目指すはゲッソー超え! 任天堂の期待作『Splatoon(スプラトゥーン)』、誌面未公開部分も含む開発者インタビュー完全版

任天堂の完全新作として、話題を呼んでいるWii U用ソフト『Splatoon(スプラトゥーン)』。本作の開発の中心を担う、3名の開発スタッフにインタビューを行った。本インタビューは、週刊ファミ通に掲載されたものの完全版。誌面で未公開だった部分も追加しているので、本誌で読んだ方ももう一度読んでいただきたい。

●話題の“イカ”ゲームを深く聞く!

 2014年6月のE3(エレクトロニック・エンターテイメント・エキスポ。毎年、アメリカで開催される世界最大のゲーム見本市)で突如発表された、任天堂の完全新作『Splatoon(スプラトゥーン)』。ポップな見た目と、インクを塗りまくるという新機軸のバトルが魅力の、シュータータイプの3Dアクションゲームだ。任天堂らしからぬグラフィックやサウンド、そして、インクを塗った領域で勝敗が決まるという独特のゲーム性など、さまざまな要素に、ゲームファンはもちろん、各界のクリエイターのあいだで話題になる作品になっている。今回、そんな『Splatoon(スプラトゥーン)』の開発の中心を担う、3名の開発スタッフにインタビューを行った。本インタビューは、週刊ファミ通2015年2月19・26日・3月5日合併号(2015年2月5日発売)に掲載されたものの完全版。スペースの都合などで誌面で掲載できなかった未公開部分も大幅追加しているので、本誌で読んだ方ももう一度読んでいただきたい。最後には、週刊ファミ通2015年3月5日増刊号(2015年2月19日発売)からスタートする、イカの衣装デザイン募集も掲載しているので、お見逃しなく!


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■プロフィール


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▲写真左から野上氏、天野氏、阪口氏。お三方のポーズは、イカを模したスキッド(イカ)サイン!

プロデューサー
野上 恒氏(のがみ ひさし)
ヨッシーアイランド』でデザイナーを担当。『どうぶつの森』第1作から『街へいこうよ どうぶつの森』まで、シリーズのディレクターを務める。

ディレクター
天野裕介氏(あまの ゆうすけ)
これまでに『スーパーマリオアドバンス4』、『New スーパーマリオブラザーズ2』、『スターフォックス64 3D』など、多くの作品を手掛ける。

ディレクター
阪口翼氏(さかぐち つばさ)
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』のキャラクターデザインを担当。直近では、『Nintendo Land(ニンテンドーランド)』でアートディレクターを務める。


●敵を倒すのは手段。メインはインクを塗ること

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——TPSのようなシュータータイプのゲームで、任天堂としては、珍しいジャンルだと感じました。開発の経緯を教えていただけますか?
野上 本作のスタッフは、Wii Uのローンチタイトル(本体と同時発売のタイトル)に関わっていた者が多く、Wii Uの機能をだいぶ把握できたところで、 既存の枠を取り払った何か新しいものを作ろうという話からスタートしました。いろいろな企画が出たのですが、その中で残ったものが『スプラトゥーン』です。

——いつごろから動きだしていたのでしょうか?
野上 阪口が『Nintendo Land(ニンテンドーランド)』、天野が『New スーパーマリオブラザーズ2』、私がWii Uの本体機能を作っていたのですが、それらが終わった後くらいに動き出しました。
阪口 ほかのスタッフも、Wii Uのローンチタイトルに参加していて、一度Wii Uの開発に触れていた者が多いですね。

——最初から4対4の対戦だったのでしょうか?
野上 ベースになったのは本作のメインプログラマーの佐藤(佐藤慎太郎氏)が提案した企画で、最初から試作のプログラムがありまして、それが原型になっています。当時のキャラクターは、豆腐のようなただの直方体だったのですが、“4対4でインクを出して陣取り合戦をする”という形は、その時点で確立されていました。
阪口 当然、検討の段階でいろいろと人数を増減させて試してみたものの、4人より多いとひとりのプレイヤーが及ぼす影響が小さくなりすぎて、逆に3人だとひとりの責任が重くなりすぎてしまって。
天野 たくさん倒すのではなく、地形を多く塗るほうが勝ちというルールでは、4対4のバランスが駆け引きが成立しやすかったんです。

——そのルールですが、本作の趣旨としては敵を倒すゲームなのか、インクを塗るゲームなのか、どちらがメインなのでしょう?
野上 敵を倒すのも爽快ですが、塗るのがメインで、塗った面積で勝敗が決まります。
天野 敵を倒すゲームは世の中にたくさんありますよね。でも、そういったゲームを遊んだときにおもしろいと感じていたのは、倒した数の優劣ではなく、前線で戦う人、脇から攻め込む人と、みんなが空気を読んで役割分担ができあがっていく、チームが自然と協力をするときだったんです。そこで、 敵との1対1がフォーカスされるのではなく、チームが協力して何かを成し遂げるというものを作りたいと思い、このルールになりました。
阪口 ですから、敵を倒すのは、インクを塗るための手段なんです。各ステージに必ず均衡することになる地形がありますので、そこを基点に前線を押し上げるか、脇からすり抜けるのかといった、緊張感や快感を味わってもらいたいと考えています。
野上 単純に攻めるだけなら敵陣だけを見ていればいいのですが、自陣を塗っていなくて負けるというケースもありますので、そういった駆け引きもおもしろいと思います。

——先ほどプレイさせていただきましたが、確かにひとりがインクの道を作って、もうひとりがそこを進んで前線を崩すといった連携ができると、とても気持ちよかったです。
阪口 そうやって道を作るように、自分のプレイの痕跡がインクとして残るので、それを見るのもおもしろいポイントですね。

——対戦以外のモードはあるのでしょうか?
野上 メインとなるのは対戦モードです。そのほか、ひとりで遊ぶヒーローモードと、何らかの形でローカル対戦も入れようと思っています。ヒーローモードは、タコ軍団との戦いを描くストーリーが展開するのですが、こちらは、イカとヒトのタイプを切り換える部分に重点を置いた、3Dアクションゲームですね。
阪口 対戦モードがA面、ヒーローモードがB面といったイメージですね。
天野 いや、両A面くらいのものにはなっていると思います(笑)。
阪口 ふたつのモードは操作方法という共通項を軸に、対戦モードは塗ることが目的、ヒーローモードはインクを通って進むという、塗ることを手段に使ったアクションゲームになります。対戦が苦手な方でも、ヒーローモードでじっくり操作を覚えると、対戦モード用のテクニックが身につくようにしていますので、ヒーローモードでテクニックを覚えたら対戦モードに、対戦モードに疲れたらヒーローモードに、と切り換えながら楽しんでほしいですね。


●ランダムマッチングの即席チームで“空気を読む”

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——対戦のマッチングも気になりますが?
野上 全世界のプレイヤーとマッチングします。加えて、ある程度腕前の近い人とマッチングできるように、レーティングを用意する予定です。マッチングは、今回はランダムマッチングにこだわりました。

——友だちと対戦することはできるのでしょうか?
阪口 はい。フレンドと遊べる機能も入れています。
天野 ただ、フレンド機能はもちろんあるんですが、友だちといっしょじゃなくても気軽に遊べるように、たとえ知らない人とでも楽しめるようにしています。

——いろいろな人とマッチングすると。
野上 “空気を読む”というのが、おもしろいポイントだと思っていて。マップに表示されたインクの状況を見たときに、「あっちが激戦区だから、空いているここを狙おう」といった具合に、戦況に合わせて自分で判断するのを楽しんでほしいんです。
阪口 当然、検証を重ねる中で、仲間に指示を出したいという意見は出ました。でも、指示を出したとしても、実際に指示通りに動けるかどうかはわからないんですよね。
天野 指示を出されたときに、敵が目の前にいてできないという状況もありますよね。でも、それが相手に伝わらない。結果として、「なんだよ、アイツ!」と感じる人も出てくると思います。それに、 目まぐるしく展開が変化するゲームなので、指示を出した数秒後には状況が一変していることも多く、このゲームには向いていないと判断して、削ぎ落とすことにしました。指示がなくても、Wii U GamePadに表示される全体が見えるマップで、塗っている状況が見えるので成立していると思います。
阪口 このゲームでは、マップの全体が表示されることが重要なんです。自分のまわりだけが見えればいいという人もいますが、全体が見えるからこそ、自分が攻め込んで周囲を塗りつぶしたときにマップを見たら、自陣が攻め込まれていて「ダメじゃん!」と気づいたり、敵がいないところを塗って回って「シメシメ」と思ったりという楽しさがある。こうした部分で、自分の判断が正解だったかどうか明確に伝わるので、どう立ち回るかという遊びにもつながっていると思います。
天野 あと、海外の人ともマッチングするので、言葉の問題も考慮して、今回は“空気を読む”という遊びに特化させることにしました。

——なるほど。8人が集まっていない場合は、コンピューターが参加するのでしょうか?
野上 いえ、プレイヤー以外が参加するシステムはありません。ただ、世界に8人いればマッチングするように設計して作っていますので、ご安心ください。
阪口 もし、ワールドワイドで7本しか売れなかったら、謝るしかないですけど(笑)。
野上 ゲームモードが多くてマッチングが複数あると集まる場所が分散してしまうので、マッチング場所を絞るという意味でも、ランダムマッチングに集約して、ユーザーさんの熱を1ヵ所に集めたいと考えています。
——対戦で出会ったプレイヤーと、コミュニケーションを取るといったことは?
野上 直接的なコミュニケーションは取れませんが、ネットワークで対戦したキャラクターは対戦直後に広場に登場します。広場では装備やコメントが見られるので、「この人、こんな装備だったのか!」と確認したりはできますね。あと、Miiverseに対応しますので、そこで『スプラトゥーン』のコミュニティーが広がるとうれしいです。


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——E3での発表直後から、イラストなどがファンのあいだで盛り上がっていますね。そもそも、主人公がイカになった経緯は?
野上 公開直後から反響が大きくて、ありがたいと思っています。イカにした理由は、ひと言で言うと、“ゲームの機能をすべて表現するのに最適だった”ということですね。
天野 最初はインクを撃ち合うだけで、ジャンプもなかったんです。
阪口 高さの概念もありませんでしたし、高さがないから、そもそもインクを塗って壁を上るといったこともなく、どんどんとできることを増やしていったんです。僕らとしては、そういった要素をキレイに積み上げていったつもりだったんですが、ふと気づくと複雑なってしまっていて、すごくわかりづらかった。それで、性能を一度整理しようと。
天野 当初はヒトの状態でいろいろなアクションがあるという形でした。 ただ、 機能を追加した結果、ゴチャゴチャとしすぎてしまって。いったん性能を整理する際に、これはヒトでできること、これはイカでできることと分けて、ヒトで歩いて攻撃、別のものに切り換えて移動に特化、という切り換える遊びにしようと決めました。
阪口 企画を詰めている段階では、イカの状態を“インク体”と呼んでいたのですが、“ヒトの状態では攻撃できるが、インク体はできない”、“ヒトはインクに潜れないが、インク体は潜れる”という具合に整理していきました。そして、この境界をわかりやすくするために、ZLボタンでヒトとインク体を切り換えることを遊びの根幹に据えたんです。
天野 そこから、境界をよりハッキリさせるために、インクに潜ると移動が速くなる=泳げるようになる、敵のインクを踏むとインク体が解除されるといった、さまざまな要素を追加していきました。ある程度機能が決まった段階で「どういうモチーフにする?」とみんなで考えて、複数のアイデアの中、イカがぴったりハマッたんです。
阪口 イカ以外の選択肢もあったんですが、インクを撃つ=墨を吐くという発想を考えると、イカの案は必ず上位にありましたね(笑)。


イカ

——いろいろと模索をした結果のイカだったんですね。
天野 そうですね。そもそも、当初の直方体だったころは、自分が塗った場所にいれば、真上から見たときにほとんど姿が見えなかったので、インクに潜る機能も必要なかったんです。
阪口 でも、その直方体のままじゃ製品にはできませんから、ちゃんとシェーディング処理をしたりと、グラフィックを豪華にしていったら、自陣の色の上に立っていても見えてしまうようになって。それで、インクに潜れるという機能と、モチーフになるキャラクターを並行して考えていた中で、イカに決まったんです。

——任天堂を代表するイカと言えば、『マリオ』のゲッソーが浮かびますが、既存のIP(知的財産)を使うという選択肢は考えませんでしたか?
野上 大きな声では言えませんが、 じつはゲッソーのことは忘れていました(笑)。もちろん、マリオを使って作るというのも選択肢としてなかったわけではありません。ただ、「このゲームの機能を表すキャラクターは何がいいだろう?」と考えたときに、その機能をきちんと表す新しいキャラクターがいいだろうということで、新たに作ることにしたんです。

——ちなみにこのイカの名前は?
野上 海外ではすでに公表してはいたのですが、名前は“インクリング”です。
天野 とはいえ、日本ではまだイカとしか呼ばれていないですが(苦笑)。