●プレイヤーが作家となって、主人公の物語を書いていく

 現地時間の2011年8月17日〜8月21日まで、ドイツのケルンで開催されている欧州最大規模のゲームイベント“gamescom 2011”。ベセスダ・ソフトワークスは今回、『RAGE(レイジ)』、『ザ・エルダースクロールズV:スカイリム』、『Prey 2(プレイ 2)』、『Dishonored』という、いずれも大作と呼ぶにふさわしい4タイトル出展している。

Exploration04

 プレイステーション3、Xbox 360用ソフト『Dishonored』(日本発売未定)は、先日開催されたQuakeCon 2011で披露された完全新規のタイトル。今回gamescom 2011で公開されたデモはQuakeCon 2011とほぼ同じ内容で、超自然的能力を持った暗殺者である主人公が、厳重な警備をくぐり抜けてターゲットを暗殺、脱出する様子が描かれていた。本作で特筆すべき点は、主人公が持つ超自然的能力だろう。瞬間移動やスローモーションと言った比較的ありそうなものから、人間だけでなくネズミや魚にも変身できる“ポゼッション”、大量のネズミを敵にけしかけて一瞬で骨にしてしまうものなど、戦略の広がりが感じられるものを多数用意されている。デモの内容はQuakeCon 2011での記事に譲るとして、ここからは本作のクリエイターであるラファエル・コラントニオ氏とハービー・スミス氏の最新インタビューをお届けしよう。なお、両氏はQuakeCon 2011でもファミ通.comのインタビューに応じているので、そちらの記事も併せてチェックしてほしい。

[関連記事]ベセスダ・ソフトワークスの挑戦的な意欲作『Dishonored』デモリポート&インタビュー


DSC_0762

――QuakeCon 2011のインタビューで、本作は『Deus Ex』や『バイオショック』に影響を受けていると話していましたが、ゲーム以外の作品で参考にしたものなどはありますか?
ハービー 映画では『ロスト・チルドレン』、『ダークシティ』が挙げられるね。どちらもアートスタイルが非常に興味深い。それと、僕たちはふたりとも音楽が好きで、ゲームに影響を与えたものと言うと……自分はクリス・マルティーナスが好きで、ダーク・オーケストラル・ミュージックやダーク・エレクトロニックが好きだ。つまりインダストリアルな感じの奇妙なサウンド、奇妙な楽器が入っているものだね。あとはパンクも好きだけど、影響という意味ではそれほどでもない(笑)。
ラファエル 自分は先日、テキサス州オースティン市のダウンタウンを自転車で走りまわったり、レストランに行ったりしたんだけど、町を走り回るだけでも本作へのアイデアをかなり刺激されたね。
ハービー 映画や音楽以外だと、人々が去って取り残された都市といったものにも、本作に通じるところを感じる。犯罪がはびこり建物は壊れたまま――そういった町の写真を撮ったりもしたんだ。壊れたままで空虚な建物を探索するという行為は忘れ難いところがあるね。

――主人公のアクションには日本の忍者をイメージさせるものがありましたが、日本のコンテンツにも影響されていますか?
ハービー それは十分考えられる。本作のリード・アニメーターはマーシャル・アーティストであり、加えてサムライなど日本のいろいろな文化が大好きで、映画もよく見ているし、日本の伝統に詳しい。自分たちが知らないところで、日本のコンテンツに間接的に影響されている可能性はあるだろうね。
ラファエル さらに言ってしまえば、アメリカのコンテンツは多少なりともつねに日本のメディア、またアジアのいろいろな国からの影響を受けている。やはりアジア文化には惹かれるものがあるんだよ。日本については、神話的な話に満ちた古代の物語から、モダンで犯罪的なものまでどれも魅力的だ。

Sneak_Observation01

――本作を手掛けるうえで、最初にあったコアとなるアイデアは何でしたか?
ハービー 個人的にアサシンになるのは楽しいので、アサシンのゲームを作りたいと思ったところがスタートだ。しかし、ただのアサシンではほかにも似たようなゲームが多数ある。そこで、超自然能力的なパワーがあればおもしろいと考えたんだ。それとさっき話に出てきた日本の忍者だけど、じつは主人公を忍者にするというアイデアも初期の段階ではあったんだ。
ラファエル つまりアサシンの動きと超自然能力の融合、というのが最初のアイデア。それと、ゲームデザインとしてはステルスとコンバットをつねに使い分けるというものが根本にあるね。

――本作では基本的にステルスしながら進むようですが、もちろん正面突破も可能ですよね?
ハービー もちろん、そういった進めかたを開発チームでは『スターウォーズ』のキャラから取って“ダースモール・ウェイ”と呼んでいる。しかし、正面突破はかなり挑戦的な選択だ。多くのアイテムを消費することになるだろうね。
ラファエル 主人公はかつて皇后のボディーガードとして尊敬されていたが、殺人の罪に問われてネズミがたくさんいるような汚いところへ行くことになった。自分の立場が大きく変わったことに怒りを感じるなら、正面突破するのもありかもね(笑)。

――ちなみに各ミッションには平均でどれくらいの解法がありますか?
ラファエル それは我々が設定するものではないね。建物と道は作ったが、そこをどのように進むかはプレイヤー次第だ。建物の上か下か? 裏を通るか? 下水道を進むか? 河を泳いで渡るか? などさまざまな選択がある。また時間を止めたり、ポゼッションでほかの動物や人になったりなどの選択もあるわけだし。
ハービー それに加えて、前のミッションで行ったことが、その後のミッションに影響することもある。そういった意味でも、クリアーの手段を数字にするのは難しいんだ。

――デモを見ていて感じたのですが、敵の殺しかたのバリエーションが多彩でした。やはりこだわった点ですか?
ラファエル 考えられる限りのアイデアは出したつもりだね。例えば相手に気付かれず暗殺するにも、後ろから、横から、机の下からなどが考えられるし、またその中にもいくつか方法があるから。

――ネズミをけしかけて、一瞬で骨にしてしまうのが個人的におもしろかったです。
ラファエル だろ?(笑) ほかにはふたつの集団がいるときに、小細工をしてお互いに戦わせるなんてこともできるんだ。

Tallboys01

――敵が乗っていた足の長いマシン、ああいったマシンを自分で使う機会はありますか?
ハービー あれはトールボーイと呼んでいるガードで、ネズミや疾病から逃れるために高いところにいる。そして、もしプレイヤーがあれに乗りたいと思ったら、ポゼッションを使ってそのガードになってしまえばいいわけだ。ちなみにポゼッションは一定時間しかもたないので過信はしないほうがいいかもしれない。

――これまでに公開されているデモやスクリーンショットはいずれも都市が舞台です。ほかにはどんな舞台が用意されているのでしょう?
ラファエル 基本的には都市の中、あるいは周辺で起こるが、その中でも風景がガラリと変わる場所がある。下水道、リッチなエリア、ダムが決壊して浸水しそのまま放置された暗い場所など。
ハービー あとはコスチューム・パーティをやるような貴族の館、刑務所もある。このあいだを行き来してプレイするのは楽しいと思うね。

――本作でいちばん注目してほしいところはどこでしょうか?
ハービー プレイヤーはプレイヤー自身が考えている以上にゲームをコントロールできる。多くのゲームではとても美しいワールドを描いているが、一定のところしか進めず、同じところを通れば同じことが毎回起こる。このゲームでは道路を離れて川に飛び込んで建物の後ろに回ってもいい。そしてガードとチンピラが喧嘩をする予定になっていても、プレイヤーがどちらかの注意を引けば、喧嘩は起きないかもしれないし、プレイヤーが屋上へ行けばそもそも喧嘩が起きていたこともわからない。プレイヤーが作家となって、主人公の物語を書いていくわけだ。プレイヤーがこの世界に影響を与えているということを理解してほしいね。

GroupFight2

(C)2011 NBGI (C)1997-2011 FromSoftware, Inc. All rights reserved. ※画面は開発中のものです。