「わからん」と投げ出す前に、もうちょっとがんばってみてほしいゲーム

『レジェンド オブ レガシー』プレイインプレッション 全滅と逃走の先に、“気づく”楽しさがある_01

 『レジェンド オブ レガシー』をクリアーした。クリアーして思ったことは、「このゲームのおもしろい部分が、世間にまだまだ伝わっていない」ということだった。

 本作のゲームデザインを担当しているのは、過去に数々の『サガ』シリーズでバトルシステムを構築した小泉今日治氏であるため、本作が『サガ』シリーズのようなゲームであると考えている人も多いと思うが、それはちょっと違う。そもそも、『サガ』シリーズは毎回システムが変わるため、何をもって“『サガ』シリーズのような”と言うべきなのかはわからないが、『レジェンド オブ レガシー』が、世界各地を渡り歩いて、さまざまなイベントをこなしていくようなタイプなゲームではないことは確かだ。

 どちらかと言えば、本作は、『モンスターハンター』をRPGにしたゲームである、というほうが正しい。冒険の拠点となる街があって、街の外に出ていって、敵と戦って、勝利したり、ボコボコにされて全力逃走したりして街に戻ると、新しい武具が入荷していたり、交易船がいいアイテムを持ち帰ってきていたりする。それらを身につけて、再び街の外に出て行って戦う……。そのくり返しだ。くり返していると、キャラクターが育っていくのはもちろんのこと、プレイヤーのバトルの仕組みへの理解が進む。この、プレイヤーのバトルシステムに対する“気づき”こそが、本作のもっともおもしろい点だということを伝えるために、プレイインプレッションを書いてみようと思う。


 近ごろのゲームは、とても親切だ。チュートリアルが充実していて、新しい要素が出てくるたびに、ていねいに教えてくれる。一方、『レジェンド オブ レガシー』は不親切なゲームだ。チュートリアルはいちおう存在するが、基本的に投げっぱなしだ。それゆえ、私が本作のバトルシステムの全容を理解できたのは、プレイを始めて20時間ほど経ってからだった(と、書いてみたものの、じつはまだ理解しきれていないのかもしれない。ちょっと自信はない)。

 最初の“気づき”があったのは、プレイを始めて3~4時間ほど経ってから。水属性、炎属性、風属性の“歌う岩のかけら”が手に入ったときだ。

 このゲームでは、“精霊術”(いわゆる魔法みたいなもの。味方を回復したり、敵を攻撃したり)を使用するためには、歌う岩のかけらを装備して、この世界にいる精霊に“大いなる呼びかけ”を行い、精霊と契約しなければならない。

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▲水属性の歌う岩のかけらを装備したミュルスが、水の精霊と契約。

 また、精霊術を使うには、“ささやく岩のかけら”も必要になる。ささやく岩のかけらは複数存在し、それぞれのかけらに、“アクアヒール”、“スプラッシュウォール”など、精霊術がひとつずつ設定されている。ささやく岩のかけらを装備している状態で、精霊と契約すると、装備中のささやく岩のかけらに対応する精霊術が使えるようになるという仕組みだ。

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▲水の精霊術であるアクアヒールのささやく岩のかけらを装備したガーネット。水の精霊との契約後、アクアヒールが使えるように。

 そして、ひとつの精霊術を使い続けると、その精霊術をキャラクターが“習得”する。習得した精霊術は、対応するささやく岩のかけらを装備から外してしまっても、その術の属性を帯びた“霊器”を装備していれば、使用できる。

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▲いくつかの水の精霊術を習得済のリベルに、水の霊器である武器“青水晶の杖”を装備させた。水の精霊と契約すると、これだけの術が使える。

 この流れを体験して、私は理解した。なるほど、このゲームは、どのキャラクターに、どの属性のかけらを装備させるか、どの術を習得させるかを考えることが重要なんだな。キャラクターが使っている武器との兼ね合いも考えて、どのキャラクターをどんな役割で戦わせるか、自分で決めていくゲームなんだ。なるほどなるほど。

 そこからは、ときに敵が強すぎて右往左往することもあったが、それなりに順調に進んだ。強敵を相手にするとヒリヒリしたが、“覚醒”で新しい技を覚えたときはうれしく、「ここで死んではならぬ」とニンテンドー3DSを握る手にも力がこもったものだ。バトル中、下画面に表示されている精霊秤を見ると、“水の精霊の勢力が強い”、“邪の精霊の勢力が強い”などと示してくれているのだが、このときはたいして重要視していなかった。「その属性の術の効果が強くなるのかな」くらいしか考えていなかったのである。ときに、やたらと敵の攻撃が強かったり、こちらの回復術の効果が低すぎたりしたのだが、「数値の振り幅が大きいなあ」とのん気に考えていた。

 それから16時間ぐらい経って、敵が強すぎて、先に進めなくなった。雑魚敵が本気で殺しにかかってくるのだ

 うーん、困ったなー。どうしたらいいのかなー。と悩みつつ、キャラクターを育てようとバトルをくり返しているうちに、ようやく第2の“気づき”があった。「もしかして、どの属性の勢力が強いかによって、技・術の威力が変わってる?」

 この“気づき”は青天の霹靂だった。頭の中でいろいろなピースがハマっていった。精霊と一度契約した後、さらに“大いなる呼びかけ”を行うことにどれだけの意味があるのか。ゲームを進めると手に入るポジションの中に、行動順を早めたり、遅らせたりするものがあるが、それがどれだけ重要なものか。歌う岩のかけらに反応する遺跡の存在が、バトルにどんな影響を与えているのか……など。

 ちなみに、上記の“気づき”に関する内容は、説明書にはほとんど書かれていない。公式サイトにも“精霊の勢力がリアルタイムで変わる”と書かれているぐらいである。プレイヤーが試行錯誤しながら気づくしかない。また、気づいた後も、雑魚敵が強いことに変わりはないので、ヒイヒイ言う状況はそんなに変わらない(対策はできるけど)。

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▲この画面がいかに重要な情報を教えてくれているのか、やっとわかった。

 これを“不親切すぎる”、“粗すぎ”と言う人もいると思う。私のように、20時間かかって、ようやくバトルのキモに気づく人もいるわけだし……。が、自分で気づいて、状況を打破できたときは、チュートリアルどおりに進めて敵に勝ったときよりも、喜びが増す。なかなか勝てなかった相手に、精霊の勢力を気にしながら戦うことで勝利できたときは、本当にうれしかったものだ。

 冒頭で、このゲームは『モンスターハンター』に近い、と言ったのは、『モンスターハンター』もまた、“くり返し”と“気づき”が楽しさにつながるゲームだからだ。同じモンスターを何度も何度も相手にしていると、あるとき、「あっ、こういう風に立ち回ればいいのか」と気づくときが来る。前はうまくできなかったことが、自分の気づきによってできるようになり、自分自身の進歩を感じられる。それが『モンスターハンター』や本作にある魅力なのだと思う。

 ところで、本作の80パーセントぐらいは、バトルでできている(と思う)。道中、ドラマティックなストーリー演出を期待している人には、オススメはしない。が、ストーリーがつまらないというわけではない。冒険の舞台であるアヴァロンの各地にある“ささやく岩”が奏でる歌の内容をよく読むと、過去のアヴァロンで起こった出来事が浮かび上がってきて、「ああ、あそこにあるアレはアレなんだ」、「アレの正体はアレだったのか」ということがわかって、ニヤリとできる。ここまで書いてみて気づいたが、ストーリーを楽しむうえでも“気づき”が大事なんだなあ、このゲーム。

 さて、ここまで“気づき”の楽しさについて語ってきたが、本作については、残念に思う点もある。主人公が7人もいるのに、周回プレイの楽しみが、ちょっと少ないのだ(プロローグとエピローグは主人公ごとに違うけど……)。シナリオのささやかな分岐や、キャラクターの組み合わせによって変わるイベントがあったら、もっと楽しくなったのではないだろうか。このあたり、次回作に期待したい。

 ここまで読んで、『レジェンド オブ レガシー』に興味がわいたという人は、製品版にデータを引き継げる体験版が配信されているので、ダウンロードしてみてほしい。プレイできるのは序盤なので、バトルの真の醍醐味を味わえるところまでは進めないが、雰囲気は掴めるはずだ。

 そして、「よし、製品版をプレイしよう!」と思ったならば、ぜひ、このインプレッションの内容を一度忘れていただきたい。だって、いちばん楽しいバトルの“気づき”の部分について語ってしまったから。

 何度もバトルを行って、何度も全滅をくり返して、何度もメニューを開こうとして間違ってSTARTボタンを押してスクリーンショットを撮ってしまってイラッとして、そうしていろいろと理解できたころには、キャラクターのパラメーターも上がっていて、ラスボスに立ち向かえるぐらいになっているはず。ぜひ、エンディングを迎えて、「あっ、そういうことだったんだ」という、最後の“気づき”を楽しんでほしい。

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▲筆者が主人公に選んだのはリベル。主人公なのに、パーティーメンバーの誰よりもHPが成長せず、誰よりも頻繁に倒れた。でも、アタッカーとしては優秀で、すべての弓技を覚えてくれた。弓の全体技がなかったら、クリアーできなかった気がする。

レジェンド オブ レガシー
メーカー フリュー
対応機種 3DSニンテンドー3DS
発売日 2015年1月22日発売
価格 5980円[税抜](6458円[税込])
ジャンル RPG / ファンタジー
備考 ダウンロード版は5980円[税抜](6459円[税込])、ディレクター:松浦正尭、イメージイラスト:小林智美、ゲームデザイン:小泉今日治、キャラクターデザイン:平尾リョウ、背景美術:筒井美佐子、モンスターデザイン:小島雄一郎、下釜陵志、コンポーザー:浜渦正志、サウンドエディター:齊藤賢一、テキストディレクション:加藤正人、ナレーション:白鳥英美子、タイトルロゴデザイン:川口忠彦、ムービーデザイン:山形周平、開発:キャトルコール