“愛と悲しみの中世騎士道シミューレションRPG”正式サービス開始!

カプコン『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』プロデューサーインタビュー_10
カプコン『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』プロデューサーインタビュー_01
株式会社カプコン
『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』
プロデューサー
杉浦一徳 氏

 『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』はインストール不要で遊べる、パソコン用オンラインゲーム。自分の領地に資源を生産するさまざまな建築物を設置し、戦闘やさらなる建築物の設置に必要な資源を確保しながら、
クエストなどで集めた“英雄”を活用・育成して、戦闘での勝利や内政の充実を目指す、シミュレーションRPGだ。本作の魅力やプレイのコツなどについて、プロデューサー杉浦一徳氏に話を伺った。

――まずは、本作の開発に至った経緯からお聞かせください。

杉浦一徳(以下、杉浦) 現在サービス中の『鬼武者Soul』を開発しているころから、『鬼武者Soul』と似たゲームシステムで、まったく違う時代を舞台にしたゲームを作ろうと考えていました。当初は、私が大学在籍中にアーサー王の研究をしていたこともあって、その時代を舞台にしようと思っていたのですが、ちょうど開発に着手する際に、アーサー王関連を題材にしたり、世界観にしたソーシャルゲームやブラウザゲームがほかに出たんですね。それでスタッフと話し合ってみたところ、「アーサー王ではありきたりすぎるので、もう少し違う方向を攻めたらどうか」、「中世ヨーロッパはどうだろうか?」という意見が出てきました。

また、そのとき同じ第二開発部の『ウルトラストリートファイターIV』のアシスタントプロデューサーの綾野(智章氏)から、佐藤賢一氏の『傭兵ピエール』を薦められました。さっそく読んでみたところ、非常に魅力ある時代で、この時代に活躍したほかのキャラクターたちも魅力的であることがわかり、ゲームの題材にしてもおもしろいかなと思ったんですね。その後、“百年戦争”関連の小説や歴史書を読み漁って構想を練り、最終的にこの世界観やゲーム内容に至りました。

――開発時に、とくにこだわった点はどこでしょうか。

杉浦 個人的に領地に建築物を並べ、“箱庭”を作るのが大好きなので、今回もその部分にはこだわっています。また、“英雄”のイラストは、リアルなテイストにすることを重視しました。リアルで迫力のある画風ということで、昔からお付き合いのあるイラストレーターのジョン・ジュノ氏がぱっと思い浮かび、メインビジュアルと主人公クラスのキャラクターのイラストを描いてほしいとお願いしました。

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▲「エドワード黒太子」
▲「ジャンヌ・ダルク」
▲「カール4世」

ゲームで使われている音楽は、個人的にクラシックが好きで、前々から使ってみたいと思っていたのですが、このゲームの世界観にマッチしていると考え、採用しました。サウンドチームに少しわがままを言わせてもらって、自分の好きな曲を選ばせてもらったんです。ですので、ゲームの世界観やイメージは、ほとんど私が決めちゃいました(笑)。

――“ジャンヌ・ダルク”など、日本人にもなじみのあるキャラクターも登場しますが、そういった人物に思い入れのあるユーザーをターゲットとしているのでしょうか。

杉浦 そうですね。『鬼武者Soul』と並行してサービスを行うことになりますが、戦国時代が好きな人たちと中世ヨーロッパが好きな人たちは、それほど重ならないだろうと考えています。『鬼武者Soul』のお客様に遊んでいただくことも、もちろんうれしいのですが、根本的に『鬼武者Soul』をプレイしていないお客様に向けて制作しているゲームとお考えいただきたいです。

 ただ、『鬼武者Soul』では、どうしても基幹部分からの問題で改善できなかったことのほとんどを、『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』では解消しています。たとえば、箱庭部分は重くならないように、かなり快適にしました。また、バトルの駆け引きの楽しさや、奥深さも増していますので、ぜひ体験してほしいですね。さまざまな部分に拡張性を持たせるように設計しているので、今後どんどんバリエーションが増えていくと思います。

――世界観については、剣と魔法でバトル、というファンタジーのテイストではありませんよね。

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杉浦 全体的に、なるべくファンタジー色を消す方向にしました。メインのストーリーに関しては、宮廷でのドロドロとした陰謀、駆け引きといったこと描いていますね。ファンタジー色を濃くしてしまうと、けっきょくアーサー王の時代になってしまいますからね。『鬼武者Soul』も戦国ファンタジー的なテイストですので、差別化するために『ユーロ・ヒストリア』はファンタジー要素は1割程度に収めようと決めました。イラストや建物、ストーリーもリアル路線です。

少し話は逸れますが、大学時代、テーブルトークRPGが好きで、かなりマイナーですけど『混沌の渦』というゲームブクを遊んでいました。中世ヨーロッパの世界を歩いて旅するのですが、魔法が一切ないので回復魔法もなく、薬草を傷口に当てて何日もかけて体力を回復するというような、リアル志向のゲームでした。でも、そういうリアルな部分が大好きで、おもしろかったと記憶しています。

また、このゲームを制作するにあたり、騎士道とはどういうものなのか、封建国家はどういう仕組みなのかなど、中世ヨーロッパの知識を改めてキッチリ身につけました。ディレクターにも「ちゃんと資料は調べた?」とか、毎日プレッシャーをかけていましたね(笑)。

べつに、すべてが史実通りではなくてもいいんですが、中世ヨーロッパの歴史や背景をわかったうえでストーリーなどをアレンジしていきたいと思っていました。歴史に詳しいお客様にも、「そういうアレンジで来たか」、「そういう解釈もあるよね」と楽しんでいただけるようにしたかったんですね。ちなみに、まったく知識がないお客様のために、騎士道や中世ヨーロッパの世界観が勉強できる入門クエストも入れてあります。

――英雄のイラストも質実剛健といった感じですね。

杉浦 イラストレーターの皆様にも、あらかじめイメージを伝えさせていただきました。「中世ヨーロッパはチェインメイルの時代です」、「ごっつい肩パットが目立つ鎧や露出が多い水着アーマーは避けてほしい」といったように(笑)。本来はプレートメイルが出てくる前の時代が舞台ですからね。細かい部分では、「実際の紋章や当時の衣装をインスパイアしてほしい」という要望も伝えました。ですので、何枚も描いてくださったイラストレーター様からは、「チェインメイルばかりで差別化がたいへんです……」と愚痴られました(苦笑)。

●こだわりのバトルシステム

――正式サービスの前に行われた"先行体験テスト"の結果について、印象に残ったユーザーの反応などをお聞かせください。

杉浦 バトルへの意見が多かったです。完成度はまだ70%でしたし、もっともお客様が遊ぶコンテンツですから当たり前といえば当たり前ですよね。バトルについては、『鬼武者Soul』とはまったく違う遊びかた提供したくて、システムを大きく変更しました。『鬼武者Soul』を経験しているお客様からは、変えようとしているという姿勢については評価していただいたのですが、「もう少しおもしろさの工夫が必要」、「バランスを調整してほしい」といったきびしい意見も多くいただきました。ただ、新規のお客様には、おおむね好評でしたね。編成画面がわかりにくかったのがいちばんの反省点ですが、かなりゲームとして詰め込んでいるので、ユーザーインターフェースは微調整にとどめつつ、チュートリアルなどでフォローしていく予定です。バランス調整はディレクターが徹底的に行っているので、期待してください。

――バトルは読み合いが楽しめるシステムという印象を受けました。

杉浦 読み合いに関しては、かなり意識して作っています。対戦相手がどういう陣形を組んでいるかはひと目でわかりますが、その陣形の意図や、スキル構成については、読みが必要になりますね。

――バトルで勝つためのコツを教えてください。

杉浦 まず最初に気をつけたいポイントは、スキルがしっかり発動する陣形にすることです。3×3のマスの中に5人の英雄を配置するのですが、その位置がスキルの発動条件に関わっています。また、“支援兵”との相性も重要です。攻撃力アップなど、支援兵の効果が及ぶマスは決まっているので、それも考慮して陣形を決定してください。おそらく最初は負けると思いますが、リプレイ機能もありますので、それを見て敗因や、相手の作戦を検証することも大切ですね。

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――“交戦”では、相手との戦闘を回避することができますよね。資源を消費してしまうので、非常に悩ましいです。

杉浦 交戦には“連勝”という概念がありまして、連勝を続けるめにはこの回避をどう使うかがポイントになります。回避した結果、さらに強い相手と当たる場合もありますけど。勝ち負けの判断をシビアに行わなくてはならないので、読み合いがさらに熱くなると思います。

――バトルの演出やデフォルメキャラクターにもかなり凝っていますよね。

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杉浦 兵種によって、キャラクターの見た目が変わります。ちなみに兵種は、スキルの発動条件や、習得条件にも関わっています。私はどちらかというと性能より、見た目が気に入ったデフォルメキャラクターを使いたいタイプです(笑)。演出に関しても、ほかのブラウザゲームにはないリッチな演出を体験していただけると思っています。先行体験テストのときより、かなりよくなっていますよ。

――ギルドが自動的に編成されるシステムになっていますが、その意図をお聞かせください。

杉浦 縛りのない、カジュアルなコミュニティを実現したかったのです。よくあるオンラインゲームのようにコミュニティに比重を置きすぎると、人間関係を気にしてゲームの楽しさが味わえているのか、わからなくなることがありますからね。『鬼武者Soul』では「こんにちは、同じ県の所属ですね」程度の、かなり軽いコミュニティで遊べるような仕様にしました。『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』でも、ある程度それを踏襲したかったのです。ただ、所属国で結びつけてしまうとまったく同じになってしまいますので、傭兵ギルドという形の自動編成タイプの仕様にしました。

●箱庭の要素と大規模コンテンツについて

――続いて箱庭の要素についてお聞かせください。まず、建築物はどのくらいの数がありますか。

杉浦 現段階では、細かいものを含めると100種類を超えます。イベント限定で手に入る建築物もたくさんありますよ。たとえば、ピサの斜塔やスコットランドの遺跡カラニッシュなども手に入ります。

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――グラフィックもきれいですし、コレクションする楽しみもありそうですね。

杉浦 ただ、『鬼武者Soul』のときよりは、今回は難度が高くなっています。せっかくの名跡なので、ありがたさやレア度といったことを考慮しての判断です。もちろん、難度が高くてぜんぜん手に入らないというわけではなく、イベントやクエストをこなせば誰でも入手できます。

じつは、私がとくに好きな建築物は、最初に手に入るメインのお城です。当初のデザインは、某テーマパークにあるような白亜のお城だったのですが、中世ヨーロッパには、そういったお城は存在しないと思うんです。いまの武骨で質実剛健な戦争用の城になるまで、デザインに関しては何度もNGを出した、という感じでした。

――お城も、そのほかの建築物も、かなり細かいところまで作り込まれていますね。

杉浦 じつは最初の段階から3Dで作っています。2Dで作るほうが時間もかかり、逆にたいへんなんです。3Dでモデルを作って、箱庭に合うような形に落とし込んでいます。早く作れるぶん、細部まで凝ることができるようになっています。

――大きなコンテンツとして“百年戦争”がありますが、これは先行体験テストの形を踏襲していくのですか?

杉浦 はい。先行体験テストの段階でも、かなりのユーザーがプレイしてくれたので、基本的にはそのまま実装していきます。

――“遠征軍派遣”や“幻獣討伐戦”はどのようなコンテンツでしょうか。

杉浦 両方とも実装はまだ先になりますが、百年戦争のような定期的に行われる大規模イベントになります。幻獣討伐戦は、『鬼武者Soul』の巨大悪鬼羅刹のようなイメージです。こちらのほうが、そこまで時間がかからずに実装できると思います。詳細はもう少しお待ちください。

――課金システムについてお聞かせください。どのようなコンセプトに基づいて構築したのでしょうか。

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杉浦 ディレクターとも相談して、現段階では「課金ガチャは入れない」という方針で、行動力の回復アイテムをメインに販売する方向で勝負しました。英雄を獲得するドキドキや楽しみを、できるだけ多くのお客様に味わっていただきたいなと。そのぶん、回復アイテムは『鬼武者Soul』より高い、100円に設定しています。ただ、この方針が続くかは、お客様次第なところもありますので……ぜひご支持とご支援をください!(笑)

――スマートフォンやコンシューマー機での展開はお考えですか?

杉浦 Unityの開発環境が整えば……ですね(苦笑)。わかる人にはこれでわかるはずです。

――海外での展開は考えていますか?

杉浦 『鬼武者Soul』は台湾でサービスを開始し、高い評価をいただいています。どの地域であってもお客様が求めるなら、ぜひ供給していきたいですね。ニーズについては、正式サービス後に海外からのアクセス数や海外企業のオファー内容で判断することもあります。ただ、最初から背伸びして海外を意識して作っているわけではなく、我々が楽しいと思うゲームを作り、それを海外のお客様に共感していただけるのなら、という流れですね。

――今後のアップデートの頻度や予定について教えてください。

杉浦 最初のリファインアップデートは来年の1月下旬を考えています。『百年戦記 ユーロ・ヒストリア』は『鬼武者Soul』とは違い、パソコンオンリーですので、臨機応変なアップデートが行いやすい環境です。お客様の意見や要望を見て、随時アップデートしていくつもりです。

――それでは最後にひと言、お願いします。

杉浦 世界観にこだわっているので、中世ヨーロッパの雰囲気が好きな方たちに集まって楽しんでいただけたらなと思っています。箱庭に関しても、かなり本格的なデザインの建築物を用意して、ひとつひとつのパーツに遊び心をこめてみました。英雄のイラストも、ハイクオリティーなものに仕上がっていると思っています。最後に、課金に関しても、ガチャなしでいくと決めたので、ぜひひとつの試験的な運営タイトルとしてご支援いただけますとありがたいですね(笑)。『鬼武者Soul』同様、ご意見、ご要望をガンガンいただければ幸いです。無料で十分に遊べるゲームですので、気軽にプレイしてください。よろしくお願いいたします。