SCEJA、Q-Games共同開発の注目タイトルに迫る!
2014年9月1日に行われた“SCEJA Press Conference 2014”で(⇒記事はこちら)、2015年内のリリース(ダウンロード専売)とPS Plus加入者対象のクローズドαテストの実施が発表されたプレイステーション4用ゲーム『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』。同作は、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)と開発力に定評のあるQ-Gamesの協同開発による意欲作だ。
発表に先立って行われたメディア向け説明会では、Q-Games代表であり本作のディレクターを務めるディラン・カスバート氏と、リードゲームデザイナーの前田氏が、開発バージョンの実機でのプレイを交えながらゲーム内容を紹介した。
まずは、gamescom 2014で紹介された、『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』のアナウンストレーラーを改めてお届けしよう。
プレイステーション4の性能を生かしたグラフィック世界
まず目を引くのが、人形のような造形のキャラクターや、シンプルさの中に重苦しさが漂うビジュアル世界。設定によると“1960年代のソ連の実験が失敗し、地球上から自然・文明・あらゆる生命体が地球上から消え去った、いまとは違う歴史を歩んだ未来世界”とのことで、ディラン氏によれば「プレイステーション4の特徴的な機能である“シェア(共有)”をキーワードにして生まれた、冷戦下の社会主義国家のパロディ」とのこと。キャラクター造形に関しては、東欧の伝統的な表現手段のひとつである人形劇のイメージを再現したという。ここに“社会主義国家が目指した理想はおとぎ話的世界の中でしか実現不可能”とのニュアンスを感じとってしまうのは、少々穿ち過ぎだろうか。
独特のビジュアル世界を引き立てるのが、プレイステーション4のマシン性能を生かした自然かつ動的なライティング。本作品で初めて採用される技術“レイヤード・ボクセル・コーン・ライティング”は、プレイステーション4用ゲームソフトのグラフィック表現力をいっそう高めるものとして注目される。
シングルゲーム感覚で遊べる新感覚なオンラインマルチプレイゲーム
ゲームの目的は、所属する街の一員としてその街を運営・発展させること。街の近くに時折り浮上する島で資源を獲得し、それを元に建造物や各種アイテムを作ることでより多くの行動が可能となっていく。ときには外敵“イズベルグ”の侵攻から街を守るべく、武器を手に取って戦うことも必要となる。
本作を端的にあらわすと“サンドボックス型フィールドを舞台にしたオンライン接続環境必須のアクションゲーム”だが、実際のプレイ感覚はシングルプレイに限りなく近くなるとのこと。ひとつの街とそれに対応する島々は複数のプレイヤー(※規模は未定)の共同空間としてネットワーク上に存在し、資源や建造物の状態、各プレイヤーが世界に対して起こしたさまざまなアクションの結果が共有される。本作の特徴は、自分の行動に関連したアクションを同時に実行している周辺人物ぶんしか、ほかのプレイヤーキャラクターが可視化されない点。言い換えれば、自分が身近に感じ、関わりを持てる相手を自分の行動によって“選択”できるということだ。これは、すべてが見え過ぎることでゲーム世界外のコミュニケーションが煩わしくなるオンラインゲームの短所の解決策のひとつであるとともに、“世界のありようは自分次第で変化する”という人生観のインスタントな疑似体験の機会でもある。嫌なら見るな、見たいものだけ見ていたい……という考えかたは物質的・時間的制約が大きい現実世界ではなかなか飲み込みにくいものだが、こうした形でなら、その本質が案外すんなり入ってくるのかもしれない。
そうして顔見知りになり、親近感を覚えるほかのプレイヤーとのパーソナルなコミュニケーション手段については、現時点では詳しく明かされなかった。ディラン氏によれば「ゲーム世界になじんた形でのおもしろい方法を用意しています」とのことなので、続報に期待しよう。
見た目はマルキシズム、実際は民主主義的なゲーム世界
個々のプレイヤーの思い思いの行動が、街の発展、ひいては人類再建というひとつの目標に収束していく『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』。しかしそれはある意味綺麗事で、プレイヤーによっては街の発展に寄与しない行動――建造物を壊したり、ほかのプレイヤーに直接危害を及ぼすことに悦びを感じる人もいるはずである。いわゆる反社会的行為はゲーム世界内の統治機関によって厳しく監視・規制されるのかと思いきや、実際には何でもできてしまうとのこと。現在、開発内で行われているテストプレイでも、相当なやんちゃを働くプレイヤーがいるらしい。
ゲーム世界側の断定的な制限のかわりにプレイヤーの行いを判断・規制するのが、ほかのプレイヤーからの評価。好ましい行いや制作物にたいしてはFacebookの“いいね!”ボタンを押すような感覚で称賛、承服しかねる所業にたいしては“ブーイング”を投げつける……ということを互いにくり返すことでソーシャルな人物像が形成され、それが街での生活の暗黙の基準となっていくのだ。“憎まれっ子世に憚る”のプレイスタイルもある程度許容されるわけだが、あまりに多くの住民から反感を買いすぎると、その街の“民意”によって強制退去させられる場合も。ほかのプレイヤーにブーイングを送れるのは“犯行現場”を目撃した瞬間のみなので、悪さする側は“いかに他者に見つからないように行動するか?”、悪さを許せない側は“いかに現場を押さえるか?”に注力したプレイが要求される。ギスギスした人間関係にも“ゲーム”は発生するのだ。
街から追い出されたプレイヤーは、別のプレイヤーたちによって構成されたほかの街に引っ越すことになる。そこでまた同じように反社会的行為をくり広げてもいいし、何事もなかったかのように善良な一市民として暮らしてもいい。そうしたプレイヤーの動きによって街ごとのムードや特徴が自然と形成され、最終的に自分にとって“居心地のいい空間”にたどり着くことが、本作の目的のひとつでもあるような気がする。旅行や引っ越しなどさまざまな形で、独自の発展を遂げた街を見聞するのもおもしろそうだ。
テクノロジーの先に広がる世界に注目!
過去にQ-Gamesは、プレイステーション3の高解像度グラフィックに惚れ込んだ情熱で『PixelJunk』シリーズを企画・開発し、ソニーハードのインディーゲームメーカー参入の門戸をこじ開いた。今回の『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』は、プレイステーション4のシェーディング性能に惚れ込んだことがスタート地点となり、そこにプレイステーション4の中核をなすコンセプトであるシェアを結びつけて、現在の形になったという。Q-Gamesのゲーム制作における信条が“新たなテクノロジーに希望と可能性を見出すこと”だとしたら、『The Tomorrow Children(トゥモロー チルドレン)』によって広がる世界はどのようなものか、いまから楽しみである。