日加を繋いだ今風のサービス

 Conatus Creativeの2Dアクションゲーム『River City Ransom: Underground』は、『ダウンタウン熱血物語』の正式ライセンス作品。クラウドファンディングを使って約22万カナダドルを集め、開発進行中だ。

 本作ではライセンス取得だけにとどまらず、『熱血硬派くにおくん』などのディレクターを務めた岸本良久氏がクリエイティブコンサルタントとして参加するなど、日加共同プロジェクトとして進行している。しかし、カナダのインディーデベロッパー(独立系開発会社/チーム)であるConatus Creativeがどうやってそんなことを可能にしたのか? 本作のエグゼクティブ・プロデューサーである町田龍馬氏(Zen Startup代表取締役)に話を聞いた。

正式ライセンスを取りたい! しかし問題は山積み

 『ダウンタウン熱血物語』(英題:River City Ransom)好きが集まっているConatus Creativeにとって、プロジェクトの早い段階から、正式ライセンスの取得は必要事項だった。
 著作権的に問題があるファンメイドの作品ではなく、オリジナルを尊重した上で規模の大きなリメイク版をしっかりと作りたい。しかし、カナダの小規模チームが言語や商習慣の違いといったハードルを乗り越えるのは大変だ。そこでチームが取ったのは、オンラインサービスを使って、何か助言してくれそうな人を探すこと。

 かくして3月、町田氏の元に連絡が届く。起業家とその道の専門家を繋ぐ有料電話相談サービス“Clarity.fm”で町田氏のプロフィールを見つけ、日本企業からのライセンス取得にあたってのアドバイスを求めてきたのだ。

 町田氏は15分ほどの電話で、どうやって海外の会社が日本の権利者を探し、コンタクトして契約まで持っていくか一般的なアドバイスを行った上で、町田氏がConatusと契約して代行することも提案したという。

 結果として、Conatus Creativeは町田氏をエグゼクティブ・プロデューサーとして迎えることを選択する。町田氏が権利者であるミリオンとの交渉に入り、契約書にサインできたのは4月のこと。Conatus Creativeは大きな実績がない小さなチーム(通常、日本のメーカーからは敬遠されがち)だが、彼らの真面目さと熱意をアピールして、契約に至る。

 現在もエグゼクティブ・プロデューサーとして、日本(権利者であるミリオンや、アドバイスを行う岸本良久氏)とカナダを繋いでいるそうなのだが、基本的にチームとは会わずにメールベースで進めているというのも新しいところ。ちなみに、自身とConutus Creativeの契約にあたって、町田氏がフリーランスの専門家を雇う“oDesk”でインドの弁護士を雇い、契約書チェックを行ったというのも、なんとも“今”っぽいハナシだ。

カナダ生まれのくにおくん『River City Ransom: Underground』はいかにして『ダウンタウン熱血物語』の正式ライセンスを取得したのか?_01

“アレックス”が再び“くにお”になる“逆ローカライズ”も検討

 せっかくなので、カナダでの開発やローカライズの方向性についても聞いてみた。

 まず気になったのはグラフィック。必殺技のモーションを描いている動画が公開されているように、本作ではピクセルアート(ドット絵)スタイルを採用している。
 とにかく手間がかかりそうだが、「オリジナルに近いゲームにしたい!」という理由で、当初から本作にとって必須の要素だったというのだからスゴい。昔よりテクノロジーが進化している分、“見た目のタッチは昔と一緒でありながら、より派手なアクション”の実現を目指しているとか。Youtube公式チャンネルでは、レベルデザイン(ステージの構築)の様子も見られる。

 なお、くにおくんシリーズと言えば豊富な技が特徴的だが、オリジナルに近い技もありつつ、ほとんどは新しい技を作り出して割り当てているほか、各プレイアブルキャラクターが持つ特徴的な必殺技を楽しむスタイル(「ストリートファイターに近いスタイル」)となっているそうで、この辺りは実際どんな実装になっているのか、気になるところ。

 サウンド面では、オーディオディレクターのDustin Crenna氏(公式動画ではSE収録風景なども披露)の指揮のもと、8bitスタイルを得意とするRich Vreeland氏を起用。さまざまなインディーゲームに参加している売れっ子であるVreeland氏を信じて、あえて細かい指示を出さずに、伸び伸びと作曲してもらっているそうなので、仕上がりに期待したい。

 日本語ローカライズについては、「できるだけ早く出したい」(町田氏)ものの、時間と費用の問題で、日本のパートナーによる協力を必要としているそう。
 一方で、『River City Ransom: Underground』で海外版(オリジナルのRiver City Ransom)準拠になっている名前や外見(例えば“くにお”は“アレックス”で髪もブロンド)については、確定事項ではないものの、日本仕様に変える方向で検討中。テキストについても、単なる英日翻訳ではなく、日本用に『ダウンタウン熱血物語』テイストの訳を検討したいとの意向だった。

 また、クラウドファンディングでの支援者向けのβテストは2014年秋を予定しており、PC版(Mac/Linuxも含む)発売後に、その成功度合いを見て、プレイステーションプラットフォームなどでのコンソール(家庭用ゲーム)対応も検討するとのこと。
 なおPC版の日本での配信方法はSteamなどを含めて検討中で、「もしこの記事を見ている方で、アドバイスできる方がいれば、ぜひ町田までご連絡ください!」とのことなので、ナイスなアイデアを持つファンや、業界関係者諸氏は同氏のTwitterなどで意見を送ってみてはいかがだろうか。(文・取材・構成:ミル☆吉村)