最後はプレイインプレッションをお届け!

『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』のゲームディレクターは、宮本茂氏の大ファンだった!? プレイインプレッション&開発者ミニインタビュー【プレスツアーリポート】_01

 2013年9月にイタリアのジェノヴァで開催された、『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』(以下、『AC4』)のプレスツアー。インタビュー記事(→コチラ)のつぎは、『AC4』の序盤ミッションのプレイインプレッションを掲載しよう。

試遊台でシークエンス3を体験!

 今回のプレスツアーで体験できたのは、『AC4』のシングルプレイにおけるシークエンス3だ。『AC』シリーズを遊んだことがないという人に説明すると、『AC』の物語はシークエンスと呼ばれる章に分かれていて、今回のシークエンス3は、ゲームの序盤にあたるパートだ。『AC』シリーズは毎回チュートリアルがていねいに作られており、シークエンス1~3くらいまでは簡単なミッションをこなしつつ、プレイを自然に覚えられるようにチュートリアル的な内容となっていることが多いのだ。

 『AC4』でもその部分は変わらないようで、船の操船やアップグレードなど、おもに航海に関する仕組みについて知ることができた。

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スケールのデカい海でくり広げられる海戦

 前作『III』では、船でのミッションが限られており、大海原を自由に移動することはできなかった。しかし、今回は超広大な海を自由自在に航海できる。まず特筆すべきは、海(波)のリアルさだ。海上では大小さまざまな波が混在しており、そのうねりによってエドワードが乗っている船が大きく揺れる。敵海賊船との戦いでは、波の高さも計算に入れて大砲を撃つ必要がある。波に揺られ、船体がバランスを崩した状態で撃っても当たらないからだ。なお、敵の船にある程度ダメージを与えると、相手の動きを止められる。そうなったら、直接乗り込むチャンス。手下の海賊たちといっしょに敵船へ飛び乗れば、ド派手な集団戦に突入する。まさにこれぞ海賊船の醍醐味! 映画などでよく見る大乱戦を存分に楽しむことができた。もちろん、乱戦においてもあえて姿を見せず、マストの上や船の外側にしがみついて行動し、敵をひとりずつ始末していく暗殺者らしいスタイルで戦うことも可能となっている。

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サメだらけの海に潜ることも……

 特定の海域では、海の中に潜って宝探しをするミッションにチャレンジできる。今回遊ぶことができたのは、たくさんのサメがうろうろしている超危険な海中を、サメたちに見つからないように泳いで進むミッション。陸地でも海上でも向かうところ敵なしのエドワードだが、海中では丸腰状態なので、戦闘力はほとんどゼロ。サメに見つかるとかみつかれて大ダメージを受けてしまうので、敵が向こうを向いたときを見計らって慎重に進む必要がある。このとき注意したいのが、エドワードの空気を示す酸素ゲージの残量。時間経過とともに減少し、ゼロになるとゲームオーバーとなるので、あまりゆっくりもしていられないのだ。サメの動きと酸素ゲージを交互ににらめっこし、隙を見てサメの脇をくぐり抜けるのは、何とも言えないドキドキが楽しめる。

 なお、水中では空気の入った樽や箱などがあちこちにある。それらを利用することで、エドワードの酸素ゲージを回復させられる。うまく活用すれば、海の中にも長時間潜っていられるというわけだ。ちなみに、海中ではまったく歯が立たないサメだが、海の上に上がれば撃破可能。サメ狩りでは、ロープがついたモリと小舟を使用することになる。まずはロープ付きのモリを投げてサメに突き刺し、その後サメに舟を引っ張らせて体力を奪うのだ。これを何度かくり返せば、サメを狩猟可能。サメの皮は、エドワードの装備品をアップグレードする素材として使用できるようだ。どんな効果があるか、気になるところ。開発スタッフの話によると、野生動物の狩猟のシステムは、ユービーアイソフトの『ファークライ3』のシステムから影響を受けているとのこと。『ファークライ3』を代表するシステムのひとつが『AC4』でどう機能するか、非常に楽しみだ。

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さまざまな武器を駆使したバトル

 歴史的資料を紐解くと、18世紀の海賊たちはじつに多彩な武器を使って戦いをくり広げていたという。本作の主人公エドワードもまた武器の達人である。二刀流のカトラス(片刃剣)と4丁のピストルに加え、さらに吹き矢や爆弾といった武器の扱いもお手のもの。今回のプレイは序盤だったため、すべての武器を試すことができなかったが、基本的なバトルを体験することができた。両手に構えた剣を使った連続攻撃は流れるようなモーションで、華麗そのもの。敵集団との乱戦では、スタイリッシュかつ迫力あふれる立ち回りを楽しむことができた。なお、敵の攻撃に合わせてボタンを入力し、さまざまな反撃を叩き込むカウンターのシステムは前作から引き続き本作でも健在。カウンターが発動すると画面がスローモーションになるので、そのあいだにボタンを追加入力すれば、対応したカウンター技がくり出せるようになっている。本シリーズの戦闘では、あえて敵の攻撃を誘い、反撃を叩き込むという戦法が有効だったが、本作でも重要となりそうだ。

 ピストルをしまうホルスターをアップグレードすることで、最大4丁までピストルを装備できる。今回のプレイでは4丁のピストルを使えなかったが、最大まで所有すれば、4連射が可能になるようだ。そうなると乱戦時に絶大な威力を発揮するはず。バトルの爽快感がアップしているに違いない。

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試遊を終えて

 プレスツアーリポートは、ここまで。

 今回、開発者の話を聞き、サンプルROMをプレイしてわかったことだが、従来の歴史ドラマから海洋冒険ロマンの方向に舵を切った『AC4』は、決してこれまでのシリーズが持つテイストを失っていなかった。むしろゲームプレイはステルスを重視していたりと、シリーズの原点回帰を図ろうとしている点が多く見受けられた。シリーズのファンで、「いつもと雰囲気が違うから」という理由でスルーするのはもったいない。

 また、逆にシリーズ未経験という人にもオススメしたい。シリーズ関連作の数は膨大だが、連綿と続いてきた大きな物語は前作『III』でいったんひと区切りついているので、初心者でも入っていきやすいだろう。さらに、今回は青い海に透き通る空が広がる世界を舞台とした、“これまででもっとも明るい雰囲気”の『アサシン クリード』が展開する。シリーズ随一の多様性と広さを誇るオープンワールドを冒険すれば、さまざまな驚きと発見が見つかるはずだ。海賊の大胆さと暗殺者の繊細さを併せ持つ新主人公、エドワードのアクションをぜひ堪能してほしい。

~エクストラインタビュー~ 『AC4』を作った人はどんな人物なのか!?

 最後に、発売するたびに数百万本の販売本数を記録する『AC』シリーズの現場を統括する人物は、いったいどのような経歴の持ち主なのか。ゲームディレクターのアシュラフ・イズマエル氏にいろいろな質問をぶつけてみた。じつはアシュラフ氏、かなりの日本のゲーム通とのこと。

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『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』
ゲームディレクター
アシュラフ・イズマエル氏

--『AC』シリーズのように規模が大きいタイトルを統括するのは初めてですか?
アシュラフ・イズマエル氏(以下、アシュラフ) 『AC4』は、私が関わってきた中でもっとも大きなタイトルであり、さらにゲームディレクターとして統括するのも初めての経験です。しかし、有能なスタッフたちに囲まれて仕事ができたので、『AC4』の開発はとても楽しんでやることができました。

--アシュラフさんがこれまで関わってきたゲームを教えてください。
アシュラフ 最初はエレクトロニック・アーツでプログラマーとして出発し、そこで『FIFA』や『NBA』といったスポーツゲームを手掛けてきました。しかし、私が本当にやりたかったのは、ゲームのデザインと世界観を作ることだったので、6~7年前にデザイナーに転向したのです。そしてデザイナーとしてスケートボードのゲーム『Skate』に携わったのち、リード・デザイナーとしてユービーアイソフトに入社、『プリンス・オブ・ペルシャ』シリーズの1作品ともうひとつ別の作品(※2年間費やしたにも関わらず、残念ながら途中で開発中止になったタイトルなので、プロジェクト名は明かせないそうだ)を手掛けました。ユービーアイソフトには4年半勤務しています。『AC4』は、私が関わった中で6作目のタイトルですが、会社はつねにこれまでと違う新鮮な人材を起用しようとしているので、私のような新しい人材を使ってアイデアを取り入れてくれました。今回、ゲームディレクターという役割のオファーがあったのですが、『AC』シリーズは昔からとても好きなゲームだったので、すぐに承諾しましたよ。

--入社して4年半で看板タイトルを任されることは珍しいのでは?
アシュラフ そうですね。しかし、ユービーアイソフトでは4年半ですが、私には10年以上のキャリアがありました。さらに4年半懸命に努力してきたので、チャンスを与えられたのだと思います。

--シリーズのファンである1千万人のファンのことを想像して不安になることはありませんか?
アシュラフ それはまったくありません。ただただうれしいことだと感じています。これほど多くの人々の気持ちに触れることのできる何かに関われるのはすばらしいことです。ひとりのゲーム開発者として思うのは、自分たちが作ったものに対して、多くの人がお金と時間を投資してくれるわけで、その投資に見合ったものを提供しなければいけません。思い出作り、感情体験、仕事から離れてリラックスする時間、歴史への興味など、人によって要求する“何か”は異なりますが、それぞれに特別な体験を提供できればいいと思います。こうしたことは、自分にとってとても価値のあることです。ゲーム業界で働くというのは、ただお金を稼ぐだけではなく、それ以上に深いものがあります。ゲームを買ってくれた人が自分の作ったものを愛してくれて、これには60ドルの価値がある、人生の中で数十時間を費やす価値がある、と思ってもらえればうれしい限りです。『AC』のように固定ファンの多いゲームの開発に携われるのは大きな喜びですね。

--アシュラフさんのゲーム遍歴について教えてください。
アシュラフ 自分は、ファミコンやスーパーファミコンで育った、任天堂の大ファンです。『スーパーマリオ 64』はもっともすぐれたゲームのひとつだと思います。ちなみに、『スーパーマリオ 64』は『AC4』の世界を作るに当たって、とても参考にしていて、お城は海に、絵はいろいろな島にというように役割を置き換えています。これはずっと自分がやりたかったことです。『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』など、ずっと任天堂のファンでした。とは言え、ほかにもRTSやRPGなどもたくさん遊ぶようにしていました。ゲーム開発者として、いろいろなジャンルのゲームをやることは大事ですから。異なる国での異なる開発手法を勉強できるのは、貴重な経験です。

--先日のインタビューで『ゼルダの伝説 風のタクト』について言及していましたが、これもお気に入りなのでしょうか?
アシュラフ 大好きなゲームです! 驚くべき作品だと思います。なかにはアートスタイルや航海のシステムに不満を言う人もいたが、個人的に愛してやまないゲームです。発売後すぐに購入してさんざんプレイしました。これからHD版を遊ぶのが楽しみですね。『AC4』では、『ゼルダの伝説 風のタクト』における航海の扱いや、世界の中でイベントがどのように発生するか、そしてワールドマップ構成や島の配置などをよく見て参考にしました。

--それはすごいですね。アシュラフさんは現在の日本のゲーム業界に対して、どのような印象を持っていますか?
アシュラフ しばらくきびしい状況にあったと思いますが、任天堂はつねにおもしろいことをやっている印象ですね。個人的に宮本茂さんの大ファンです。『スーパーマリオギャラクシー』がリリースされる前に彼の講演を聞きましたが、とにかくすごい内容だと思いました。彼はゲーム作りの天才だと思います。ほかには『Demon's Souls(デモンズソウル)』を開発したフロム・ソフトウェアは、JRPGを呼び戻す存在ではないでしょうか。ユービーアイソフトでオンラインとシングルプレイヤーの関係を語るとき、よく引き合いに出されるゲームのひとつが『Demon's Souls(デモンズソウル)』です。また、プラチナムゲームスも興味深いことにチャレンジしていて、ゲームのクオリティーも非常に高いと思います。こうした光る宝石の存在は、日本のゲーム業界にとってはすばらしいことだと思います。日本のゲーム業界がこの先どこへ向かうのか、本当に楽しみですね。あと、日本のゲームは全体的にゲームのシステムがかなりディープな傾向がありますが、欧米では誰でも楽しめるようなゲームが主流になりつつあります。たとえば『Mass Effect』もRPGではありますが、日本の基準だとRPGとは呼び難いところもあったりしますよね。私は、欧米と日本のあいだでいいバランスを見つけることは可能だと思っています。ゲームの楽しさを深化させながら、同時に圧倒的なストーリー体験をもたらす、新しいゲームプレイをいつか皆さんにご提供したいですね。

--会って話したい日本のクリエーターはいますか?
アシュラフ ひとり選ぶとしたら、もちろん宮本茂さんです。私がエレクトロニック・アーツに在籍していたころ、一度お会いしたことがありますが、とても短い時間だったし、夢中になってしまって……。でも、いつかひとりのゲーム開発者として宮本茂さんと夕食をいっしょにできればうれしいと思います。彼からは多くのことを学べると思います。宮本さんは、ゲームデザイナーとしてだけでなく、ゲーム業界全体に大きな貢献をされてきた方で、本当にすばらしいと思います。

--日本のゲームを愛する人として、日本のゲーマーに『AC4』のどんなところを楽しんでほしいですか?
アシュラフ このゲームの世界そのものです。世界の構造は、日本のゲームに刺激を受けています。また、船やキャラクターのカスタマイズ要素も強化しているので、手強いボスとの戦いを大いに楽しんでほしいです。今回は、日本のゲームである、『ファイナルファンタジー』シリーズのボス戦や、『BAYONETTA - ベヨネッタ』の奇想天外な発想にもとづいたバトルを参考にさせてもらいました。日本のゲーマーには、船のカスタマイズを楽しみつつ、航海や攻撃テクニックをマスターし、手強いボスとの戦いに臨んでほしいですね。