神になった気分が味わえるゲーム!?

 『Watch_Dogs』は、ユービーアイソフトのスタッフの「街にある信号機や電車のダイヤ、水道にガスなどのインフラ(都市の基盤)を自由に操れたらどうなるだろう?」というアイデアがもととなって生まれたという。

その男の武器は……“街そのもの”!?『Watch_Dogs』開発者インタビュー【E3 2013】_01
その男の武器は……“街そのもの”!?『Watch_Dogs』開発者インタビュー【E3 2013】_02

 本作の舞台設定は、いまからそう遠くない未来。都市部では、すべてのインフラがネットワークを介して管理されていて、さらに人々の生活の痕跡すらもデータベースに登録されている。主人公のエイデンは、小型の携帯端末を使ってネットワークにアクセスし、さまざまなインフラをハッキングして操作できる、特別な存在だ。彼はインフラを操って往来の人の流れを制御し、街のあちこちに設置された監視カメラにアクセスしてあらゆるものを覗き見ることができる。まるで神にでもなったかのような気分が味わえるのが『Watch_Dogs』のポイントだ。

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 ひと口に“オープンワールドに設置されたインフラを制御する”と言っても、それが簡単ではないことは誰にでもすぐわかる。
 ただでさえオープンワールドをリアルに再現するのが難しいのに、そこに多種多様なインフラを設置し、さらに精巧なAI(人工知能)を持つ一般市民を配置して、インフラの変化に対して自然なリアクションをさせなければならない。……考えるほど気が遠くなるような仕組みを、ユービーアイソフトのクリエイターたちは『Watch_Dogs』で見事にゲームに落とし込んで見せた。

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 エイデンのハッキング能力のすさまじさを痛感したのが、2013年6月10日に開催されたソニー・コンピュータエンタテインメントのカンファレンスでのこと。会場で『Watch_Dogs』のデモプレイの実演があったのだが、敵に囲まれたエイデンはあたり一帯の電気を停電させ、窮地を切り抜けたのだ。周囲の建物の看板はもちろん、遠方に見えているビルの灯までもが消えたのは衝撃的だ。果たして、エイデンはこの恐るべき能力を使って何を成し遂げようとしているのだろうか。そして、このゲームには開発スタッフのどのような思いが込められているのか。本作のシニアデプロデューサーを務めるDominic Guay氏に直撃した。

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『Watch_Dogs』
シニアプロデューサー
Dominic Guay氏

――SCEのカンファレンスで、街を停電させるハッキングに驚かされました。あのシーンにはたいへんな苦労があったのではないでしょうか?
Dominic Guay氏(以下、Dominic) 間違いなく、もっとも実現するのが難しかったハッキングだと思います。街を停電させるとなると、信号が止まったら道ゆくクルマはどう動くのか、それから通行人は暗闇でどんな反応をするか、調査する必要があったので。街のありかたが一変するので、ゲームで表現するのがたいへんでしたね。

――オープンワールドのリアルさを表現するために、街そのものの研究も必要だったのですね。リサーチはどうやって行ったのですか?
Dominic まず企画段階のうちに、ゲームのモデルになったシカゴに実際に行って、街がどんな風に機能しているか観察しました。その後、5~6人のスタッフが街の動きとゲームの関わりについて、研究したのです。それからも開発チームにフルタイムで街の動きについて研究する人がひとり入れて調査を続けてもらいました。実際に街を歩くと、「このオブジェもハックできないとゲーム的におもしろくない」ということに後で気づかされるんです。そして新しいハッキングを検討することもありました。

――オープンワールドの通行人にそれぞれデータベースが設定されていて、それに対して主人公が関与できるゲームというのは、あまり例を見ません。人々の情報はどのように設定したのでしょうか?
Dominic まずは独自のデータベースを構築しました。この人物はこの地域に住んでいるからこういう傾向の人だろうとか、この職業に就くためにこの場所にいるのは大丈夫なのかなど、さまざまな条件をフィルタリングできるシステムです。しかし、あくまで重要なのが、ゲームを遊ぶプレイヤーにとって利益がある情報です。楽しくインタラクトできる要素であるかどうかを基準に、それぞれの情報を掘り下げていきました。

――なるほど。つぎは本作のストーリーラインについてうかがいます。現時点では主人公のエイデンが誰かに対して復讐をするということが明らかになっていますが、本作はどのような物語なのでしょうか?
Dominic エイデンには過去にIT系の犯罪歴があります。それからかなり家庭環境にも恵まれず、家族にある事件が起きてしまいま。それゆえに彼の中で監視社会に対して強迫観念みたいなものがどんどんでき上がり、そこから自分の正義というか、「世界はこうあるべきだ」という考えが固まっていくのです。……これ以上はネタバレになるので、続きはプレイして楽しんでもらいたいですね(笑)。

――(笑)。でも、ひとつだけ気になるのが、エイデンのハッキング能力です。彼と同じようなハッキング能力を持つ者が現れて、たとえばハッキング対決をすることもあるのでしょうか?
Dominic ハッキング能力を使えるのは、もちろんひとりではありません。言える範囲で答えると、青いマスクを被ったキャラクターはエイデンと同じハッカーです。それ以上のことにはお答えできませんね。

――ひょっとしたらハッキング対決もありそうですね。ところで、ハッキング能力にはどんなものがありますか?
Dominic エイデンは電車を止めることもできるし、信号機や電気を消すこともできます。それから誰かの携帯電話のネットワークに侵入したり、街にある監視カメラをハッキングして見ることもできます。ほかにもあるのでご期待ください。

――最初からすべての能力を使うことはできませんよね?
Dominic もちろん、少しずつ習得していくことになります。レベルアップの際に特定の要素だけ強化していくこともできますけど、やり込めば基本的には全部実行できるようになります。

――カンファレンスで披露された停電以上のすごい能力はありますか?
Dominic 個人的には停電がいちばん好きですが、それと同じくらいすごい能力が、もうひとつあります。詳しくお伝えできないのが残念ですが、きっと皆さん驚くと思いますよ。

――それは楽しみです。ちなみに、本作は現行機と次世代機で発売されますが、ゲーム性に違いはありますか?
Dominic 現行機と次世代機で、ゲームのプレイ体験については、基本的には変わりません。同じミッションとゲームメカニクス、そしてシナリオもキャラクターもすべて同じです。ただし、通行人の数や往来のクルマの台数を増やしたりと、街のディテールに関してはやはり次世代機のほうがほうが優れています。没入感という点では、次世代機のほうが上だと思います。

――最後に、楽しみにしている日本のファンにひと言お願いします。
Dominic 本作はきっと日本の皆さんも楽しめるゲームだと思っています。ですので、できるだけ同時期に発売できるようにしたいなと思っています。あとは、ゲームの開発が落ち着いた日本に行きたいですね。とくに東京ゲームショウがとても気になっているので、行くことがあれば、ぜひよろしくお願いします。