あの歯ブラシを入れながらしゃべるシーンを生で再現!?
2012年3月31日、4月1日の2日間、幕張メッセで開催されている、アニメの祭典“アニメ コンテンツ エキスポ 2012”(以下、ACE2012)。2012年3月31日のREDステージでは、テレビアニメ『偽物語』のステージが行われた。登場したのは、阿良々木暦役の神谷浩史、阿良々木火憐役の喜多村英梨、阿良々木月火役の井口裕香。前作にあたる『化物語』を含めた、“物語”シリーズとしては、「1000人近い人の前でやるイベントは初めて」(広報を担当するアニプレックスの高橋祐馬氏)とのことで、イベントの冒頭から終わりまで、ファンからの熱視線が途絶えるのことのないイベントになっていた。
最初のコーナーに移る前に、まずは『化物語』と『偽物語』の主人公・阿良々木暦を演じた神谷浩史に、役の感想が聞かれる。神谷は、「今回(『偽物語』)は、非常に順調にアフレコさせていただきまして。“物語”シリーズが好きな諸君ならおわかりかと思うんですが、『化物語』はアフレコ当日に台本が届くという肝を冷やすことがあったんですが(苦笑)、今回は台本を早くあげていただき、勉強する時間を多く取らせていただけました。でも早めに上がったら上がったで、時間がいくらでもあるので、チェックが終わらないんですね(笑)。1話のチェックに最大5時間かかって、日付が変わっていたこともありました。その成果がフィルムに現れていたらなと思いながら参加していました」と、“物語”シリーズを通じた内容についてコメントしていた。
最初のコーナーは、『化物語』のホームページにあった“あとものがたり”を受け継いだ、“生あとものがたり”。これは、小説の“あとがき”のように、収録が終わった各話のエピソードを公開していくというもので、それを観客のいる前で行うという、まさに今回だけの“ACE限定版”と言えるものになっていた。
最初の話題は、喜多村と井口が演じた阿良々木暦の妹たちについて。阿良々木火憐と阿良々木月火は、『化物語』から登場していたものの、長いセリフや登場シーンが用意されたのは『偽物語』が初めて。神谷も「ふたりのキャラは、登場としては新キャラみたいな扱いだったよね」とみずから印象を話しつつ、ふたりに感想を求める。喜多村は「『化物語』は、朝にお兄ちゃん(阿良々木暦)を起こしにいくシーンが多かったので、ほかのヒロインとの会話劇を見ていると、“物語”シリーズの会話の掛け合いをやってみたいなと、役者魂がくすぐられるような感じで見ていました」と語る。それに対し、神谷は「しゃべることでキャラクターが浮き彫りになる、言葉が大切だと思い知らされる作品だなと思います」と、言葉の掛け合いを活かした“物語”シリーズの印象を回答。
一方、井口が「英梨ちゃん(喜多村英梨)は、お兄ちゃんとも、貝木さんみたいなほかのキャラクターとも絡んで、がっつりぶつかっていくことが多くて、英梨ちゃんしかできない火憐ですごいなと思いますね。……歯ブラシとかも(笑)」と語ると、喜多村は「最初に“かれんビー”があり、自分の中で『偽物語』の世界観を確立した上で月火を見ると、同じ姉妹であって同じ屋根の下にいるけど、いい意味で温度差、キャラクターの違いがあって、“かれんビー”と“つきひフェニックス”が、ひとつの『偽物語』という作品だけど違う作品に見えるんですね。裕香ちゃん(井口裕香)あっての自分が発見できました」と、好対照なファイヤーシスターズ(阿良々木火憐と月火のコンビ名)のキャラクターをお互いで語っていた。
と、ここでMCを務める神谷の「アレ持ってきてー」の合図で登場したのは、3本の歯ブラシ。『偽物語』で歯ブラシと言えば、“つきひフェニックス 其ノ壹”で阿良々木暦が阿良々木火憐の歯を磨くシーンが連想される。艶かしく描写される歯磨きのシーンは、原作はもちろん、アニメでも話題となり、とくに喜多村の白熱の演技が評判を呼んだものだ。
歯ブラシのシーンについて喜多村は、「あのシーンだけでけっこうな尺が用意されていて、しかも全力で坂を上っているような瞬間的なイメージではなく、つねに歯ブラシが口内に入っているというシーンだったので、ただ口に指を入れるような小手先じゃダメだなと思って、家からマイ歯ブラシを持って来ようとしていたんです。だけど、まわりから“やりすぎ”って言われるかなと思って、あえて持って来なかったら、音響監督に“喜多村、お前、歯ブラシは?”って聞かれて、すぐに“買ってきまーす”と買いに行きました(笑)」と秘話を暴露。そして、井口演じる阿良々木月火がメインの“つきひフェニックス”の第1回(つきひフェニックス 其ノ壹)でああいうシーンがあったことに対して、井口は「本当に月火ちゃんみたいにポカーンと。どんどんふたりが盛り上がっていくのを見ながら、本番の前のテストのときから“帰ろうかなー”って思ったりして(笑)。ドキドキしながら、どこか冷めたような感じで見守っていました(笑)」と、月火らしい感想を語っていた。
ここで“生あとがたり”は、終了。コーナーの最後に井口は、「“かれんびー”、“つきひフェニックス”と終わったけど、まだ『傷物語』もありますし、『偽物語』は終わったけど、終わってないような終わり方だったので、まだあるのかなと思いながら過ごしています」と、ちょっと続きを期待するようなコメント。喜多村は、「私の技術の集大成と言えるような作品で、いろいろな方の引き出しを見て打ちのめされる現場でもありました。でも、神谷さんを始め先輩のバックアップあっての作品だったので、芝居が好きになりました」と役者としての印象を語っていた。なお、“かれんビー”と“つきひフェニックス”それぞれの“あとがたり”は、神谷と各ヒロインを演じたふたりそれぞれとの1対1で会話したものを鋭意製作中で、後日アップされるとのことだ。
「いひょう、ひせものがたり(以上、『偽物語』)……」と、急に歯ブラシを口に入れてコーナーを締める神谷と井口に対し、喜多村は笑顔で「ありがとうございましたー!」と歯ブラシを使わずに語って、コーナーは終了。
そして、イベントの最後を飾るのは、“かれんビー”と“つきひフェニックス”のオープニング曲ライブ。楽曲が好評な“物語”シリーズだが、お客さんの前でライブ型式で歌うのは初めてとのこと。トップバッターを務めた喜多村は、「はひゅはろ ひゃすてぃす(marshmallow justice)」と曲の名前を今度は歯ブラシを入れてコール。火憐らしいアップテンポの楽曲そのままの勢いでライブステージを盛り上げ、観客のテンションを一気に盛り上げる。続いて、“つきひフェニックス”のオープニング「白金ディスコ」を歌う井口裕香は、アニメのオープニングで踊る阿良々木月火と同じ振り付けをしながら、やさしく歌い上げる。にこやかな笑みのまま歌い切ると、最後には恥ずかしそうに「緊張して間違っちゃったよ」と語っていた。
2曲のライブが終わり、イベントは終了。最後に、神谷が「ヒロインたちの歌を聞けて、テンションが上がっています。『化物語』から好きな曲ばかりで、本当にうれしいです。現在『傷物語』という、つぎの作品が着々とできています。この前、少し見せてもらったんですが、本当にすごいものになっているようなので、期待していてください!」と、劇場公開が決まっている『傷物語』について語り、イベントは大きな大きな拍手の中、幕を閉じた。