“Luminous Studio”の技術デモ“Agni's Philosophy”の舞台裏【CEDEC 2012】

2012年8月20日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、ゲーム開発者向け会議“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2012”(CEDEC 2012)が開幕した。初日の講演から、スクウェア・エニックスの次世代ゲームエンジン“Luminous Studio”の技術デモ“Agni's Philosophy - FINAL FANTASY REALTIME TECH DEMO”の製作過程を追った講演をご紹介する。

●オープンカンファレンス開催決定!

DSCF3895.JPG

 2012年8月20日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、ゲーム開発者向け会議“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2012”(CEDEC 2012)が開幕した。

 今年のE3で全世界に公開された、スクウェア・エニックスの次世代ゲームエンジン“Luminous Studio”の技術デモ“Agni's Philosophy - FINAL FANTASY REALTIME TECH DEMO”。スクウェア・エニックスのCTO(最高技術責任者)で、ルミナス・スタジオの開発を主導する橋本善久氏、ヴィジュアルワークス部でチーフ・クリエイティブ・ディレクターを務める野末武志氏、テクノロジー推進部でリードアーティストを務める岩田亮氏らが、その舞台裏を明かす講演を行った。


 デモを制作するプロジェクトのゴールは、ヴィジュアルワークスが手掛けるクラスのハイクオリティーなプリレンダCG映像と同等品質の、高品質なリアルタイムCG映像作品を制作すること。目的として、その過程で課題や問題点を見つけ出し、次世代ゲーム開発に向けたワークフロー(制作の流れ)とノウハウを構築し、Luminous Studioを使った制作手法がどうあるべきかという点も含めて精度や完成度を高めることにある。

 制作にあたっては、コンセプトやストーリーボード、アートワークなどを橋本氏、野末氏、岩田氏らが中心に制作したのち、ビジュアルワークスで一旦プリレンダCGとして映像を制作。それをテクノロジー推進部で技術開発などを行いながらリアルタイム環境での再現へ向けて落とし込んでいくという流れで作業が進められたという。
 ちなみにビジュアルワークスで関わったスタッフ数は非公開であるものの、「通常のCGムービーの規模」で、後でリアルタイムに再現できるようにしなければいけないからといって手は抜かずに、新しい技術も入れたビジュアルワークスとしての挑戦も行っているとのこと。野末氏いわく「詰め込みすぎたかなというぐらい」だとか。

 デモの表現的なコンセプトは「ビリーバビリティ」。これは“真実味”といった意味で、“リアル”とは多少異なる。デモの世界は魔法と銃が同居するようなフィクション世界であり、我々が住んでいるような現実ではない。しかしながら、その中で人物や物体が本当にそういう世界に存在するかのような真実味のある感覚が味わえるということを目指している。
 そのほかコンセプトとしては、「ファイナルファンタジーとは何か」という表現の模索、国籍や性別を問わずに受け入れられるものを目指しているとのこと。ちなみに、魔法使いが両手でカエルの形を作ってトードの魔法をかけようとしているこだわりのシーンがこっそり隠されているそうなので、気になった人は探してみてほしい。

 ビジュアルワークスの制作パートでは、すでに公開当時のインタビューでお伝えしているように、コンセプトアートでグループ会社であるクリスタル・ダイナミクス(『トゥームレイダー』シリーズのスタジオ)のアートディレクターであるブライアン・ホートン氏らが参加しているといったグループ内コラボレーションも行われているほか、髪型を本当のヘアアーティストの人に作ってもらっていたりもするそう。虫、召喚獣などもイチからデザインしており、すでにイメージが決まっているゲームのムービーを手掛けることが多いビジュアルワークスでは、これも中々ないことだとか。
 ちなみに、主人公のアグニを襲うハイエナ(注射を打たれてクリーチャー化する動物)のアニメーションをつけるために、“犬のモーションキャプチャー”をやっている様子も披露された。“振り返って動き出す”、“ブルッと体を震わせる”、“飛び降りる”という3パートのアニメーションを何とか収録し、融合することでベースとしているとのことだった。

 こうしてプリレンダCGとしての制作が進む一方、テクノロジー推進部では上がってきたデータをコンバートしてエンジン内で再現していく作業が行われる。岩田氏は準備段階として、基礎研究をしっかり詰めたことが役立ったと振り返った。写真を撮ってそれを忠実に再現するという積み重ねからプリレンダCGとリアルタイムCGの違いを学んでいく過程で、「意外とプリレンダとリアルタイムは近しいデータで行けるんじゃないかというのがわかってきた」という。しかし、リフレクション(光源の反射結果)だけは一致しなかったとのこと。
 データをコンバートするためには、データを扱うツールとしてMayaを選択。Mayaで表示できているものをエンジンで表示できるようにして、必要であろう要素やパラメーターを対応できるようにしていったとのこと。最終的に、ビジュアルワークスからアセット(素材)データが来てから1日でエンジン内で動かせるようになっているそうだ。

 すべてをまとめた映像を流しながらの駆け足な講演だったが、末尾で今年もオープンカンファレンスが11月23日、24日に行われることが明かされた。よりLuminous Studioに関するより詳細な内容や、『ファイナルファンタジーXIV』にも関する技術講演などが2日間に渡ってたっぷり行われる模様。場所は神田で、参加者募集は9月12日正午開始を予定しているとのこと。サイトでは、すでにプログラムも公開されている。
 そのほか、「Youtubeだと映像に限界がある」(橋本氏)と、映像のiPad向けバージョンなども公開予定であることが明かされた。「(プリレンダCGと)意外と近い距離感まで詰められたと思う」(橋本氏)と自信を見せるこの映像を、もっと迫力のクオリティーで見てみたい人はお楽しみに。


DSCF3885.JPG