ハードコアゲーマーを納得させる“非Pay to Win”

[海外ゲームニュース]『Dota 2』が基本無料でサービス決定、全ヒーローが無料で使用可能_01

 Valveが、新作ストラテジーゲーム『Dota 2』を基本プレイ料金無料でサービスすることを発表した。ストアを通じて少額課金でアイテムが販売されるものの、ゲームプレイに影響しない衣装などのアイテムに限定されるという。また、無課金ですべてのヒーロー(プレイヤーキャラクター)が使用可能であると述べている。

 また、PC版『チームフォートレス2』同様にSteam Workshopをサポートし、プレイヤーがコンテンツを制作して販売することが可能。ファンはValveのクリエイターたちによるアイテムと同様、世界のファンが作った優れたアイテムを購入して自分のヒーローに適用できるのだ。

 興味深いのは、少額課金で販売されるのがゲームプレイに影響しないアイテムであることを述べる前に「『Dota 2』はpay-to-winなゲームではない」と前置きしていることだ。Pay to Winなゲームとは、Free to Play(基本プレイ料金無料)などと対を成して使われることが多い言葉で、「金を払わないと負ける」ゲームデザインであることを指す。
 欧米でも少額課金を採用したタイトルが増えてきているが、多くのパブリッシャーが気にするのが、実は少額課金モデルを採用したことでハードコアゲーマーであるファンに「このゲームはPay to Winだ」と思われることなのだ。
 今年サービス予定のタイトルだと、FPS『Dust 514』や、ロボットTPS『Hawken』といったタイトルの取材時にも、「ウチはPay to Winじゃない」といった説明を耳にしたことがある。ゲームにかけるお金は少ないほうがいい、でも自分の方がうまいのに、課金武装したヤツに負けるようなゲームはやりたくない欧米の若いハードコアゲーマーに遊んでもらうためには、「ゲームが上手くて、遊ぶ時間もバッチリ取れるなら大丈夫。課金は時間がない人とか、なかなか効率的にポイントを稼げない人が使えばいいだけで、キミは問題無いだろ?」というメッセージを暗に発するのが重要なのだ。

 これらのタイトルでは今回のケースとは異なり、(ゲームに影響する)武器なども売っていたりするが、大抵すべてのアイテムはゲーム内ポイントでも買えるといったデザインになっている。つまり、本当にソイツがハードコアゲーマーなら、試合で勝ちまくってポイントを稼ぎ、ゲーム内ポイントで稼げばいいというわけ。そりゃ「俺は上手くないけど金も払いたくない! でも遊びたいし勝ちたい!」なんて人は「あ、そう。じゃ練習して上手くなってね」と誰も相手にしないだろう。

 コンプガチャどころか強力なガチャ装備すらなかなか難しく、ゲームの勝負はあくまで腕前とかけた時間でつけようぜというのが欧米流なわけだが、『チームフォートレス2』とか『Dota 2』の場合は、さらにストイック。「キミがこのゲーム超好きなら、ファン向けのアイテムとか買ってもっと楽しんじゃって!」と、ゲームの楽しさは課金とは別に存在し、課金はあくまでゲームを楽しんでいる人がもっと楽しむために買う方向にデザインされている。
 これはもちろん世界中にファンがいるValveだからこそできる芸当で、普通はパッケージで売るより何倍も儲かっちゃうなんてことは中々ないと思うのだが、ファンは自分のキャラクターを好きなようにカスタマイズしてますます楽しく、場合によっちゃあアイテム販売でいくらかの収入もゲットでき、メーカーとしても収入が増えてラッキーというのは、何とも羨ましいものである。