世界を救ったものの……何かがおかしい!

 フリューから2014年8月7日に発売されたPS Vita・プレイステーション3用ソフト『ロストディメンション』。シミュレーションRPGと、アナログゲームとして近年話題の“人狼”要素を融合させた新機軸のゲームとして、これまで過去2回にわたって、本作の新しさやアツさや、発売に先駆けて配信された体験版の遊びどころを紹介してきた。本稿はいよいよその紹介&レビュー企画の最終回をお届けする。

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 次元の狭間から現れた巨大な塔“ピラー”探索の果てに起こる、世界を破滅に導く者“ジ・エンド”との戦い。その果てにプレイヤーを待ち受けるのは、“新たな挑戦”だった! じつは、本作は2周目への挑戦こそ“本番”ともいえる仕掛けが待っているのだ。
 記憶を失った状態でピラー内部に突入した、ショウを始めとした国連特務機関S.E.A.L.E.D.のメンバーとジ・エンドとの最終決戦。その戦いでは衝撃的な真相がジ・エンドから語られて、ジ・エンドはやがて死に体の身で姿を消してしまう。
 かくして、核の脅威は去り、S.E.A.L.E.D.は世界を救うヒーローとなった。しかし、ショウの心になお残る根本的な謎と、多くの仲間を犠牲にした罪の意識。そして、突然ショウの頭をよぎった不吉な未来を示すヴィジョン……。2周目はそんな“モヤモヤ”とした状態から始まる。どうやら確かに平和は守られたが、まだすべての事態は解決していないようなのだ。

新たに提示されるチャレンジ要素とは?

 基本的にゲームの内容は1周目と2周目では大差はない。ゲームは1周目と同様にピラーに突入した直後のシーンから始まり、キャラクターのレベルは再びデフォルトの5に戻ったうえでの再挑戦が始まる。
 しかし、1周目の出来事がすべて終わったあとに(具体的にはエンドロールのあとに)、プレイヤーに向けて“新たな目標”が提示されており、その達成を目指すことが大きな違いとなっている。その目標とは、すべてのメンバーと“絆”を結ぶことだ。
 S.E.A.L.E.D.のメンバーの心を結ぶ“絆”は、本作のクライマックスにおいて重要なキーワードとなっている。

『ロストディメンション』インプレッション第3回、世界の仕組みに迫る2周目への挑戦!_01

 本稿の第1回目でお伝えしたように、当初はチームワークや目的意識がバラバラの状態からピラーの登頂を目指すことになったS.E.A.L.E.D.のメンバー。しかし、会話を通じた相互理解と、仲間が居なくなるという恐怖が、やがてメンバーどうしの結束を高めていく。本作では結束を示す指標として“信頼度”という要素があるが、その結果は会話内容やだけではなく、ストーリーにも如実に表れていくのだ。
 “絆”とは、結束が最高に高まった状態を示すものだ。主人公のショウと、個々のメンバーとの信頼度がある程度上昇すると、そのメンバーを主役にした“キャラクタークエスト”が発生する。これは、該当メンバーのエピソードを描くサブクエストだ。あるメンバーとは“一緒に出撃しよう”と気軽に誘われることで始まったり、また、別のメンバーとはちょっとしたトラブルのあげくに出撃せざるを得なくなったり……と発生する状況はさまざま。このステージをクリアすると「お互いの心の理解がさらに深まった」として、ふたりの間に“絆”が結ばれるのだ。

仲間との“絆”が結ばれるまで

 このような仕組みなので、序盤でイレイズしたメンバーとは“絆”を結ぶこととなく1周目を終えることになる。しかし、一度築いたメンバーとの“絆”は2周目以降も維持されるので、結んでいないメンバーとは2周目以降に再びチャンスが訪れるという次第。1周目終了直後の画面で示されているように、すべてのメンバーと絆を結ぶと、“何か”がわかるようなのだが……。

『ロストディメンション』インプレッション第3回、世界の仕組みに迫る2周目への挑戦!_02
『ロストディメンション』インプレッション第3回、世界の仕組みに迫る2周目への挑戦!_03
『ロストディメンション』インプレッション第3回、世界の仕組みに迫る2周目への挑戦!_04
『ロストディメンション』インプレッション第3回、世界の仕組みに迫る2周目への挑戦!_05
▲絆がチームの結束を生む。物語のクライマックスに近づくにつれて、絆の力こそがジ・エンドを倒すために不可欠なものとなっていくのだ。ショウと絆を結んだメンバーはステータス画面でアイコンが表れる。

遊びやすくなったことで“謎解き”に集中できる

 ひと通りの階層への理解や、自分なりの攻めかたやギフトの使い方を身につけていることから、2周目はわりとすんなり進められることだろう。しかし、ジ・エンドやピラーにまつわる謎はまだまだ数多く残っている。
 マップ上には、よく見ると地面が光るポイントがあるはずだ。ほとんどが普段あまり立ち寄らないような場所に存在しているので、効率重視のマップ攻略をしているとたいてい見逃してしまうものなのだが……。
 この場所では事件にまつわる情報が手に入る。事件の背景や“フェイタルマテリア”などに関する重要な情報が読めるようになるのだ(閲覧は“TIPS”の項目でできる)。あくまで断片的な言葉に過ぎないが、事態の解決や理解につながる重要な手がかりになるものだ。第三者の立場から語られる“出来事の記録”から、きっと新たな疑問を感じることだろう。また、2周目だからこそ「ああ、なるほど!」という発見も多いので、ぜひコンプリートを目指して集めてほしい。

 このような謎解き要素は、2周目だからこそじっくり楽しめるようになっている。2周目に入った時点でギフトを身につけるための経験値“GIFT EXP”を大量に所持しており、これによって最初から主要なギフトがひと通り獲得できるようになっている。おかげでバトルがサクサクと進められるのだ。ギフトをうまく活用して、より戦略的な戦いかたを追求する楽しみもある。1周目で多くの種類や属性を持つギフトをうまく使いこなせなかった悔い(?)があっても、2周目なら序盤からアレコレ試すことができる(ただし、発動に必要なGP=ギフトポイントはレベルの低いうちは所持数が少ないので、浪費には注意)。この遊びやすさ=制約の少なさも重要なところ! 

 また、2周目からオープンになる新ステージも存在する。サブクエストの扱いなので、挑戦するかしないかはプレイヤー次第だが、ほかのステージに比べてやや歯ごたえあるものとなっている。漫然と挑むと意外な強さに「あれっ?」となることだろう。これまでの経験で自分のモノにした戦術をフルに活用する絶好の機会だ。ちなみに、この新ステージは、ただ単純に2周目に加えられたオマケ要素というよりは、ストーリー上できちんとした理由があって出現しているもの。なぜ2周目に現れたのか……その理由はみずからの目で見つけてみよう(「えっ?」 と思うはず)。

まだまだ潜む“この世界”の謎

挑めば挑むほど何かの発見がある

 過去の回でも触れたように、プレイするたびに変化する“裏切り者”の存在、すべてのエピソードを知りたくなる個性的なキャラクター、シミュレーションRPGとしての深い戦略性がプレイヤーをゲーム世界に引き込む大きなポイントとなっている。加えて今回紹介したように未知の事柄が多く残る濃厚なストーリーが、さらなる誘いの力を生み出している。噛めば噛むほど味わえる……ではないが、挑めば挑むほど何らかのサプライズを導くこの絶妙な“味付け”に思わず拍手! ゲームのドラマを楽しむうえで壁になりがちな、ゲームの難度は決して壁が高いものではないので、とくにシミュレーションRPGという分野にふだんなじみのない人にこそ、(主人公のように)頭を真っ白にして体験してもらいたい。きっと11人プラスひとりの紡ぐドラマに夢中になるはずだから!

(文 ライター/大瀬子ヤエ)