それは「始まり」の物語

草薙素子役に坂本真綾−−『攻殻機動隊ARISE』その全貌が明らかに_01

 2013年2月12日(火)、『攻殻機動隊』シリーズの新たなプロジェクト『攻殻機動隊ARISE』の製作発表会が、東京・六本木のnicofarreにて開催された。速報でもお伝えしたが、同発表会ではネクソンのPC用オンラインゲーム『攻殻機動隊オンライン(仮題)』の発表と、“第四の『攻殻機動隊』”として立ち上げられた『攻殻機動隊ARISE』の全貌が発表された。司会はニッポン放送アナウンサー・吉田尚記。

 Production I.Gの代表取締役社長・石川光久氏は、『攻殻機動隊ARISE』を、士郎正宗氏原作のマンガ版、押井守監督による長編映画、神山健治監督によるテレビシリーズに続く、“第四の『攻殻機動隊』”と位置づける。同作の総監督に黄瀬和哉氏を起用したことについて、「世界ではアニメは2Dよりも3Dが潮流。でも2Dのすごさを見せつけてやりたい」として、これまでProduction I.Gの劇場アニメなどで作画監督して活躍してきた黄瀬氏に白羽の矢が立ったことを説明。さらに構成・脚本を務める冲方丁氏が脚本をすべて書くということで、『攻殻機動隊ARISE』が始動したのだと語った。

 さらに今回の発表会では、大の『攻殻』ファンであるという慶応義塾大学 政策・メディア研究科特別招聘教授・夏野剛氏、角川アスキー総合研究所 取締役 主席研究員・遠藤諭氏を招き、それぞれに思いの丈を語る。ハードSFが好きだという夏野氏は『攻殻』を大絶賛。「時代がどんどん『攻殻』に追いついてきた」と語り、遠藤氏も「ハードウェアである肉体から、どうやって心が生まれたのかというテーマがめちゃめちゃ旬になっているタイミングでの『攻殻』ってどういう風に作ってくれるんだろうと楽しみですね」とコメント。口々に『攻殻』の世界が今後どんどん現実になっていくと期待感を覗かせた。

 続いて、いよいよ『攻殻機動隊ARISE』の全貌が公開される。プロモーション映像とともに発表されたのは、新たな『攻殻』は劇場作品(全4部作)となること、またBlu-rayの劇場先行発売や、有料配信なども行われるなど、驚きの情報が続く。詳しくは下記を参照してほしい。

■劇場上映(全4部作)
2013年6月22日(土)より『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、新宿バルト9ほかにて全国劇場上映(2週間限定)。全4部作。

■Blu-ray劇場先行発売
劇場上映期間中、上映館にて『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』シナリオ付き劇場限定版Blu-rayを発売。価格は8000円[税込]

■有料配信
2013年6月22日(土)より、『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』有料配信スタート。配信に関する視聴方法、価格などの詳細は決定次第、公式サイトにて告知。

■Blu-ray&DVD一般発売
2013年7月26日(金)より、『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』一般発売スタート。
・Blu-ray:本編役50分+映像特典/7140円[税込]
・DVD:本編役50分+映像特典/6090円[税込]

■劇場前売観賞券【5アイテム】
2013年3月30日(土)より、『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』劇場前売鑑賞券発売スタート。
・シリーズ共通4枚綴り鑑賞券
・全国共通鑑賞券
・バンダイビジュアルクラブ限定特製グッズ付き鑑賞券
・ムビチケ
・ファミリーマート限定特製グッズ付き鑑賞券

■コミカライズ連載
月刊ヤングマガジン』第4号(2013年3月13日発売)よりコミカライズ連載スタート(講談社刊)。『攻殻機動隊ARISE~眠らない眼の男 Sleepless Eye~』連載開始。(脚本:藤咲淳一/マンガ:大山タクミ)

 会場では黄瀬和哉監督、冲方丁氏、石川光久氏によるトークも行われた。黄瀬監督は、今回が初の監督作品となるということで、「絵ばっかり描いてきた人間が演出をできるのかというのが、正直自分でもわからない」としながらも気合は十分なようで、石川氏は「黄瀬が上げてきた素子のデザインを見たときに、これはヤバいなと思ったんです。これは本気だなと思って」とし、「本気の度合いが半端ないな」と内に秘めたものを感じ取っている様子。また、構成・脚本を務める冲方氏は「非常に影響を受けた作品。恩返しの気持ち、挑戦の気持ちでいます」と、こちらも気合十分。本作は、原作者である士郎正宗氏のプロットをもとに冲方氏が脚本を構成しているとのことで「(士郎氏のプロットは)ビジョンがひとつ明確にあるうえに、自由度が高いんです」(冲方)と説明。「こんなことを考えていたんだ」と驚いたという冲方氏だが、「草薙素子を人間として捉えて、その生い立ちなどを目を逸らさずに書こうと。彼女の感情や生々しさというのが重要かなと」(冲方氏)と『攻殻機動隊ARISE』で描こうとしている内容に触れた。また、音楽を担当するコーネリアスについては、『攻殻』の世界を構築できて、世界に発信するにふさわしいアーティストということで、コーネリアスを起用したとのことだ。そして、気になるキャスティングについても発表された。なんと本作はキャストを一新して描かれるとのこと。そのキャスティングは以下のとおり。

草薙素子:坂本真綾
バトー:松田健一郎
トグサ:新垣樽助
イシカワ:壇臣幸
サイトー:中國卓郎
パズ:上田燿司
ボーマ:中井和哉
荒巻:塾一久

 製作発表会には、スペシャルゲストとして草薙素子役の坂本真綾が登壇。1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などで、少女の義体の素子役として出演していた坂本は、再び素子役を演じることについて「すごくうれしかったのと、これはきっといろんなご意見があるだろうなと。私自身、『攻殻機動隊』が大好きなので、キャストが変わったことに慣れていただくためにがんばらなきゃいけないなという思いもありましたが、一応“コドモトコ”として作品に携わっていたという経験が、今回も役立てられるのであればうれしいなと思いました」と語る。また、新たな草薙素子のビジュアルについては「幼さが少し見えるけれど、以前から知っているあのキャラクターであるという安心感と、前よりも表情が出やすそうな気がするというか、そこに以前との違いがあるんじゃないだろうかと勝手に予想しています(笑)」と、その印象について語った。

 イベントの最後には登壇者からひと言ずつメッセージが送られた。

坂本真綾 キャスト一新ということで、私たちもとても緊張していますが、『ARISE』の世界を作っていく一部としてみんなひとりひとりがんばっていきたいと思います。初めて『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』に携わったとき15歳だったのですが、いま32歳になりまして、また同じ延長線上に演じられるというのはご縁を感じています。愛情を持ってすべてをかけて、この大切な役柄を演じさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

冲方丁氏 僕も『攻殻機動隊』を初めて知ったのは16歳のときでした。それから20年、これまで自分が学んできたものをすべてこの作品に叩き込み、また新たなものを作りたいと思います。全力を尽くします。

黄瀬和哉氏 いままでは絵だけを書いていればよかったんですけれど、これからはほかのこともがんばっていかなきゃいけないので、なるべく期待なさってている方のご期待に添えるようがんばりますので、どうかよろしくお願いします。

石川光久氏 今回は黄瀬が総監督をしていて、錚々たる作画監督の顔ぶれとなっています。ベテランはベテランで意地があって、そこに中堅・若手挑んでいくというチームが出来上がっています。ぜひ期待していただければ。皆さんにより感動と夢を与えていきたいと思います。

【スタッフ】
原作:士郎正宗
総監督・キャラクターデザイン:黄瀬和哉
シリーズ構成・脚本:冲方丁
音楽:コーネリアス
メカニックデザイン:柳瀬敬之
3DCGI:オレンジ
3DCG監督:井野元英二
美術:Bamboo
美術監督:竹田悠介、益城貴昌
美術設定:加藤浩(ととにゃん)
プロップ・美術設定:荒川直樹
撮影監督:田中宏侍
音響監督:岩浪美和
編集:植松淳一
アニメーション制作:Production I.G