●成功を導く施策とは

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 2011年9月16日に東京ゲームショウで開催された“ソーシャルゲームセッション・ゲームビジネス大転換! ソーシャルゲームはこうして成功させる!”。ハンゲームを運営するNHN Japan代表取締役社長の森川亮氏、『City Ville』で有名なジンガ・ジャパン代表取締役社長CEOの松原健二氏、ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)取締役 ソーシャルゲーム事業本部長の小林賢治氏という豪華メンバーを迎えたこのセッション。事前予約の時点で定員を超え、超満員の聴衆の中開催された。

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 モデレーターである、“日経エンタテインメント!”編集長の吉岡広統氏の誘導のもと、まずは森川氏がハンゲームの中におけるソーシャルゲームの位置づけ、さらにスマートフォンでの取り組みについて語った。基本無料のゲームにおいて、重要となるのは高い継続率と課金収入。それらを導くために、ソーシャル要素をどう取り入れていくかが重要となる。また、森川氏は今後の課題として「スマートフォンでももっと気軽にコミュニケーションを取れるようにならないか」と考えているとのこと。コンテンツ制作力には絶対の自信があるハンゲームでは、タイトルの魅力を最大限に引き出すインターフェースの創出が必要とされているようだ。

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 松原氏は最初に、ジンガというメーカーを数字で説明。166の国と地域で、1日約64万人、1ヵ月で約2億3000万人が『City Ville』を始めとしたジンガのゲームをプレイしているとのこと。その数字からも、ジンガの持つ驚きの規模がうかがえる。松原氏によると、ジンガの特徴は「無料で楽しい、という基本的な要素は押さえつつ、長くやっても飽きないやり込み要素も十分に備えていること」だという。また、ゲームのシステムにフレンドへのギフト機能を自然に組み込むなど、ソーシャル要素をつねに意識したつくりになっていることが、揺るがぬ成功につながっているようだ。今後のソーシャルゲームについては、「“ソーシャル”という呼び名さえ近いうちになくなると思います」と語る。この10年間停滞していたゲーム業界に革命をもたらしたソーシャル要素が、ほかのゲームに取り入れられないわけはない。つまり、すべてのゲームがソーシャル化するのでは、と見ていた。

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 リレートークの最後のバトンを受け取った小林氏。ソーシャル市場は、現在日本だけで約2000億円規模あり、それが海外での普及に成功すればあっという間に全世界で2兆円規模の市場に成長するだろう、と予測。また、その普及の主役となるのはスマートフォンになるようだ。フィーチャーフォンからの移行が想像以上のペースで進んでおり、その流れに対してDeNAとしても最大限に注力しているとのこと。それらの根拠となるデータには、日本ではなく世界最大の市場規模を誇る北米のものを採用しており、小林氏の視線がすでに世界に向いている、ということを如実に示していた。続いて「先ほどのセッションのくり返しになりますが」と断ったうえで、“ソーシャルゲームで成功する人と失敗する人の差”について語った(詳細は上記のリンク先を参照のこと)。

 パネルトークでは、小林氏から松原氏へ“ジンガのARPU(ユーザーひとり当たりの課金額)の低さについて(Mobageはジンガの約18倍もの高さ)”という直球の質問が飛んだ。これに対し、松原氏は「あくまで私見ですが」と断ったうえで、「もし、アメリカでDeNAが本格的に展開して同じ結果が出たのであれば、それは地域性の問題だと思いますが、そういったデータが出ていないので、いまのところは何ともいえません」と冷静に返していた。そこから北米や日本の国民性に話題が及ぶなど、業界のトップを走るキーマンたちのトークは鋭く白熱し、会場を大いに盛り上げて終了した。

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