●ネタバレなしで迫る『ダンガンロンパ2』のいま

 週刊ファミ通2011年8月18・25日合併号で発表された『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』。ファミ通,comではスペースの都合上、誌面に掲載できなかったインタビューの全文を2回に分けて掲載している(前編はこちら)。今回は、全文インタビューの後編を掲載。『ダンガンロンパ』ファン必見のスーパー開発者インタビュー後半戦、とくとご覧あれ!

※前編はこちら

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■プロデューサー
寺澤善徳氏(左)
前作『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』に引き続き、プロデューサーを担当。代表作は、『ダンガンロンパ』のほか、『侍道』シリーズ、『ガチトラ!〜暴れん坊教師 in High School〜』など。

■シナリオライター
小高和剛氏(右)
前作『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』に引き続き、シナリオを手掛ける。代表作は、『ダンガンロンパ』のほか、『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』など。

●さらにテンポアップする学級裁判

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――本作のシステムは、前作を踏襲したものになるのでしょうか?
小高和剛氏(以下、小高)  そうですね。主観視点で移動して、あちこちを捜索するという基本は同じですが、“推理アクション”という前作のジャンルをよりブラッシュアップして、とくに学級裁判を強化します。

――どのような強化でしょう?
小高 おもに裁判のテンポ部分です。前作ではシステムよりシナリオの制作が先行していたので、後から学級裁判で議題になる部分を作ることになりました。ですが、今回はベースとなるシステムができているので、議論が盛り上がると、問題となる議題が増えていくような、畳みかけるものにしたいですね。新システムの反論も、その取り組みの一環です。

――この反論は学級裁判中の、どういった部分で使われるものですか?
小高 おもに主人公の論破に対して使われるものです。前作の裁判では論破によって議論がひと区切りしていましたが、これに反論が加わることでより入り乱れた裁判合戦、推理合戦が展開されていきます。

――そのほかに、システム面での追加はありますか?
小高 前作には、学級裁判のなかで“閃きアナグラム”というシューティングと推理を絡めた遊びが入っていましたが、それ以外にもさまざまな新システムを導入します。「こういう遊びを推理に絡めるんだ」と驚いていただけるようなシステムにしたいですね。

――なるほど。前作でも好評だった、学級裁判のフルボイスや、ぐるぐると回転するといった演出なども踏襲されるのでしょうか?
寺澤善徳氏(以下、寺澤) そうですね。基本は変わりませんが、小高が言った通り、前作より少しでもテンポをよくしようと思いながら作っています。裁判の途中で挿入される評価画面などで没入感が途切れてしまうこともありましたし。

――とはいえ、前作の学級裁判でテンポが悪かったという印象はあまりないのですが?
小高 ありがとうございます。テンポをよくするというか、前作よりもさらにスピード感を出すというイメージですね。前作の学級裁判は同じテンポで進んでいく場面が多かったので、開発が終わった後に、そこにメリハリを付けられるといいなと思っていたんです。それこそ、先ほどお話したように議論が盛り上がると問題数も増えるといった、議論の盛り上がりとシステムが一体化したものですね。それを、新システムの反論を追加しつつ実現しようと思っています。

――学級裁判を含め、すべてがパワーアップしていると。
小高 はい。とはいえ、やはり謎解きの部分がメインになってくるので、その辺はまったく裏切らずにパワーアップしています。その分、制作にかかる時間もパワーアップしちゃっていますが……(笑)。1個1個の殺人事件を解いて楽しいようにしています。

――事件がパワーアップするということは、推理の難度が上がるということも?
小高 いえ、難度を大幅に上げるようにはしていません。前作に難易度設定があったのですが、とくに推理に関しては難度ごとにあまり差をつけられなかったのが心残りの部分で。本作では、“難しい”を選ぶと歯応えがあるようにして、“やさしい”を選ぶと推理ゲームが苦手な人でもサクサク遊べるように、難度をより効果的なものにしたいと思っています。

――推理ゲームで難易度設定があるということが珍しいと思いますが、開発に2倍近い手間暇がかかりそうな気がします。
小高 2倍とは言いませんが、時間はかかります。難度を低くしたときに推理パートをカットすればいいというわけではありませんから。理不尽にならないように必要最低限の情報を与えるといった調整に時間はかかりますが、推理ゲームが苦手でも謎を解いたときの爽快感感が好きという方もいるので、その想いには応えたいですね。

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●気になる『2』の開発状況は?

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――今回モノクマがいろいろはっちゃけているんですが……。とくに貝殻の水着は(笑)。
寺澤 何を隠しているのかわからない(笑)。
小高 これは南の島で、はっちゃけちゃったんです(笑)。

――モノクマに何か変化はありますか?
小高 独特の口調などは変えない予定です。ただ、前作の開発中は白黒の見た目のように、いい部分と悪い部分を併せ持った性格にしようとしていたんです。いつの間にか真っ黒な性格になってしまいましたが……(笑)。それが、今回は原点に戻って、モノクマの残虐性に白い部分を織り込むようなサプライズをやりたいなと思っています。
寺澤 え! そうなの? モノクマは相変わらず真っ黒だと思うけど(笑)。
小高 うーん、確かにそうですね。詳しくは、ぜひ今後のお楽しみに(笑)。

――モノクマと言えば、お仕置きなどは南の島仕様になるのでしょうか?
寺澤 まだ決まっていませんが、少しはそんな雰囲気になるかもしれません。とはいえ、お仕置き自体は、各生徒のキャラクター性に合わせたものがメインになるので、そこに南の島のテイストが入るかどうかはこれから決めていきます。

――そして、モノクマで気になるのは声優さんですが、今回も声優は大山のぶ代さんでしょうか?
寺澤 まだ全体のキャスティングは決まっていませんが、もちろんモノクマは大山のぶ代さんにお願いしようと思っています。
小高 新キャラクターは、全員特徴的なキャラクターになるので、特徴のある方々に演じていただきたいですね。前作もそうだったんですが、豪華さということにこだわるのではなく、キャラクター性をさらに高めてくれる人にお願いしたいと思っています。前作は実力派ということで豪華な方々にお願いすることになりましたが、お願いした最大の理由はボイスを聞いたときに「これだ!」と思ったからなんです。正直に言いますと、前作の制作時はスタッフがあまり声優さんに詳しくなくて……。ですから、収録に立ち会って、皆さんの実力を目の当たりにして改めて想像以上だと驚いたんです。それもあって、今回も前作以上にキャラクターを高めてくれる方々を、プロデューサーが用意してくださるんじゃないかと期待しています!(笑)
寺澤 ……がんばるよ(笑)。

――小高さんからプレッシャーが(笑)。モノクマが希望ヶ峰学園の学園長というのは変わらないんですね。
小高 そこは変わりません。いまでは、僕も大山さんの声を想像しながらモノクマのセリフを書いてしまっているのがあって。とくにラジオドラマなどは、声優さんの声を想像しながらシナリオを書いていましたから。書くときに声を想像すると世界が広がっていくことが多いので、新キャラクターも早く声優さんが決まるといいなと思っています(笑)。

――ちなみに、前作を遊んだほうが楽しめる内容になるのでしょうか?
小高 『2』から遊んでも楽しめるものにしますが、前作を遊んでいただいたほうが楽しめますし、さらに言えば小説を読むともっと楽しめます。

――なるほど。小説は『2』の布石が入った内容になっているのでしょうか?
小高 そうですね。前作で終えたものを小説の『ゼロ』で振り返ることで、設定の部分を改めて固めたので、そのときに浮かんだものを引き入れていたりします。だから、密接とまでは言いませんが、前作、『ゼロ』、そして『2』とすべてがつながっているので、すべてを体験していただくことで、より『ダンガンロンパ』の世界観がわかると思います。
寺澤 小説は小説でゲームとはだいぶ雰囲気が違うんです。物語はリンクしているんですが、小説ならではのシナリオの妙が楽しめると思います。
小高 「これも『ダンガンロンパ』なんだ!」という、ある意味、『ダンガンロンパ』の懐の深さが味わえます(笑)。
寺澤 僕は、小高の懐の深さだと思っているけどね(笑)。
小高 ゲームと違うテイストが小説にあって、それがさらに『2』に戻ってくる……のかな。
寺澤 テイストは違っても、根底に流れるのは紛れもなく『ダンガンロンパ』。『ダンガンロンパ』やミステリー小説が好きな人には間違いなく楽しんでもらえると思います。

――小説は、前作の前日譚とのことですが、前作の主人公たちが希望ヶ峰学園に入学する前の物語なのでしょうか?
小高 じつは、小説にも新キャラクターを出して、そのキャラクターから見た前日譚を描く予定です。あと、小説を読んだときには気付かなくても、『2』を遊ぶと気付く伏線なども入っています。

――それは楽しみですね。執筆は終わっているのでしょうか?
小高 はい。いまは『2』に集中しています。

――『2』は、ゲーム全体のボリュームはどれくらいになるのでしょうか?
寺澤 前作よりは膨らみそうです。ただ、スタッフが無計画的にどんどん増やしていっちゃうので、僕が押し留める役目をしています(笑)。
小高 ストーリー的には前作と同じくらいなんですが、プラスアルファのサプライズがあるので、そこで膨らんでしまう……。前作から、ディレクターやプロデューサーといった立場と関係なく、みんなでアイデアを持ち寄って作っていくので、プロデューサーとしてはたいへんだと思います。でも、それを気にしていたら『ダンガンロンパ』は作れない(笑)。
寺澤 スタッフが言うことを聞かないんですよ。でも、絞らないとプロジェクトが破綻してしまいますし(苦笑)。
小高 絞る人と突っ走る人たちのぶつかり合いが前作のような落としどころになったんだと思います。

――「前作を作って燃え尽きた」と仰っていましたが、どんどんアイデアが出るんですね。
小高 『ダンガンロンパ』は、作っていく側としてもとても魅力的なゲームなんです。というのも、みんなでアイデアを入れ込んでいくゲームというのはなかなか出会えないものですし、何より『ダンガンロンパ』はとても懐が深くて、どんなアイデアも吸収してくれるので、「もう燃え尽きた」と思っても、いざ考えると「あれもやりたい、これもやりたい」となっていくんです。
寺澤 ユーザーさんから暖かい声が多くいただけるので、燃え尽きたスタッフもつぎへの気力が湧いてくるんですよね。
小高 ただ、ユーザーさんの期待に応えると言っても、ユーザーさんが思っている「こうなって欲しいな」というものに応えるのではなく、いい具合にそれを裏切るのが『ダンガンロンパ』流の応えかただと思っているので、スタッフと日夜「こうやれば裏切れるんじゃない?」という話をしています(笑)。
寺澤 そういうスタッフですから、「今回もやりすぎなんじゃないのか」という話が出ていて。だから、また賛否両論を生むんじゃないかと、安心感なく作っている状態です(苦笑)。でも、それがただの『2』ではない、『スーパー』につながる部分ですね。
小高 失敗したら、『スーパー』を外しますから(笑)。
寺澤 そのつぎはふつうに『ダンガンロンパ3』で皆さんの要望通りに期待に応えます(笑)。

――「『スーパー』が取れてる!」っていう総ツッコミが来そうですね(笑)。
寺澤 それくらい無茶な気持ちでやっていますが(笑)、そのノリを大事にしたいですね。

――現在の開発状況をパーセントで言うと、どれくらいになりますか?
寺澤 20パーセントくらいのイメージですね。
小高 根幹と言いますか、「こういうものをやるんだ」というプロットはできているのですが、いわゆるゲームを形作るパーツはまだできていない状況です(笑)。でも、じつは前作も最後の1ヵ月でラストスパートをかけて、発売日の2ヵ月前は30パーセントくらいだったから(笑)。最後の1ヵ月で地獄のスパートをかけると、それだけ濃いものになるんです。

――そう言われると、「『2』もそう遠くないうちに発売されるのかも?」と思ってしまいますが(笑)。
寺澤 いやいや(笑)。そのスパートが来月、再来月にあるというわけではなく、20パーセントのまま、しばらく続くイメージです。
小高 20パーセントの状態で、「そうじゃない。ああじゃない」と試行錯誤して作っていくので、最後にボンとパーセントが上がります。

――では、最後に本作のファンにメッセージをお願いします。
小高 前作を遊んでくれた皆さんのおかげで、続編が出せることになりました。その感謝を、新しい作品、新しい驚きでお返ししたいなと、鋭意制作していますので、期待していてください!
寺澤 前作の発売から11月で1年を迎えます。そんな『ダンガンロンパ』1周年に向けて、ファンの皆さんやまだ『ダンガンロンパ』をプレイしていない方々に喜んでいただけるような企画をいろいろと考えていきますので、1周年と『2』に向けていっしょに盛り上がってもらえればと思います。

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