マスター・オブ・ホラーの本領発揮! 『サイコブレイク』で焦りまくりの死にまくり。E3会場じゃなく、家で部屋を暗くして遊びたい【E3 2014】_01
▲すでに国内で別の記者がプレイしたんだけど、それでもやっぱ行きますよ。

 アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで開幕したE3 2014。ベセスダ・ソフトワークスのブースで、三上真司氏率いるTango Gameworksが開発中のサバイバルホラー『サイコブレイク』をプレイしてきた。

 って言っても、実はすでに本紙記者が事前にE3デモをプレイして、超長文のプレイリポートが本誌に掲載済み。なのでデモの内容はそちらを読んでもらうとして、本稿では同じデモをプレイした別の人間が思ったことをストレートにお伝えするとしよう。

脳が追い詰められる怖さ。

 「怖いこと」って人によっていろいろある。だからエンターテインメントの世界で「ホラー」って言っても、怖がり方にはいろいろある。得体の知れないものが出てきて怖い、何かが突然起こって怖い、人が死んで怖い、痛そうで怖い、スプラッターが怖い、などなど。

 『サイコブレイク』の怖さは、脳が締め付けられるような類のものだ。得体の知れないクリーチャーもいるし、いろいろ死ぬし、痛そうだし、スプラッターもあるけど、実はまったく危険じゃない場所でも空気が怖い。
 恐る恐る小屋のドアを開け、とりあえず敵が見えないので中に入り、急いでカメラを動かして見回し、意味ありげな椅子とベッドかなんかを奥に見つけて、「ヒッ!!」と思いつつ「何も起こるなよ、何も起こるなよ」と思いながら近付く時、結局何でもなかったりしても、その椅子とベッドは下手なクリーチャーよりもよっぽど怖い。サイコブレイクはそんな風に出来ている。

マスター・オブ・ホラーの本領発揮! 『サイコブレイク』で焦りまくりの死にまくり。E3会場じゃなく、家で部屋を暗くして遊びたい【E3 2014】_02
▲プレイヤーがビビって「ギャーッ」って叫び声をあげるトレイラーが公開されているけど、どっちかというとプレイ感はこっち。いやーな空気が漂う中、「やめてくれよ……」ってことが起こったり、突如ありえないことが起こって混乱に叩き込まれたり。

 意図的に通常よりも横に細長い画面にしてあったり、フィルムノイズのような独特なざらついたエフェクトがかかっていたりする視覚面も効果てきめんで、次第に脳が汗をかきはじめ、イッちゃってるオブジェクトやデストラップのインパクトで思わずビビり笑いしてしまうようになる(ホラーのネタバレはアレなので配信機能とかが許可されているかわからないのだが、もし出来るのなら顔と声込みで狼狽し慌てるさまを流して欲しいところ)。

マスター・オブ・ホラーの本領発揮! 『サイコブレイク』で焦りまくりの死にまくり。E3会場じゃなく、家で部屋を暗くして遊びたい【E3 2014】_03
マスター・オブ・ホラーの本領発揮! 『サイコブレイク』で焦りまくりの死にまくり。E3会場じゃなく、家で部屋を暗くして遊びたい【E3 2014】_04
▲視覚的にクル感じの物体や凶悪トラップ。

 映画の「ランボー」状態で(ゲームなら『Brutal Doom』みたいに)バリバリ撃って倒せるなら、どんなに醜悪なクリーチャーが四肢や内蔵を飛び散らせようとも、それは興奮のスパイスのようなもので、「怖い」というのとはちょっと違う。
 恐怖の対象は、力で御しにくいほど怖い。本作はサイコロジカル(心理的な)ホラーであると同時に、サバイバルホラーでもあるわけで、三上氏がたびたび言ってきたとおり弾丸は少なく、賢く使っていくしかない。E3デモでは、デモということもあって色々武器も持っていたんだけど、ハンドガン10発、ショットガン5発とかそんなもの。

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▲多分、焦って撃つタイプの人はこうなります。

 記者が困ったのはこんなシーンだ。あるキャラクターに「行くな」と言われつつ、ダチョウ倶楽部ばりに飛び込んでみると、案の定と言うべきか通ってきた道は消えてトバされている。そんな時は「ですよねー」とひきつった笑いで自分を奮い立たせながら進むしかないのだが、しばらくすると「行き止まりだし、後ろから敵が何体か来てる」みたいな事になるわけだ。“ホーンテッド”という崩れた顔をした人型の一般的な敵なんだけども、これが実は厄介。

 まず、このシチュエーションだとスニーキングキルが厳しい。銃でヘッドショットしてもいいが、単に当てた程度だと、敵はやがて復活してくる。何発か当てて転ばせてからマッチで焼くっていうのが確実だが、あいにくマッチは限りがある。

 最初は2体ほど倒せたけど、弾がなくなり、慌ててノープランで逃げてトラップで大ダメージを食らい、マッチもなくなってアワアワしたところで死亡。「なんだよ! 昔のゲームかよ!」と思ったりもしたが、まぁそんな時は大体自分が悪いのだ。

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▲どうするか考えながら逃げなくてはならないこともある。

 リスタートして、今度も最初の数体はヘッドショットしたりマッチで焼いて処理完了。さて残りのマッチは一本、敵は複数。燃料が床に漏れ出している所があったので、そこで待機し、ハンドガンで足止めしたりしながら数体たまった所で着火して一網打尽を狙う!
 で、見事何匹か焼いたのだが、一体残してしまう。急いで距離を取りつつ別の銃に切り替えるも弾がない。インベントリを開いている間はスローになるだけなので、その間も近づいてくる敵。慌ててボウガンを選び撃ったのは、痺れる矢。駄目じゃん、トドメささなきゃいけないのに。

 敵が痺れている間、安心するどころか「あいつが立ち上がった時に、あと何が出来る?」と慌てまくり。無意味に近くのレバーをよくわからず引いてみたり、完全にアホになっているのだが、なんとか周囲でグレネード発見! どこにでもいる敵一匹相手に喜んでグレネードを消費するという始末だった。
 実はこの時、敵が出てくる前に、そこらに矢が落ちていることは知っていたので、「ボウガンの矢落ちてるから、そのぶん矢を使って戦ってもいいな」とか、「さっき自分がひっかかったトラップを利用できないかな」と考えることもできたはずなのだが。

本来、30分とか1時間とか遊んでどうこう言うゲームじゃない

 まぁ、そういうゲームである。サイコロジカルに追い詰められながらのサバイバルホラーだし、サバイバルの心理的効果込みのサイコロジカルホラーでもある。この脳と神経の攻め方は日本的であるし、3Dのサバイバルホラーの生みの親である“マスター・オブ・ホラー”ならではの作品と言えるんじゃないだろうか。

 だから遊んで思ったのは「これ、周囲に人がいて時間に追われつつE3会場で遊ぶんじゃなくて、家に帰ってやりてぇわ」ということ。身も蓋もないかもしれないが、30分とか1時間とかでどうこう言えるゲームではなく、粘着質な空気のどこか異常な空間に全身を浸らせて気がついたら午前4時でヤバい、みたいなことになってナンボだと思うのだ。(文・写真・取材:ミル☆吉村)