『Unreal Tournament』や『Bioshock』を手がけたデベロッパのオリジナルタイトル
プレイステーション4で配信されている基本プレイ無料のオンラインTPS(三人称シューティング)『Warframe(ウォーフレーム)』。その開発・運営を行っているDigital Extremesのアソシエイトプロデューサー、パトリック・クディルカ氏に、作品の魅力やプレイステーション4での展開について語ってもらった。
──『Warframe』を開発・運営しているDigital Extremesについて教えてください。
パトリック・クディルカ氏(以下、パトリック) Digital Extremesはカナダのオンタリオ州ロンドン市を拠点にしている会社で、2013年12月に設立20周年を迎えました。『Epic Pinball(エピック・ピンボール)』、『Unreal(アンリアル)』、『Unreal Tournament(アンリアル・トーナメント)』シリーズ、『Dark Sector(ダークセクター)』、『The Darkness II(ザ・ダークネス 2)』、『Bioshock(バイオショック)』シリーズ、そして本作『Warframe(ウォーフレーム)』と、さまざまなゲームを開発してきました。独立系のスタジオにとって大きな成果であり、ゲーム業界の中でのわれわれの実績を誇りに思っています。
──『Warframe』はどのような経緯で生まれたのでしょうか。
パトリック 『Warframe』の前身は、『Dark Sector』(2008年発売のアクションアドベンチャー)です。『Dark Sector』のアイディアは、『Unreal Tournament』の開発を終えたあと、2000年からDigital Extremes社内にありましたが、『Unreal Tournament』の追加作業がくり返されたため、しばらくのあいだお蔵入りになっていました。チームで再び『Dark Sector』のコンセプトについて議論を始めたのは、2004年のことです。
──『Dark Sector』はホラーテイストの作品でしたが、当初のコンセプトは違ったのですか?
パトリック シングルプレイのハードコアなSFと、当時の次世代機にふさわしい映像のステルスアクションゲームを目指していました。しかし現実的に、SFは売れるジャンルではなく、当時はパブリッシャーも戦争ゲームにしか関心を示さなかったのです。財政的な事情もあり、わたしたちはビジョンを修正せざるを得ませんでした。
──『Dark Sector』から『Warframe』へと、当初に目指していたSF作品へ回帰したきっかけは?
パトリック 数年のあいだ、いくつかのゲームを開発したのち、わたしたちは再度、アイディアを見直しました。そして、新しい“Free-to-play (基本プレイ無料)”モデルで、意図していたとおりの作品を作るチャンスを得たのです。わたしたちは古い概念を取り払い、たくさんのアイデアを練り、無我夢中で作りました。その結果、わずか7ヵ月で『Warframe』のクローズドベータ版を配信し、配信初日から『Dark Sector』を思い出した信じられないほど多くのファンが参加してくれました。『Warframe』は、チームの夢とオリジナルのアイデアが詰め込まれた感動の作品です。
──どこかエキゾチックな世界観も印象的ですね。
パトリック アートディレクターのマイケル・ブレナンは、子どものころからアジアのアートワーク、とくに日本のアートに魅了されてきました。伝統的な忍者のモチーフもクールでおもしろいですが、わたしたちはそれをSFとカナダのマンガの世界に入れ込みました。アニメやアーサー王伝説、神話から影響を受けると同時に、メカファンタジーやスーパー戦隊、サイバー忍者のようなテイストも見られます。またアクションについても、暗殺や破壊工作、侵入といった忍者的なモチーフの影響を感じられると思います。
協力プレイを重視したゲームシステム
──『Warframe』のゲームシステムの特徴は何でしょうか。
パトリック 『Warframe』は、PvE(プレイヤー対敵キャラクター)とPvP(プレイヤー対プレイヤー)の要素を持ち、自由に協力できるオンラインシューティングゲームです。プレイヤーは“Tenno(テンノ)”と呼ばれる戦士となり、剣や銃、特別な力を使って、太陽系内なさまざまな悪の勢力と戦ったり、アリーナで1対1、または2対2の対戦を行います。他社のタイトルとの大きな違いは、世界中のプレイヤーが最高の協力プレイを体験できることを念頭に置いて、つねに新しいミッションやイベントを提供している点です。
──たとえばどのような協力が可能ですか?
パトリック プレイヤーが装着する外骨格装甲“ウォーフレーム”には、種類によってさまざまなパワーがあります。協力プレイに焦点を当てた一例が、わたしたちのすばらしいコミュニティの声から生まれた“Nova(ノヴァ)”というウォーフレームの“Worm Hole(ワーム・ホール)”という力です。Worm Holeは自分や味方を別の場所にテレポートさせる能力で、通常ならたどり着けないところにも移動できます。敵の近くへいきなり出現したり、ピンチから逃れたりと、さまざまな戦術的メリットが生まれます。わたしたちは今後も協力プレイに焦点を当てて、より多くのゲームモードやウォーフレームをデザインし続けるでしょう。
プレイステーション4でFree-to-play(基本プレイ無料)モデルに挑戦
──プレイステーション4版に先立ってPC版でも『Warframe』が配信されていますが、現在のユーザー人口はいかほどですか?
パトリック 世界規模で見ると、PC版で600万人、プレイステーション4版で200万人のユーザーがプレイしています。コミュニティでのサポートにも全力を尽くしています。
──プレイステーション4への進出を決めた理由をお聞かせください。
パトリック PC版での成功により、SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)は『Warframe』に興味を持っていたようで、2013年3月ごろに(ローンチタイトルとしてリリースする)話がありました。しかしコンソール機では、Free-to-playの市場がPCと比べてまだ未熟で、わたしたちにも迷いがあったので、SCEにいくつか質問しました。その結果、「プレイステーション4は、Free-to-playゲームをサポートしますか? 」、「『Warframe』を自社タイトルとしてリリースできますか?」、「PC版と同様に、定期的にアップデートすることはできますか?」という問いに、すべて「イエス」の返事をもらい、すべてが動き出しました。SCEから開発キットを送ってもらい、わたしたちはすぐに移植を始め、1年足らずで北米、欧州、アジア、日本におけるプレイステーション4のローンチタイトルになりました。
──プレイステーション4版とPC版でゲーム内容に異なる点はありますか?
パトリック プレイステーション4版とPC版のどちらを選んでも、『Warframe』独自のすばらしいゲーム体験を味わえるでしょう。プレイステーション4版ユーザーとPC版ユーザーがいっしょにプレイすることについては、技術的には可能ですが、現時点ではSCEともに詳細について取り組んでいるところです。
──同じプレイステーション4ユーザーなら、世界中のプレイヤーどうしで協力・対戦できますか?
パトリック プレイステーション4でネットに接続できる環境があれば、世界中のユーザーがいっしょにプレイできます。このことは当初からのわたしたちの目標でもありました。SCEと協力して、誰もが最新かつ最高のコンテンツをプレイできるようになっています。
──プレイステーション4版のアップデートは、どのくらいの頻度で行われますか?
パトリック 月に1回くらいのペースで更新しています。日本のユーザーはすでに、新しいウォーフレームや武器、マップなどが盛り込まれた初めての大型アップデートを経験しています。
『Warframe』をこれから始めるプレイヤーへのアドバイス
──『Warframe』はライトユーザーでも楽しめますか?
パトリック ゲームの難易度は、新しいプレイヤーやベテランプレイヤーの両方を意識して調整しています。カジュアルなユーザーでも競争のない協力プレイが楽しめますし、装備のカスタマイズは自動で簡単に行えます。一方でコアなユーザーは、装備を思いどおりにフルカスタマイズできます。またTPSだけでなく、RPGやMMOの要素もたくさん含まれているので、幅広いユーザーにアピールできると思います。
──無課金でどの程度まで遊べますか?
パトリック 『Warframe』のすばらしい点は、完全にFree-to-playであることです。Free-to-playタイトルの多くは“Pay-to-Win(課金すれば勝てる)”と言われますが、『Warframe』はこのカテゴリ(Pay-to-Winと呼ばれるゲーム)に属していません。すべてのウォーフレームや武器、パワーなどプレイに不可欠なものすべてが、ゲーム内で設計図や材料を集めれば無料で取得できます。
──これから「『Warframe』をやってみようかな?」というプレイヤーにアドバイスがありましたらお願いします。
パトリック 初めてプレイするときに、3つのウォーフレーム“Excalibur(エクスカリバー)”、“Mag(マグ)”、“Loki(ロキ)”の中から、ひとつを選びます。このうち、初心者プレイヤーには本作のアイコンでもあるExcaliburを強くおすすめします。ヘルスやパワー、シールドなどのバランスがとれていて使いやすいからです。“Radial Javelin(ラジアル・ジャベリン)”というジャベリン(投げ槍)を無数に放つ技で範囲内の敵を壁に突き刺せば、敵の大群に囲まれても逃げられます。逆に経験豊富なゲーマーで、より高度なスキルを使いたい場合は、Lokiを薦めます。“Switch Teleport(スイッチ・テレポート)”で敵と味方の位置を瞬時に入れ替えて、敵を混乱させることができます。トリッキーな技を華麗に使いこなす満足感も得られるでしょう。
──最後に読者へのメッセージをお願いします。
パトリック 過去2年以上に渡り作品を支え続けてくれたPC版のファンや、新たなPlayStation 4版のファン、日本の『Warframe』ファンのすべてに感謝したいと思います。PC版ユーザーからの支持がなければ、わたしたちはプレイステーション4まで『Warframe』の世界を広げられなかったでしょう。日本のコミュニティは力強く、情熱的であることは明らかです。わたしたちのコミュニティを成功させるために、いつでもフォーラムにフィードバックやコメントをいただけるとありがたいです。皆さんからのご意見を真摯に受け入れます。友だちも誘って、コントローラーを手にして、ぜひ太陽系を守ってください。そしてもっとも重要なことは、あなたが楽しむことです!
壮大な宇宙を舞台に、刀と銃を手にしたサイバー忍者となってミッションを遂行する『Warframe』。プレイヤーどうしの対戦も可能だが、基本的にはプレイヤーどうしが協力して、AIが操作する敵に立ち向かっていくゲームなので、アクションが得意でなくても長く遊びやすい。また、インタビュー中でも触れられているとおり、課金ユーザーはプレイが多少、有利になる程度(装備スロットの拡張や、獲得経験値・クレジットのブーストなど)で、無課金ユーザーと課金ユーザーとのあいだに越えられない壁のようなものは存在しない。
SF的な世界観が好きな人や、オンラインゲームを無課金で楽しみたい人は、一度お試しプレイをしてみてはいかがだろうか。
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■構成 ライター/ムライサトシ