筆者の思い出話8割でお届けします
日本マイクロソフトのXbox 360、Kinect専用タイトル『Kinect スター・ウォーズ』が2012年4月5日に発売となった。本作は、SF映画の金字塔『スター・ウォーズ』をモチーフにしたタイトル。その魅力を、ファミ通.comで連載中の同作のブログ“フォースを解き放て!”を担当するキモ次郎がお届けする。
本作が発売されるちょうど1週間前に、プレイインプレッションを書くよう上長から命じられた。「へい、わかりました!」てな具合に請け負ったわけだが、その直後に「これはじつに困った事態になったな」と頭を悩ますこととなる。本作について書くことがないわけではない。ゲームはばっちりやり込んでいるし、何よりもブログを始め各種取材を通じて長く付き合ったこともあり、作品への愛着も非常に高いつもりだ。我ながら本作のプレイインプレッションを書くのに、自分ほどふさわしい人間はいないと思うほどである。では何が困った事態なのかと言うと……愛ゆえの悩みというか何というか、ほかの記事でいろいろと書き尽くしてしまったため、ゲームの内容に関していまさらとくに伝えることもないのだ。これはじつに困った事態である。愛着がそれほどないタイトルであれば、過去に書いた記事の内容を切り貼りして、サラっと一本の記事に仕上げるだろう。しかし、数ヵ月前から何度もプレイして、文字通り汗を流しながらいっしょに記事を作ってきた『Kinect スター・ウォーズ』に対して、そんな無礼なことはできない。とりあえず本記事では、着地点が見えないままに、筆者の『スター・ウォーズ』に関する思い出話から舵を漕ぎ出してみる。
筆者が『スター・ウォーズ』に初めて触れたのは、エピソード6『ジェダイの帰還』(当時は『ジェダイの復讐』)が劇場公開されたタイミングだった。映画好きな両親に連れられて、いまは無き新宿東宝会館へ足を運んだことをいまでもよく覚えている。しかし、映画の内容については、ストーリーが続いている作品であることに加えて、当時まだ幼かったということもあり、おもしろいおもしろくない以前に何が起きているのかまったく理解できない状態であった。これが筆者の『スター・ウォーズ』初体験。この時点では思い入れもクソもない状態である。つぎに『スター・ウォーズ』と会ったのは、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)から発売されたファミコン用ソフト。8bitサウンドで奏でられる『スター・ウォーズ』のテーマ曲は、子どもながらに「なんか聴いたことあるぜ!」と興奮させられるもので、またオープニングでR2-D2がレイア姫のホログラムを映しだすシーン(というかイラスト)の美麗さは、「ゲームもココまで来たぜ!」と子どもながらに唸らされる完成度であった。ただし、ゲーム内容については、最初のステージで“ダース・ベイダー”っぽい姿のボスが“サソリベイダー”を名乗った後に、巨大なサソリへ変身した瞬間、子どもながらに「なんか違うぜ!」と驚愕したことを覚えている。いま振り返ってみれば、このファミコンソフトとの出会いが、初めて『スター・ウォーズ』というコンテンツを意識した瞬間だったのだろう。『スター・ウォーズ』ファンの多くは、映画をきっかけに壮大なサーガへ足を踏み入れていると思うが、筆者の場合は一歩目がゲームだったのである。そんなわけで、つぎに触れた『スター・ウォーズ』もゲームで、ビクター音楽産業から発売されたファミコン用ソフトだった。こちらはかなり記憶がおぼろげなのだが、ナムコ版では描かれなかった“モス・アイズリーの酒場”が音楽も含めて再現されていたことをわずかながら覚えている。
ここから話は、筆者の大学時代まで一気に飛ぶ。当時筆者は中央線沿いのとある街にある個人経営のレンタルビデオショップ(当時はまだDVDが普及してなかった)でアルバイトをしていた。近所に同業の某大型チェーンがあるため、その店の客は充実したアダルトなサムシング、あるいは某大型チェーンで品切れとなった新作映画目当ての人がほとんどで、要するに激しくヒマな職場。しかも店長はパチンコにお熱で基本的に店にいなかったため、バイト中は映画やアダルトなサムシングが観放題という、ボンクラ男子を育てるにはこれ以上ない環境であった。ここでようやく、筆者は映画の『スター・ウォーズ』の初期3部作(エピソード4~6)と初めてちゃんと向き合うことになる。そして、観終わったときの衝撃ときたら! 「こんなにおもしろい映画が世の中にあったんだね!」と、かつて筆者を映画館へ連れて行ってくれた母親に電話してしまったほどである。とくに個人的に気に入っているのはエピソード4の終盤で描かれるデススターでのドッグファイト。あれを観て興奮しない男子はいないのではないだろうか。エピソード1~3については……とにかく、以来一気ににわか『スター・ウォーズ』ファンとなった筆者は、何か関連ニュースが発表されるたびにわざとらしく興奮し、それなりにグッズなども買うようになった。
……しかし、どこか満たされない。にわかファンだったころ調子に乗って購入したDVDも、一回観たきりでそれ以降タンスの中にしまいっぱなしだ。やはりゲームから『スター・ウォーズ』に入った身としては、ゲームで『スター・ウォーズ』に熱狂したいのだ。そういえば、ファミコン版のあとにプレイステーションの『スター・ウォーズ』の対戦格闘ゲームを遊んだことがあった。内容に関してはかなりゲームバランスが悪……とくにコメントしないが、『スター・ウォーズ』のゲームが遊べるという事実に興奮したものである。少し話が脱線したが、つまりはそういうわけである。
さて、なんとなく思い出話で船を漕いできたわけだが、ここに来てなかなかどうしてうまい着地点が見つかった。『Kinect スター・ウォーズ』は、筆者にとってひさびさにアツくなれる『スター・ウォーズ』なのだ!(ゲームだったらエレクトロニック・アーツを始めいろいろ出ているだろ、というツッコミも聞こえてきそうだが、まあそれは置いておいてほしい) そして、その仕上がりたるや、じつにすばらしいものであった。Kinectセンサーという最新鋭の相棒を従え、夢にまで見た“ライトセイバー”チャンバラが実現。メインとなる“ジェダイ デスティニー”はファンならば脳汁出まくりのモードだろう。また、タイマンバトルが楽しめる“デュアル オブ フェイト”では、ダース・ベイダーを始めとする敵と、ライトセイバーによるつばぜり合いも! ファンならばこのふたつだけでマストバイと言える。そのほか、高速レースが楽しめる“ポッドレース”、ランコアになりきって破壊の限りを尽くす“ランコア ランページ”、レイア姫やハン・ソロも踊りだす“ギャラクティックダンス”などバラエティーに富んだゲームモードを収録。そこら辺の魅力については、ブログやこちらの記事などですでに述べているので、改めて説明する必要はないだろう。
ゲームから『スター・ウォーズ』に入った記者的に本作の注目ポイントは、ゲームオリジナルの要素が盛りだくさんなところ。思えば、筆者がかつてやり込んだナムコ版『スター・ウォーズ』は、さきほどのサソリベイダーを始めかなりオリジナリティーが炸裂しており、それはそれは愉快で楽しいものであった。そして、あまりやり込んでいないプレイステーションの対戦格闘も、レイア姫とルークがしばき合うような、それはそれは愉快で楽しいものであった(そして、ビクター版はほとんど記憶がない)。筆者にとってゲームの『スター・ウォーズ』はそういうものなのである。映画が真剣に向き合うべき『スター・ウォーズ』ならば、ゲームのほうは肩の力を抜いて向き合ってもいいもの、という認識だ。『Kinect スター・ウォーズ』は真面目なファンの方が遊んだら、「なんでハン・ソロが80年代ダンスミュージックにノッて踊るんだよ!」とか「ランコアやりすぎだろ!」とか「フォースを安売りしすぎ!」とか「ジェダイ見習いとは言え、打たれ弱すぎ!」などの理由で、怒り出すかもしれない。しかし、筆者的にはゲームなんだから細かいことはいいのである。ゲームの『スター・ウォーズ』がKinectという最新ゲーム機器で遊べるという事実に、まず感激しようではありませんか! そして、この作品からかつての筆者のように『スター・ウォーズ』の世界に入門する人が出てくることを願っています。
■筆者紹介 キモ次郎
週刊ファミ通およびファミ通.comのニュース記者。『Kinect スター・ウォーズ』ではギャラクティックダンスがお気に入りですが、序盤からけっこう難度が高くて悶絶する日々です。あと、文中でナムコ版『スター・ウォーズ』をネタ気味に話していますが、非常に良質な横スクロールアクションゲームだったと記憶しております。
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