催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
2012年9月20日～23日の期間、千葉県・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ2012（20日、21日はビジネスデー、22日、23日は一般公開デー）。会期初日にセンス・オブ・ワンダー ナイトプレゼンツ ヘッドマウントディスプレイ 没入快感研究所 Powered by Sony”ブースで、“PROTOTYPE-SR”という非常に興味深い出展のデモがあったことは既報の通り（記事はこちら）だが、今回実際に体験することができたので、その模様をリポートしよう。なお、体験内容に関しては前回の記事と同じなので、詳しい説明はそちらをチェックしてほしい。
※以下、体験内容に関してネタバレがあります
実際に体験してみてわかったスゴさ、現在と過去映像の同期
サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏の体験イベント記事でもお伝えした通り、“PROTOTYPE-SR”はソニーのヘッドマウントディスプレイ“HMZ-T2”を改良した、現在と過去の映像を融合させる装置だ。現在の映像は装置の前面に設置されたフロントカメラでディスプレイに表示し、過去の映像は360°パノラマカメラで撮影された録画映像＆フェイストラッキングと組み合わせによって、“現在の映像と勘違いしてしまうように”表示する。これによって、目の前には誰もいないにも関わらずディスプレイ上には人がいる、あるいは目の前の人が瞬間移動する……といったトリック映像が可能になるのだ。しかし今回実際に体験してみて、もっとスゴイことがわかった。“PROTOTYPE-SR”では現在と過去の切り替えだけでなく、両映像を同時に表示することも可能なのだ。
具体的な例を挙げよう。“PROTOTYPE-SR”体験の中に、（実際には部屋にいない）バイオリニストの宮本笑里さんによる演奏を楽しむシーンがある。演奏が終わると宮本さんは背中を向け、左右ふたつある出入口の右側に向かうのだが、彼女が視界から消える前に、左側からガイドを務める白衣のお姉さんが登場するのだ。ここで一旦情報を整理する。宮本さんは今回の体験中いちども部屋には入ってきていない。彼女の姿はすべて、過去に収録した録画映像の中にいるからだ。一方、白衣のお姉さんは部屋の中にいたりいなかったりで、現在と過去を行き来する存在である。この事実を踏まえたうえで、さきほどの“宮本さんの姿が視界に残っているうちに登場するお姉さん”が、現在と過去どちらのものなのかを考えてみてほしい。ふつうに考えれば、過去である。宮本さんがいるということは、そこに映っている光景は録画だからだ。しかし、驚いたことに過去のものと思ったお姉さんは、過去の時点では知るはずのない記者の名前を呼び、実験の終了を告げてきた！
前日に松山氏のイベントを取材し、すでにネタを知っていた記者だが、このときは本当に頭が混乱した。松山氏の「“キングクリムゾン”のスタンド攻撃を受けた」発言ではないが、まさに「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ」状態である。
宮本さんの退出シーンで、一体何が起きていたのだろうか？ スタッフに確認してみたところ、“PROTOTYPE-SR”では現在と過去の映像を重ねて表示することも可能なのだという。つまり、宮本さんがいる右側の映像が過去で、お姉さんが登場する左側は現在。これが退出シーンのトリックだ。
昨日の体験イベントで松山氏は「これのすごさは、体験しないと絶対にわからん！」と話していたが、本当にそうである。この超未来感覚が、東京ゲームショウ2012の会場で、しかも事前応募で当選した人しか体験できないなんてもったいない！ ぜひとも全国キャラバンとかやってほしいと、個人的に思う次第です。
