まだまだインタビューは続きます!

『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』のキーパーソンにインタビュー! 発売前に知っておきたい情報が満載【プレスツアーリポート】_01

 2013年9月にイタリアのジェノヴァで開催された、『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』(以下、『AC4』)のプレスツアー。前回のインタビュー(→【コチラ】)から引き続き、今回も『AC4』開発チームの主要スタッフへのインタビューを掲載する。

より遊びやすくなったマルチプレイ

 『AC』シリーズのマルチプレイはとてもユニーク。対戦プレイでは、敵をただ倒すのはなく、“暗殺”することが要求されるからだ。対戦の基本ルールは、AI(人工知能)で行動するNPCの群衆の中に身を隠し、敵のプレイヤーに接近。敵に気づかれないように暗殺すると高いスコアが得られ、制限時間終了までのスコアがもっとも多いプレイヤーの勝利となる。ただ闇雲に敵を倒すよりも、じっくり暗殺を狙ったほうがスコアが稼げる仕組みとなっているのが特徴。アクションゲームの腕前よりも、敵のプレイヤーの行動を予測し、相手を出し抜く読みの鋭さのほうが重要となる、『AC』シリーズならではの作りだ。

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 ただし、その斬新さゆえに、なかにはマルチプレイの輪に入れないプレイヤーもいるという。シリーズならではのルールを覚える前に敵に倒されてしまうからだ。『AC4』では、そういったプレイヤーの意見に応えるべく、チュートリアルやトレーニングモードをより充実させている。さらに、初心者でもマルチプレイになじめるように新しいモードも用意したようだ。『AC』シリーズのマルチプレイを統括するダミアン・キーケン氏にお話をうかがった。

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『アサシン クリード4 ブラック フラッグ』
マルチプレイ ゲームディレクター
ダミアン・キーケン氏

――今回のマルチプレイは、チュートリアルがすごく充実しているように感じました。新規プレイヤーにとってうれしい設計ですね。

ダミアン・キーケン氏(以下、ダミアン) 『AC』シリーズにおけるマルチプレイの長所は、ほかのネットワーク対応ゲームと違ってユニークなところです。その反面、ゲームの遊びかたを覚えないと、すぐに倒されてしまいます。ですので、幅広いプレイヤーに遊んでもらえるように、チュートリアルやトレーニングはていねいに作るようにしています。

――先ほど、サンプルROMで協力プレイモードの“ウルフパック”をプレイしました。ウルフパックは、さらにアンリーシュとディスカバリーに分かれているようですが、ふたつの違いについて教えてください。

ダミアン ウルフパックの仕組みを覚えてもらうために、ディスカバリーを追加しています。このモードでは、敵が徐々に強くなっていくので、プレイヤーも少しずつレベルアップしていくことができます。初心者のプレイヤーには、こちらを選んでほしいですね。一方、アンリーシュでは挑戦的な難度です。腕に自信があるプレイヤーはこちらがオススメです。難しさとやさしさのバランスを取るためにモードをふたつ用意しました。

――『AC4』は新世代ハードでも発売されます。マルチプレイはどのように進化しましたか?

ダミアン おもにふたつの点が変わりました。グラフィック面です。ポリゴンを2倍にし、解像度やテクスチャーをアップグレードしています。ふたつ目は、新世代機が持っている新機能を活かすことです。ゲームの映像をほかのプレイヤーとシェアする機能など、目一杯利用しています。

――ところで、たとえばPS4版とPS3版、Xbox One版とXbox 360版といったように、ハードを越えて遊ぶことはできるのでしょうか?

ダミアン ノー。現時点ではオンラインの要素が違うので難しいですね。でも、将来的にはできるようにかもしれません。

――『AC4』のマルチプレイの舞台となるマップの特徴を教えてください。

ダミアン 今回はいろいろなタイプのマップを用意しました。シングルプレイに登場するマップをモチーフにしたもの。そして、そこから刺激を受けて作ったもの。最後にまったく新しいものの3種類があります。また、ゲームプレイの観点から言えば、陸上での戦いがメインのマップ、アクロバティックに上り下りするマップ、そのふたつをミックスさせたものがあります。

――個人的には200種類以上のゲームルールを自由に組み合わせて遊ぶ“ゲームラボ”が気になっています。具体的にどんな内容に変えられるのでしょうか?

ダミアン 変更できる項目は多岐にわたります。まず重要なのがルール変更。たとえば、制限時間を8分にしたり3分にしたりと選べます。つぎにスキルやアビリティーなどの能力も変更できます。プレイヤーキャラクターにつき、それぞれ5つまでセットできるようにしたり、アビリティーの使用制限なども決められます。たとえば、スモークボムを全員が強制的に使わなければいけないように設定することも可能です。ほかにも、エア・アサシンだけしかスコアがもらえないようにする設定もあったります。本当に自由な設計になっているので、試してみてほしいですね。

――プレイヤーは、ゲームラボでルール変更されたゲームにジャンプインすることになりますが、気に入らないルールがあれば、途中でやめられるのですか?

ダミアン もちろん。ゲーム開始前にルールが全部みられるので、気に入らなかったらプレイしなくてもいいです。自分にとってちょうどいいバランスのモードと巡り会ったら、その設定をほかのプレイヤーと共有することもできます。私たち開発チームとしては、今後良質なゲームを集めて、音楽のプレイリストみたいなものを作り、なるべく多くのプレイヤーと共有していきたいと考えています。

――スキルクラフティングを利用すれば、ひとつひとつのスキルの能力をプレイヤーの好みに応じて細かく変更できますが、作り手としては調整がたいへんなのではありませんか?

ダミアン 毎回新しいスキルを取り入れたいと思っています。できるだけクールなものを追加したいのですが、なかなかバランスを取るのが難しくて。いつも頭を悩ませています。

――今回のスキルクラフティングのポイントは?

ダミアン スキルごとに強化可能なカテゴリーが3種類あります。たとえばスモークボムだったら煙幕を大きくしたり、効果時間を長くしたりできます。新しく追加したデコイというものがあるので、それを選ぶとどうなるか、ぜひ試してみてほしいですね。

――最後に個人的に気になったことについて聞いてもいいでしょうか? 日本では海賊をモチーフとした『ONE PIECE(ワンピース)』というマンガが圧倒的な人気を博しています。ダミアンさんはご存じですか?

ダミアン もちろん知っていますよ。

――『ONE PIECE(ワンピース)』の主人公ルフィは、麦わら帽子がトレードマークなのですが、『AC4』のマルチプレイに登場するペルソナ(プレイヤーキャラクターのアバターのこと)に、麦わら帽子を被った海賊が登場することに気づいて驚きました。これは単なる偶然でしょうか?

ダミアン そのことですが、まったくの偶然なんですよ(笑)。このツアーが始まる2週間ほど前に、欧米向けのWebサイトその新ペルソナを公開したところ、たちまちファンの皆さんから「ルフィに似てる!」という指摘をもらって。私たちとしては本当に意図していなかったので、ビックリしました(笑)。ちなみに、ペルソナの見た目は、プレイヤーの皆さんに「このペルソナは大好きだけど、このペルソナは大嫌い」というパッションを持ってもらえるようにデザインしています。だから皆さんの話題となってペルソナが印象に残るのは大歓迎です。

“黒ひげ”になった男

 続いて、『AC4』のストーリーモードに登場する重要人物“黒ひげ”を演じたマーク・ボナー氏へのインタビューを掲載する。黒ひげ(エドワード・サッチ)と言えば、ワイルドな風貌で人々に恐れられ、我々が思い浮かべる典型的な海賊像の原型となった人物だ。“歴史上もっとも恐れられた男のひとり”と言っても過言ない黒ひげを、マーク氏はどのように演じたのか。演技のポイントについて聞いてみた。

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黒ひげの3Dモデルを担当
俳優
マーク・ボナー氏

――役者としてのキャリアが長いマークさんですが、ゲームのキャラクターを演じるのは初めてですか?

マーク・ボナー氏(以下、マーク) ええ、初めてのことですね。

――実際に演じてみて、いかがでしたか?

マーク とてもすばらしい経験でした。役者人生でこんなに楽しかったことはありません。私はゲーム好きなので、この仕事を任されてとてもワクワクしたんですよ。それと、黒ひげという歴史上もっとも恐れられている人物のひとりを演じることができ、これ以上うれしいことはありませんでしたね。

――ゲーム中の黒ひげが登場するカットシーンを見て、危機迫る表情、怖さが伝わってきました。演じるうえで気をつけた点はありますか?

マーク それができたのは、リードスクリプトライターのダービー氏のおかげです。持論ですが、俳優というものは脚本以上のことは演じられないと思っています。脚本がよければそれを題材に飛躍できる。『AC4』の脚本は、とてもすばらしいと思うし、このような機会を得られてとてもうれしかったです。自分はまだゲーム中の姿を見ていないのですが、皆さんが楽しんでくれて本当に光栄です。

――演技をキャプチャーするときは、体のあちこちに特殊なマーカーをつけることになりますが、そんな中で演技をするのはたいへんだったのではありませんか?

マーク 装置によって動きが制限されたので、正直最初はとてもやりづらかったです。とは言え、それは最初の2日間くらいで、慣れてくると装備していることも忘れてしまいました。余談ですが、今年の初頭にネパールの海抜3500メートルの場所でのロケを経験しましたが、高度は身体にさまざまな影響を与えます。しかし、演技しているうちに徐々に慣れてくるものです。

――マークさんが演じた黒ひげとは、どんな人物でしたか?

マーク もっとも恐れられている海賊であり、同時にとても興味をそそられる魅力的な男です。彼は船長を乗組員の投票で決めるなど、民主的なマネージメントをしていました。また、どうしても必要な場合以外は人を殺さなかったと聞きました。暴力的、恐怖心を抱かせる計算された風貌は、暴力を使わずに相手を屈服させる手段だったのです。

――役者として、プレイヤーに黒ひげのどんなところを見てほしいですか?

マーク 一般的な黒ひげの人物像として、人々によく知られている部分はもちろん、この人物の奥深さ、複雑さがわかってもらえるとうれしいです。『AC4』のプレイヤーに、それを少しでも理解していただけたら、そのとき自分はいい仕事をしたと言えるのでしょうね。

海賊の黄金時代を生きた人々を知る

 最後に、『AC4』とは直接関係ないものの、海賊の黄金時代について詳しい、作家のコリン・ウッダード氏に話をうかがった。18世紀のカリブ海を跋扈する海賊たちには、多くの人々が惹きつけられていたという。彼らはなぜカリスマ性を持っていたのだろうか?

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『Republic of Pirates』著者
コリン・ウッダード氏

――“海賊の黄金時代”を描いた書籍『Republic of Pirates』の著者であるコリンさんにうかがいます。この時代の魅力とは?

コリン・ウッダード氏(以下、コリン) 非常に興味深いのは、『AC4』の舞台である1715年以降の5年間に活躍した海賊たちが、お互いのことを知っていたか、またはすれ違っていたことです。そして、このわずかな期間に活躍した海賊たちこそが、いわゆる海賊の通説となり、後生の映画やマンガなどの題材のじつに90%を提供しているのです。この理由には、ふたつあります。ひとつは彼らが海賊として大きな成功を収めたこと。そして、彼らは皆、社会的反発心を持っていて、貴族や領主といった特権階級に反対していたことです。

――海賊たちが成功した理由について教えてください。

コリン 彼らが成功を収めた理由は、それまでの海賊と違い、カリブ海近辺に“聖域”とでも言える基地を持っていたからです。海賊の黄金時代は、英・仏・スペインの植民地戦争の終結直後に始まり、カリブ海のバハマ諸島は戦時中2回に渡って犠牲となり破壊されました。被害者の多くは島を去りましたが、なかにはジャングルに残って生活している者もいました。そこに海賊たちがやってきて、大砲を設置し防備体制を固め、簡単には倒されないように基地を築いたのです。基地には、闇商人、奴隷(海賊船の乗組員や船長になれる可能性もあります)、売春婦、犯罪者など、いろいろな種類の人間が集まり、奴隷植民地に囲まれたなかで、ひとつの別社会を形成していきました。この社会を背景に海賊たちは力を蓄え、各国政府の軍艦にも対抗できる力を持つようになったのです。

――ふたつ目の理由の、反発していた理由は何ですか?

コリン 海賊たちは、自分たちを犯罪者とは考えておらず、ロビン・フッドのように金持ちから奪って貧乏人に与える義賊のように振る舞いました。当時の文献には、植民地の人々が海賊たちを支持し、応援していたという証拠が残っています。海賊は当時の国民的英雄であり、存命中に彼らについての本も書かれていました。そして、海賊は現在に至るまで英雄として扱われています。19世紀に作家ロバート・スティーブンソンが書いた冒険活劇『宝島』は、海賊の英雄譚にインスパイアされて生まれた話です。この本に影響を受けたディズニーのスタッフがアニメ映画を制作し、そこからさらにテレビ番組などの題材となり、現代に至っては海賊をモチーフとしたゲーム『AC4』が登場することとなりました。海賊の人気は、彼らが活躍していた当時から変わっていないと言えるでしょう。

――ゲームに登場すると思われる、実在の海賊について教えてください。

黒ひげ(エドワード・サッチ)
コリン 黄金時代の海賊の中で、もっともおもしろい人物です。彼は、チェスのプレイヤーのように物事を深く考えて進むタイプです。予備なの由来にもなった立派な黒ひげにたくさんの火縄をつけたりと、できる限り異様な恰好をして人々の恐怖心を煽っていました。これは、戦わずして相手を降伏させ、積荷を傷つけず、できれば船ごと略奪するためです。当時、海賊の船の乗組員たちは、安い賃金で飢餓状態が続く、非常に苦しい環境で働かされていたため、黒ひげは捕らえた船員たちにラム酒を振る舞い、仲間に引き込んでいました。このように、彼は計算高く、非常に戦略的で賢い人物でした。

ベンジャミン・ホーニゴールド
コリン バハマ諸島を基地とする海賊共和国の真の創設者のひとりで、植民地戦争後にバハマに来た最初の人物です。彼は巨大な帆船船団を指揮していました。帆船の航路は風向きで決まるため、スペインの船は南米で宝物を入手してスペインへ戻るためには、同じ場所を通ることになります。そこでホーニゴールドは迷路のようになっていて動きにくい場所に網を張り、獲物の到着を待ち構えていました。この航路パターンに気付いたのはホーニゴールドが初めてでした。黒ひげはおそらく彼の副官だったと言われています。黒ひげにとっては指導者的存在です。

チャールズ・ヴェイン
コリン 海賊の黄金時代末期に出てきた人物で、大きな船団を抱えて活躍しました。当時の海賊はできるだけ人を傷つけないのがふつうでしたが、ヴェインだけは暴力的変質者と呼べるほど人を脅し傷つけ、暴虐の限りを尽くしました。しかし、彼は短命でした。英国軍がカリブ海に船を送って占領した際、ほとんどの海賊は降伏したのですが、ヴェインだけは全面攻撃に出たのです。よく考えてから行動する黒ひげのような人物とはまるで正反対に位置する男だと思います。

キャリコ・ジャック
コリン ヴェインと同じく後期に現れたヴェインの副官です。キャリコは、インド更紗風の派手な衣装をまとっていました。ヴェインと同じく考えるよりも行動するタイプでしたが、ある種のカリスマ性を備えていました。当時は、海賊船の船長を選挙で決めていましたが、彼は人気があり、ヴェインの後を継いで船長になりました。ただ、必要以上にチャレンジしたがることがあったので、結果を出していません。英国の海軍基地があるジャマイカは、海賊にとってもっとも危険な場所でしたが、わざわざそこへ出向いて攻撃したため、キャリコの船団は全員捕らえられて船も取り上げられました。パワフルな存在ではありましたが、愚かしいほど危険を冒すところがあったのです。

アン・ボニー
コリン キャリコ・ジャックは同じ船に乗っていたアン・ボニーと恋愛関係にありました。ボニーは男装した乗組員として捕らえられ、有罪となったが妊娠していたため処刑されませんでした。それは当時、妊婦は処刑できなかったからです。その後も、彼女が処刑された、あるいは死亡したという記録はないので、囚われの身から脱出に成功した可能性があります。

メアリ・リード
コリン アン・ボニーと並ぶ、有名な女性の海賊です。ふたりは知り合いでした。メアリはふだん女性の姿で過ごし、戦闘に際して男装したという記録があります。当時は男装のほうがより戦闘にふさわしかったからでしょう。キャリコ・ジャックの船がジャマイカで捕らえられた際、キャリコ・ジャックやほかの男は隠れたのですが、アンとメアリは勇ましく戦ったとも言われています。

――『AC4』に登場した黒ひげの印象は?

コリン 黒ひげには、写真が残っていませんし、それに彼を実際に見た人が描いた似顔絵もないので、どのような姿だったのかはわかりません。黒ひげを実際に見た人は、痩せていて背が高く、恐ろしく長い黒髭をたくわえていたと言っているだけで、それ以外に記録はありませんでした。したがって、自由な解釈が可能です。『AC4』の黒ひげは、噂をうまくアレンジしていて、非常に興味深いですね。

 次回更新は2013年10月23日(水)を予定!