遅くなりました……

 遅くなりました!12月に書こうと思っていたのに1月になってしまった…“御徒町デブ―チョ”第2回目をお送りします! 2015年が始まりました。相変わらず何のつながりもない雑多なネタをいろいろと書いてみたいと思います。デブ―チョの今年の目標は月イチでの投稿です。汗。がんばりますので今年もよろしくお願いいたします!

<欧米の年末商戦で見える日本とのギャップ

 2014年の年末商戦では北米欧州地域でXbox OneとPS4がしのぎを削っていたようですが、ソニーの発表によるとPS4は発売から1年強を経て全世界で1850万台を売り上げたそうです。2014年10月末に1350万台と言っていたので、11月、12月の2ヵ月で500万台を売り上げたということですね。Xbox Oneは2014年11月末現在で1000万台出荷したと発表したきり発表がありませんが、少なくともPS4は過去のPlayStationフォーマット史上最速で売上台数を増やしていることになります。

 日本はというと、PS4ですら未だ100万台を超えることができず(Xbox Oneに至っては5万台程度)、取り残されている感は満載です。実際に海外のメディアでは「日本はスマホでゲームをするのでゲーム専用機はきびしいみたい」などと書かれているのだ。ソニーや任天堂の御膝元なのに……。日本のPS4インストールベース(総売上台数)の5倍くらいの台数を海外は年末商戦で売り上げてしまうわけで、そりゃ日本はゲームしない国って言われてもしょうがないのかなと思ったりして。

 お正月の賀詞交歓会でもやはりPS4(日本ではXbox Oneはなかったことになっているくらい話題がないですね……)に向けて開発している開発会社さんは少ない印象を受けました。となると、またゲーム開発においてHPを稼げない日本の開発現状を思い知らされます。市場がなければハイリスクな高額開発費はかけられないですからね。

 とはいえ、“にわとりと卵”なので日本製のステキなソフトが発売されなければゲーム機自体も日本ユーザーにとって魅力あるものにならないので。海外で通用するIPをお持ちの一部の大手メーカーを除き、日本の開発がコンソールで活躍するにはこのスパイラルを脱しないといけないですね。2月に発売される『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』が日本市場に火をつけてくれるといいなと心から思っています。

<欧米のゲーム業界と日本のゲーム業界

 かつてはE3やgamescomなどの海外のゲーム見本市やショーと東京ゲームショウと比べたときに、もちろん規模的なものやコンテンツ内容の違いはあれ、見せかたや展示物は似ているなと思っていたのですが、最近大きく違うなと感じるようになりました。それはね、モバイルコンテンツの取り扱い。海外では見本市でモバイルゲームをあまりフィーチャーしません。これは見本市にかけるコストが高いこと、そのコストをかけてまでプロモーションをするなら別の方法が正しいと感じられるからなのでしょうね。

 日本ではコンピュータエンターテインメント協会(CESA)とソーシャルゲーム協会(JASGA)が2015年4月1日に合併すると発表されて、大きな“ゲーム”というくくりで協会が大きくなっている通り、コンソールゲームとモバイルゲームの垣根がなくなってきている。もっと言うと、コンソールメーカーがかなり大きな割合でモバイルゲームへと移行していることの象徴とも考えられるよね。

 欧米はというと、もちろん大手のゲームパブリッシャーがモバイル部門を持つことはあってもあくまでも別会社。しかも日本と大きく違うところは別会社を“買う”または“契約する”ことによってコンテンツをモバイルにも提供しているところ。屋台骨は“コンソール”または“PC”で、“移行”ではなく "追加”なのだ。もちろん将来的に“追加”した部門が屋台骨を脅かす、逆転するってことも考えられるけどあくまでも別組織。

 例を挙げると、Electronic Arts(EA)がモバイル向け旧Javaコンテンツ黎明期にその当時の世界一のモバイルコンテンツプロバイダー(CP)だったJamdat社を買収してEA Mobileという部門にしたのは10年前。さらに最近では、スマホ向けゲーム会社のChillingo社やカジュアルゲームのPopcap社を買収したのです。つまり、自社内を大きくするのではなく、すでに大きくなっている組織を追加する方式でIPのマルチプラットフォーム化を行ってきたのだ。

 そういう意味では組織も成り立ちも“違う会社”だったのに、同じ傘下にいるという合理的な発想ですね。日本でもこういうことがないとは言えないけど、独立系のモバイルCPはともかく、大手の老舗ゲームメーカーは社内の人材を異動させてモバイルチームを作っているため社内で切り分けがちゃんとできていないのだ。だからモバイルへの“シフト”という形になり、コンソールが手薄になる。

 日本はコンソール側の力が弱まっているため、モバイル側が圧倒的に強い。それは私が東京ゲームショウで感じた“違い”の源かもしれない。一部有名IPのナンバリングを除き、日本はこのままモバイルコンテンツで食べていく業界になるのかもしれないと思うこともよくありますが、みなさんはいかがですか?

<中国に行ってきた:PS4/PS Vita発売! あれっ?

 前回の記事で中国市場はあなどれない! と書いたのですが、“2015年1月11日にソニーのPS4/PS Vitaが発売される!”という上海のイベントに12月上旬に行ってきました。と、書いている途中でまさかの“発売延期”のニュース! どうやら中国政府から直前にストップをかけられた模様です。

 じつはマイクロソフトもXbox Oneを2014年9月23日に発売する予定でイベントを行うはずでしたが、イベント自体もドタキャン、発売日も結局9月29日になりました。ちなみにドタキャンになったイベントは二度と行われなかったみたいです。ソニーはイベントを実施したのでこんなことはないのかなと思っていたのですが、恐るべし政府の力……。

 そうだ!イベントの話をしようと思っていたのだった。このイベント、私が過去にいろいろ参加したイベントの中でとても“異質”なものでした。もちろんすべて“中国語”で行われたためヘッドフォンから流れる“日本語訳”で聴いていたのですが、すべてのスピーチの最初か最後に「中国政府のおかげで」とか「中国政府のサポートによって」とかが付けられるのです。言う必要があるからつけているのでしょ? 恐るべし政府の力……その2。笑。

 価格も非常に好印象でPS4が2899中国人民元(約55000円)、PS Vitaが1299中国人民元(約17000円)とのこと、会場からも歓声が上がっていました。中国市場限定デザインのPS4/PSVitaの本体も発売予定とのことで、中国にかけるソニーさんの本気度を垣間見ました。やるなぁ、ソニーっ!

 PS4やPS Vita向けのコンテンツの紹介がありましたが、日本製や欧米製のタイトルの発表もあり、大半は中国製のコンテンツの紹介でしたけど、私としては「中国デベロッパーが活躍してこその中国市場進出の成功をもたらす」という持論に合っていたので、とても好感を持ちました。

 が、、、クオリティの差が激しすぎてちょっとびっくりしました。もちろん中国での開発は“これから”なのでまったく問題ないでーす。彼らのクオリティが上がってきたときに欧米はともかく日本は間違いなく脅威にさらされるでしょう。クオリティが上がってくるためには市場を大きくしないといけないので、ソニーさんの頑張りどころですね!

 文句があるとすれば、中国市場を引っ張れる力のある大きなパブリッシャーがほとんど参加していなかったことかな。大手ではパーフェクトワールドがタイトルを発表していましたが、非常にクオリティが高いな~と思っていたら、『Warframe』ですね。カナダのDigital Extreme社(昨年末にパーフェクトワールドが同社を買収していました)の開発タイトルでした。昨年「Activisionを買収するのでは?」と言われていたオンラインゲーム大手Tencentや、スクウェアエニックスの『FF14』を中国で展開する盛大(Shanda)、NetEaseなど、「ここにいなくてはいけないメーカーがいないぞ?」と。

 私の中国ビジネスパートナーの情報によると、これらの大手はソニーがPS4を発売すると発表したころにはものすごく盛り上がっていたが、最近はまったくPS4の話をしなくなったとのこと。ドン引きの理由まではまだ行きついていません。

 9月に発売になったXbox OneもDay 1で「10万台売りました!」という報道の後まったく話を聴かなくなりましたが、実際には10万台出荷しただけで「実際には売れていないのでは?」との憶測も飛んでおり、中国市場の難しさを痛感しますね。

<韓国にも行ってきた! アジアの連携を強化したいと痛感!

 年末に極寒のソウルに行ってきたんですが、韓国ではPCはMMORPG、モバイルではKakaoをプラットフォームとしたネイティブアプリケーションがよく遊ばれていて、日本とはまた違った動きを取っているようです。また、LINEに関しても韓国発祥のプラットフォームにもかかわらず、本国ではあまり認識されていないため、LINEの一番の収益源は日本市場であるところもおもしろいところです。

 ガラケーを中心としていた日本のモバイルゲームはユーザーがスマホに移行しても利益の源泉はWebゲームが優先していて、MobageやGREEプラットフォームはネイティブアプリのプラットフォームとしてはあまり機能していないように見受けられます。したがって、日本のネイティブアプリは直接AppleのApp StoreやGoogle Playに置かれていることが多く、韓国のkakaoプラットフォームの在りかたとは違う感じです。

 ご存じの通り、韓国にはコンソールゲームで遊ぶという概念がほとんどなく、コアゲーマーはPCでMMOに没入していて、カジュアルユーザーはモバイルでKakaoゲームを遊ぶという構造がしっかり成り立っているので、日本からゲームを持っていこうと思ってもなかなか難しいところです。スクウェア・エニックスの『拡散性ミリオンアーサー』などは、現地にすべての運営を任せたところなどから評価を受けていますが、「日本のコンテンツが“まんま”受け入れられるということはありませんので!」と韓国のビジネスパートナーに釘を刺されました…。涙。

 中国はコンソールがどうかはこれからとしても、PCやモバイルのゲーム市場は大きな市場を形成しています。2014年にはゲームユーザー数5.17億人、約185億ドル(約2兆2千万円)の同市場においてPCゲーム市場が全ゲーム市場の70%を超えると言われています。日本同様スマホの波が来ていますので、モバイル向けアプリのシェアも上がって来るものと思われます(実際に2年前まではPCゲーム市場のシェアが90%と言われていました)。

 前述しましたがTencentなどはActivisionを買ってしまおうかという噂が出るほど大きな企業に成長しており、上記中国ゲーム市場の60%近くをこのTencentが稼ぎ出していると言われており、すでに米国Epic Games社、ライオット・ゲームズ社の親会社でもあり、上述した韓国のKakao社、CJゲームスの大株主なのです。

 韓国にしろ、中国にしろ、日本にしろ、同じアジアという括りなのにそれぞれがそれぞれの独自市場を形成しています。強いエネルギーを欧米に向けて発信するべきではないかと感じました。

 政治的な問題はともかく、同じアジアの民としてアジアのコンテンツの融合を図りたいなとあらためて思ったことを〆にしたいと思いまーす。またまた混在した内容の記事を読んでくれてありがとー♪

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【御徒町デブ―チョ】
大手ゲーム会社の海外担当者を歴任後、2007年ゲームビジネスアナリストとして独立。国内外ビジネスシーンの経験を下にゲーム業界の時事ネタに独自の解説をする。