DUAL SHOCK4とPlayStation Cameraから生まれた実験的コンテンツ
2013年8月21日~23日、パシフィコ横浜にて開催されている、日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC 2013”。初日の2013年8月21日に行われたセッション、“PlayStation4の新UIから生まれたTHE PLAYROOM”をリポート。
現在ドイツで開催中の“gamescom 2013”で、プレイステーション4にプリインストールされることが明らかになった“THE PLAYROOM”。このセッションでは、その実験的コンテンツである“THE PLAYROOM”はどのように生み出されたのかを、ゲームデザインとテクノロジー両面から解説。登壇したのは、“THE PLAYROOM”の研究・開発に携わった“ASOBI TEAM”を代表して、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ JAPANスタジオのシニアプログラマー・横川裕氏とプログラマー・吉田匠氏だ。
PS4で体験できる“THE PLAYROOM”
まずは横川氏から、“THE PLAYROOM”の制作経緯が説明された。PS4のカメラを使って新しい遊びを研究するチームとしてスタートした“ASOBI TEAM”には、ディレクターに『EyeToy:Play』や『EyePet』などを手がけたドゥセ・ニコラ氏、『GRAVITY DAZE:重力的眩暈/上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』や『THE EYE OF JUDGMENT(アイ・オブ・ジャッジメント)』の制作に携わった横川氏を技術リードを担当。さらに、最大十数人のスタッフが参加しているプロジェクト。この“ASOBI TEAM”では、PS4向けのゲームのためにさまざまなアイデアを出し、数十ものゲームプロトタイプを制作。それらの中から厳選したものが、やがて現在の“THE PLAYROOM”となった。
AR技術を応用した“THE PLAYROOM”は、“CONTROLLER CHECK UP”、“PLAY WITH ASOBI”、“AR BOTS”、“AR HOCKEY”という4種類のコンテンツで構成されている。以前ご紹介したように、“PLAY WITH ASOBI”では、“ASOBI”と呼ばれる空中に浮遊するロボットが出現し、アクションを楽しむことができたり、“AR BOTS”では、DUALSHOCK 4内に住みついている(?)ミニロボットと遊ぶことができる。さらに、“AR HOCKEY”は、テーブル状を跳ねまわる球を相手のゴールに入れるエアホッケーの3D版だ。
プレイステーション2の“Eye Toy”、プレイステーション3の“PlayStation Eye”に続き、プレイステーション4でのカメラ機能となるのが“PlayStation Camera”。このカメラは、ふたつのレンズを搭載する左右2眼式で、プレイヤーの姿を立体的に捉えることができる。また、2つのカメラを別々に制御することで、異なる情報を組み合わせることも可能だ。解像度は1280×800ドットで、“EyeToy”よりさらに対角視野角が85度と大きくなっている。
もう一方の主役、“DUALSHOCK 4”には、ライトバー、タッチパッド、モーションセンサー、スピーカーが搭載されている。“PlayStation Camera”が、このライトバーを認識し、それにモーションセンサーを組み合わせることで、画面内での位置や動きを表示させている。タッチパッドでは、フリックなど新たな操作を可能にしている。また、スピーカーからの音声出力が演出には大きな要素で、それにより臨場感のあるものに仕上げられるとのことだ。たとえば“AR HOCKEY”で勝利すると、擬似シャンパンシャワーができるのだが、DUALSHOCK 4を振ることで、あたかも本当にシャンパンを振っているような音とアクションが表現されるわけだ。
“THE PLAYROOM”における“ARゲーム”の作りかた
続いて、吉田氏が登壇。より技術的な見地から、“THE ‘PLAYROOM”でのARゲーム制作の実例を解説した。
ARゲームで、現実空間の映像にCGを違和感なく表示される実例が示された。これには、“PlayStation Camera”とゲーム内カメラをしっかりと合わせることが重要で、これらを簡単に解決する技術として、動き検出とデプス検出が使われている。
例えば“AR BOTS”では、動き検出が使用されていて、フレーム間で一定以上の変化があれば、それを“手などが動いている”としてロボットに認識させるというもの。
一方、“PLAY WITH ASOBI”には、デブス検出を使用している。空中を浮遊している“ASOBI”に対し、擬似的に手で触れてコミュニケーションを取るために、軽く触る“タッチ”、ゆっくり押す“プッシュ”、勢いよく叩く“パンチ”という3つの動作を認識させている。“ASOBI”の外側と内部にデブスボタンを設置し、そのボタンの反応した力と方向によって、どの動作なのかを判別しているというわけだ。
“ASOBI”はプレイヤーが触れやすい位置に配置されるのだが、そのために“顔認識”が必要となる。顔の位置が画面上の前後左右どこにあるのかを認識し、そこに“ASOBI”が浮遊する。プレイヤーが左に移動すれば、“ASOBI”も左に移動し、前方にかがめば、“ASOBI”も合わせて前方に移動する。その顔認識を応用すれば、プレイヤーの顔にビームを発射したり、頭上を燃やすといったことが可能だ。
さらに、“DUALSHOCK 4”とは異なる遊びの提供方法として、スマートフォンやタブレットの接続サポート“Companion App”の説明が行われた。スマートフォン上で描いたイラストを“PLAY WITH ASOBI”にフリックアウトすると、そのイラストが3Dとして実体化。“ASOBI”がそれに反応……という実例が紹介された。イラストを描くような作業は“DUALSHOCK 4”には向いていないので、また別の楽しみかたの好例だ。こういったアプリは、“PlayStation App”のSecond Screenに配信される予定だ。
最後に横川氏が再び登壇し、“THE PLAYROOM”が制作されていく中で得られた体験談が語られた。“TEAM ASOBI”に課せられたミッションは、“DUALSHOCK 4やPlayStation Cameraのゲームプロトタイピングや“次世代のPS4ならではのゲーム研究”、“SCE/SONYの技術をゲームにつなげる”、そして何より“だれもが遊べる楽しいものにする!”という4つ。だれもが遊べる、楽しいものを作るために、ハードやソフトの開発チームとの連携が図られた。カメラゲーム特有の諸問題として、「100%の認識エンジンはありえない」そうで、そのため、さまざまな環境・プレイヤーに対してテストが行われた。必ず起こり得る“認識ロスト”を考慮した上で、そのロストさえもゲームデザインに必要なものとしてあげていた。
“THE PLAYROOM”では、選ばれたアイデアと多くのテストをクリアーしたコンテンツを楽しむことができるわけだが、「“THE PLAYROOM”をプレイして、参考にしてみてください」という最後の言葉に、横川氏と“TEAM ASOBI”の確かな自信を感じ取ることができた。