見知らぬ惑星でエイリアンに襲撃されつつ開拓に奮闘。『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』プレイリポート&インタビュー【プレE3】_07

 いよいよ来月に迫ったE3。近年ではニュースが殺到するE3を避けて、プレイベントを開催するパブリッシャーも増えてきている。2014年5月13日には、2KがロサンゼルスでプレE3イベントを開催した。
 出展タイトルのひとつとして、4月のPAX EASTで発表され大きな話題を呼んだストラテジーゲーム『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』も早速プレスデモを公開。
 本稿ではそのプレイリポートとインタビューをまとめてお届けする。宇宙植民をテーマとし、『シヴィライゼーション』シリーズの完全新作として注目を集める本作の仕上がりはいかに?

母さん、宇宙は怖い所です

 海外では今秋にPC/Mac/Linux版の発売が予定されている本作。すでに基本システムは動くものが出来上がっており、プレスリリースにも書かれている、クモの巣状に広がるテクノロジーシステム(テックツリーから変更)や、軌道レイヤーからの爆撃(衛星を打ち上げることで上層に進出することができ、ここでの制空権の争いなども注目)などの要素も実機デモで説明してもらって、いざプレイ開始。

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▲異星には未知の資源がいっぱい。探索ユニットを進めていく。Podや墜落現場で新たな発見をしたり……。

 って言っても30分ぐらいの持ち時間なので戦略的な深みなどは体験できるわけもないのだが、ひとつだけはっきり言えることがある。エイリアンの星、超こええ。
 本作でプレイヤーは、宇宙植民を実現するために地球から送り出された先遣隊として異星を探索し、新たな技術を開発したり、別のグループと抗争したりしながら人類がうまくやってけるように頑張る、要は開拓団のリーダーなわけだが、普段のCivと違うのは、見知らぬ土地なんで環境自体が危ないってこと。

 開幕数ターンでエイリアン軍団がワシャワシャやってくるし、巨大なシージワーム(マインドワームでもサンドワームでもない、一応)は地面をゴリゴリ削りながらうろうろするし、Civのバーバリアンどころの騒ぎじゃない。
 まずはエイリアン軍団を歩兵ユニットで蹴散らし、近所の巣まで出かけて行って潰さないと気が休まらないし、それでもシージワームにいたっちゃ序盤は勝ち目がないので、放置して好き勝手に移動させておくしかない始末。コイツが通過したせいで建物が破壊されることもあるので、いい感じに過ぎ去ってくれるのを祈りながら眺めるしかないという無力さ。

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▲巨大クリーチャーとの戦いはユニットが揃ってから。こうやってスターシップ・トゥルーパーズできるようになるまでは黙って耐えるしかない。

 発表時から、Civ派生のゲーム『Sid Meier's Alpha Centauri』(略称SMAC)との類似を指摘されてきた本作だが、未知の惑星を探索し、立ちはだかる異星の生物や環境(ダメージを食らう緑のガスが噴き出している地域などもある)に対応しつつ、技術を開発し、ユニットや建物を製造しながらグループを発展させていくという点では、実際プレイしてみても、確かにとても似ている(ちなみにSMACは現行WindowsでプレイできるバージョンがGOG.comで販売されている)。

 新機軸のひとつとなっているテクノロジーウェブシステムは、クモの巣状に技術が並んでいるもので、すでに習得した技術から隣接する技術へと研究を進めていくことができる。
 進化の方向性“Affinity”としては、遺伝子改造などによって人類を環境に適合させようとする“Harmony”、サイバネ化やオーグメンテーションによって融合ではない形で環境を克服しようと試みる“Supremacy”、人間が変わるよりも環境を人類に合わせてテラフォーミングしてしまおうとする“Purity”の3種類がある。
 それぞれ極めることでエンディング条件に到達できるのだが、テックウェブ上ではどう研究を進めていくかはプレイヤー次第で、サイボーグ技術の研究(Affinityの分類ではSupremacyに属する)を進めつつ遺伝子方面(同じくHarmony)もちょっとかじって……といったような、ポリシーが違う複数の方向性をミックスすることも可能とのこと。

 自分が降り立った環境とどううまくやっていくかというのもポイントで、森林特有の資源が豊富で周囲にエイリアンが多ければHarmonyビルドに、砂漠地帯ならばSupremacyのリソースが豊富で、Purityを極めて行けば海に進出するという手もあるといった塩梅(Purity系の技術では艦船や洋上基地を作れるようになる)。

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▲進化の方向性によってユニットの見た目の雰囲気も違いが出てくる。ちなみにSMACのようなパーツを組み合わせるユニット作成システムはないとのこと。

 Affinityの進化とも関連してくるのが、もうひとつの軸であるクエストシステムだ。これは、プレイ中に大小さまざまなゴールが提示され、それを達成することで報酬が得られるというもの。プレイヤーのガイド的な働きをするものもあるし、エンディングに繋がってくるような中長期的に取り組まなければならないものもある。
 もちろん全部従う必要はないのだが、多くのクエストはランダムに出てくるので、これらを取捨選択することで、プレイによって描かれる開拓団のストーリーが異なってくるというわけだ。

 そのほかまだ開発中ということで詳細はまだわからなかったが、メインメニューにはCovert Ops、ポイントを割り振って特定の能力をブーストさせるVirtue以外に、Diplomacy(外交)のパネルが用意されていた。この外交パート、合同Q&Aでは「前のゲームに比べて細かい設定が可能」とのことだったので、乞うご期待といったところか。

 衛星システムも体験できなかった部分だ。話によると、天候のコントロールや、エイリアンを寄せたり押しのけたりするもの、農業や軍事特化した衛星などなど、さまざまなものが存在するという。衛星対衛星で戦うのは無理で、地上から衛星を撃つか、衛星から下を撃つといった形のみ可能。都市が大きくなるにつれ、衛星のカバー範囲がぶつかるようになるとAIが外交チャンネルを通じて怒ってくるといった事態になるらしい。

 当然クリアーも出来なかったわけだが、こちらも合同Q&Aによると条件は5種類。まずは毎度おなじみの、全員殺すというもの。
 さらにAffinityそれぞれにゴールがあり、Harmonyの場合は生体マシンを作って古代文明とのコミュニケーションを確立して融合するという“Transcending"(SMACへのオマージュだとか)。Purityではレーザー通信衛星を打ち上げて地球とのコミュニケーションを確立し、ワープゲートを作って地球人類を移民させる“Promised Land”で、Supremacyでは地球とのコミュニケーションを確立して、軍隊を送り込み地球を争いから解放する“Emancipation”がゴール。
 それ以外に“Contact”(カール・セーガンへのオマージュ)があり、これはエイリアンの遺跡を探検したり、衛星でシグナルを受けたりすることで、知的なエイリアンが残したビーコンを起動し、彼らとのファーストコンタクトを果たすものだという。

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『Civilization: Beyond Earth』海外発売日が10月24日に決定。E3でのプレゼン動画も公開_01
▲どんな方向に開拓していくか?

いろいろ気になる部分をシニアプロデューサーに直撃

 知らない土地を探検しておっかなびっくり開拓していくのは楽しかったのだが、前述したように、ちょっと遊んだぐらいじゃまだまだわからないのが正直なところ。そこでシニアプロデューサーのLena Brenk氏に話を聞いた。

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――最初の数ターンからエイリアンに攻撃されて大変だったのですが、フレンドリーなエイリアンの惑星もあるんでしょうか?
Lena 基本的に本作では、これまでの歴史を背景としてきた『シヴィライゼーション』と比べ、ゲーム序盤はサバイバルモードになっています。プレイヤーがエイリアンの惑星に侵入してきて、エイリアンがそれを歓迎しているわけではないですから、意図的に少し難しいサバイバルにしています。
 今回のデモでは近くにエイリアンネスト(巣)があるので、最初からエイリアンの脅威がはっきりしていて、まずはリサーチをして環境についての理解を深めながら、エイリアンの攻撃にきちんと対抗して自分の陣地を守らなくてはなりません。
 ただしまだバランス調整を進めている段階で、エイリアンの強さや反応は最終的なものではありません。脅威と守備の必要性を感じられるようにする一方、あまりに強すぎてそれだけに追われることがないよう、毎週検討しています。

――彼らと仲良くなる方法はあるんでしょうか? 例えばエイリアン細胞をインプラントしたり、エイリアンフェロモンを使ってけしかけるような……。
Lena リサーチによって出来るようになることもあります。AffinityのひとつHarmonyは、エイリアンをより深く理解し、環境と人類を調和させることを目的としていて、この方向を進めていくと協力できるようになります。
 例えばプレゼンでは、Covert Ops(秘密工作・スパイ工作)でシージワームを敵のシティに呼び寄せようとしていました。ワームを自分の軍勢の一部として加えることも可能ですし、エイリアン遺伝子の組み換えを行って、味方となる新しいエイリアンを作ることもできます。

――今回の最終的なゲームのゴールはなんでしょうか?
Lena 勝利条件にはいくつかあります。Civで共通しているように、まず全員を殺すドミネーション。それ以外に4つあって、そのうち3つはAffinityそれぞれに関連したものです。4つ目はコンタクト・ビクトリーで、これはエイリアン種族とコンタクトすることを目標として進みます。Civゲームのゴールはプレイヤーが自分の文明が時間を超えて繁栄するよう進めて行くことであって、そこは今作についても同じですね。

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※1999年発売のSid Meier's Alpha Centauriのこと。Civの目標のひとつであるアルファ・ケンタウリへの宇宙植民がテーマ。GOG.comで購入可能。

――ゲームが発表された際、宇宙植民をやるということでSMAC(※)の精神的後継作と見なす人が多かったですが、ゲームプレイの点で似ている部分や相違点はなんでしょう?
Lena 新しいSMACを作るつもりで始めたのではなく、CIVを未来に持っていき、人類の未来を描くのが目的でした。プレイヤーが体験する物語の構造が異なっていて、SMACでは特定の壮大なストーリーを提供しましたが、今作では違うアプローチを取っています。

 プレイヤーが自らのストーリーを体験し語れるというのが目的で、プレイヤーが到着する惑星とその生態系などの背景や、そもそも人類が地球を離れることになった基本部分のストーリーは提供しますが、それ以上は語りません。
 今回、さまざまな特徴を持ったリーダーたちがいます。例えばその一人Suzanne FieldingはAmerican Reclamation Corporation出身で、エネルギー、経済、パワーにフォーカスしています。哲学的な観点というよりは、経済を重視するタイプですね。でもプレイごとにHarmony寄りになったり、Supremacy寄りになったり、あるいはPurity寄りになったりするので、その惑星でどんなリーダーになっていくかは不透明です。我々は枠組みを提供しますので、プレイヤーにストーリーを作って、見出していって欲しいですね。

見知らぬ惑星でエイリアンに襲撃されつつ開拓に奮闘。『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』プレイリポート&インタビュー【プレE3】_01
見知らぬ惑星でエイリアンに襲撃されつつ開拓に奮闘。『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』プレイリポート&インタビュー【プレE3】_02
見知らぬ惑星でエイリアンに襲撃されつつ開拓に奮闘。『Sid Meier's Civilization: Beyond Earth』プレイリポート&インタビュー【プレE3】_03
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▲さまざまな背景を持つリーダーたち。今回は歴史上の人物ではないため、歴史的魅力は足りないが……。

――ゲームの途中でAffinityを変えることは出来ますか?
Lena はい、ゲームデザイナーがやりたかったのは、ハイブリッドを可能にすることです。例えば、Supremacyに重点的に投資して、ロボットを持っているが、遺伝子組み替えもやりたいという場合でも、ある程度は両方に進むことが出来ます。そうすることによって、多面性を持ったユニークなユニット群を持てるでしょう。ただ、ある程度1つに特化するインセンティブもありますので、どちらを取るかですね。

――テックウェブで自由な選択ができるのはいいのですが、特に初心者の場合、終盤への見通しが難しいですね。アシストしてくれる機能などはありますか?
Lena まだ暫定版のUIなので、プレイヤーを誘導してくれるものがこれから入って来ます。プレイヤーには細かく全部読んで数字を把握したい人もいれば、さっさと先へ進みたい人もいますからね。
 クエストシステムもガイドのひとつです。ビクトリー・クエストの説明を読めば、目標に進むためにはどのテクノロジーが必要で、どんな建物を建てなければならないかがわかるし、もっと直接的にガイドしてくれるクエストもあります。モラル的な判断を迫って、その結果によってAffinityのどちらに行くかが決まる。うまくナビゲートできればと思います。

――iPad版『XCOM: Enemy Unknown』が素晴らしく良かったです。まだこういったことを答える段階ではないと思いますが、このゲームのタブレット版の可能性は?
Lena ないとは言いませんが、現時点では明確には答えられません。XCOMは自分もソファーで楽しんでますけどね(笑)

――今作では歴史的制約がなくなり、歴史的リーダーとは異なるリーダーが登場します。「ハイテク進化したアレクサンダー大王」などを見られるのがCivの面白い部分のひとつだと思いますが、ついプレイも歴史のイメージに従いそうになったり、あるいは逆に行こうとしたり、心理的に影響を受ける部分もある。今作ではそれがなくなったわけですが、大変でしたか?
Lena リーダーやキャラクターの背景ストーリーは提供しているので、彼らを知ろうとすれば可能です。各リーダーもスポンサーも特徴を持っており、そこからカルチャーなCiv、サイエンスなCiv、ミリタリー的なCivなど、どんな人たちををプレイしているのかがわかります。
 従ってチャレンジでもあり、いい機会でもあったと言えると思います。物語の枠組みをどう移行するかは課題で、歴史は皆が知っていることなので、いろいろな前提が必要ない。ほとんどの人が少なくともアレクサンダー大王の名前は知っているわけです。
 今回は最初からストーリーを作らなくてはならなかったのですが、素晴らしい経験でもありました。資料を読むかわりに新しいものを作るクリエイティブなアプローチであり、既成のキャラクターではないので可能性が広がったと思います。

(文・取材・写真・編集:ミル☆吉村)