『MGR』の真価が見えてきた!

『メタルギア ライジング リベンジェンス』ふたりのプロデューサーに訊く!【E3 2012】_02
小島プロダクション 是角有二氏(右)
プラチナゲームズ 稲葉敦志氏(左)

 もともとは、2009年のE3で『メタルギア ソリッド ライジング』というタイトルで開発を発表。その後、長い潜伏期間を経て、2011年12月10日にアメリカで開催されたVGA 2011(米国大手ネットワーク放送局Spike TVが主催するゲームアワード)で小島プロダクションとプラチナゲームズによる衝撃のコラボレーションが発表された『メタルギア ライジング リベンジェンス』。E3 2012では、世界初となるプレイアブルが出展され、国内外問わず多くの注目を集めている。今回は、本作のプロデューサーである、小島プロダクションの是角有二氏とプラチナゲームズの稲葉敦志氏の両人にインタビューを敢行。プレイアブル出展によって見えてきた本作の真価について、深く切り込んでいく。

なお、本インタビュー中に登場する“ブレードモード”や“斬奪”、“ニンジャラン”といったキーワードの詳細は、プレイリポート(→こちら)を参照してほしい。

斬ることが死ぬほど気持ちいいゲーム

――世界初のプレイアブル出展ということで、『MGR』がどういうアクションゲームなのか、だいぶ明確になりました。改めて、アクション部分のコンセプトを教えてください。
稲葉敦志氏(以下、稲葉) 小島プロダクションの方々と「これで行こう」と合意が得られた『MGR』のコンセプトは、“斬ることが死ぬほど気持ちいいゲーム”ということだったので、それをいろいろなバリエーション、そしてシチュエーションで実装するべく、ゲームを組み上げています。そのひとつが“ブレードモード”ですね。狙いをつけて敵を斬るというシステムですが、その斬りかたによって“斬奪”に移行したり、好きなだけ斬り刻むこともできます。いちパターンの“斬る”を楽しむのではなく、敵を斬るという行為にいたるまでのプロセスや戦いかたにバリエーションを持たせているので、斬る気持ちよさが尽きない、というのが『MGR』なんです。

――マップにあるものはすべて斬ることができるのでしょうか?
是角有二氏(以下、是角) さすがに、何でもかんでも斬ることができてしまうとレベルデザインとして成立しなくなってしまいます。僕たちは、こういう遊びを想定して、こう楽しんでほしいというデザインをもとにマップを構成しているので、ゲームとして成立しないところは斬ることはできません。でも、ユーザーさんが“斬りたい”と思う場所は斬れるようになっているはずです。斬れないところは存在しますけど、ユーザーさんにはそれを感じさせないようにしています。

――試遊では、(携行型)ミサイルの銃器を使うことができました。メインの高周波ブレード以外にも、このような武器がたくさん登場するのでしょうか?
稲葉 あくまでサブウェポンですね。バリエーションとしてはたくさん用意して、ゲームの楽しさを膨らませようとは思います。でも、それらに頼ることなく、斬ることがいちばん楽しいゲームにはするつもりです。

――なるほど。サブウェポンは複数持つことができるのでしょうか?
是角 いくつかのサブウェポンを切り換えることができます。雷電は、メインの武器が近接武器なので、相手の懐に飛び込まないといけないわけです。サブウェポンを使うことで、遠くの敵や大きな敵をひるませたりして、一気に雷電が近づける隙を作れると。そこからコンボで相手の体勢を崩して、最後にトドメの斬撃をぶち込むというのがきれいなサイクルですね。

――ブレード以外の武器は、近接攻撃をするうえでの補助的な役割を果たすわけですね。あと、これは武器というわけではないのですが、試遊に登場した月光がワイヤーアームをくり出すシーンで、そのワイヤーアームをつかんで月光を転倒させることができました。こうしたギミックはほかにも登場するのでしょうか?
稲葉 たくさん用意されていると思ってもらってかまいません。いままでの『メタルギア ソリッド』ではカットシーンで表現していたものが、インタラクティブなアクションとして壮快に味わえるというのも、『MGR』の大きなコンセプトになっています。

――そういう意味では、高速に移動できる“ニンジャラン”も当てはまりますね。
稲葉 ニンジャランは、移動の気持ちよさを純粋に味わってほしいというのもありますし、“どこまでも積極的に立ち向かう雷電”という、アクションに寄ったキャラ作りのために取り入れています。ニンジャランを使って敵の攻撃をはじきながら懐に飛び込む、といった感じで、ただ単に速く動けるだけでなく、ゲーム性にしっかり絡んだものにしてあるんです。単なるダッシュだと飽きるし、意味も薄いんですよ。

――超人的なアクションを実際に操作できつつ、戦術にも影響してくると。
稲葉 どんな巨大なボス敵だろうと、ニンジャランを使うことによって弱い攻撃ならはじき返すことができるので、それで一気に距離を縮めて攻撃に移るといったことも可能です。また、敵に気づかれないように地形を移動して、敵からの攻撃を受けずに倒すという過程でも使えます。まさに、ユーザーさんの使いかた次第ですね。

――話を操作まわりに移しますが、非常にシンプルで操作しやすい印象を受けました。
稲葉 これは小島プロダクションさんから細かくボタンのリクエストが来てですね……。
是角 いやいや、出してないですよ(笑)。ゲームデザインやボタン配置、操作性についてはプラチナゲームズさんに一任しています。もちろんチェックはしますが、小島プロダクション側のスタッフも「スムーズに操作できるし、覚えやすいね」と。
稲葉 まだ、もうちょっと変わるとは思います。シンプルで遊びやすい、というのは変えませんが。

――さきほど冗談もありましたが、小島プロダクションとプラチナゲームズという、モノ作りにおいてはかなり強いこだわりを持っているふたつのスタジオ間のやり取りというのは、どういった感じなのでしょうか?
稲葉 最初に手掛ける領域を決めて、それをお互いに尊重しつつ作っている感じでしょうか。
是角 領域を決めた外の部分については、とりあえず意見は言います。イヤなものはイヤなんで。それはプラチナゲームズさんも同じで、僕らが作ったものでも「カッコ悪い」とか意見を言われます(笑)。お互いやり取りをしていく中で、僕らが得意ではない分野はなかなか理解できないんですよ。なぜプラチナゲームズさんはここにこだわるんだろう? と。それをつかむためには、気になるところは全部言って、理解を深めるしかないんですね。
稲葉 いっしょに作り始めて、小島プロダクションの緻密な設定はすごいなと思い知る感じです。
是角 逆に、アクションについては、とんでもないアイデアが出てきますからね(笑)。
稲葉 あくまでゲーム優先なので、ウチは。
是角 この発想は小島プロダクションからは絶対に生まれないというものが出てきて、始めは驚くんですけど、理解が進むにつれてこれはユーザーさんに喜んでもらえるよね、ってなったり。
稲葉 そんな感じなので、後で設定にまとめあげるのがたいへんなんですよ。
是角 とにかくゲーム性が大事なので、設定はそのおもしろさを保ちつつ作っていけばいいのかなと。
稲葉 こういう姿勢はすごく勉強になっていますよ。ここまでやらないといけないのかっていう。

『メタルギア ライジング リベンジェンス』ふたりのプロデューサーに訊く!【E3 2012】_01

――試遊バージョンでは、シーンごとに細かく評価が表示されて、ポイントのようなものを獲得していました。これで武器をアップグレードしたりするのでしょうか?
稲葉 どうなんでしょう?(笑)
是角 成長要素はあります。まだ具体的にはお話できないのですが、ちょっとだけ……。雷電の最初の武器は高周波ブレードのみですが、物語が進むにつれてPVでも出ているような棒状の武器だったり、近接武器としていろんなバリエーションが使えるようになります。コンボアクションのバリエーションも増えますし、プレイスタイルや状況によってユーザーさんが武器を切り換えることもできます。それらを購入するためにポイントが必要になるわけです。

――武器だけでなく、雷電自体のパワーアップも?
是角 それは……サイボーグという設定ですしね……。
稲葉 ありますね。
一同 (笑)。

――VGA 2011での『MGR』の発表の際、ステルスは切り捨てるという旨の発言があったかと思うのですが、本作にはまったくステルスの要素はないのでしょうか?
是角 あのときはあえて「ステルスは捨てた」と言ったのですが、誤解を生みたくなかったという狙いもあります。『MGR』は、隠れながら進んで、見つからずにゴールに到達するという従来の『MGS』のようなゲーム性ではありません。スニーキングという行為はないのですが、見つからない状態から相手を倒すであるとか、素早く近づいて相手が武器を構える前に倒すといった、アクティブなステルスアクションはあるんです。ニンジャランとブレードモードを組み合わせることで、『MGR』ならではの攻撃的なステルスを実現しています。

――では、ステルスアクションにこだわったプレイをすると評価に反映されたり……?
是角 どうなんですかね?
稲葉 されます。
一同 (笑)。

――ここまでアクションまわりを中心にお聞きしてきましたので、最後にストーリーのお話を。『MGS4』で幸せを手に入れた雷電は、なぜ再び戦うことになるのでしょう?
是角 その質問、すごく多いんですよ(笑)。では、ほんの少しだけ。『MGS4』で幸せになった雷電は、家族と暮らすことになります。もちろん日々の生活がありますから、生きていく糧を得るため、自身のスキルと経験が活かせる職業としてPMC(民間軍事会社)に就くんです。最初は要人の警護や軍の訓練などをやっているのですが、そこでとある事件に巻き込まれて重傷を負って……そこから体が変わりまして……みたいな(笑)

――後は実際にプレイしてのお楽しみですね(笑)。そして、気になる発売日は2013年初頭とアナウンスされました。開発は順調ですか?
稲葉 綱渡りもいいところです。発売日がどうこうというよりはプレッシャーが強い、という意味ですね。きちんと『メタルギア』として仕上げなくてはいけないし、発売時期も発表されたので、気持ち的に綱渡りと……。
是角 ゲーム制作は、時間があればあっただけいいものが作れます。限られた時間の中で、どこまで僕たちが作りたいものを入れ込めるかということに関しては、つねに緊張感を持っていますね。ぜひ、期待していただければと思います。