『FF』25周年企画を締めくくるのは、このコンサート!

『ファイナルファンタジー』シリーズ25周年を祝うコンサートツアー“Distant Worlds”日本公演初日をリポート_01

 スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの生誕25周年を記念して開催されている、ワールドコンサートツアー“FINAL FANTASY 25th Anniversary Distant Worlds music from FINAL FANTASY THE CELEBRATION”。イギリス・ロンドン、アメリカ・シカゴで開催されてきた本ツアーの最後を飾る日本公演が、2012年12月26日に東京国際フォーラムにて幕を開けた。2012年12月29日にはグランキューブ大阪で、2012年12月31日には再び東京国際フォーラムで開催される。

 本記事では、日本公演初日の模様をリポートする。曲目も公開するので、大阪公演と、大晦日の東京公演に参加する予定の人は、ここから下の文章は読まないように!

■公演概要
作曲:植松伸夫/水田直志/崎元仁/浜渦正志
指揮:アーニー・ロス
オーケストラ:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ソリスト:クリスタル・ケイ/スーザン・キャロウェイ
メゾソプラノ:太田悦世/テノール:渡邉澄晃/バスバリトン:押見春喜
ナレーター:郡正夫
コーラス:Real Singers of Tokyo(RST)
主催:キョードー東京
協力:スクウェア・エニックス

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▲会場では、2012年9月に行われたFINAL FANTASY展で展示された作品の一部が、特別に公開されていた。
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▲物販ブースは大賑わい。2012年12月26日に発売された「FINAL FANTASY ORCHESTRAL ALBUM」は早々に売り切れ。
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▲指揮を務めるアーニー・ロス氏。日本語を交えて挨拶した。

 “Distant Worlds”は、2007年にスタートした『FF』シリーズのオーケストラコンサート。演奏とともに、歴代『FF』シリーズの名シーンの映像が楽しめるコンサート。日本で開催されるのは、2010年11月の“Distant Worlds music from FINAL FANTASY Returning home”以来2度目となる(前回のリポートは→こちら)。

 今回は、『FF』シリーズ25周年を記念し、シリーズ1作目『FFI』から、最新作『FFXIV』までの楽曲が、タイトル順に披露された。「プレリュード」や「反乱軍のテーマ」、「水の巫女エリア」などの人気曲で構成された「FINAL FANTASY I~IIIメドレー」(『FFI~III』)に始まり、「ゴルベーザ四天王とのバトル」(『FFIV』)、「ファイナルファンタジーV メインテーマ」(『FFV』)、「迷いの森」(『FFVI』)と、名曲がつぎつぎと奏でられていく。

 『FFVII』から選ばれたのは、Distant Worldsではおなじみである「片翼の天使」。アーニー・ロス氏は、『FF』初のコーラス入り楽曲である同曲について、「その後のゲーム音楽に与えた影響は計り知れないため、外すことはできなかった」と語った。

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▲スクリーンには『FFVII』、そして『FFVII アドベントチルドレン』の名シーンが映し出された。

 この後、「Don't be Afraid」(『FFVIII』)、「独りじゃない」(『FFIX』)、「ザナルカンドにて」(『FFX』)という名曲が続き、「チョコボメドレー2012」(『FF』シリーズ)によって第一部が締めくくられた。

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▲本ツアー用に新たにアレンジされたチョコボメドレー。映像ももちろん新バージョン。

 植松伸夫氏が、曲が終わった後に「ブラボー」と言う“ブラボー係”を指名するというひとコマが見られた休憩の後、第二部がスタート。第二部でも、歴代『FF』シリーズ楽曲の演奏は続き、「Procession of Heroes ~ Vana'diel March Medley」(『FFXI』)、「東ダルマスカ砂漠」(『FFXII』)、「閃光」(『FFXIII』)、そしてスーザン・キャロウェイが歌う「Answers」(『FFXIV』)が観客を魅了した。

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▲スクリーンに映る『FFXIV』“時代の終焉”ムービーと、スーザンの歌声が、目と耳をとらえて離さなかった。

 つぎに演奏されたのは、美しいメロディーの「愛のテーマ」(『FFIV』)、そしてクリスタル・ケイが歌う「Eyes On Me」(『FFVIII』)。『FF』シリーズ初のボーカル曲であり、日本ゴールドディスク大賞作品でもある同曲を歌うということで、緊張していたというクリスタル・ケイだが、堂々としたパフォーマンスを見せた。

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 フィナーレを飾ったのは、「オペラ マリアとドラクゥ(完全版)」(『FFVI』)。1994年の『FFVI』発売から18年の時を経て、ゲームでは収録できなかったドラクゥとラルスのバトルシーンを含む完全版として仕上がったオペラ。オーケストラ、ソロ歌手、合唱、ナレーションによる壮大な物語がステージ上で展開した。

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 オペラが終わった後も拍手は鳴り止まず、熱いアンコールに応え、「ビッグブリッヂの死闘」(『FFV』)、「シーモアバトル」(『FFX』)、「闘う者達」(『FFVII』)、そして「勝利のファンファーレ」(『FF』シリーズ)からなる「バトル&勝利のファンファーレ メドレー」が披露された。そして、エンディングの曲として、これ以上にふさわしい曲はない「ファイナルファンタジー」(『FF』シリーズ)が奏でられ、2時間以上に及んだコンサートは、すばらしい余韻を残して終了した。

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■セットリスト
<第一部>
FINAL FANTASY I~IIIメドレー(『FFI~III』)
ゴルベーザ四天王とのバトル(『FFIV』)
ファイナルファンタジーV メインテーマ(『FFV』)
迷いの森(『FFVI』)
片翼の天使(『FFVII』)
Don't be Afraid(『FFVIII』)
独りじゃない(『FFIX』)
ザナルカンドにて(『FFX』)
チョコボメドレー2012(『FF』シリーズ)

<第二部>
Procession of Heroes ~ Vana'diel March Medley(『FFXI』)
東ダルマスカ砂漠(『FFXII』)
閃光(『FFXIII』)
Answers(『FFXIV』)
愛のテーマ(『FFIV』)
Eyes On Me(『FFVIII』)
オペラ マリアとドラクゥ(完全版)(『FFVI』)

<アンコール>
バトル&勝利のファンファーレ メドレー(『FF』シリーズ)
ファイナルファンタジー(『FF』シリーズ)

公演後のキーマン5人にインタビュー!

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左からスーザン・キャロウェイさん、クリスタル・ケイさん、アーニー・ロス氏、植松伸夫氏、水田直志氏

――最初に、日本公演初日を終えての感想を教えてください。
アーニー 『FF』25周年を、ロンドン、シカゴに続いて日本でお祝いすることができて、とてもうれしく思っています。
植松 『FF』シリーズはつねにそばにあるので、25周年と言われてもピンとこないんですけど、昔のドット絵を見ていると、さすがに古いなあ、と思いますねえ。でも、あっという間の25周年でした。生きててよかった(笑)。四半世紀ともにいられて、よかったですね。それにしても、今日のお客さんはおとなしかったなあ。大阪とつぎの東京公演は、なんとか盛り上げていかなきゃと思っています。

――日本人はシャイですので。
植松 コンサート始まる前に、僕が前説やるのはどうだろう? 騒いでいいんだよ、って。せっかくのコンサートという楽しい場の空気を、みんなで作っていきたいじゃないですか。どうやって作るかが、あと2、3日の課題ですね。

――今日は、休憩のときにブラボー係を指名されていましたね。
植松 「PIANO OPERA」のコンサートのときも(ピアノコンサート“PIANO OPERA music from FINAL FANTASY”)、始まる前に「キミ、ブラボー係ね。曲が終わったらブラボーって言いなさいね」って指名したんです。それで、彼が「ブラボー」って言ったら、コンサートがとても盛り上がったので、今回もその作戦でいきました。
アーニー シカゴでは、「プレリュード」のときからみんな応援してくれていて、新しいタイトルの曲がかかるたびに「ファイブ」、「シックス」、「セブン」と言ってくれていましたよ。
植松 日本人は恥ずかしがり屋なんです。
アーニー もちろん、わかっていますよ。

――では、水田さんお願いします。
水田 今日はたくさんのお客さんが来てくださって、多くの方が楽しんで曲を聴いてくださって。植松さんが積み上げてきた歴史を強く感じました。これが25年の重みなんだな、というのを心に刻んで、明日からまたシリーズの曲を作り続ければいいな、と思います。

――クリスタル・ケイさんはいかがですか?
クリスタル すごく緊張していました。ロンドンでもめちゃくちゃ緊張していたんですけど。こんなに歴史があって、世界中の人たちが愛している『ファイナルファンタジー』の、「Eyes On Me」を歌わせていただけるのがすごくうれしくて、びっくりしましたし、プレッシャーも感じていました。植松さんに「クリスタル・ケイのバージョンでお願いします」と言っていただけたので、なるべく自分のflavorを出しつつ、曲のよさを壊さずに、一生懸命歌いたいなと思って臨みました。オーケストラで歌う機会はなかなかないので、ひとつひとつの瞬間を大切にしながら、とにかく楽しんで、がんばって歌いました。
植松 クリスタル・ケイさんは、歌う度に変わっていっていますよね。
クリスタル すごく楽しくて、不思議でした。ロンドンでこのメンバーで歌って、また日本で歌って。終わっちゃうときはさみしいんだろうな、と思います。
植松 来年もやりますか(笑)。

――スーザンさん、お願いします。
スーザン 25周年を祝う日本公演に参加できて、心からうれしく思っていますし、光栄だと思います。また伸夫さんやアーニーさんといっしょに歌えるというのは、本当にすばらしいことです。これからもこのような機会をいただきたいです。

――今回のコンサートの選曲について、こだわった部分はありますか?
植松 「新しいアルバムに入っている曲をやろう」という意向ももちろんありましたし、コンサートと言えばやっぱり「プレリュード」や「片翼の天使」が盛り上がりますし……最後はオペラで締めるといちばん盛り上がると思っていたので、オペラは外せないと思っていました。そういった、外せないものを押さえつつ、25周年ということで、「1作目から曲を並べよう」と考えて選びました。皆さんにとって思い入れのある曲は違うと思いますが、今日演奏した曲も、それぞれのタイトルを代表する1曲ではあると思います。
アーニー 時系列で並べて、ゲームの歴史を見せることは必要だったと思います。シリーズ全体を、このコンサートで表したいと思いました。

――ボーカル曲が多く演奏されましたが、植松さんが客席でボーカル曲をお聴きなった感想を教えてください。
植松 クリスタル・ケイさん、スーザン・キャロウェイさん、オペラのソリストの皆さん、全部おもしろみが違って、うれしかったですね。歌モノだけのコンサートをやりたいぐらいですね(笑)。いろんな歌い手さんに参加してもらって。「Melodies Of Life」、「素敵だね」、「Kiss Me Good-Bye」もやりたいんですよ。

――25周年を祝う曲はこれだ! というものはありますか?
アーニー シカゴでは「ハッピーバースデー」を歌ったんですよね。休憩中に、「ハッピーバースデーを演奏しよう」と決めて(笑)。
植松 そういうハプニングがもっとあると、おもしろいですよね。海外のコンサートのほうが、突然いろんなことが変わったりして、自由ですよね。僕が出演して、オルガン弾いたり、カードに歌詞を書いてみんなに見せたり……そんなこともありますね。日本でも許してくれるなら、いろいろ考えるんですけど(笑)。
クリスタル 許してくれますよ。きっと待ってると思います。

――スーザン・キャロウェイさんとクリスタル・ケイさんに伺います。収録、そしてコンサートで、「Answers」と「Eyes On Me」を歌われてきたと思いますが、ご自身の中で、これらの歌はどう変わってきましたか?
スーザン 「Answers」は、最初に歌ったときから、本当にすばらしい曲だと思っていました。それから、ゲームのこと、この曲がファンに与える意味を知って、「もっと大事に歌わなくては」と思いました。「Answers」は、ストーリー性のある曲であり、バトルを表す曲であり、世界の終わりからつぎの世界への始まりの曲でもあります。私はアメリカ人として、この曲を歌うたびに、アメリカ人の情熱、エネルギーを100%出して歌いたいと思っています。
クリスタル 私は、レコーディングのときから、かなりドキドキしながら歌っていました。歌詞をじっくり見ていると、純粋なラブソングなんだなあ、と感じて……そのキャラクターになりきって、ストーリーを皆さんに届けなきゃいけないと思って。コンサートでは、ロンドンで最初に歌わせていただきましたが、オーケストラ、映像、それを見ているお客さんを見ていると、長年の情熱、愛情がすごく感じられて。1曲1曲が、自分のストーリーであるかのように、皆さん大切に思っているんですよね。皆さんが持っていく温かさを、私も取り入れたいと思いました。1回歌うごとに、歌が自分に近くなっていっているな、と思います。いい感じになってます……かね?
植松 なってます、なってます! もっとなりますよ。

――続いて、水田さんに伺います。植松さんという先輩から、どのような影響を受けられましたか?
水田 受けた影響はたくさんあります。僕はいま40歳なんですけど、植松さんは40歳のとき『FFIX』の曲を作っていました。僕の年齢のとき、植松さんはすでに「Eyes On Me」という特大ヒットを生み出してるんですね。そう思うと、プレッシャーを感じるというか、遠い背中を追いかけているような感じがます。
植松 俺、高校の先輩でもあるからね。同じ高校なんだよ。

――えっ、そうなんですか!
水田 文字通り、先輩なんです。
植松 偶然ですけどね。
水田 今後、コンサートや楽曲など、いろいろなチャレンジをしたいと思います。

――ところで、いま、ビジュアル系バンドの若いメンバーの中には、『FF』の音楽に影響されてきた、という人たちがいます。『FF』のバトルテーマを目指して、激しい曲を作った、という言葉もあります。そんな若者たちに、植松さんからのメッセージをいただけませんか?
植松 ゲーム音楽ばっかり聴いていないで、ジャズもロックもクラシックも、いろいろ聴いたほうがいいと思いますね。音楽を作るプロになりたいなら。それから、音楽家を目指している人にはいつも言っているのですが、ぜったいに、すべての人に受け入れられることってないんです。「その曲は、アレに似ているね」と言われたり。そういうことを言われると、へこたれちゃう人が多いんですね。“誰にも負けない自分”というものを持っていないと、すぐに折れちゃう。何を言われてもへこたれない強い意志を持って音楽に向かってください。才能よりも図太い精神のほうが重要だったりするかもしれないですよ。

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