巨大パブリッシャー誕生前夜、経営トップは気負わぬ様子
2014年9月30日、東京・ニコファーレにおいて、KADOKAWA・DWANGO経営統合記念会見が開催された。
2014年5月14日に発表された通り、2014年10月1日より、KADOKAWAとドワンゴは共同株式移転を実施し、両者の完全親会社“KADOKAWA・DWANGO”を設立する(詳細は→<こちら>)。今回の会見では、KADOKAWA・DWANGOのスタートを翌日に控えて、経営陣トップの意気込みや、経営統合を記念したキャンペーン企画などが説明された。
ニコニコ生放送以来の大型新サービスとは……?
映像に続いて、ドワンゴ代表取締役会長/KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長の川上量生氏と、KADOKAWA取締役相談役/KADOKAWA・DWANGO代表取締役社長の佐藤辰男氏が登壇。司会者からの質問に答える形で、経営統合にあたっての考えを語っていった。
まず経営統合を明日に控えての決意、抱負について問われると、「それほど実感はないです」(川上氏)、「明日からは社長みたいな格好ではなく、楽な服装にしようかなと」(佐藤氏)と、気負わないコメント。ただし佐藤氏は、KADOKAWA側の立場から、「今回の統合は、デジタルな時代に適合していくための統合。そのためにやることはシンプルだが、たいへんだと思っている」との考えを語った。
つぎに経営統合発表から約3ヵ月半のあいだで苦労した点などについては、佐藤氏は、「基本的に新しい事業の話をしているので、楽しいことばかりです」とコメント。ビジネスモデルや、従業員の年齢など、相違点を挙げればきりがない両社だが、「同じところを目指して、違いを楽しんでいます」(佐藤氏)とのことだった。
さらに、KADOKAWA・DWANGOの可能性について問われた川上氏は、「何をやるのか、まだあんまり考えていなくて。構想としてはあっても、まだ話せる段階ではないです」との回答。ただしここで、「ニコニコ動画はイベントばかりやっていて、サービスをろくにバージョンアップしてこなかったのですが、年内に、久々に。ニコニコ生放送以来の大型新サービス“ニコキャス”を開始する予定です」とサプライズ発表。詳細は不明ながら、年内スタート予定とのことなので、続報を楽しみにしたい。
最後に、今回の経営統合を記念して開催中の“ニコニコカドカワ祭り”の狙いについて、佐藤氏が説明した(ニコニコカドカワ祭りの詳細は→<こちら>)。
先日発表された“本屋さんに行くといいことザクザクフェア!”(詳細は→<こちら>)については、「4000万人のニコニコユーザー、とくに中高生に本屋に行ってもらいたい」(佐藤氏)という狙いがあるとのこと。ある調査によると、小学生は月平均10冊の本を読んでいるが、中学生になると月平均4冊に、高校生になると月平均2冊になる、というデータがあるのだそうだ。またKADOKAWAの調査では、1ヵ月に一度も書店で本を購入しなかった人の割合は、50%にも上るのだという。
ただし、佐藤氏は、ニコニコに代表されるネットの世界を中心に遊んでいるように見える若い世代も、“ニコニコ超会議”などのリアルイベントを積極的に楽しんでいる点を指摘しつつ、本キャンペーンが、そうした若い人たちに本屋に行ってもらいたいという思いを込めたキャンペーンであると説明。そして「今回のキャンペーンは、結婚式で言えばケーキの入刀のような、いっしょにやる最初の仕事になります。ぜひ応援してほしい」(佐藤氏)と呼びかけた。
“ニコニコカドカワ祭り”に新キャンペーンが続々!
続いて、KADOKAWA取締役の横沢隆氏、ニワンゴ代表取締役の杉本誠司氏から、“ニコニコカドカワ祭り”の新たなキャンペーンについての発表が行われた。
続いて、KADOKAWA取締役の横沢隆氏、ニワンゴ代表取締役の杉本誠司氏から、“ニコニコカドカワ祭り”の新たなキャンペーンについての発表が行われた。
ひとつ目は、“KADOKAWA dwango統合記念キャンペーン ニコニコカドカワ祭り BOOK☆WALKERでも、いいことザクザク”。これは、総合電子書籍ストア“BOOK☆WALKER”において、KADOKAWAの電子書籍を50%OFFで購入できるというもの(一部対象外作品あり)。キャンペーンに合わせて、特設サイトでは、多くの著者・イラストレーターからの直筆メッセージやイラスト、お祝いのコメントなどが公開されている。
本キャンペーンの詳細は<こちら>で確認してほしい。
ふたつ目の発表は、ニコニコの新たなイベント“ニコニコ書店会議”だ。これは全国の書店店頭で、ニコニコで人気の“歌ってみた”、“ゲーム実況”などのユーザー参加型企画を、開催する各書店ごとにアレンジしながら実施するというもの。また、会場ではKADOKAWA作品に関連した作家によるサイン会やトークショウも開催される予定で、イベントの模様は、ニコニコ生放送で生中継される。
第1回は2014年11月9日に、鳥取県米子市本の学校今井ブックセンターにて開催予定。『甘城ブリリアントパーク』とコラボレーションし、作者の賀東招二氏サイン会が開催される。
ニコニコ書店会議の詳細は<こちら>。
両社の相乗効果はどんな形で現れる?
最後に、質疑応答が行われた。全体に検討中、構想中の案件が多いようで、あまり具体的な回答が得られない質問が多かったが、とくに注目すべきものについてまとめておこう。
――今回の経営統合で、どんな相乗効果が得られると考えているか、改めて教えてほしい。
佐藤氏 KADOKAWAがDWANGOににたらすもの、DWANGOがKADOKAWAにもたらすもの、そして両社の真ん中でどんな事業をやるか、という3つの視点がある。たとえばゲーム事業については、両社合わせて相当な売上になる事業を持っているので、いかに新しい作品を生み出していくか。ゲーム情報ポータルについても、“真ん中”でやっていこうと準備をしている。
KADOKAWAがDWANGOにもたらすのは、編集力。DWANGOが生み出しているUGCコンテンツに編集力が加わると、さらによくなると思う。またネット広告はDWANGOもまだまだこれからなので、リアルな営業力も、KADOKAWAが求められているものだ。
DWANGOがKADOKAWAにもたらすものは、電子書籍や映像配信などのコンテンツを、タブレットやスマホで見ること。これはKADOKAWAも懸命にやってきたし、電子書籍事業もプラスになってきてはいるが、ここからさらに進むには、DWANGOのエンジニアリング力が必要になると考えている。
――そのエンジニアリング力について、2014年5月の発表会見では、エンジニアと編集者が机を並べることの効果が語られていたが、現状の進捗、今後の展望を教えてほしい。
佐藤氏 まさにいくつかの編集部が準備を進めている。12月までに、DWANGOの開発部隊と同じフロアで仕事をする環境を作る。
――冒頭の映像で川上氏は、合併してすぐに結果を出すと言っていたが。どんな合併効果を出す構想なのか。
川上氏 統合効果をすぐに出すつもりはない。ただKADOKAWAもDWANGOも、どちらも来年に向けていろいろ隠し球を持っていて、それぞれがんばるので、来年は結果が出ると思う。そこに合併が必要だったかどうかはわからないが。
――ニコニコ書店会議は、統合記念キャンペーンの一環なのか、それとも定期化を想定しているのか。
川上氏 基本はキャンペーンの一環と考えているが、結果が良ければ今後もやっていきたい。
――書店でイベントをやることの狙いとは。
佐藤氏 地域に密着した書店さんにがんばっていただきたいということ。たとえば今井書店さんは、非常に努力されて、地域に根ざした展開をされている。そういった書店さんはたくさんあるので、ニコニコを通じてご紹介したいという思いがある。