ソフトウェア デザイン、ゲーム デザインの両部門で成果を残す

日本代表が世界2位の快挙! “Imagine Cup 2012”大会結果報告会_10

 “テクノロジの活用で世界の社会問題を解決する”というテーマに沿った革新的なソリューションを発表、表彰する場としてビル・ゲイツ氏が提案し、2003年よりスタートした学生を対象とするIT技術のコンテスト“Imagine Cup”。日本からも毎年複数の学生たちが参加しており、これまでに計3度入選を果たすなど、確かな実績を残してきている。今年の“Imagine Cup 2012”は、現地時間の2012年7月6日~7月10日まで、オーストラリア・シドニーで開催。4月に行われた日本代表選考会(関連記事はこちら)を通過した3チームが参加し、世界各国の学生たちを相手に、アイデアと技術力を競い合った。そして2012年7月12日、日本マイクロソフトは東京・品川にある同社本社で、この日の早朝に帰国したばかりのImagine Cup 2012日本代表による大会結果報告会を実施。快挙と呼ぶにふさわしい、過去最高の成果を発表した。

 日本代表の結果報告をお届けする前に、Imagine Cup 2012の概要について簡単に紹介しておこう。大会には世界75ヵ国から、106チーム、350人上が参加。予選には180ヵ国から35万人以上が参加したとのことで、世界的に見てもかなり大規模な催しだ。大会のテーマは「想像しよう。地球規模の難題がテクノロジの力で解決される、そんな未来を。」というもので、“ソフトウェア デザイン”と“ゲーム デザイン”というメインとなる2部門に、さまざまなジャンルを内包した“チャレンジ”部門を加えた、計3部門を用意。日本からはソフトウェア デザイン部門に、東京工業高等専門学校の生徒からなるチーム“Coccolo”が、ゲーム デザイン部門にバンタンゲームアカデミーのチーム“Esperanza”と、トライデントコンピュータ専門学校の“チームブロッサム”が参加した。大会での選考は複数のラウンドに分かれており、最初は小規模なセミナールームでのプレゼンに始まって、会期5日間の中で勝ち抜くほど舞台も大きくなっていくという流れになっている。審査では作品そのもののクオリティーはもちろんのこと、プレゼンテーション技術も重要な要素。大会結果報告会では、それぞれのチームの健闘ぶりがダイジェスト映像として流されたが、いずれも堂々とした立ち回りで、プレゼン終了後には会場から盛大な拍手を受けるなど非常に手応えを感じさせるものとなっていた。

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▲大会報告のダイジェスト映像。

 さて、大会結果だが、さきほど述べた通り今年の日本代表は過去最高の成果を残した。ソフトウェア デザイン部門で参加した“Coccolo”は、同部門72チーム中2位。日本代表が2位に輝いたのは大会史上初で、決勝戦へ進出したのも2006年以来6年ぶりとなる。Coccoloが出展したのは、自律的かつ効率的な節電を可能にしたソリューション“ALL Lights! ~可視光通信による省電力照明システム~”。エリアごとの明るさを自動で判断して、LED照明の明度をこちらも自動で調整するというもので、昨年の東日本大震災以来続く、日本国内での電力不安を解消する可能性を秘めたソリューションだ。記者は4月に行われた日本代表選考会で一度彼らのプレゼンを見ていたのだが、提案内容のクオリティーはもちろんのこと、チームリーダーを務める大川水緒さんのプレゼン力に驚かされたことをよく覚えている。あれから約3ヵ月、Coccoloのメンバーは本大会に向けて国内外で場数を踏むことでさらなる成長を遂げ、世界2位というすばらしい結果を得たのだ。報告の中で大川さんは、会期中はさまざまなアクシデントがあったものの、“お祭りだから楽しもう”という気概を持って臨めたことが、今回の結果につながったのではとコメント。1位は逃したものの「大会では“もうこれ以上のことはできない”プレゼンができました」と、晴れ晴れしく語る表情が印象的だった。一方で、ひとつだけ心残りなこととして大川さんは「Coccoloのメンバーたちともっと早くからいっしょにいたかった」と話す。じつは彼らは今年が最終学年で、いっしょにこういった大会へ出られるのは最初で最後だったのだ。これは個人的にも、そして恐らく彼らを支援してきた日本マイクロソフト的にも惜しい話。しかし、Coccoloの世話役とも言えるメンターの方も「我々のやってきたことは間違っていなかったことがわかった」と語る通り、彼らが培った経験や技術はつぎにつながっていくはずだ。

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▲世界2位という快挙を成し遂げたCoccoloのメンバーたち。
▲リーダーの大川水緒さん。

 ゲーム デザインの2チームは、チームブロッサムが世界トップ5、Esperanzaが世界トップ10。日本からゲーム部門へ2チームが参加するのは大会史上初のことで、さらに成果まで残すというすばらしい結果となった。チームブロッサムの作品『ブルーム*ブロック』は、環境問題をテーマにした3Dパズルゲーム。子どもたちも楽しめるグラフィックデザインを目指し、幼稚園でテストプレイを行うなどユニークな試みも評価されたようだ。Esperanzaの作品は、震災復興をテーマにしたリアルタイムストラテジーゲーム『BLUE FIELD』。被災地の瓦礫処理がゲームを通じて体験できるというもので、復興問題の重大さが伝わる内容だ。両チームの報告で共通していたのは、チームブロッサムの馬場翔太さんが「前にグイグイと出ていくパワーが足りなかった」と語る通り、プレゼンテーションの重要性を改めて認識したというもの。Imagine Cup 2012は、最先端の技術だけでなく、人間的な成長も学べる場ということなのだろう。

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▲チームブロッサム。
▲Esperanza。

 ソフトウェアデザイン部門の審査員に選ばれ、報告会にも参加した、東京大学 知の構造化センター 特任教授の中山浩太郎氏いわく、Imagine Cup 2012は、昨年まであった部門の統合などもあり、過去に例がないほどハイレベルな大会だったという。そのような状況において、今回の日本代表チームの活躍は間違いなく快挙であり、来年以降参加する学生たちの目標にもなるだろう。