UBIDAY2014のために来日したディレクターに聞く

『ファークライ4』ファークライ4エクスペリエンス ティザートレーラー

 先日、キラットの幻想的な側面を疑似体験できるWebサイト“ファークライ4エクスペリエンス”を紹介するトレーラー映像が公開されたばかりの『ファークライ4』。2014年11月2日に開催されたユービーアイソフト日本法人の独自イベント“UBIDAY2014”の“『ファークライ4』スペシャルライブデモステージ”に登壇したプレゼンテーションディレクターのリアム・ウォン氏へのインタビューを行ったので、その模様を掲載しよう。

 まず目を引くのがリアム氏の肩書きである。プレゼンテーションディレクターとは、いったい何をするポジションなのか。最初にこの質問を投げかけたところ、興味深い返答が飛び出した。

 そしてそこから話は広がり、ユービーアイソフトのもの作りの姿勢から、『ファークライ』シリーズにおけるオープンワールドの哲学まで至る。いずれも興味がそそられる内容となっているので、『ファークライ』シリーズのファン、そして『ファークライ4』が気になっている方にはぜひ読んでほしい。

 ちなみに、個人的に驚いたのが、リアム氏がインタビュー中にさらりと口にした「『ファークライ4』の舞台としてヒマラヤ山脈のふもとが選ばれた理由は、開発者のひとりがゾウに乗りたかったから」というくだり。どうやら、とんでもないゾウ推しのスタッフがいる模様。今回のインタビューは時間が限られていたため、開発陣のゾウへの熱いこだわりを聞けなかったのが残念である。

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【開発者インタビュー】『ファークライ4』の舞台は“ゾウに乗れる場所”の中から選ばれた!? 来日中のディレクターに直撃_01
ユービーアイソフト モントリオールスタジオ
『ファークライ4』 プレゼンテーションディレクター
リアム・ウォン(LIAM WONG)

――リアムさんは『ファークライ4』の“プレゼンテーションディレクター”とのことですが、具体的にはどのようなポジションなのですか?

リアム・ウォン氏(以下、リアム) 確かにあまり見かけませんね。ひょっとしたら、このような立場を用意しているのはユービーアイソフトだけかもしれません(笑)。しかし、私としては重要なポジションだと思っています。なぜかと言うと、消費者が実際にゲームを手に取るまでは、Webサイトや雑誌などのメディアや、トレーラー映像、ポスターなどを目にすることになりますが、それらを目にしたときに、ひと目で『ファークライ』シリーズの新作だとわかるようにイメージを統一することが大切だと考えているからです。私はプレゼンテーションディレクターとして、ゲームのロゴやトレーラー映像、ポスターなどの統一を取り、ユーザーの第一印象をコントロールする仕事をしています。本作の情報を目にした人が実際にゲームをプレイするまでに、体験が1本のラインでつながっている感覚です。

――なるほど。確かに『ファークライ4』は、お披露目の“つかみの部分”が見事だった思います。エキゾチックな舞台といい、強烈な個性を持った悪役といい、インパクトが抜群でしたね。

リアム 私はプレゼンテーションディレクターであり、ゲーム開発の現場に立つクリエイターでもあります。現場ではおもにゲームの静止画のデザインをまとめる役割を担当していて、本作のロゴやポスターは私がデザインしたものです。また、ゲーム画面のユーザーインターフェースを考えるのも私の仕事です。ユーザーにどうしたらわかりやすく“体験”を伝えられるか、日々頭を悩ませています。

ファークライ4 パガン・ミントレーラー

――ゲームのプロモーションと言うと、専門のPRチームが担当することが多いと思いますが、その業務を開発者であるリアムさんご自身がしているのが興味深いですね。

リアム ユービーアイソフトの中でもゲームごとに宣伝のやりかたが違うので、どれがベストというわけではありませんが、『ファークライ4』の場合は先ほども言ったように体験をイメージ通りに伝えることが重要だと考えています。弊社は多国籍企業でPRチームの規模も大きく、当然ながらすべての作業を自分ひとりでこなすことはできません。ですので、なるべくイメージを統一するために、ビジュアルの指針となるスタイルガイドを作成したりしています。

――PRにおける『ファークライ4』のコンセプトは何ですか?

リアム まずひとつは色です。鮮やかで彩度の高い世界を表現しました。多くのFPSはブラウンやモノクロなどが多いのですが、『ファークライ』シリーズはこれまでアフリカや南の島など、色彩豊かなステージが特徴的だったので、本作ではそれをさらに推し進めています。そしてふたつ目が開放感。本シリーズはオープンワールドのゲームで、ユーザーの皆さんが楽しんでいるのは自由度の高さだったりします。ポスターやキーアートなどで空をバックにして大きな広がりを見せるようにしました。ロゴにしても、境界線をなるべく減らすことで、枠組みがなく広がっていくイメージを表現しました。それと、シリーズの影の主役とも言える動物たちにもスポットを当てていて、いろいろなアートにゾウや虎などのモチーフが描かれています。

【開発者インタビュー】『ファークライ4』の舞台は“ゾウに乗れる場所”の中から選ばれた!? 来日中のディレクターに直撃_02

――なるほど。それらに加えてもうひとつ欠かせないのが、本シリーズの強烈なアイコンである悪役ですよね。『ファークライ4』の敵キャラクターであるパガン・ミンの扱いをどのように考えていますか?

リアム そうですね。前作でユーザーからも反応がよかったのが、バースという敵キャラクターでした。ですので、今回もまた皆さんが喜んでくれる悪役を作りたいという思いがあります。『ファークライ3』の続編を作るにあたって、もっとも簡単なアイデアは、南の島を舞台にして再びバースを登場させることだと思います(笑)。800万本のセールスを記録した作品をベースにゲームを作れば、そこそこの売上を狙えたでしょう。しかし、そんなことをしたらシリーズ作品を楽しみにしているユーザーの皆さんを裏切ることになります。前回と同じことをしても意味がないので、今度はまったく違うキャラクターを生み出そうと思ったんです。そうやってできたのが、パガン・ミンというキャラクターでした。彼は直情的なバースとは異なる頭脳派でして、頭を使っていろいろな裏工作をすることで、民衆をコントロールしています。彼の最大の特徴は二面性です。パガン・ミンが初登場するとき、主人公に対して「よく帰ってきた」と友好的な態度で歓迎するのですが、その直後に命令に従わなかった部下を万年筆で刺殺するという凶暴性を見せるのです。プレイヤーからすると「コイツはいったい何なんだ!?」と疑問に思うでしょうね。本作のプロモーションでは、その最初の驚きを強調して伝えていきたいと考えています。

――個人的には、バースが魅力的に感じたのは、粗野で乱暴ではあるけれど自分の美学・哲学を持っていたからだと思っています。パガン・ミンも芯のあるキャラクターだと期待してもいいでしょうか?

リアム 『ファークライ4』の作品に評価そのものにつながるメインの悪役なので、我々としてもいろいろと考えながら作っています。ぜひ期待してください! パガン・ミンの説明を、もう少しつけ加えてもいいですか? 彼は香港で生まれた人物で、ハーフであることを理由に幼少期から父親に抑圧されていました。現在のパガン・ミンが金髪にピンクのスーツという派手な出で立ちをしているのは、そのときの芽生えた反抗心からです。また、父親からあらゆることを否定されながら育ったので、権力欲がひと一倍強くなりました。だからこそキラットを武力で支配して、王様のように振る舞って何でも思い通りにしようとしています。最初に公開したトレーラー映像でも、命令に従わないキャラクターを殺害したりしていますよね? 彼は支配欲が強すぎるために常軌を逸した行動を取るのです。

――本作の物語のメインは、やはりパガン・ミンとの対決なのでしょうか?

リアム そうですね。パッケージにも登場する悪役なので、パガン・ミンとの対決が作品の大きなテーマとなるでしょう。ただ、彼の手下との戦いもたくさんあります。それに加えてキラットの解放軍であるゴールデン・パスも登場するのです。大きな視点で見ると主人公のエイジェイ対パガン・ミンなのですが、そこにさまざまな選択肢を加えたストーリーとなっています。