ビジネスマッチングも大きなポイントを占める
2015年5月8日~5月10日の3日間(8日はビジネスデイ)、東京・秋葉原UDXにて、インフレクション・ポイント・キャピタル(IPC)とユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社主催によるインディーゲームのイベント“第1回 東京インディーゲームフェスティバル(TIF)”が開催される(⇒関連記事はこちら)。IPCとは、独立系のゲーム会社の支援をおもな業務として、2013年10月にシンガポールで設立されたベンチャー企業。今回開催されるTIFは、そんなIPCがUnityと協力して、日本のインディーシーンのさらなる活性化を目的として実施するイベントだ。ここでは、IPCの共同創設者にして、TIFのチーフ・オーガナイザーを務めるアレキサンダー・デ・ジョルジョ氏に、TIF開催の意図などを聞いた。
アレキサンダー・デ・ジョルジョ氏
IPC共同創設者兼
第1回 東京インディーゲームフェスティバル チーフ・オーガナイザー
マルタ島出身。幼いころから中東やスイス、イギリスなどに移り住んだことで、英語、スペイン語、フランス語など数カ国語を駆使する。ゲームは大好きで、最初に遊んだゲームはファミコンの『ドラゴンボール』。「当時、日本語はわからなかったけど、夢中で遊んだ」とのこと。金融業界などを経てIPCに。日本には6年間住んでいる。
――まずは、IPCとはどういう会社なのか、教えてください。
アレキサンダー・デ・ジョルジュ氏(以下、アレキサンダー) IPCは、独立系メーカーの支援を目的に、2013年10月にシンガポールで設立された会社です。シンガポールのほかには、ダブリンとサンフランシスコに拠点を設けております。
――日本市場に注力している理由は?
アレキサンダー 社長はシンガポール人なのですが、長らく日本のオンラインゲームにコンサルタントとして関わっていまして、“日本の開発スタジオを盛り上げたい”と思っていたんですね。あと、IPCのスタッフは、子どものころから日本のゲームに接していて、日本のゲームの大ファンだったという点も大きいですね。ところがいまは、日本のゲームはそんなに盛り上がっていないという現状があります。日本のインディーゲームを支援することで、日本のゲーム市場をサポートしたいとの思いがありました。そもそも当社の社長がIPCを設立したそもそもの大きな理由として、“日本のインディーメーカーが海外へ出るのを手助けしたい”という一面が大きかったんです。
――日本のクリエイターにがんばってほしいということですね?
アレキサンダー そうですね。海外にはこの手の会社は2~3見受けられますが、日本にはあまりありません。そういう意味では、日本のインディーもこれから……という一面はありますね。あまりサポートシステムが整ってないように思います。
――具体的には、どのような感じでサポートしていくのですか?
アレキサンダー まずは、ビジネスサポートですね。インディーゲームメーカーは、ゲームの作りかたは詳しいですが、ビジネス面での経験がないところがほとんどなので、その点での支援を考えています。ここには、マーケティングやディストリビューションパートナー探しなども含まれます。あとは、投資です。投資に関しては、お互いの方針などの理解もありますので、3ヵ月~半年くらい時間をかけて判断していくことになるかと思います。
――タイトル単位ではなくて、スタジオに投資するということですね?
アレキサンダー そうですね。当然スタジオに成長してもらおうと思ったら時間もかかるわけで、地に足のついた展開を考えています。
――IPCの取り組みに対する、インディースタジオの感触はいかがですか?
アレキサンダー とてもポジティブです。いままでこういう会社がなかったようで、喜んでいただいていますよ。ただ、ひとつ言いたいのは、別にIPCにこだわる必要はないということです。我々の話を聞いてスタイルがあわなければ、Kickstarterを使ってもいいですし、インディー向けのクラウドファンディングプラットフォーム“Makuake”などもありますからね。いちばん肝心なのは、クリエイターが取るべき道がたくさんあって、それをクリエイター自身が決めるということです。で、私たちはその選択肢を提供したいということです。インディーゲームを展開しようと思ったら、いままではあまり選択肢がなかったのですが、もう少しオプションが広がればいいかなと。
――IPCでは、現時点で何社との協力体制が?
アレキサンダー いまは6社くらいです。今後どんどん増やしていく予定でいまして、2~3年後には30社くらいにしたいですね。
――では、TIFを開催しようと思ったきっかけを教えてください。
アレキサンダー 「東京発のインディーゲームのイベントが少ないね」というのが発端になっています。2013年、2014年と京都でBitSummitが開催されて大いに盛り上がったのですが、じつはあそこに参加している7割くらいが東京から来たメーカーだったりします。あと、東京ゲームショウ 2014でのインディーゲームコーナーの反響ぶりも大きな後押しとなりました。インディーコーナーはソニー・コンピュタエンタテインメントさんが無料開放する形で50社くらいが出展したのですが、350社の応募があったんですね。これだけインディーメーカーが出展したいのに、スペースがない。さらに言うと、東京ゲームショウはインディーゲームだけのイベントでない。だったら、東京でインディーのイベントを開催すべきでは、ということで、TIFを企画したんです。
――東京でもいくつかインディー系のイベントが開催されていたりしますが、まだまだ足りない?
アレキサンダー TIFは、ゲームの出展・販売のほかにビジネスマッチングも目的としているという点が、大きな特徴かと思います。これからインディースタジオを大きくしていきたいという方たちのためのイベントでもありますね。後は、インディーメーカーの横のつながりを確保したいとの思いもあります。実際のところ、日本のインディーゲーム業界は始まったばかりでして、相互のコミュニケーションがあまりないんですね。皆さんといっしょに、インディー業界を広げていきたいという思いも込めて、TIFを立ち上げました。TIFへの参加は無料なので、ぜひとも参加していただきたいですね。
――商談や、交流の場として機能するとの思いも込めての開催ということですね?
アレキサンダー そうです。あと、会期中にはカンファレンスセンターでのセミナーを予定しています。“これから起業をするためにはどうすればいいのか?”といった、いわゆる勉強会になります。成功したインディーゲームの成功例を語るセッションなども予定しています。
――それは、ほかではない機会かもしれないですね。ちなみに、セミナーへの参加も無料で?
アレキサンダー 一部有料にしようと思っています。無料にしたら“行っても行かなくてもどっちでもいい”ということになりがちですし、有料でも満足していただけるものを提供する自信がありますので。
――出展は何社くらいを予定しているのですか?
アレキサンダー 100社くらいですね。
――応募が殺到したらどうするのですか?
アレキサンダー そこが悩ましいところでして……。当初は先着順を考えていたのですが、ことによると何らかの選択基準を設けることになるかもしれません。そのへんは未定です。
――TIFを開催することに、どのような効果を期待していますか?
アレキサンダー 日本国内のインディーゲームのさらなる盛り上がりですね。そして、国内のインディーゲームメーカーには、海外に目を向けてほしいです。いま、アメリカではインディーが盛り上がっていますが、日本のゲームにみんな興味があるんです。私たちと同じように、アメリカのクリエイターも任天堂やセガのハードで育ったので、日本発のゲームに関心があるんですね。日本のクリエイターとコラボしてみたいと思っているアメリカの開発者の数も多いです。
――ただし、なかなか日本のインディーゲームメーカーが海外に出る機会も少ない?
アレキサンダー そうですね。海外のイベントに出展しようと思っても、お金がかかるし、時間もかかる。そして、英語も必要になります。そういう意味では、TIFがその橋渡しをできれば……とも思っています。TIFでは、会期中に出展した作品のなかから“ベストゲーム”を決めまして、受賞作は海外のイベントにご招待する……といったプランも考えています。海外のほかのイベントとも連携も検討しています。
――“2015”と銘打たれていますが、TIFはこれから毎年開催する予定で?
アレキサンダー はい! まずは今年のTIFを成功させるべくいろいろと取り組んでいるところです。インディースタジオの皆さんは、ぜひ参加していただきたいです。