トロントのトップは……この人なんです!

“美しすぎるスタジオ所長”ジェイド氏に訊く!『スプリンターセル ブラックリスト』トロントスタジオリポート ~最終回~_01

 『スプリンターセル』シリーズの最新作、『スプリンターセル ブラックリスト』(以下、『ブラックリスト』)を手掛けたユービーアイソフト トロントスタジオ(以下、トロントスタジオ)の取材リポートを掲載! 

 最終回となる今回は、2007年に『アサシン クリード』1作目のプロデューサーとして華々しく現れ、その美貌と知性で全世界のゲームファンを魅了しまくったジェイド・レイモンド氏のインタビューをお届け。「……なぜジェイド氏が!?」と思った方もいるかもしれないが、いまのジェイド氏のポジションは、『ブラックリスト』のエグゼクティブプロデューサーであり、トロントスタジオのヘッド(所長)でもあるからだ。現在5つのプロジェクトが進行中のトロントスタジオを運営中だというジェイド氏は多忙を極めるため、今回のスタジオツアーで直接会うことはできなかったが、メールでのインタビューに快く応じてくれた。ここからは、その内容を掲載しよう。

 ちなみに、ジェイド氏のことをよく知らない人は、ファミ通.comの2007年7月の記事(→【【ユービーアイソフト】噂の美人プロデューサー『アサシン クリード』のジェイド氏を直撃!】)をチェックしてほしい。これを読めば、ジェイド氏の当時の人気ぶりが少しでも伝わるはずだ。

“美しすぎるスタジオ所長”ジェイド氏に訊く!『スプリンターセル ブラックリスト』トロントスタジオリポート ~最終回~_02
『スプリンターセル ブラックリスト』
エグゼクティブプロデューサー/
トロントスタジオ所長
ジェイド・レイモンド氏

――ユービーアイソフトがトロントスタジオを新設することになった経緯について教えてください。

ジェイド・レイモンド氏(以下、ジェイド) トロントスタジオは、高品質なHDゲームを開発し、ユービーアイソフトのブランドに独自のフレーバーをもたらすことを目的として設立されました。トロントは、数多くの才能あるアーティストやプログラマーに恵まれた都市で、少なからぬ数の世界トップクラスの人材が、このオンタリオ州に集まっているのです。また、トロントという都市に深く根づいた映画産業もゲームを開発する上では大きなメリットです。私たちはSIRT(映画産業に関する研究および訓練センター)といった地元の映画関係の組織と連携し、映画とゲームの両方に利益をもたらす研究開発事業への投資を行っています。

――ジェイドさんはトロントスタジオの所長としてご活躍されていますが、所長の具体的な業務内容について教えてください。

ジェイド トロントスタジオのトップとしての私の役割は、開発チームがつぎに発表する製品のため、ベストな短期的戦術を選択できるよう万全を期しつつ、スタジオ全体としての長期的な戦略を練ることです。私は開発側の人間のひとりとして開発チームととともに働くと同時に、スタジオをサポートする人事や財務部門とも緊密な連携を保っています。また『ブラックリスト』では、私はエグゼクティブ・プロデューサーとして、ゲームを本編を手掛けるスタジオのチームといっしょに作業していて、さらにモバイル端末向けゲームである『Splinter Cell Blacklist Spider-Bot』の開発や、スプリンターセル初のグラフィックノベルである『Echoes』の出版といった関連作品の統括も行いました。しかし、私は今後長期にわたってエグゼクティブ・プロデューサーを務めることはないと思います。なぜなら、トロントスタジオは、『ブラックリスト』というたったひとつの巨大プロジェクトを抱えていた組織から、5つもの巨大プロジェクトを抱える組織へと拡大しつつあるからです。

――トロントとは、どんな場所なのでしょうか?

ジェイド トロントは活気に溢れ、またじつに多彩な顔を持つ都市です。その文化的多様性は世界的にもトップクラスです。たとえば、トロントがジャマイカ人とポルトガル人の世界最大のコミュニティー(もちろん彼らの母国を除いて)を擁する街であるという事実を見ても明らかでしょう。あなたの興味の対象がなんであろうと、この都市のバラエティー豊かな街並やコミュニティーの中に、きっと自分が求めるものを見つけられるはずです。また、トロントはその文化レベルの高さでも知られています。コンサートに出かけたり、アートギャラリーを訪ねたり、はたまたセレブウォッチングに興じたりといった活動を、シーズンを問わず楽しめる都市、それがトロントなのです。これはこの都市の最大の魅力の一つです。

――トロントスタジオの1作目として、『スプリンターセル』シリーズの最新作を選んだ理由は何ですか?

ジェイド 私はトロントスタジオが手がけるべきフランチャイズは何かという問題について、モントリオールスタジオのヘッドのヤニス・マラトや、ユービーアイソフトの最高経営責任者(CEO)イブ・ギルモと話し合いました。当時の私はモントリオールスタジオで、『アサシン
クリード
』と『ウォッチドッグス』、それに加えもうひとつの未発表の新規タイトルを統括するエグゼクティブ・プロデューサーでした。私たちは前述したシリーズ作品のいずれかをトロントスタジオに持ってくることも検討しましたが、最終的に『スプリンターセル』シリーズが戦略的にもっとも優れた選択であると合意したのです。私見ですが、『スプリンターセル』は、ユービーアイソフトが擁するシリーズ作品の中でもっとも大きな潜在的可能性を秘めたもののひとつだと思います。自分が秘密工作員になりきって活躍するのは、ゲームのテーマとしてはエキサイティングなものであると同時に、いまやあまりにも成熟しきっていて、変革が待ち望まれているテーマでもあります。9.11の同時多発テロ以後の世界における“スパイ”とはいったい何なのでしょうか? ジェームズ・ボンドが誕生したころに比べ、世界はあまりにも劇的に変わってしまいました。私はいまこそスパイものというジャンルを再定義したいと考えたのです。

――『スプリンターセル ブラックリスト』の見どころはどこですか?

ジェイド 『スプリンターセル ブラックリスト』はトロントスタジオが送り出す最初のメジャータイトルであると同時に、『スプリンターセル』シリーズの中でもっとも野心的な作品でもあります。プレイヤーは“ゴースト”、“パンサー”、“アサルト”という3種類のプレイスタイルを選択でき、それぞれのスタイルの達成度に応じた報酬を受け取ることができます。シングルプレイヤーのストーリーは深く、プレイヤーを魅了するものです。また、サム・フィッシャーと元CIAエージェントであるアイザック・ブリッグスを操ってプレイする、ユニークな協力モードも用意されています。もちろんユーザーのあいだで人気が高い“スパイvs傭兵”のマルチプレイヤーモードも復活しています。このモードは、じつに独創的かつ対比がおもしろいゲーム体験をもたらしてくれるでしょう。これらすべてのコンテンツがシームレスに統合されており、プレイヤーはフィッシャー自身を、彼のゴーグルを、武器を、ステルス航空機パラディンを、完全にカスタマイズし、アップグレードすることが可能です。私たちは『ブラックリスト』のボリュームと多様性に、絶大なる自信と誇りを抱いています。

――トロントスタジオの5年後、10年後を考えたとき、どんなスタジオにしたいと思いますか?

ジェイド さきほど申し上げた通り、トロントスタジオは、すでに複数のタイトルを並行して手掛けていくスタジオとなるための変化の過程にあります。今年は同時に5つのプロジェクトを進める予定でして、2020年までにはトロントスタジオは800人のゲームクリエイターを擁する一大スタジオへと成長を遂げていることでしょう。

――最後にうかがいますが、トロントスタジオで水道管破裂のアクシデントがあったとき、ジェイドさんはあのときスタジオの中にいましたか?

ジェイド はい。私が最初に考えたのは「パソコンを守らなきゃ!」ということでした。あのときはちょうど『ブラックリスト』の開発の最終段階に差し掛かっていて、たった一日の遅れでも重大な影響が出かねない状況だったのです。幸いなことに、トロントスタジオはほとんど被害を受けずに済みました。私たちのスタジオが入っているのは、かつてゼネラル・エレクトリック社の工場だった、1923年に建てられた建物で、それがスタジオ自体のユニークな個性ともなっているのですが……同時に今回のような事故が起こる危険性もはらんでいるわけです。事故のせいで、スタジオ訪問があなた方にとって悪い意味で“忘れがたい”ものにならなかったことを祈っています。