スタジオツアーで開発現場も目撃

 4人のハンターと1体のモンスターが激突する、2K Gamesのマルチプレイアクションシューティング『Evolve』。今回本誌では、開発元Turtle Rock Studiosで行われたメディアツアーに参加し、初公開となるモードなどを遊んできた。モード解説については別記事ですでにお届けしたが、こちらではスタジオ共同創設者にしてクリエイティブディレクターを務めるPhil Robb氏へのインタビューと、スタジオの様子をまとめてお伝えする。

Evacモードではカジュアルにも楽しめる

『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_05
▲「それじゃ2枚目いきまーす」って言ったら突然ポーズを取ってくれた、話のわかる男です! なおスタジオ内にデカいトカゲを飼ってることが判明。(スタジオ共同創設者なので超偉い)

――前回のプレスイベントでHuntモードをプレイした時は、なぜ最後はジェネレーターをめぐって戦うのかがわからなかったんです。でも今回Evacuationモードを通してプレイして、ようやく理解する事が出来ました。大きな戦いの一部を描いていたんですね。
(※編注:Evacuationモードは5日間の人類脱出に向けた戦いが描かれ、個々のミッションはそれに向けてハンターがダムのジェネレーターを守ったり、襲撃された開拓民を救出しているという位置づけになっている)
Phil Robb そうだね、関連付けるとゲーム全体を理解してもらえると思うよ。

――Evacuationモードがまず最初にあったんでしょうか? それとも新たなプランが生まれてきて、それを統合するために作ったんでしょうか?
Robb Evacuationモードはなるべく多くのゲームファンに楽しんでもらうために用意したんだ。競争力のあるゲーム体験を求めるならHuntモードがオススメだけど、Evacuationモードは楽しくキャンペーンモードをプレイしたいゲームファン向けだ。
 “カジュアルゲーマー”向けでこそないけど、Huntモードに比べるとよりカジュアルにゲームを楽しめる内容なんだ。(スタジオが『Evolve』以前に手掛けた)『レフト 4 デッド』のように、オンラインプレイに対して多くのゲームファンに興味を持ってもらえると思う。『レフト 4 デッド』では彼氏/彼女や夫/妻のコンビネーションが多く見られたからね。それはカジュアルに、すぐに協力プレイに参加出来たからかもしれない。Evacuationモードでも同様のカジュアルさが体験できると思う。モンスターをAIとして設定して、ストレス無くフレンドと一緒にカジュアルなオンライン対戦を楽しむ事もできるよ。

――さっきのテストプレイでは僕のヘッドセットにマイクがついていなかったので、Evacuationのラウンドの間にモンスターとハンター同士で会話が出来るのか確認する事が出来ませんでした。口頭で直接「人間滅びろ!」とか言ってワイワイやってたんですけど、オンラインではどうですか?
Robb マイクを繋げていれば、もちろんマッチ中はハンター同士で会話できるし、ロビーではモンスターとハンター間で会話する事もできる。マッチ中はチームメートと会話しながら戦略を共有できて、マッチ終了後には君らがやったように、ハンターとモンスターと感想を共有する事ができるんだ。

『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_01
『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_02
▲人類サイドの状況やマップ&ルール投票が行われるラウンド間。適度に煽り合うと次のラウンドが楽しくなります。(今回のプレスツアーではヨーロッパメディアと楽しくやりあった)

αテストからバランスはさらに良くなる

『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_03

――Big Alphaテストの反応はいかがでしたか?
Robb 反応は良かった。Big Alphaを体験してくれた多くのユーザーから建設的なフィードバックを得る事ができたよ。ローンチの時では無く、アルファテストで様々な課題を指摘してもらう事ができて本当に良かった。皆さんの貴重な意見を元に製品版を最高のクオリティーで仕上げたいし、1月のベータテストでもより良いものを提供したいと考えている。

――フィードバックを元に改良したい事はありますか?
Robb 基本的にはゲームバランスに影響を与えない程度の調整や変更になるかと思う。PS4版では明らかな問題が起きてしまったけど、ああいったことはないように進めている。それと多くのユーザーには見えていなかった小さな問題なども、スタッフが発見してすぐに解決する事ができた。ローンチの時に同じような問題が起きても数時間で解決する事ができると思う。

――統計上、ハンターの方が勝っていましたが、これについてバランス調整はしますか?
Robb 統計では57%がハンターの勝利だったね。内部データに基づいてバランスを調整していたけど、Big Alphaテストの結果には満足している。マッチメイキングがうまく機能しなかった事もあって、若干ハンターに有利な戦いになっていたんじゃないかと考えているんだ。
 マッチメイキングの際には、役割の好みとスキルレベルのバランスを取る必要がある。例えば何人かはハンタークラスの好みとしてトラッパーを選択していた。そのトラッパーが初心者だとして、マッチメイキングの際にレベル30の上級者とマッチングしてしまうと、求められてる能力が十分では無く、ゲームに溶け込む事ができないかもしれない。そのような問題が起こらないためにも、役割の好みとスキルレベルのバランスを取るようにしたいね。

練習方法、観戦モード……。

――Evacuationモードでモンスターをプレイした時に、ラウンドごとに選べるにも関わらず、作戦がうまくいった「いい思いができた」モンスターを選びがちでした。慣れてないものも含めて、いろんなモンスターやハンターを試させるように促進する仕組みはなにかありますか?
Robb もちろん。カスタムゲームを設定してシングルプレイでスタートすれば、選択したキャラクターをマスターする事ができる。例えば新たなモンスターをアンロックして、すぐにオンラインで使うのが不安であれば、まずはEvacuationモードなどでソロのカスタムゲームを立ち上げて、モンスターの使い方を覚えることをオススメするよ。AIが相手なら伸び伸びとプレイできるから、じっくりと覚えられる。

――特に新しいモンスターを使う時はトレーニングが必要ですよね。モンスターだと助けてくれる仲間もいないから、いきなり熟練のハンター4人を相手にするのはちょっとキツそうで。
Robb その通り。Evacuationモードは絶好のトレーニング場だと思う。

――ゲームのストリーミングをサポートするのに観戦モードの予定はありますか?
Robb ローンチ時点ではないけど、いずれ取り入れる予定だ。

――それはPC、もしくはコンソール版で?
Robb PC版では間違いなく導入されるだろう。他はちょっと確認しないとわからない。eスポーツ向けの要素のように、まずは様子を見てみて、要望の声が高ければ前向きに検討していく形になると思う。少なくとも興味がある要素であるのは間違いないね。

――観戦モードを使って配信して、モンスターとハンターを切り替えながら、「さぁこっちではモンスターが成長を狙っているが、ハンターの様子はどうだ?」ってスイッチできたら楽しそうですよね。ところで本日見せて頂いた内容は最終形態に近いものでしょうか?
Robb そうだね。モンスター以外はほとんど最終形態に近いと思う。まだ発表していないマップがいくつかあるけども。

――個人的にお気に入りのハンターはいますか?
Robb 個人的にはHydeを気に入っている。大きくて迫力があって、ガイ・リッチーの映画のような……「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」などに登場する人物を思わせるんだ。私もシンプルで素直で、とにかく攻撃に特化するAssaultの気質を持ってるかも知れないね。2番目にお気に入りなのはBucket。同じ理由だけど、非常にクールなキャラクターで、ドローンを設置したりする彼のプレイスタイルが好きなんだ。

『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_04
▲公式Facebookページに貼られていた未知のモンスターの名前募集用の画像。新たなモンスターを期待してよさそうだ。

キャラクターの設計方法、モードの設計思想……。

――キャラクターは能力だけでなく、性格などの個性もこだわっているようですね。キャラクターデザインの際にはその辺りも重視したのでしょうか?
Robb その通り。自分と重ね合せるキャラクターを選んで欲しいね。コスプレも是非! 顔(個性)の無いキャラクターよりも、独特でクールなキャラクターの方がいいよね。様々な性格を持ったキャラクターの方がゲームを楽しむ事ができるからそうしているんだ。

――キャラクターはアートから作っているんでしょうか、それともなにか武器や能力などの「おもちゃ」を考えてからそれに合ったように作り込んでいっているんでしょうか?
Robb キャラクターを制作する前には、まず大まかなテーマとアイデアをまとめるんだ。例えば大型ボムを使えるキャラクターなら、爆弾に関連したテーマに基づいて原型をリサーチして、「どんな人物が爆弾を好むのか?」とか、それに合った人物像を探し出していくんだ。爆弾のようにうるさくて声が大きく、爆発させるのが好きな人物かもしれないね。そこからビジュアルを制作しはじめる。
 『レフト 4 デッド』のキャラクターを制作した時は、描く前にキャラクターの背景ストーリーを考えていた。『Evolve』でも同様なプロセスを踏んでいるよ。例えば電気を使いこなすMarkovの場合、テスラコイルを発明したニコラ・テスラの事をイメージして、ロジア人っぽいキャラクターにした。そしてMarkovはAssaultクラスとして位置づけているから、そこからガタイをよくするといった感じだね。

――『レフト 4 デッド』では、本当にハードコアなプレイヤーは「そこを出たらあの方角をチェックするのが当たり前だろ!」って感じにガチガチにやり込むんで、それはちょっとついていけないなと思ってたんです。今回はそこまでタイトじゃなくてもプレイできそうな感じですが、そこは意識されたんでしょうか?
Robb うーん、『レフト 4 デッド』と比較してより競争的な時もあるし、そうでない時もあるというのが正しい。eスポーツのような競争性を求めるユーザーに対してもさまざまなモードを用意しているし、その逆で、カジュアルに楽しみたいユーザーに対してはEvacuationモードがあるといった感じかな。

――eスポーツのような公平性で言うと、モンスターを交代で操作するようなモードはありますか?
Robb ハンターの各クラスとモンスターを交代で操作する総当り戦で楽しめるようにモードを設定できるよ。それを選べば、5人全員でプレイしている限り、交代でモンスターを操作する事ができる。

DLCでファンを分断しない

――先ほど将来的にアップデートを予定しているとお話されていましたが、DLCも含めて、どのようなアップデートを予定していますか?
Robb 「ゲーマーとして何を求めるのか?」、「ゲーマーとして何を評価するのか?」など、ゲーマーの観点から発売後のプランを考えている。まずはコミュニティーを尊重する必要があると考えているんだ。
 だからマップは無償で提供する事にした。過去には、DLCマップを購入しなかったから「はい、あなたはそのマップを持ってないので」と対戦から締め出されるようなこともあっただろう。それはひどいと思うんだ。本作ではその問題を解消するために、全てのマップを無償で提供する事にした。
 一方で新たなキャラクターに関しては、購入していなくても、そのキャラクターを購入したユーザーと一緒にプレイする事はできる。例えば、リッチーというキャラクターが配信されたとしよう。私は気に入ったのでリッチーを購入した。君はあまり気に入らなかったのでリッチーを購入しなかった。だけどそれでも私と一緒にプレイできるし、君がモンスターとして私のリッチーを叩き潰すこともできる。同じキャラクターを買わなくても分断されないんだ。
 それと、AIが操作しているキャラクターに切り替えられるホットスワップ機能を利用すれば、テストすることさえできる。例えば私がリッチーでマッチに入って、ちょっと席を外さなきゃいけなくなったとする。そうするとAIがプレイするわけだけど、他のプレイヤーがホットスワップでリッチ―のAIと交代することもできるんだ。そうして試して、気に入れば買えばいいし、「いや自分は正しかった、リッチー好きじゃないわ」と思ったら、それもまた確認できて良かったねということだ。
(編注:インタビューに同席している広報担当者の名前がリッチーなので、質問に答えながら弄り倒している)

――購入する必要は無いが、そのキャラクターを操作する方法もあるというのは面白いですね。
Robb それ以外に、eスポーツの要素もどのように取り入れられるのか検討したいと考えているよ。ユーザーはそのような要素を求めてるのか? どのようにサポートすべきなのか? 基本的な機能などはすでに取り入れる予定だけど、ユーザーの要求に合わせて調整したい。例えばコミュニティーがリッチーのキャラクターが強すぎると感じてるのであれば、数値を下げる事も考えないとね。

――追加モードは?
Robb 話はしているけど、まだ未定だ。実際にモードをやり込まないと取り入れるべきかどうか判断する事ができないけど、まだその段階まで来てないからね。まずはメインとなる部分を仕上げるのに注力を注いでいる。でもチーム内でどのようなモードが魅力なのか、色んなアイデア出しはしているよ。

――さらに新たなモンスターを期待出来ますか?
Robb もちろん。予約特典として、ダウンロードコンテンツとして提供する最初のモンスターを無料で入手できる。まだ詳細はお伝えできないけど、いくつかのモンスターのアイデア出しもしているんだ。

――カイジュー系ですか?
Robb そうだね……ところで、カイジューとモンスターって同じ? それとも具体的な特徴があるの?

――モンスターに比べてカイジューの方が大きくて、超越的な強さがあるイメージですね。ステージ3に進化したゴライアスは大体カイジューじゃないかと。では最後に、日本のゲーマーはモンスターを倒すのが好きだし、シューターが好きな人も増えてきました。何かメッセージをお願い出来ますか?
Robb 是非皆さんにゲームを体験してもらって、楽しんで欲しいね。今までにない最高のゲーム体験を得られるように仕上げるよ。『Evolve』ならではのモンスター狩りを存分に楽しんでくれ。

マルチプレイゲームを効率的に開発し、コミュニティマネージメントをするためのオフィス作り

『Evolve』新マップはすべて無料提供でコミュニティを分断せず。DLC方針や観戦者モードについてインタビューで直撃【TRS Tour】_06

 スタジオ自体は、南カリフォルニアの、ロサンゼルスに近いオレンジ郡にある。
 割と周囲に何もないオフィスビルが固まったエリアの中の一棟の一角を2階に渡って使っており、メインの開発チームは下の階で、上階はQAチームと、サーバー周りを担当するライブチーム、そしてコミュニティマネージメントのチームなど。

 とにかくオープンな作りで、会議室、電話会議などに使う部屋(フォーンルーム)、録音を行うオーディオルームなどを除くと、部屋の仕切りもなく、フロアーに机がいくつかの島に分けてあるといった感じ。これは意図的な物で、スタッフの交流や議論を活発にしてもらうためだという。スタッフの机は配線を外すと一気に移動できるようになっていて、配置換えなども簡単そう。
 開発の階のフロアーの中央にはキッチンがあり、コーヒーを飲んだりしながら会話をしたり、ボードゲームをして親交を深められるようになっている。

 また個人的に面白かったのが、ストリーミング用の部屋の存在。コミュニティマネージャーの席の近くにあり、合成用のグリーンバックなども完備。すぐそばにはモンスターとハンターの各クラス別のプレイシートもあって、要はここから直接配信ができるのだ。
 さらに、コミュニティマネージャーの席からライブチームの集まるスペースも近く、問題が起きても即座に把握可能。開発会社が自らコミュニティマネージメントを行ってファンコミュニティに密着し、フィードバックを即座に行っていくという、マルチプレイベースのゲームを開発してきたTurtle Rockなら特に求められるものが詰まっている一角だと感じた。