編集長も近年のVRの強さを感じており、近年の専門学校で講演では、ほぼ100%と言っていいほど、生徒にVRのことを質問されていたそうだ。

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■日本のコンテンツは注目されているのか

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 黒川氏が「いま(GDCを始めとして)日本のコンテンツは注目されているか」という疑問を投げかけると、林編集長は「『メタルギア ソリッド V ファントムペイン』はワールドワイドで知られているし、実際に注目されている日本のクリエイターやスタジオは多くある」と語った。西岡編集長は「『Bloodborne(ブラッドボーン)』は新しいタイトルだが、宮崎英高さんがディレクションを務めたことが注目されており、“人”や“スタッフ”は海外ではよく見られている」と指摘した。

 佐藤氏は、日本のコンテンツで存在感があるのはスマートフォン用アプリ(ゲーム)であると語った。これは日本のスマートフォン市場が大きいことも影響しており、そのために日本のコンシューマーでの大規模なソフト開発はあまり目立っていない状況になっていると指摘。林編集長も「日本のコンシューマーが発展するかどうかは、プレイステーション4やWii Uなどのハイエンドのハードが売れてくることが重要」と語った。

■スマートフォンのほうがけっきょく強くなる?

 黒川氏はここまでの一連の会話を振り返り、スマートフォンゲームがあまりに浸透しているために、コンシューマーゲームが沈静化するのではないかと懸念した。

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 しかし、林編集長は、「スマートフォンのゲームは“ひとつのコンテンツを長く遊ばせる”ことに注力しており、新規タイトルの参入が難しいため、むしろコンシューマーのほうが手堅い勝負ができる。メーカーは決してスマートフォン一択ではなく、コンシューマーのほうを伸ばしていこうとしているところはたくさんある」と語った。また林編集長は、いまはプレイステーション3がまだまだ元気であるので、今後は『テイルズ オブ』シリーズなど広く親しまれているゲームがプレイステーション4に対応してくるようになり、次世代機の活力が増すことを期待しているそうだ。

 西岡編集長は「プレイステーション4は安いハードではないので、持っていない人はプレイステーション3で満足してしまう。どれだけプレイステーション4を買いたいと思えるようになるか、このタイトルだったらプレイステーション4を買いたいと思える“仕掛け”をどんどん作っていくことが必要である」と語った。

■VRでゲームの世界は広がるか

 ここからは、Project MorpheusとOculus Rift(VR)の可能性について、トークすることになった。

 林編集長は、『PsychoBreak(サイコブレイク)』の三上真司氏がVRについて「従来のゲームの、テレビのモニターという枠があり、枠の外に日常的な物が見える時点で100%の没入感はありえない。しかし、VRであると枠がなく、360度の空間になるので、すごくわくわくする」と語っていたことが印象的だったそうだ。

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 さらに話題は、女の子といっしょの空間を過ごせることで注目を集める『サマーレッスン』に。西岡編集長は「いままでのゲームをプレイして感じる興奮とはまったく別で、実際に女の子がここにいるというドキドキ感がすごい」と体験したときのことを振り返った。佐藤氏は「VRは体験しなければイメージできないところがあるので、“かわいい女の子がそばにいてドキドキできる”というわかりやすいコンテンツこそ、VRが一般化していくための鍵なのではないか」と語った。

 黒川氏は“VR映画”の可能性について「劇場で観客みんながヘッドマウントディスプレイをつけて、360度の映画世界に入れるようなものが新しいエンターテインメントになるかもしれない」と語った。