そもそもトライアルってなんぞや?
4月18日よりXbox LIVEアーケードにて『Trials Evolution』の配信がスタートした。本作は2009年に登場し、大ヒットを記録したバイクゲーム『Trials HD』の続編。まあひとくちに“バイクゲーム”って言ってもいろいろ種類はあるが、本シリーズはモトトライアルを題材にしたゲームなのだ。
おそらく大半の人が「モトトライアルってなんだ?」という疑問が浮かぶであろう。モトトライアルとは、障害物が配置されたコースを、いかにバイクに乗ったまま走り抜けられるか、という競技だ。巨大な段差や積み重なった丸太なんかを、バイクでヒョイヒョイヒョイっと進んでいくアレです。ちなみに自転車で行うほうはバイクトライアルって呼ぶらしい。
そんな競技を題材にした本作は、バイクを操って障害物だらけのコースをいかにミスらずに、短時間でゴールできるかを競うアクションゲームなのだ。
シンプルな操作性だからバイクとの一体感がハンパない!
ゲーム中の視点は、コースを横側から見るスタイル。操作方法は、左スティックでリーン(ライダーの姿勢変更)、Rトリガーでアクセル、Lトリガーでブレーキ。決められたコースを、アクセルワークとリーンだけで攻略していくというシンプルさが大きな特徴だ。
序盤のコースは小山や小さなジャンプ台など易しい障害が多く、鼻歌交じりの感覚でプレイできる。とはいってもアクセル全開でクリアーできるレベルではなく、しっかりと操作しないと思わぬところでミスしてしまう。
たとえばジャンプひとつとってみても、突入の姿勢によっては前のめりになってしまう。このまま着地するとクラッシュしてしまうため、空中でリーンを用いて上手に着地できるよう、姿勢を制御するのだ。
また急勾配過ぎて登れない斜面は、リーンで身体を前方に傾けながら突入したり、アクセルを少しだけふかしてゆっくり進むと、うまく登ることができる。
バイクの挙動は物理演算で再現されており、とてもシビア。ほんのちょっとバランスを崩すだけでクラッシュしてしまう。キー操作に対するレスポンスのよさと相まって、プレイするたびにプレイヤーとバイクの一体感がどんどん高まり、バイクを操るのがとても楽しいのだ。
ミスが多いゲームだからこそリトライの快適さがキモ!
本作のミッションは、BEGINNER~EXTREMEの難度別7カテゴリが用意されている(MEDIUMとHARDは2カテゴリずつ存在)。ミッションごとにミス回数とクリアータイムが記録され、そのスコアに応じてブロンズ~ゴールドのメダルを獲得。メダルの総数で新たなカテゴリが解禁され、新しいマシンも入手できるという仕組みだ。
序盤こそ簡単にクリアーできるが、MEDIUMあたりから徐々にミス回数が増え、HARDになると「本当にクリアーできるのかこれ?」と思えるような難度になる。当然ミスとリトライの回数が増えていくのだが、“リトライ時のストレスのなさ”も本作の大きな魅力のひとつだ。
各ミッションにはゴールまで複数のチェックポイントが存在し、プレイ中にBボタンを押すと一瞬でチェックポイントからやり直すことが可能。ただしミスの回数は増えていく。またBACKボタンを押すと、一瞬でそのステージの最初からやり直すことができ、こちらはミス回数もリセットされるという仕組み。
とりわけ使用することが多いBボタンによるチェックポイントからのリスタートだが、こちらは本当に一瞬でやり直せるのがポイント。ロード画面は0.1秒すら入らないため、完全にストレスなくリトライできるのだ。
「リトライのことでそんな大げさな……」と思うかも知れないが、本作はとにかくトライ&エラーをくり返して攻略するゲーム。最高難度のEXTREMEにいたっては、ミス数が上限の500回となってゲームオーバーになることもよくある。こんなゲームだからこそ、超快適に何度もやり直せるこのゲームデザインは、大きく評価するべきポイントだ。
メダルシステムとフレンドランキングがゲーマー心をくすぐる!
本作のスコアは、ミス回数が重視され、ついでタイムによる判定となる。とくに難度MEDIUMまでは、一度もミスせず一定以上のタイムでクリアーしないとゴールドメダルを獲得できない。クリアー重視の人ならそこまでメダルにこだわらないと思うが、本作にはもっとやりこみたくなる仕掛けがほどこされている。それが、ミッション選択時に表示されるフレンドランキングだ。
これは名前の通り、フレンドたちと自分のスコアがランキングで表示されるもの。フレンドたちが自分より上の順位の場合、やっぱり気になるのが人の常。さすがに何十万人もプレイしているゲームでランキング1位を目指すのは雲をつかむような話だが、相手はフレンド。そのクリアータイムを上回るのはそこまで実現不可能な話ではないし……と、ついつい向上心をそそられてしまう。またプレイ中には、自分よりランキングが高いフレンドのゴーストも表示されるため、ひとりプレイながらレースをしている楽しさを味わえる。
リーダーボードからランキングを見られるゲームはそれこそ星の数ほどあるが、本作では特別な操作をせずにフレンドランキングが表示され、さらにゴーストと競える。リトライもそうだが、この快適さがゲーム性と相まって、本作のランキング争いをさらに過熱させるのに一役買っているのだ。
鉄球転がしにスキージャンプ!? バイクとはかけ離れた“スキル ゲーム”
本作はレース以外に、“スキル ゲーム”とよばれるタイプのミッションがいくつか用意されている。これらのゲームは“レースではないこと”くらいしか共通項がない、フリーダムなミッションが集まっているのだ。
たとえば“Freestyler”というミッションは、バイクではなくスキー板を身につけたライダーを操作。遠くまで滑るほど得点が増えていき、さらに宙返りを行うとボーナスポイント獲得。制限時間の1分半以内に、どこまでスコアを稼げるかを目指すゲームだ。
また“S.P.H.E.R.E.”では、自機はなんと巨大な鉄球! 細いコースの上から落ちず、どこまで転がせるかにチャレンジする。思わず笑っちゃう内容のものが多いが、いずれもゲームとしての完成度は高く、ついついハマってしまうのは本編ゆずり。
ついに待望のオンライン対戦が実現!
要望が高かったオンライン対戦も、本作よりついに実装された。シングルプレイのコースに加えて、4ラインが用意されているコース“スーパークロス”で対戦が楽しめるのだ。
本作のオンライン対戦はちょっと特殊で、各々が走ってタイムを競い、そのスコアに応じてポイントが加算されるというもの。通常のコースではほかのプレイヤーの現在位置がゴーストのように表示され、スーパークロスではほかプレイヤーのバイクがリアルタイムに表示される。
いうなれば参加者がそれぞれ同時にタイムアタックを行っているようなもので、相手の進行状況が見えることぐらいしか他者のプレイに干渉しない。お邪魔アイテムやハンデなどはいっさい登場しなのに、対戦が非常に楽しいのだ。
相手のリアルタイムな状況が表示されるため、競っている感はバツグン。実際抜かされると慌ててしまうし、勝利できた場合は非常にうれしい。またオンライン対戦なのに、ラグは順位に一切影響を及ぼさないため、距離が離れている国外のプレイヤーとも問題なく楽しめるのは、大きなメリットだろう。
オンラインついでにもうひとつ。本作はオリジナルコースを作成できる機能も搭載しているのだが、これをアップロードして公開することが可能。当然、ほかのプレイヤーが作ったコースをダウンロードし、プレイすることもできるわけだ。すでに大量のユーザー作成コースがアップされており、玉石混淆ながらさまざまなコースをプレイすることが可能。ある意味コースが無限に増え続けるため、末永くプレイできることうけあいだ。
簡単操作ながら奥深く、ついつい向上心を刺激するゲームシステム。リトライやオンラインランキングの快適さに加え、オンライン配信作品とはおもえないほどの価格とボリューム。前作『Trials HD』は傑作だったが、その続編という期待に十二分に応えた大傑作だ。モトトライアルを知らなくてもまったく問題なく楽しめる作品のため、ゲーム好きならぜひとも一度はプレイしてもらいたい。
著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当するフリーライター。2012年の春は以前インプレした『Fez』やら本作やら、XBLAゲームが豊作すぎて嬉しい悲鳴。パッケージタイトルもがんばって!