ひとりの少女の15年間を描くサイコスリラー

ゲームの表現は新たな領域へ!  『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』インタビュー_01
Quantic Dream
Co-CEO兼エグゼクティブプロデューサー
Guillaume de Fondaumiere氏

 2013年に発売が予定されているソニーコンピューターエンタテインメントジャパンのプレイステーション3用ソフト『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』。2012年9月24日に行われたプレミアムセッション(プレミアムセッションの記事はコチラ)にて、ゲームの開発元であるQuantic DreamのCo-CEO兼エグゼクティブプロデューサーであるGuillaume de Fondaumiere氏にお話を伺った。

――Guillaume氏は本作でどのパートを担当しているのでしょうか?
Guillaume 私は『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』の開発を担当するQuantic Dreamの共同経営者兼エグゼクティブプロデューサーです。もうひとりの共同経営者にDavid Cageがいるのですが、彼は共同経営者兼ディレクター。彼がクリエイターサイドとすれば、私はマネージメント側になります。

――『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』のヒット後、同作のように多くの主人公が登場する群像劇のスタイルを突き詰めることもできたはずですが、今回はあえてひとりの少女(ジョディ)を描いたのはなぜですか?
Guillaume 『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』は私たちにとってすごく重要なゲームでした。私たちはあの作品で、テレビゲームという枠組みでどんな表現ができるかを試してみたのですが、結果的にユーザーにはポジティブに受け止めてもらえることができました。そこでわかったのが、人は深いストーリーに興味を持っているということ、それとプレイヤーの決断が結果に影響するということをおもしろがっていることです。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』では『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』の醍醐味を継承しつつも、コピーだけは絶対に作りたくなかったのです。というわけで、方向性としては同じだけど、少し毛色が異なる作品を目指しています。もうひとつの理由として、私たちは人の成長とその変化を表現したかったのです。ある人物が下した決断が、長い時を経てどんな影響を与えるか、気になりませんか? そういったことをゲームで表現しています。また、多くの映画やゲームの中では女性は弱かったり性的な象徴だったりするのですが、私たちはそれとはまったく違う女性像を表現したいと考えています。女性というモチーフを使って男性と同じくらい興味深い話を描けるということを伝えたかったのです。

――先ほど『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』のプレゼンテーションがありましたが、同作に登場するエリーという少女は、ジョディと同じように強い意志を持った女性です。エリーを見たときドキッとしませんでしたか?
Guillaume じつは私は『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』のことをあまりよく知らなくて、おそらく皆さんと同じくらいの情報しか持っていません(笑)。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』と『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』は同時期に開発がスタートしたのですが、ほかのクリエイターが自分たちと似たようなテーマを使っているのはおもしろいことですね。しかし、ふたつのゲームはプレイしてみるとぜんぜん違う内容になるでしょう。ビヨンドのテーマは、他人と異なる部分を持つ人の成長や死、死んだ後の世界との関係性です。このテーマを取り扱ったゲームはこれまでなかったので、絶対に違う内容になるはずです。だからとくに気にしていませんね。

――本作のメインテーマに大きく関わることになる霊体のエイデンがもたらす、新しいゲームプレイについて教えてください。
Guillaume 以前からゲームに霊体という存在を取り入れたくて、いろいろな表現方法を考えていて、今回はそのためにゲームシステムを構築したと言っても過言ありません。霊体が壁を通り抜けたり人をすり抜けたりするのは、すごくおもしろいシステムですよ。ゲームの全体的な雰囲気がリアルなだけに、こうして新しいシステムを取り入れて、より直感的な操作をゲームに与えることにしました。『HEAVY RAIN(ヘビーレイン)-心の軋むとき-』を作り上げた後、私たちがつぎに目指していたのが、もっとアクションを増やそうということです。エイデンはアクション中心の操作が多いので、そういう意味ではパーフェクトな存在でした。今回お見せしたシーンではわかりづらいとは思いますが、エイデンとジョディのコラボレーションも見どころのひとつです。エイデンとジョディの操作をひんぱんに切り換えて操作するシーンでは本作ならではのオリジナリティー溢れるアクションを存分に楽しめます。

ゲームの表現は新たな領域へ!  『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』インタビュー_02

――先ほどのプレゼンテーションでパフォーマンスキャプチャーという技術を紹介されていましたが、この技術を採用したのはなぜですか?
Guillaume パフォーマンスキャプチャーを使えば、ふつうのモーションキャプチャーよりも低コストかつハイクオリティーに仕上げられるからです。たとえ手付けのアニメーションを選択したとしても、パフォーマンスキャプチャーよりもコストがかかっていたはずです。ちなみに、映画『アバター』では両方の技術を使っているらしいのですが、45分間ほどの映像を作るためにじつに200人のスタッフが関わっているそうです。私たちの場合、15~16時間に及ぶアニメーションを作る必要があったので、その条件で高いクオリティーを出したければ、パフォーマンスキャプチャーしかなかったのです。なお、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)』では、プレイヤーがプレイする上で、自分とキャラクターと自然に重ねられるように、キャラクターのリアルな造詣を重要視しています。そう考えると、デジタルで演技や表情のディテールをコピーできるパフォーマンスキャプチャーはぴったりの技術でしたね。

――著名なタレントであるエレン・ペイジさんを起用した意図は?
Guillaume もちろん彼女の才能に惹かれて起用しました。David Cageが映画の『JUNO/ジュノ』や『インセプション』を見てエレンのことを気に入り、彼女をイメージしながら脚本を書いていました。たとえば、「このシチュエーションでエレンだったらどうするだろう?」とか、そういうことをつねに考えていたのです。こうしてエレンの影響を受けながら脚本を書いていたので、試しに本人に出演依頼を出してみたら、すぐに「OK」の返事がもらえました。というわけで、彼女を起用したのは、マーケティングではなく、あくまでもクリエイティブな決断です。彼女自身も本作の台本を読んでくれてすごく気にいってくれてくれています。エレンの天才的な演技は見ものですよ。