『シムシティ』の中でしか訪れたことがありませんでした

 2012年3月6日~3月10日(日本時間)の期間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催されたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012が終了した。GDC初取材だった記者は、無事に取材を終えることができ、ほっと胸をなでおろしていた。ほっとしすぎてアルコールを摂取してしまい、ほろ酔いなぐらいだ。……だが、GDCはまだ、真の意味で終わっていなかった。

 日本に残っている先輩記者から、「任せましたよ!」という言葉とともに、ひとつのURLが送られてきた。下記の記事のURLである。

今年も来ちゃいました……とある記者のGDC 2011こぼれ話

 ……つまり、これは、「お前がこぼれ話を書け」という命なのだろう。そういうわけで、記者は白ワインが与えてくれたほどよい眠気と戦いながら、筆を取ることにしたのである。

3年も続けばもはや連載ですよね……とある記者のGDC 2012こぼれ話【GDC 2012】_01
▲サンフランシスコといえばケーブルカー。けっきょく一度も乗れませんでした。

 記者はこれが初のサンフランシスコ訪問であり、初のGDC取材だったので、とにかく見るもの聴くものすべてに興奮していた。まず感動したのが、プレスパスの裏に書かれている小粋な一文である。

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 「Please treat your badge as cash or your favorite classic game cartridge」……このパスを、現金か、またはお気に入りのクラシックゲームのカセットと同じように扱えということである。ゆえに記者は、このプレスパスを『バイナリィランド』と同じように扱うことにした。いま、『バイナリィランド』が実家のどの押入れにしまわれているのは定かではないのだが。

 さて、プレス登録を無事に終えた記者は、GDC会場を散策した。とりわけ興味深かったのはこの看板である。

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 オフィシャルTシャツをゲットせよ! ということだ。どうも水曜日、指定の時間に、指定の場所にいけば、誰でもオリジナルTシャツがもらえるらしい。GDCはお堅いイベントなのかと思いきや、こんなユニークな試みも行っているわけだ。タダという言葉に目がない記者は、この情報をすばやく脳内にインプットした。そして水曜日。

3年も続けばもはや連載ですよね……とある記者のGDC 2012こぼれ話【GDC 2012】_04

 Tシャツ配布場には、すでに行列ができていた。係員の人が「Tシャツがもらえまーす!」と叫んでいる。記者も意気揚々として列に並んだ。だがしかし……。

「すいません、プレスの人にはあげられないんです」

 これを聞いたときの記者の絶望がどれほどのものだったかは、筆舌に尽くしがたい。しかし、ランチボックス(昨年一昨年のこぼれ話参照)を無料でいただいているだけでも十分幸せなのだ、そう思い涙を飲んでその場を後にした。

食をめぐる冒険

 GDC期間中はやはり忙しく、朝は講演が始まるギリギリまで寝ていたため朝食はほとんど食べられず、夜は記事作りに追われていたため、夕食は簡単に済ませていた。しかし、せっかく来た初めてのサンフランシスコ。どうせなら、しっかり調理された温かいものを食べたい。

 記者は、午前の取材がない最終日、とびきりおいしいごはんを食べにいくことに決めた。“サンフランシスコ 朝食”で検索すれば1ページ目に出てくるほどの有名店、“Mama's on Washington Square”まで行くことにしたのである。地図によれば、モスコーニセンターWESTが面している道をひたすら北に行けばたどりつけるらしい。

 そういうわけで、ささやかな冒険は始まった。

 ユニオンスクエアの横を抜け……

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▲ユニオンスクエアの四隅にはハートのオブジェが。地元のデザイナーがデザインしたものらしいです。

 チャイナタウンを抜け……

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▲お土産店が並ぶチャイナタウンの中心街からは離れた通りで、地元民用の青果店がずらりと並ぶ。

 聖ピーター&ポール教会が見えてきたら、もうすぐ。

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▲マリリン・モンローが結婚式を挙げたという教会。平日だというのに、教会前のワシントンスクエアには日光浴を楽しむたくさんの人が。うらやましい。

 そしてついに到着である。平日、しかもピークタイムはあえて外してきたというのに、行列ができていた(写真は食後にとったものなので行列は写っていないが)。さすがの人気店だ。朝は1~2時間並ぶのはふつうらしい。15分程度で入れただけでも幸運だった。

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 記者が頼んだのは、おすすめメニューの中にあったフレンチトーストのプレート。3種類のパンを使って作られたフレンチトーストの上には、フルーツが乗せられている。非常に美味である。何もつけなくても美味、シロップをかけても美味、ジャムをつけても美味である。

 しかし問題は、そのボリュームであった。

 アメリカンサイズのトーストを2枚食べ終えたところで、記者は満腹になっていた。「残そうかな……」そう思っていた。だが、そのとき、隣の席に座っていた金髪の素敵な女性から「あなた、旅行者?」と話しかけられたのである。

 日本から来たこと、人気の店だと聞いてここまで来たことを伝えると、「ええ、この店はとってもおいしいのよ。とくに朝食が人気よ」と言われた。そう言う彼女の目の前で、トーストを残すのは気が引けた。結果、悲鳴を上げそうになるのど元を押さえ、記者はついに完食した。記者がもったいないお化けに襲われずに済んだのは彼女のおかげである。

 さて、裏で記者が満腹感を訴える胃と戦っていたとはつゆ知らず、彼女は話を続ける。彼女の父親は東京に留学していた経験があるそうで、彼女も一度東京を訪れたことがあるらしく、日本には親しみを感じているようだ。そしていま、彼女はサンフランシスコのジャパンタウンの近くに住んでいるという。ジャパンタウンと言えば、ファミ通ドットコムでブログ(→こちら)を書いているジェイソンが、「ジャパンタウンは好きだよ! キノクニヤがあるからね!」と言っていた場所である。

 「ジャパンタウンは素敵なところだから、ぜひ行ってみて」と彼女は言う。そういうわけで、もし記者が来年もGDCに来ることがあったなら、そのときはジャパンタウンを訪問した様子でも記そうと思う。