「雨はやみます!」河崎監督が奇跡的な有言実行
先日、まさかの実写化が発表された(詳細はこちら)ディースリー・パブリッシャーのプレイステーション Vita用ソフト『地球防衛軍3 ポータブル』。公開を今月26日に控え撮影もいよいよ佳境を迎える中、怪獣作品(とあえて言い切ってしまう)におけるハイライトでもある“逃げまどう人”の収録が、2012年9月2日に都内の東映撮影所で実施された。
今回の“逃げまどう人”では事前にエキストラを募集し、約40名程度の定員に対し何百もの応募があったそうだ。そして撮影当日、幸運にも出演権を得た人々は緊張の面持ち……でもなくリラックスした表情で控え室にて待機。しかし、恐らく誰もが“あること”を心配していた。空模様である。撮影は屋外で行うわけだが、この日都内は早朝から天候が不安定で、撮影開始30分前の時点で外は大雨。雨にけむる景色を見ながら「果たして我々はちゃんと逃げまどうことができるのか」と、全員が不安になっていたに違いない。しかし、河崎実監督だけは違った。参加者控え室に顔を出した河崎実監督は「おはようございます、リドリー・スコットです。今日は『エイリアン15』の撮影に……」とハイブロウにかましつつ、「雨はやむでしょう!」と大胆気象予報。このあと記者は、撮影までの短い時間に河崎監督へ簡単なインタビューをさせてもらったのだが、そこで奇跡が起きた。
「いやー、『アベンジャーズ』は爆笑だったよね。なんか『プロメテウス』も爆笑らしいじゃない? キミ、観た?」などと今回の撮影とはあまり関係ないことで盛り上がっていると、にわかに雨が弱くなりだし、話が終盤へ入るころにはついに日が差してきたではないか! 河崎監督はこの瞬間を見逃さず、『タイガーマスク』に出てきた“ザ・グレート・ゼブラ”(正体はシマウマのマスクをつけたジャイアント馬場。河崎監督いわく「絶対観たほうがいい、あれ爆笑だよ!」とのこと)の話もそこそこに、撮影隊を引き連れて外へ飛び出していった。残された記者は、監督が起こした奇跡と行動の素早さに呆然としつつも、この撮影がスバラシイものになることを確信するのであった。
逃げまどう人々の撮影では、東映撮影所内の建物と建物のあいだにある細い通路が使用された。背後に障害物はなく、恐らくここに巨大生物が合成されるのだろう。記者は「じつにイイ画だ!」などと仕上がりを想像しながらひとりニタニタしていたのだが、そのとき監督から参加者たちにひとつの注意を送られた。「笑わないでくださいねー」。本番中に笑うなんて不埒な行為、そりゃたしかにダメだ! と記者も激しく納得したのだが、いざ撮影が始まってみると、笑ってしまった。アクションがスタートし、背後からナニかが迫ってくるという脳内補完をしたうえで逃げる参加者たち……これがもう、なんというか、困ったことにおもしろい。考えてみれば、巨大なナニかに追われるなんてことは現実ではまずない。しかも、撮影段階では虚空に向かって怯えながら逃げるわけだから、非現実感は倍増。なるほど、これは笑う。実際、参加者の中かにも何人か笑っている人が確認できたし、「俺笑っちゃったからずっと下向いてたよ」なんて声も聞こえていた。しかし、リテイクするうちに参加者もこの非現実感に慣れたようで(記者も慣れた)、最後は背後から迫る巨大生物に対して、全員がしっかりと怯えた表情に。時間にして30分もかからない撮影だったが、個人的にはさまざまな発見がある充実の時間であった。
最後に改めて告知するが、『地球防衛軍3 ポータブル』の発売は2012年9月27日で、実写映像はその前日の26日に公開を予定している。SCE本社での上映会に加え、Web上でも公開されるので、ぜひチェックしてほしい。また、下記のインタビューで触れているキャスト情報に関しては9月18日にお披露目される予定だ。
河崎実監督ミニインタビュー
「男の欲望ですよね。女性にはわからない世界」
――実写化を発表して、周囲の反応はいかがでしたか?
河崎 「またやったか」という感じですね。「また地球防衛か」みたいな(笑)。ただ、Twitterなんかでは話題になったようで、非常にありがたいことです。
――今回の逃げまどう人々の応募は、どれくらいあったんですか?
河崎 何百人もあったらしいね。それで、そこから厳選した40人を選んだわけです。
――さきほど控え室を見てきましたが、圧倒的な男子率でした。
河崎 そりゃもう、当然ですよ。
――撮影のコンセプトは?
河崎 とにかくまあ迫真性だよね。わーって逃げるなんてことは現実的にはないことだから、それをいかにリアリティーを持って描けるか。あとは怪我をしないように……とかかな。でも逃げるシーンっていうのは本当に楽しいんですよ。だから笑いながら逃げちゃう人もいてね、それは困るんですよね。
――笑っちゃうんですか?
河崎 実際にあなたも出てくださいよ。けっこうね、笑いたくなっちゃうんですから。悲鳴をあげている顔も、笑ってるように見えちゃうし(笑)。
――約2分間の実写映画ということですべてが見どころだとは思うのですが、監督的にいちばんオススメしたいポイントなどはありますか?
河崎 やっぱりペイルウィング(ゲームにも登場する空飛ぶ隊員)かな。アイドルのかたが演じてくれていますしね。
――ペイルウィングは実際に空を飛ぶんですか?
河崎 もちろん、特撮で飛ばしますよ。CGと操演で表現しています。
――ペイルウィングを演じるアイドルのかたはまだ名前が出ていませんが……。
河崎 宮沢りえですよ。いや……塩沢とき、菅井きんだったかな?
――漢字2文字、ひらがな2文字の人というわけですね(笑)。演技はいかがでしたか?
河崎 いやー、よかったですよ。慣れていたね。過去にはこういった作品への出演経験もあるみたいだし。……って、ここまで言ったらバレちゃうね(笑)。
――キャスト以外ではどんな見どころが?
河崎 過去の特撮作品へのオマージュだね。散りばめられているというか、約2分の映像なのでほぼ全編にわたって何かしらの作品へのオマージュが捧げられていますよ。
――具体的にはどんなものが?
河崎 いちばんわかりやすいところで言うと、某ウルトラヒーローが地球防衛の長官になっています。
――先日の発表会のときにもおっしゃっていましたね。ちなみに、映画化への希望も訴えていましたが、実際映画にするとしたらどんな物語に?
河崎 まずはいちから作り直したいよね。地球防衛ものってけっこうたくさんあるからさ、どこかにヒネりを入れなきゃいけない。ただ、すでにキャラクターは決まっているから、その設定から逆算してストーリーを作るっていうのもおもしろいかもね。
――最後に、河崎監督が考える特撮の魅力とはなんでしょうか?
河崎 特撮って、砂場で男の子が人形で遊んでいるようなものなんですよ。いい大人がミニチュアセット作って、ロボットや怪獣を、いかに大きく見えるかを考えながら動かす。男の子が人形持ってガーっと動かしている遊びの延長で、言い換えれば男の欲望ですよね。女性にはわからない世界。あとは、モノがあるという点もいいよね。ミニチュアや人形が触れる……まあ、言ってしまえば変態の世界、フェティシズムの世界だね(笑)