フィールド、ダンジョン1楽曲が公開
スクウェア・エニックスから発売予定のマルチプレイが楽しめるニンテンドー3DS用のシリーズ最新作『ファイナルファンタジー エクスプローラーズ』。本作の楽曲を手掛けるスクウェア・エニックスのコンポーザー関戸剛氏による4週連続コラム企画の今回は第2回をお届け。
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こんにちは関戸です。
ゲームの音楽制作と言うと非常に派手なイメージがあるかもしれませんが、じつは地味な作業の連続です。開発初期の段階ではテキストベースでの資料やキーになるヴィジュアルが数点あるのみ、これらからイメージを膨らませる工夫も必要で、この時期はほとんどが「妄想タイム」で、音楽を作る「作/編曲タイム」はこの後になります。
今回の『ファイナルファンタジー エクスプローラーズ』(以下、『FFEX』)は、アクションRPGゲームと言うことでしたので、ゲームのテンポ感をなんとなくイメージしながら、まずはフィールド(ダンジョン)、ノーマルバトル、ボスバトル、ホームタウンの4曲のデモを用意しました。これくらいあれば音楽で演出できる世界観と言いますか、ゲームに持たせたい音楽の方向性が出てくると思います。
ゲームに実装(ゲーム機で音楽が鳴るようにすること)が可能になった時点で、ゲームをプレイしながらデモ楽曲とゲームとのフィッティングをみます。方向性が違っていると感じれば作り直しますし、部分的に足りないと思ったものを加えたり、余分だと感じれば取り去ったりもします。一定の方向性に対して良いものは残し、不要なものは取り去る……。この段階で短時間に多くの試行錯誤を行います。悩ましい部分でもありますが、大変楽しい至福の時でもあります。チームから出る意見は自分より客観的なものになるので全部聞きます。が、全部採用するわけではありません、うわはは。
今回ご紹介するのは「静」と「動」をクッキリと際立たせた「フィールド、ダンジョン1楽曲」と「ノーマルバトル1楽曲」についてです。
「フィールド、ダンジョン1楽曲」の制作過程
<妄想タイム>
洞窟は……湿度が高い、じめじめ、なにかが出てきそうな感じ、なんかくさい、壁はヌルヌル、滑りやすい、スベルとつらい、勇者はつらい、でもかっこイイ、先に進まないと、先に進まナイト、夜は暗い、小さな希望がほしい、足元にカエル、踏みそうになる、踏むと大変なことになる……などなど。
<作/編曲タイム>
目指すは“ダークで陰湿な雰囲気の中にも小さな希望が持てる感じ”
・同時に鳴る楽器数は少なく!!
・弦楽器は中、低音域を中心に狭い音域で
・木管楽器と金管楽器はアクセント程度に
・リズム楽器は低音域のものだけをほんの少し部分的に
となります。ちなみに対比させる「ノーマルバトル1楽曲」の制作過程は
<妄想タイム>
バトルは…ドカンと始まってグイグイ、熱い予感、武器で攻撃、共闘する、ポーションほしい、敵を倒す、敵って誰? 自分の中に? 深く考えない、スカッと戦う、勇者は戦う、戦って勝利する、守りも重要、爽快感、疾走感……などなど。
<作/編曲タイム>
目指すは“勇者にエールを送り軽快で熱く盛り上がり勝利を獲得する感じ”
・開始後すぐに熱いテーマメロディーへ移行!!
・弦楽器は低、中、高音域の広い音域を派手に
・木管楽器、金管楽器は低、中、高音域の広い音域に
・エレキベース、エレキギターでグイグイ
・リズム楽器にドラムセットを常時使用
また、「フィールド、ダンジョン1楽曲」と「ノーマルバトル1楽曲」のセッションデータを同一の画面に表示してみました。(下写真、左側:フィールド、ダンジョン1楽曲、右側:ノーマルバトル1楽曲)
「セッションて何?」と思われている方も多いと思うので簡単にご紹介したいと思います。こちらの画像でもなかなか伝わりにくいと思うのですが、楽曲の中をのぞいていると思ってみてください。オーケストラが楽曲を演奏するために楽譜を使っているのと同じように僕らコンポーザーにも楽譜があります。
カラフルな棒がたくさん見えると思いますが、この棒の中にはたくさんの音符が詰まっています。楽器や演奏方法の種類分この棒があります。このように1つの楽器だけではなくて、たくさんの楽器を組み合わせて1つの楽曲が誕生するわけなのです。
見た目にも棒の数が全然違いますね!これくらいの差があると、どちらが先に鳴っていても楽曲が切り替わった時に大きなインパクトが生まれます。それでは「フィールド、ダンジョン1楽曲」を聴いてみましょう!
さて次週は……“FFEXノーマルバトル楽曲の全貌があきらかに!?”
お楽しみに!!