いささか手前味噌ではありますが……5pb.盛氏と『ファミ通Xbox 360』松井編集長が大いに語る

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 5pb.から2014年4月24日に発売されるXbox 360用ソフト『バレットソウル -インフィニットバースト-』には、ファミ通.comとしても注目してほしいコラボレーション企画が盛り込まれている。初回生産限定版に、『ファミ通Xbox 360 バレットソウル スペシャル』が同梱されることになっているのだ。全68ページの大ボリュームでお届けするこの“特別版”では、当時の人気連載コーナーなどをしっかりと再現。往年の『ファミ通Xbox 360』の読者はもちろん、すべてのXbox 360ユーザーにぜひとも手にとっていただきたい内容になっている。

 5pb.のご担当者によると、限定版の発表以降、その評判も上々とのこと(→関連記事はこちら)。「だったら、コラボの経緯なんて、お話してしまいますか!」というノリで、『バレットソウル -インフィニットバースト-』のプロデュースを担当する盛政樹氏と、『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』の編集長であるKADOKAWA エンターブレイン ブランドカンパニーの松井ムネタツによる対談と相成った次第。いささか手前味噌ではありますが、ぶっちゃけ話もふんだんに盛り込まれておりますので、ぜひともご一読してやってくださいまし。

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▲MAGES.盛政樹プロデューサー(右)とファミ通Xbox 360編集長の松井ムネタツ(左)。

Xbox 360と『ファミ通Xbox 360』に一区切りをつけたかった

――『ファミ通Xbox 360』が月刊でなくなったのが、2012年10月号。2012年11月には『ファミ通Xbox360 2012 Winter』も発売されたわけですが、こうして『ファミ通Xbox 360』を冠した冊子が世に出るのは、約1年半ぶりとなります。まずは、『バレットソウル -インフィニットバースト-(限定版)』に、『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』が同梱されることになったきっかけから教えてください。

 おそらくは、『バレットソウル -インフィニットバースト-』が、僕としても5pb.としても、そしてもしかしたらサードパーティーにとっても、“最後のXbox 360オンリーのゲームになる”と思ったんですね。だったら、何か派手で、手に取ってもらいやすくなるような仕掛けをしたいなと考えたんです。で、「何がいちばんキャッチーだろう?」って知恵を絞ったときに、おそらくXbox 360ユーザーが、ほぼすべてその存在を知っているであろう、『ファミ通Xbox 360』を復活させたらどうだろう! って閃いたんです。

――それで、限定版につけることにしたのですね?

 限定版に小冊子をつけるというのは、5pb.でも過去何回か経験がありました。でもありきたりの設定集やガイドブックだとあまりおもしろくない。それだと、『バレットソウル』が好きな方でないと引っかからないかも……と考えたんです。で、もうちょっと違うアレンジの仕方がないかな……ということで、『ファミ通Xbox 360』復活は、わりと初期の段階で思いつきましたね。

――社内からの反対の声とかはなかったのですか?

 ぜんぜん! 志倉(志倉千代丸氏・MAGES.代表取締役社長)も、「いいじゃん!」みたいなノリでした。ウチの会社は、わりとそういうぶっ飛んだことが好きなんです(笑)。これも僕のタイトルですが、2014年3月13日に、プレイステーション Vita版『ファントムブレイカー:バトルグラウンド』をリリースしたのですが、“数量限定版”には、『オールアバウトPBBG』という200ページにも及ぶ設定集をつけたんです。内容は“リスペクト電波新聞社※1”的なノリなのですが、その企画を出したときも「これ誰がわかるんだよ! けどまぁ、おもしろいから、いいよ」といった感じでしたね(笑)。

※1:パソコン雑誌『マイコンBASICマガジン』(愛称“ベーマガ”)などでおなじみ

――わかる人にはわかる!みたいなノリですね。

 そういう社風なんです(笑)。ただ、いざ企画を動かす段になって、“ファミ通Xbox 360”という名前を使うことが許されるのか? という心配がありました。それで、最初に松井さんには、『バレットソウル -インフィニットバースト-(限定版)』につける小冊子のお仕事をお願いしたい、ということで打ち合わせに呼び出して……。

松井 気がついたら、いつの間にかこちらから「『ファミ通Xbox 360』をつけるのもいいですね!」と言い出していたという(笑)。盛さんからしてみたら、「しめしめ」という感じだったかもしれませんが(笑)。

 (笑)。確かに、罠にかけようとしたところはあります。「けっきょく松井さんも『ファミ通Xbox 360』をやりたいんでしょう?」という(笑)。あと、打ち合わせをしていた時期に、イメージエポックさんの『闘神都市』の数量限定予約特典として、『月刊テクノポリス2014復刻版』の同梱が発表されたことも大きかったかもしれません(→関連記事はこちら)。「松井さんは、関連しているの?」と聞いたら、タッチしていないとのことだったので(※2)、「だったら、こっちでがんばりましょうよ! オリジナルスタッフでいいものを作りましょう!」と(笑)。『月刊テクノポリス2014復刻版』がなかったら、もしかしたら、ここまでのテンションはなかったかもしれません。

※2:『月刊テクノポリス』は徳間書店刊行のパソコン雑誌。松井編集長は同雑誌にて編集のキャリアをスタートさせた。

松井 『月刊テクノポリス2014復刻版』が先に発表されていたので、「アレの真似か……」と思われるのも残念だし、だったら「最低でも中身はあちら以上にしたい」という思いはありましたね。あちらが32ページだというのを聞いて、こちらはその倍くらいにはしたいなあ……とか。

――ライバル心丸出しじゃないですか! いずれにせよ、『ファミ通Xbox 360』をつけるのは、あっさりと決まったんですね?

松井 そうですね。何の劇的な展開もなく(笑)。もちろん、事前に日本マイクロソフトさんに相談はしましたが、あっさりとオーケーをいただいたし。

 じつは、僕的には『ファミ通Xbox 360』同梱には、裏テーマがあったんですよ。松井さんとはけっこうプライベートで飲んだりしているので、近況がわかっていたのですが、何か松井さんがすごく暇そうにしていて……(笑)。暇で暇でしょうがないみたいな雰囲気だったんですよ。「ちょっと精神的に病んじゃうんじゃないか?」くらいに。これはもう、松井さんに生きる張り合いを与えるしかないな!と。

――そんな(笑)。つまり、松井が精神的に病まないためのプロジェクトということだったんですね。

松井 確かに、『ファミ通Xbox 360』はしばらく休刊していましたが、暇そうに見えたのはたまたまですよ!

 で、最初は「暇なんだから、全部自分で書いちゃえばいいじゃん!」って言っていたんですよ。

松井 最初はボクもそのつもりだったんだけど、意外と進行がキツイことが判明したんです。ソフトが4月発売だったら、1ヵ月前の3月くらいに作業を終わらせればいいだろう……と判断していたら、とんでもない!

 今回、日本マイクロソフトさんの流通を使わせていただいているのですが、パッケージの製造が早めの進行だったんですね。1月中には作業を終わらせないといけないことが判明した。

松井 これは、ボクひとりでは絶対に無理だなと思って、もともと『ファミ通Xbox 360』に関わっていたスタッフに可能な範囲で声をかけたんですよ。

――かつての仲間が再集結みたいな感じですね。僕も終わったと思っていた『ファミ通Xbox 360』に再び関われることになって、正直うれしかったですよ。

 そういっていただけると、本当にうれしいですね。僕はゲームにおいても、「作っていて楽しい」「これをやってよかった」と言われるような仕事をしたいと思っているんです。『バレットソウル』にしてからがそうで、いまはなかなかオリジナルのシューティングゲームを作れる時代じゃないのですが、開発会社さんもシューティングが好きで、作ることをとても楽しんでいる。それが、シューティング好きなユーザーに届けばいいな……という精神で開発しているんです。それを受けてつぎにつなげるというサイクルのモノ作りが、僕のスタンスなんです。そういう意味では、「うれしい」と言っていただけて、本当によかったです。

松井 再び関われるようになってうれしいというのは、確かに気持ちとしてはありますね。月刊誌が終わるときは、「季刊になります」という告知を最後の奥付でちょっとしたくらいだったんです。その後、1号だけ季刊で出たのですが、ボクはその季刊には絡んでいないので、何となく『ファミ通Xbox 360』という雑誌に対して、踏ん切り……というか決着がつかない思いがあったんです。それがこういう形で今度やることになって、やっぱりうれしかったですね。

――それは、昔片思いだった女の子に久しぶりに同窓会で会って、きっちりフラれるような感覚ですかね?

松井 ぜんぜんまったく違う!(笑) ボク的にはこのたとえが適切かどうかはわからないのですが、『伝説巨神イデオン』みたいな感じかな。テレビシリーズが打ち切られてしまったけど、最終的には映画となって完結するという。だからボクにとって、『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』は『伝説巨神イデオン 発動篇』なんだよね。やっとこれで完結させることができた、っていう(笑)。

――よくわからん!(笑) 相当数の読者が置いてけぼりになっているような気が……。

 『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』に関して言えば、ハードもそろそろ世代交代ですし、つぎの世代につなげるために一区切りつけたかったというのはありますね。

――ちょっとかっこよく言うなら、Xbox 360という青春時代の想い出に、一区切りつけるような感じですかね?

松井 それは美し過ぎるなあ(笑)。

読者の皆さんに納得していただけるものが仕上がった

――で、誌面の内容は、どのようにして詰めていったのですか?

 名物コーナーは残しつつ、基本はやりたいものを盛り込んでいった感じですね。もちろん“編集長日記”も外せない。で、“編集長日記”の4コママンガのオチで、編集長がハダカになるのは恒例なので、「これは絶対に入れてくれ!」と僕のほうからリクエストを出しました。

――そこですか(笑)。読者には賛否両論だったような気が……(笑)。

松井 あとは、シューティングゲームの同梱物なので、“シューティング”という括りは外せないというのはありましたよね。当時の連載も、どうシューティングの体裁に整えていくかということで、内容によっては少しアレンジを加えたりしました。たとえばクロスレビューでは、機体の使いやすさに点数をつけてもらったりとか。

 あれは、すばらしいアレンジでしたね。あとはコラム! 僕は『ファミ通Xbox 360』でコラムを連載させてもらっていた時期があったのですが、諸事情で打ち切り的な感じで連載が終わってしまったんですね。僕的にもあれが相当引っかかっていて、その“最終回”を何としてもやりたかったんです。コラムは、いろんな意味で職権濫用でやった感じです(笑)。

――僕が関わることになったときは、松井さんから「5pb.さんのゲーム同梱物ということは、あまり気にせずに作っていい」という編集方針を聞いたんですよ。それで、「ああ、好きにしていいんだなあ」って思いました。本書の特集“Xbox Strategy 2014”で、日本マイクロソフトの井上正之さんにインタビューをしたときも、5pb.さんのことはほとんど聞かなかったですし(笑)。

 そうですね。逆に5pb.色があまりに濃いと、いかにもPR色が強すぎて、ユーザーさんも冷めてしまうと思うんですね。当然『バレットソウル』の特典物ではあるのですが、せっかく『ファミ通Xbox 360』が復活するのであれば、当時の感覚で楽しめるような内容にしたかった。そのうえで、「あ、今回は5pb.の特集なんだ」みたいな感じで読めるくらいのバランスにするのが、ちょうどいいと思ったんです。だからこそ、『ファミ通Xbox 360』をつける意義もある。そこはかなりこだわりました。

――なるほど。とくにお気に入りの記事は?

松井 そうだなあ。ボクとしては“Xbox HISTORY”かな。Xbox 360のいまに至るまでの歴史をたどるという。以前本誌で同じ形で特集は組んでいるんだけど、そのときからあとの数年分を補足しつつ、アレンジを加えた企画になっています。当時のことをいろいろと振り返りつつ、いろいろなことを思い出して、思わずうるっとしてしまいました。あれもやったなあ、これもやったなあ、「何もかも皆懐かしい」、みたいな。

――初代Xboxが日本で発売されたのが、2002年。それから12年経っているわけで、いろいろなことがありますよね……。

 僕は、全部気に入っているのですが、強いていえばコラムの最終回を書けたのがよかったかな(笑)。コラムも、ぶっちゃけ『バレットソウル』の特典物として考えると、あまり意味がわからないというところもあるんですよね。とはいえ、コラムは『ファミ通Xbox 360』の名物でもあるし、ぜひとも入れたかった。それで、かつてのメンバーそのままではないのですが、なるべく当時の雰囲気を再現しました。“読み物が多い”“文字が多い”というのが、『ファミ通Xbox 360』のいいところだと思うので。

松井 ちなみに“文字が多い”ということでいうと、今回の小冊子は、本誌に比べて文字のサイズを少し大きくしているんですよ。以前の号をちょこちょこ見直してみると、さすがに小さ過ぎたという反省が(笑)。実際のところは、今回のこの号でふつうくらいなんだけど。

――老眼の影響ですかね(笑)。話を中身に戻しますが、シューティングゲームにゆかりのあるクリエイターが参加しての“シューティングゲーム座談会”も読み応えのある企画ですね。

 そうなんです! これにはいろいろと事情がありまして……。“シューティングゲーム座談会”は、以前『ゲーマガ』さん(※3)でもやったことがあって、そのときに僕は呼ばれたんですよ。その後、『ファミ通Xbox 360』さんが座談会をやったときは、僕はいなかったんです。諸事情によって出られませんで……。それが悔しくて! あまりに悔しかったので、今回「やってやろう!」と思いました(笑)。

※3:『ゲーマガ』はソフトバンク刊行のゲーム専門誌。

――また、職権濫用ですか!?(笑)

 けっこう私利私欲にまみれた部分もなくはないです(笑)。で、人選に関しては、仲がよくて声をかけやすい方を中心にお願いしました。皆さん快く引き受けてくださいましたね。

松井 この1年~2年で、Xbox 360でシューティングゲームを出していただいたメーカーさんが中心になっていますね。

 サクセスさんに関しては、“Xbox 360のシューティングゲームを切り拓いた”ところがあるのでお願いしました。あと、WASi303さんも、前回の『ファミ通Xbox 360』の座談会に呼ばれなかったのを寂しがっていたので、「じゃあ、せっかくなので、出ていただこう」と(笑)。

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▲『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』をチラ見せ。まさに充実の内容ですぞ(自画自賛)。

――改めてになりますが、『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』を終えてみていかがですか?

松井 『ファミ通Xbox 360』をちゃんと終わらせることができてよかったです。ボクの中で、踏ん切りがつきました。

 確かに成仏できた感はありますね。5pb.で最初のXbox 360タイトルが僕の作ったゲームで、おそらく最後のXbox 360オンリーのタイトルが『バレットソウル -インフィニットバースト-』。さらに、ずっと仕事をしてきた『ファミ通Xbox 360』もきっちりと終わらせることができたということで、感慨深いです。そういった意味では、スポッとピースがハマった感じがして、すごく気持ちがいいです。“テトリス”が決まって、一気にブロックが消えたみたいな(笑)。

――それにしても改めて思うのですが、『バレットソウル -インフィニットバースト-』をXbox 360オンリーでいくというのは、Xbox 360ファンにとってはうれしいことですね。

 実際のところ、日本マイクロソフトさんからラブコールがあったんですよ。Xbox 360にとってシューティングゲームというのは大きな柱のひとつで、絶対になくしたくはない。それで、「評判のよかった『バレットソウル』の新作を出してみませんか?」というご要望があったんです。そこまで言われたら、応えないわけにはいかない。日本マイクロソフトさんのリクエストを心意気に感じる部分があって開始したプロジェクトだったんです。さらに『ファミ通Xbox 360』までつけてしまったので、絶対に他機種では出せないという(笑)。ユーザーさんには、「こんなことまでやって、他機種で出すわけにはいかないでしょう!」という心意気も感じていただけたら……と。

――まさに、いろいろなピースがうまくハマった感じですね。

 そうですね。ああ、そうそう! 最後のピースとして、『ファミ通Xbox 360』でひとつだけ心残りがあったんですよ。それは“校了ピザ”です。

松井 ああ(笑)。

 あの“校了ピザ”を体験してみたくて、今回『ファミ通Xbox 360 バレットソウルスペシャル』の完成記念ということで、ピザをご用意しました(笑)。

松井 読者の皆さんに補足でご説明しますと、ファミ通Xbox 360編集部では、校了(印刷するまえに行う最後のチェック&修正作業)が佳境に入ると、編集部でピザを頼んでいたんですね。「これから校了するぞ!」「もう一晩がんばるぞ!」という気合いの意味も込めて。

――お腹を満たして、校了を乗り切ろう!という感じですかね(笑)。ファミ通Xbox 360は、進行がけっして褒められたものではなく、2~3日帰れないことがざらだったので……。

松井 君が言うな!(笑)

 それで、松井さんがツイッターでつぶやき始めて、一部のファンのあいだで有名になりだしたんですよね。“校了ピザ”として。てっきり打ち上げの意味合いが込められているかと思ったのですが、そうではなかったんですね。

松井 打ち上げというよりは、校了への討ち入りですね(笑)。

――「今日が本番!」みたいな感じかしら。

松井 一時期は、お寿司とかも頼んだことがあったのですが、飢えた狼たちにとってはコストパフォーマンスが悪くて(笑)。

 これで、“校了ピザ”も体験できて、すべてのピースがハマりました! これで思い残すことはありません。本日は、ありがとうございました!

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▲というわけで、伝説の(んな、わけはないが)“校了ピザ”を再現。こんな日が、また来るといいなあ(涙)。

番外編ファミ通Xbox 360、Xbox 360のことなど……ふたりのXbox 360用ソフト・マイベストTOP3は?

 というわけで、コラボにまつわるインタビューは無事に終了したわけですが、お話はそれだけに留まらず、『ファミ通Xbox 360』やXbox 360に関することなど大いに盛り上がり……。というわけで“番外編”として、盛氏×松井対談の続きをお届けします。興味のある方は、ぜひともご一読を。

――せっかくの機会だからうかがってしまいますが、盛さんは『ファミ通Xbox 360』のことをどう思っていたのですか?

 かなりコアな感じで、テキスト量も多かったので、“ファミ通”の名前を冠しているわりには、わりとマニアック系だなというのが第一印象でした。それは、Xbox 360のユーザー層にも合致していて、おもしろいゲームを嗅ぎ分けるユーザーさんは食いつく、わかる人はわかるみたいな雰囲気は雑誌にも感じられて、嗜好が合致したらうまくいくかなと。商業誌として、それでいいのかどうかは別問題としてあるのですが……。本誌のテイストだったり味だったりは、ものすごく好きでしたね。

松井 正直なところ、この仕事をしていると、少しずつゲームそのもので遊ぶ機会が減っていってしまうものなのですが、それを引き戻してくれたのがXbox 360です。ゲームで遊ぶことって「本当に楽しいな」とあらためて感じさせてくれたので、「どうすればこの面白さを誌面で伝えられるのだろう?」とすごく考えるようになりました。

――思いもよらず、いい話ですね(笑)。

 こんなにユーザー目線でゲームを遊んで、毎日何らかのゲームを遊んで、「実績どうですか?」みたいな話をする編集長は、僕は初めてだったので、そういう意味ではものすごく親近感が湧きましたね。

――ぶっちゃけ『ファミ通Xbox 360』の編集長としての日々はどんな感じだったのですか?

松井 これは、適切な言いかたがどうかわからないんだけど、作っている過程はとても楽しくて、サークルというか同人誌というか……そんな感覚は少しあったかもしれません。もちろん商業誌なので、それだけでよくないというのはあるのですが、ある意味ビジネスを忘れて楽しんでいたところはあるかも。

 同人誌の感覚というのは、よくわかります。Xbox 360のゲーム作りにも若干近いところがあるのが、コアで濃い市場に対してゲームを発信していこうと思うと、同人誌的なスタンスがいちばん響くのかもしれません。その市場に向けて、どんどん濃くなっていくのが、いい部分でもあり、逆に悪い部分でもある。広がりにくいんですよ。濃くてすごくいいコンテンツなんだけど、その濃い味付けを「おいしい」と思ってくれる人はわずか。引いてはそれは、Xbox 360が本当に広がり切れなかった理由かもしれません。作られるゲームも濃いし、発信する『ファミ通Xbox 360』も濃くなってしまったので、一般人には全体的に濃すぎてちょっと入っていけない。それで少し閉鎖的になってしまった……というのは、ちょっと感じますね。良し悪しとはまた別の問題ですが……。

松井 2010年にKinectが登場したときは、わりと「ファミリー層を取り込みにいくぞ」みたいな部分もあったのですが、かといって『ファミ通Xbox 360』も右へならえでできるかというと、いまいる読者のことを考えると、そっちの方向にはいけなかった。ちょっとでもそっちへ行くと、薄まってしまうのが怖くて、そういう舵取りはできなかったんです。

 そのへんは、なかなか方向転換が難しいですよね。

――ちなみに、『ファミ通Xbox 360』をやっていて辛かったこととかはなかったのですか? 進行も相当破綻しておりましたが……。付き合わされるデザイナーさんもたいへんだったような気が……。

松井 君が言うな!(苦笑) 実際のところ、月刊誌が終わる数カ月間は、本当に辛かったですね。「ここで終わる」ということがわかっているのに、そこに向けて1歩1歩踏み出さないといけない辛さといったら……。それまでは、ファミ通Xboxのつぎはファミ通Xbox 360という感じで、つぎがある程度見えていたのですが、今度の場合はそうではなかったので……。「これを校了してしまったら終わりだから、ちょっと仮眠を取って校了を延ばそうかな……」みたいなことも考えました。明日起きたら、また校了前日になってるとかならないかな、って(笑)。

――そして、さらに進行がずるずる延びると……。

 その感覚はよくわかります。僕も5pb.に入る前は、トンキンハウスでギャルゲーを何本か作っていたのですが、トンキンハウスがゲーム事業部を畳むことになって、「このタイトルを作った後は、事業部が解散」ということになったんですね。早くリリースしたいけど、この作業が終わったらつぎはないんだという。それをわかりながら、その日の作業をするというのは、わりと辛かったですね。

――さらにせっかくだから聞いてしまいますが、おふたりにとってずばりXbox 360とはどのような存在だったのですか?

 これは、商業的にゲームを開発しているプロデューサーの立場として、言っていいかどうかわからないのですが、個人的には、ゲームは楽しむのにある程度スキルが必要だと思っています。マンガを読んだりとか、映画を見たりに比べると、楽しさを享受するまでのハードルがけっこう高い。スキルがあってこそのエンターテインメントなので、わからない人はわからないので、マンガや映画に比べたら、市場規模的にそんなに広がるものではないと思っていたんです。もし、広がるのならば、一過性のブームなだけで、最終的にはゲームの楽しさが理解できる人しか残らない。そういった意味では、映画と同じ予算感でやっていくと破綻していくものと考えていました。コアな人が本当にゲームを楽しめるコアな市場が、ゲーム市場としてはいちばん安定するのかなっていう思いがあったんですね。僕自身もけっこうコアでマニアックな人間なので、なるべくそんな層にフックするゲームを提供したかったというのもあります。50万本~100万本も売れるようなタイトルではないけれど、30000人、40000人にはずっと心に残るタイトルとして記憶に刻み込まれる。ファミ通のクロスレビューでは、10点、3点、3点、3点みたいな、誰かにとってはストライクゾーンだけど、ほかの人にはそうでもない……といった、偏ったゲームを作っていくのが希望だったんです。そこに割りとフィットしたのが、国内のXbox 360の市場でした。振り返ると、とても居心地のいいハードでしたね。理想を言えば、もうちょっと普及台数が多いほうがよかったのですが……。

松井 ボクにとっては、さっき少し話したけど、何よりもゲームをする楽しさを取り戻させてくれたハード。何よりも、人と遊ぶことの楽しさを教えてくれたのがXbox 360だったと思います。それまでは、ゲーム機ってわりと黙々と遊ぶものだったのが、電源を入れると誰かしらフレンドがいる。ワイワイとパーティーの輪に入っていって、「何を遊んでいるの?」「これで遊ぶ?」といった感じで、ただしゃべっているだけでも楽しかったし。

――人との交流をもたらすハードだったのかもしれませんね。

松井 まるっとまとめるなあ(笑)。

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――さらにせっかくの機会なので、おふたりのXbox 360用ソフト・マイベスト3を教えてください。

松井 3本に収まらないんだよなあ。とりあえず“Xbox 360だけでしか発売されていない”、もしくは“Xbox 360から始まった”という縛りをボクの中で作って選んだ3本は……。

■『シュタインズ・ゲート(5pb.)
 「編集部のみんなに薦めた数少ないソフトのひとつです。5pb.さんからプレゼンを受けたときから、ただならぬものを感じていました。ボク自身がタイムトラベルものが好きというのもあるけど、伏線の貼りかとか、ものすごく刺さりました」

■『ユアシェイプ フィットネス・エボルブ 2012(ユービーアイソフト)
 「ボクを痩せさせてくれたソフト。実際始めておよそ1年で、20キロ痩せました。本当に痩せられるんだなあ……と(笑)。いまでも2日に1度は遊んでいます。実績はまだ4つくらい残っているんだけど、あと1つは解除したいなって。全部解除しようとすると、このペースだとあと6年くらいかかるんだよね……」

■『パックマン チャンピオンシップ エディション(バンダイナムコゲームス)
 「プレイ時間は5分しかなくて、極論すればやることは全員同じなのに、プレイヤーのよってスコアの差がでる。どんどんうまい人と下手な人の差がついていって、“これはなんでだろう?”“なんで、こいつのスコアが抜けないんだろう?”ということで、当時何度もプレイし直しましたね。とにかく研究に研究を重ねて、フレンドと記録を抜いた抜かれたで、携帯電話で逐一連絡を入れていたくらい盛り上がりました(笑)。そこはボイチャでやれよ!って思ったけどなんか興奮しちゃって(笑)。気軽に遊べるのもいいです」

 僕は以下の3本です。

■『デッドアイランド(スパイク・チュンソフト)
 「僕はゾンビものが好きなので、とにかくあの世界にずっと住んでいたい。追加でミッションが増えれば、拡張パックとかはいらないので、一生居られます(笑)。“箱庭でゾンビ感”が楽しかった」

■『バーンアウト パラダイス(エレクトロニック・アーツ)
 「箱庭のドライブゲームです。当時の箱庭ゲームは、同じ背景の使い回しが多くて、いま自分がどこにいるかわかりづらかった。本作は、個々の街並みがちゃんとしていて、どこの通りにいるかのか、すぐに覚えられる。“ここを抜けるとあの風景が見えてくる”というのが、頭の中で思い浮かべられるのが、当時の箱庭ゲームとしては画期的でした。あと、いろいろと気持ちがいい(笑)。とにかく大好きです」

■『ブルータルレジェンド(エレクトロニック・アーツ)※日本未発売
 「ティム・シェーファー率いるダブルファインプロダクションズ開発による、ヘビメタとファンタジーの要素が融合した、箱庭風のアクションです。いろいろなところでミッションがあって、クルマで走り回ってマップ上のアイテムを収集して、さらにはRTS風の戦闘モードがあって……と、“オレの好きな要素を思いつく限り入れてみた!”みたいな感覚のソフトですね。最終的にはごちゃまぜ感で収集がつかなくなった嫌いはありますが、好きなものだけ成立させたという力技みたいな部分は、すごくうらやましいです。あと、オフィーリアというヒロインが出てくるのですが、めっちゃタイプです(笑)」

――ご自身の作るソフトとは方向性がまるで違いますね(笑)。

 ぜんぜん違いますね。ゾンビものも箱庭ものも作りたいのですが、いかんせん予算がかかるので、なかなか実現できないところなのですが、そういうゲームを遊ぶのは勉強になるし、励みにもなるので、楽しんでいます。

――では最後に、今年発売されるXbox Oneに向けてのメッセージをお願いします!

松井 早く正式な発売日を発表してほしいですね。いろいろな展開を、ファンの皆さんも待っていると思うし……。発売日当日に箱を開けて、接続して……というのを、すごく楽しみにしています。

 僕は、最近はハードがどうとかはあまり気にしないんですよ。むしろどんなソフトが出るのか、というほうが大きくて、「とにかく自分が気に入ったタイトルを遊べればいいかな」感が強いですね。いまは、『タイタンフォール』があるので、「Xbox One最高!」だと思っていますし、それに変わる魅力的なソフトがあれば、プレイステーション4でも遊ぶし……という感じです。とにかく、遊びたいソフトがたくさん出てくるといいなと。

――まあ、ハードはソフトありきのところはありますよね。

 ただし、実績集めは辞められません! ゲーマースコアが27万という積み重ねがあるので……。プレイステーション4も遊びますが、トロフィーは集めません。本当に申し訳ないんですけど、トロフィーにまで手を出したら、たぶん仕事をする時間がなくなるんです。生活に支障がでるので。いま睡眠時間を削って実績を解除しているんですね。僕はあまり睡眠を取らなくて大丈夫なのですが、仕事が終わって家に帰ってゲームを始めるのが、早いときで夜の11時くらい。それで、朝5時くらいまで遊んでいるんですよ。で、7時に起きて会社にいく。もう削れるところがないんです。もう、引くに引けないですね(笑)。なので、ライフワーク的な形で実績は継続していこうかなと。

――まさに実績厨ですね! 松井さんは引き離される一方ですよ?

 松井さんは、まだまだ実績10万Gの人なので、人としては引き返せます(笑)。実際のところ、僕はXbox Oneには“濃度”の部分を期待しています。だから独自路線でいってほしいとは思っています。100万台売れるのが成功なのか、それとも売れたのは10万台だけど、全員がリリースされたゲームを全部買ってくれる熱心なゲーマーなのか、いずれが成功かというのは、何とも判断がつきがたいところがあります。プレイステーション4は、「お、出たんだ」みたいな感じで、何気なく購入するかもしれませんが、Xbox Oneに関しては、ちゃんと下調べをしたうえで、「こういうゲームが出るんだ? じゃあ、Xbox Oneを買わなくっちゃ!」ということで、買うハードだという気がするんです。それがプレイステーション4とXbox Oneの明確な差みたいなもので、僕はその差を継続していってほしいと思っています。いずれにせよ、もともとアーケードゲームを作っていて、コンシューマーも手がけてきた身からすると、コントローラーで遊ぶゲームが好きなんです。電車で移動中に片手間で遊ぶ、タッチパネルでさっくりと遊ぶというタイプのゲームばかりだと寂しいので、コアなゲームにはこれから先もずっと生き残ってほしいと思っています。Xbox Oneには、とくにコアな部分でがんばってほしい。プレイステーション4とXbox One、共存共栄でコンシューマーゲームを盛り上げていってもらいたいですね。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、僕は「ゲームって、暇つぶしでやる遊びだね」というのが定着してしまうのがイヤなので、Wii Uも含めてハードメーカーさんには、ゲームのおもしろさを伝えるべく、力を合わせてがんばってもらいたいです。

松井 盛さんにもXbox One向けタイトルを期待したいですね!

 日本マイクロソフトさんからラブコールがあれば、いつでも! 正直な話をすると、そのハードのユーザー層に合ったゲームを作っていきたいと思っています。プレイステーション4の市場にあったゲームもあるし、Xbox Oneの市場にフィットしたゲームもある。当然、両方のハードに向けて出したほうがいいゲームもあるはずなんです。適宜そういうタイトルを出していくつもりでいます。ただ、体はひとつなので、どういうタイミングで出すかは、いろいろな兼ね合い次第ということになります。いずれにせよ、ユーザーさんの嗜好にあったゲームを提供していきたいと思っていますので、楽しみにしていてください。

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