中国限定デザインのプレイステーション4も発売へ
2014年12月11日、中国・メルセデスベンツアリーナにて、ソニー・コンピュータエンタテインメントによるカンファレンスが開催。既報の通り、中国におけるプレイステーション4とプレイステーション Vitaが2015年1月11日に発売されることが明らかにされた。中国でコンシューマービジネスが14年ぶりに解禁され、世界的にも注目が集まっている中国市場。マイクロソフトはひとあし早く、2014年9月29日にXbox Oneを発売。今回満を持してという形でプレイステーションビジネスの中国での船出が正式にアナウンスされた。
カンファレンスの中で、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア デピュティプレジデント(アジア統括)の織田博之氏は「単に製造して販売するだけいうわけではなくて、プレイステーションのエコシステムを作り上げたい」という趣旨の発言をしていたが、発表の内容はまさにそれを裏付けるもので、ハードやソフトは言うにおよばず、ゲームエンジンからクラウドファンディングの取り組みまで盛り込んだ、意欲的なものに。「コンシューマーのビジネスをいちから作り上げる」という気概が感じられるものとなった。つまりひと言でいうと、「SCEは中国市場に本気だ」ということだ。
織田氏のスピーチで極めてキャッチーだったのが、プレイステーション4には“天の時”、“地の利”、“人の輪”があるということ。ちょうど最新のプレイステーション4の発売と重なるタイミングで中国でコンシューマーゲーム機が解禁になったのが“天の時”。中国はいま経済が発展しており、豊富な人材も充実している。ゲーム開発に適した地域だというのが“地の利”。そして、もっとも大切な“人の輪”は、パートナーシップに恵まれていることに代表されるという。そのうえで、織田氏が心がけている点は3つ。“もっとも高い技術を中国に持ち込む”、“国内の開発会社との連携”、“業界のすべての関係者と手を携えてビジネスを展開する”だ。
添田武人氏が強調したのはタイトルラインアップの充実ぶり。『KNACK(ナック)』や『DRIVECLUB(ドライブクラブ)』、『リトルビッグプラネット3』など、ファーストパーティータイトルを中心に、ラインアップの豊富されをアピール。さらに、サードパーティーでは、中国国内26社、海外46社の70社以上が参入していると説明し、「タイプの異なる豊富なタイトルを提供したい」とした。もっとも強調されたのは、中国国内の開発会社のプレイステーションプラットフォームへの注力ぶりだろう。会場では、Suzhou Snail DigitalのMMORPG『King of Wushu』や、Perfect World Entertainmentの『Warframe』などの国内有力メーカーの期待作から、インディーゲームの注目作まで、幅広いラインアップが紹介された。中でも驚きは、インディーゲームタイトルの多さ。とくに「おお!」と思わせられたのが、 記者がChinajoyで取材したS-Gamesの『MIRAGE』やCOCONUT ISLANDの『One Tap Hero』などがお披露目されたこと。“大手からインディーまで、国内メーカーと真剣に向き合っていく”という姿勢を明確に打ち出した。
一方で、「もちろん海外タイトルも大切」と添田氏はコメント。ここで、あまりにもおなじみの『ファイナルファンタジー』の“プレリュード”(クリスタルのテーマ)が流れるや、会場からは期せずして大きな歓声が。続いてスクウェア・エニックスの橋本真司 専務執行役員が登壇し、プレイステーション Vita向けに『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』をリリース予定であることを明らかにした。「スクウェア・エニックスは、PCやスマートフォンの市場で中国市場に進出し、大きなご支持をいただいております。いよいよコンシューマーで展開ということで、“このときがきた”ということで感無量です。『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』は、これまでの“リマスター”という概念を打ち破る作品です」と、力強く説明した。ちなみに、同作の移植を手掛けるのは、中国に本社を構えるVirtuos社(⇒関連記事はこちら)。これも一種の“凱旋”なのかな……と思わせた。スクウェア・エニックスの中国での展開はこれだけに留まらない。「世界初公開」となる、プレイステーション4版『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』を発表(⇒関連記事はこちら)、会場を大いに沸かせた。
ユービーアイソフトのプレゼンに続き、海外メーカーとして紹介されたのが、コーエーテクモゲームス。プレイステーション Vita用『討鬼伝極』やプレイステーション4、プレイステーション Vita版『真・三国無双7 with 猛将伝』がお披露目された。登壇した『討鬼伝極』森中隆プロデューサーは「プレイしたユーザーさんからは“感動した”という声をいただいています。中国の皆さんにもぜひプレイしていただきたいです。プレイステーション Vitaだからこそできる、手に汗を握る最大4人でのマルチプレイバトルも楽しんでいただきたいです」と説明。『真・三国無双7 with 猛将伝』のプロデューサーである鈴木亮浩プロデューサーは「この『真・三国無双』シリーズも来年15周年を迎えます。この記念すべきときに、三国志の舞台である中国でタイトルを準備できて、非常に感慨深いです」とのことだ。
なお、添田氏によると、今回のカンファレンスにあわせて紹介するプレイステーション4向けソフトは中国国内が18タイトル、海外タイトルが23タイトル、プレイステーション Vitaに関しては、中国国内が20タイトル、海外タイトルが16本とのこと。これらのタイトルに関しては、中国政府の許認可をすでに得ており、今後順次中国市場向けに投入予定とのことだ。「中国市場の発展にともない、よりおもしろいタイトルが出てくるだろうと思います」と添田氏。
カンファレンスの最後に、中国のユーザーがもっとも知りたかったであろうと思われる、プレイステーション4とプレイステーション Vitaの発売日および価格が発表。2015年1月11日に、プレイステーション4は2899元(約55930円)、プレイステーション Vitaは1299元(約25060円)であることがアナウンスされた。価格が発表されるや、会場からは大きな歓声が湧いたところを見ると、中国ユーザーにとっても納得の価格と言えそうだ。先行で発売されたXbox Oneの通常版が、3699元(約71360円)であることからみても、極めて戦略的な価格と言えるだろう。
さらなるSCEの中国市場への注力ぶりを見せつけたのが、中国市場限定デザインとなるプレイステーション4と、プレイステーション Vita専用ポーチをリリースすること。黒字に金の龍のデザインが印象的なこちらのモデルは、期間限定で中国限定でリリースされるとのことで、中国ユーザーに大いに訴求するのではと思われる。今後のプレイステーションの中国でのビジネス展開に注目が集まる。