主人公が小さいのは、弱さを象徴するため

 2014年8月13日(水)~17日(日)の5日間、ドイツ・ケルンのケルンメッセにてヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2014が開催。会期中にID@Xbox向けタイトル『Below』のプレゼンがあった。ID@Xboxといえば、ご存じXbox Oneによるインディーゲームの取り組み。先ごろ家庭用ゲーム機が解禁された中国でも、ID@Xboxに取り組む例が増えており(⇒関連記事はこちら)、記者もその可能性を広く実感している。今回紹介する『Below』は、そんなID@Xbox向けタイトルの中でも、ひときわ注目を集める1作だ。E3 2013で行われた“Xbox E3 2013 Media Briefing”で明らかにされるや(⇒関連記事はこちら)、大きな歓声を浴びていたのは記憶に新しいところだ。まずは、gamescom 2014に合わせて公開された、最新トレーラーをお届けしよう。


『Below』はプレイヤーの想像力を刺激する、懐の深いID@Xboxタイトル【gamescom 2014】_05

 本作の開発を手掛けるのは、カナダのデベロッパーCapybara Games。プレゼンを担当した、同社の共同創業者にして代表取締役のネイサン・ベラ氏は、『Below』を開発するにあたっての、「キャラクターが小さいのは、主人公の弱さを表現するため」、「画面には基本、ヒントの類は表示させない。プレイヤーにはゲームで何ができるか、トライ&エラーをしてほしい」、「ダンジョンは自動生成で、一画面で表示させるようにしている」といった方針を説明してくれた。どこか静謐でシンプルに感じられる『Below』 のゲーム画面は、そうした方針の産物としてできあがったようだ。

 未知の世界を旅していく主人公は“ワンダラー”。ただし、これは名前ではなく、立場のようなものと言えるだろう。本作には“生き返る”という概念はない。ひとりが倒れると、記憶や経験値などのステータスを共有した新しい“ワンダラー”が冒険を続けていくことになる。さきほど「キャラクターが小さいのは、主人公の弱さを象徴するため」と書いたが、実際のところ、ゲームプレイは相当シビアなようだ。「主人公は一撃で倒されることもあります」とネイサン氏。

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 そして、『Below』で象徴的だと思われるのが、「ストーリーを探すゲーム」(ネイサン氏)だということ。ネイサン氏のお話を聞く限りでは、『Below』では明確にストーリーが語られることはなさそうだ。プレイヤーは、いまある状況を判断して、ストーリーを想像していくことになる。たとえば、海岸に難破船が打ち捨てられているのを見て、「人々が移住してきたのであろうか?」と想像したり、難破船の近くに 廃墟があるのを発見して、「移住してきた人たちは全滅してしまったのだろうか?」と思いを馳せる……といった具合だ。「意味を解釈するのはプレイヤー次第です。もちろんバックボーンとなるストーリーは作ってありますが、それをプレイヤーに押し付けるようなことはしません」とネイサン氏。ただし、決まったエンディングはあるとのことなので、プレイしているうちに、おのずとストーリーが染み渡ってくる内容になっているのだろう。

 捉えようによってはシビアなゲーム性だったり、明確にストーリーを語らないといった『Below』の特徴は、少し聞くとプレイヤーを突き放しているようにも感じられるかもしれないが、そのじつプレイヤーの想像力に委ねた、懐の深いタイトルと言えそうだ。 ちなみに、本作のミュージックを担当しているのはジム・ガスリー氏とのことで、好きな方にはそのへんもたまらないのでは? 本作は2015年にXbox OneとPCでリリース予定だ。

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▲gamescom 2014ではインディーブースでも出展。多くの来場者を集めていた。UIまわりは至ってシンプル。

(取材・文 編集部/F)