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日本のセンスと海外スタジオの技術力が融合した『MURDERED(マーダード) 魂の呼ぶ声』開発インタビュー
公開日時:2014-05-27 00:00:00
スクウェア・エニックスの海外タイトル専用レーベル“エクストリームエッジ”の新作『MURDERED(マーダード) 魂の呼ぶ声』。スクウェア・エニックスとアメリカ・シアトルにあるAirtight gamesによる共同開発で制作された本作だが、クリエイティブディレクターを務めるのはスクウェア・エニックスの日本人クリエイター、塩川洋介氏。今回は、その塩川氏とローカライズプロデューサー赤石沢賢氏に、本作について話をうかがった。
■日本のセンスと海外スタジオの技術力が融合†
――本作『MURDERED(マーダード) 魂の呼ぶ声』は、日本のスクウェア・エニックスの塩川さんがクリエイティブディレクターということで、これまでの“スクウェア・エニックス エクストリームエッジ”のタイトルとは少し異色な作品ですね。
まずは、塩川さんの略歴、そして制作の経緯をうかがえますか?
塩川:はい。私はスクウェア・エニックスでは『キングダム ハーツ』のプランナーとしてバトルまわり、『キングダム ハーツII』ではゲームデザイン、『ディシディア ファイナルファンタジー』の企画にも参加していました。
その後、スクウェア・エニックスが海外スタジオにゲーム制作を依頼したり、日本のタイトルを海外で発売するといった動きがあったのですが、その中のひとつの方向性として、2010年ごろ、海外のスタジオに日本のスクウェア・エニックスから何人かクリエイターを派遣して、“コラボレーション開発”というスタイルに挑戦してみよう、という企画が立ち上がったんです。
そこで私も企画を立て、社内の承認を取り、海外スタジオを回って、本作の開発を手掛けてくれるスタジオを見つけて……というのが本作が生まれた簡単な経緯です。
開発は、アメリカのAirtight gamesと共同で行うことになったのですが、私はストーリーの原案やキャラクターのアイデア、ゲームのバランス取りなど、いわば全体の総監督という役割を担い、約4年間、シアトルのAirtight gamesに常駐して現地のスタッフを指揮していました。
――現地の開発スタッフとのコミュニケーションは問題なかったのですか?
塩川:英語は得意ではなかったので、最初は通訳を交えてやり取りしていましたが、次第に相手が言っていることもわかるようになり、ゲーム開発に関するやり取りは直接できるようになりました。
慣れると話せるようにようになるものですね(笑)。
――Airtight gamesさんは、エクストリームエッジタイトルとして発売された『クウォンタム コナンドラム 超次元量子学の問題とその解法』を開発したスタジオですが、それが縁で本作の開発をお願いすることに?
塩川:いえ、最大の決め手は、すごく本作の開発に対して熱意を感じたから、です。
Airtight gamesさんは、本作のために人を雇ってチームを作る、ということまで言ってくれましたから。
――なるほど、そうした経緯で開発された本作は、日本のテイストと海外スタジオの技術力が融合した、いわゆる洋ゲーとは違う作品ということですね。
塩川:はい。日本から立ち上げたプロジェクトで、海外開発スタートの洋ゲーとはまったく違います。
赤石沢:私は仕事柄、海外ゲームばかりをプレイする日々ですが、本作はそんな私にとってもとても新鮮に感じられる作品でした。
本作は海外スタジオ製ながらも、塩川という日本人のクリエイターが中心となって製作しているので、随所に“日本のゲームらしさ”が感じられる内容になっています。
リッチなグラフィック、ハードボイルドな世界観、見た目も洋ゲーチックでコアなムードもあるんですが、プレイしてみると一味違う、いい意味でギャップがある、いままでにない作品だと感じましたね。
■自分の殺人事件を解決していく物語†
――推理アドベンチャーという、海外産ゲームではあまり見かけないジャンルで興味深く思っていたんですが、日本発の企画ということで、納得できました。推理モノという企画はどういった狙いから?
塩川:単に自分が好きだから、ですね(笑)。
私は海外ドラマをよく観るのですが、その中でも『LOST』や『エイリアス』などを手掛けたJ・J・エイブラムス監督の作品が好きなんです。
彼の作品は超常現象の設定が少し入ったミステリーが多く、そういった物語の構造が私もすごく好きなんですね。
ですので、本作でも“ゴースト”という超常現象の設定が入ったミステリーモノになっています。
――アメリカ・マサチューセッツ州のセイラムという場所を本作の舞台に選んだ理由は何かあるのですか?
塩川:アメリカでは、ある出来事の舞台として知られていて、不気味な場所の象徴的なところがあるんです。
赤石沢:日本で言うと、恐山とか樹海といった……ちょっと違うかな(笑)。
――なるほど。少しいわくつきな場所であると。
塩川:はい。“ゴースト”という霊的なものにマッチする場所がないか、いろいろな世界の場所をリサーチした結果、セイラムに辿りつきました。
――では、アメリカではなかった可能性も?
塩川:はい。プラハなども候補でした。
赤石沢:ちなみに、日本語ボイスの収録現場では、思いっきりノイズが乗ったことがあって「この手のモノ(超常現象的なものを扱う)はそういうことがあるんだよねぇ」なんてスタッフどうしで顔を見合わせたこともありました(笑)。
――では、まだ謎が多い本作のゲーム部分について少し説明していただけますか?
塩川:ひと言で言ってしまうと、死んだ刑事がゴーストとなって、自分の殺人事件を解決していく、一夜の物語です。
主人公ロナンはたびたび警察にお世話になるヤンチャな幼少期、青年期を過ごしていました。ですが、ある運命的な出会いを経て更生し、刑事になります。
ですが、その後の事件をキッカケに自暴自棄になり、乱暴な捜査も厭わない一匹狼的な刑事になってしまいます。
なので警官仲間からも疎まれていた感じですね。
そんなロナンは街で発生していた連続殺人の犯人とされるベル・キラーの逮捕に向かいますが、逆に殺されてしまいます。
そして殺されたロナンは、自分がゴーストとなり、ダスクという死者の世界に囚われていることに気づく――というようなストーリーが展開していきます。
――ロナンの体に撃ち込まれた7発の銃弾ですが、7発というのは何か意味はあるのですか?
塩川:開発当初はあったんですが、最終的にはなくなってしまいました。
――ダスクはどんな世界なのでしょう?
塩川:ロナン以外にも、現世で何かやり残したことがある者たちが囚われている世界で、ロナン以外にもゴーストとなった者が存在します。
ただ、ダスクにいると次第に自分を見失って悪霊になり、永遠にほかのゴーストを捕らえて食らうようになってしまいます。
悪霊は、新鮮で正気なゴーストの生気を吸えばダスクを抜け出せる――と本能で行動していて、それゆえゴーストを襲うようになるんです。
つまり、脅威が迫ってくるので、ダスクは長居をするような世界ではないんですね。
赤石沢:ダスクの世界は現世と同じ場所にあり、ゴーストは壁などを通り抜けることができます。
ですが、ゴーストにしか見えないダスクだけにあるオブジェもあります。
塩川:成仏できない霊(ゴースト)も残っているし、モノも残っている、ということですね。
赤石沢:現世のオブジェは通り抜けられますが、ダスクのオブジェは通り抜けられない、というのがユニークなところですね。
それがゲームにどういった意味があるのかは、プレイしてご確認ください。
■ゴーストがどやって事件を解決していくのか†
――自分の殺人事件を解決していく、というプロットがユニークな本作ですが、ゴーストがどうやって事件を解決していくのでしょうか。
塩川:ロナン(=プレイヤー)は、一般的な推理アドベンチャーゲームと同様、目に見えるものから手掛かりを得ていくほか、ゴーストならではの能力を使うことで、警察が知り得ない情報を得て、先んじて犯人捜査を進めることができます。
――人間としての刑事の能力とゴーストの能力とを合わせて捜査を進めることになるんですね。
塩川:はい。ゴーストならではの特徴的なアクションに“憑依”があります。
憑依すれば“思考を読む(心の声を聞く)”、“思考操作(情報を知ってそうなNPCに対し、能動的に情報を引き出す)”などができます。
また、憑依した相手の視線でモノを見ることができるので、たとえば、メモを見ている刑事に憑依すると、そのメモの内容を盗み見ることができるのです。
そういったゴーストならではの能力も駆使して、キーとなる言葉や手掛かりを集めていくと、そこから新たな謎や手掛かりが浮かび上がり、物語が進行していきます。
いわゆる、謎が謎を呼ぶ作り、手掛かりがつぎの目的を生み出すという作りになっています。
――ロナンの能力は憑依以外にも、ゲームの進行で増えたりするのですか?
塩川:はい。ロナンは序盤、新しい能力として現場に残された思念を可視化して再生できる能力が開花します。
その能力のおかげで、自分の殺害現場をある少女(ジョイ)が目撃し、ベル・キラーはそのジョイを捜しにアパートを訪れていたたこともわかります。
そしてそのジョイの行方は……!? といったところで、ジョイの行方を探り、彼女を追って次のエリアへと進んでいくことになります。
【ジョイ】セイラムで母親と暮らす少女。ロナン殺害の唯一の目撃者。ゴーストが見え、彼らの声も聞こえる。その能力のせいで彼女の元にはゴースト達が集まってしまい、付き纏うゴースト達に悩まされている。そんな中、捜査を進めていたロナンが現れ、協力を依頼されるが― |
――手掛かりとは違う場所を訪れることもできるのですか?
塩川:セイラムの街は自由に移動することができます。
ゲームの中盤以降は、瞬間移動ができるようになるので、街の探索は楽になりますよ。
ただ、目的地とは違う場所に行った場合、物語を進める手掛かりが得られるかどうは保証できません(笑)。
■ダスクにいる悪霊が行く手を阻む†
――先ほどお話に出た悪霊はゴーストを襲うようですが、悪霊に対してはどう対処することになるのでしょう?
塩川:悪霊はエリアを徘徊していているので、見つからないように進むか、背後から近づいて消滅させるしかありません。
エリアには、悪霊が感知できない、すでに消滅してしまった他のゴーストたちの残滓のようなもの(避難オブジェクト)が複数あって、そこを行き来しながらしながら、悪霊をやり過ごしたり、消滅させる機会をうかがうことになります。
――ステルスアクションのような要素も入っていると。
塩川:はい。ゲームが進むと、複数の悪霊が巡回しているので、壁を抜けたり避難オブジェクトに隠れながら進んでいく必要があります。
ただ、ステルスアクションを入れたかった、というより、物語設定的には“ダスクは長居したくない場所”という動機付けに、ゲーム的にはどうやってやり過ごすか、またはどうやって消滅させるかを考えて楽しんでもらいたい、といった意図で入れています。
ですので、難しくて進めない、というほどのものにはなっていないので、この手のものが苦手な方もご安心ください。
■メインストーリー以外に“怪談”もアリ†
――本作には、サブクエストのようなものもあるとうかがったのですが。
塩川:メインシナリオを解決する以外に、サブクエストも用意してあります。
たとえば、あるエリアのあるゴーストが「自分の亡骸がどこにあるかわからくなった」と言ってる。
そのゴーストにとっては、自分の亡骸がどこにあるかわからないこと心残りがダスクに捕らわれた要因であるわけです。
――サブクエストをクリアーするメリットは何かあるのですか?
塩川:実績やトロフィーに反映されます。つまり、やり込み要素ということですね。
赤石沢:サブクエストのエピソードには、メインストーリーに関連するものもあって、たとえば、過去にベル・キラーに殺されたゴーストからは、ベル・キラーについてより深く知ることができたりします。
――メインストーリーを補完するエピソードもあると。
塩川:はい。また、中には事件とはまったく関係がないコレクタブルアイテムが手に入ることもあります。
このコレクタブルアイテムを一定数以上集めるごとに、“怪談”が解禁されていきます。
これはメインスートリーとは、異なるちょっと怖い小咄になっていますので、ぜひ読んでいただきたいですね、
■最後にサプライズも! ストーリーにもこだわった本作†
――本作でもっともこだわっている点はどこですか?
塩川:ストーリーにはこだわっていて、そこを楽しんでほしいです。
シネマティックムービー部分は、フルボディー、フルフェイシャルで複数同時にモーションキャプチャーするという、かなりコストがかかる手法で撮影しました。その甲斐あって、かなり映画的な仕上がりになっています。
赤石沢:アクターの演技込みでモーションキャプチャーしている場合、セリフのカブリや間などが非常にリアルで、本当に映画的というか、躍動感のあるものになっていると思います。
ただ、複数同時に演技する場合、アドリブが入りやすく、アドリブ部分のセリフをあとから気づいて、日本語ボイスを追加収録したこともありました。
――そのボイスもかなりこだわっているようですが。
赤石沢:はい。ボイスキャストはロナン役に山寺宏一さんを始め、ジョイ役に伊瀬茉莉也さんなど、実力派を揃えられたと思っています。
ロナン役:山寺宏一
ジョイ役 :伊瀬茉莉也
そのほか:大川透、小林沙苗、佐藤晴男、沢城みゆき、たなか久美、谷昌樹、中上育実、一杉佳澄
ロナンは山寺さん、というのは塩川とも意見が一致しました。ほかのキャストに関しては私のほうで英語版音声などを参考にしつつ、選ばせていただきました。
通常の海外ゲームのローカライズですと、音声ファイルだけドカッともらって、前後関係を類推しながら、「きっとこういうセリフだろうな」とセリフ単体でレコーディングせざるを得ない状況も多くあります。
ですが本作では、社内のプロジェクトということで、潤沢なムービー素材がありました。本作の日本語音声のレコーディングでは、実際のゲームの映像を観ながら役者さんに芝居をしていただけた部分が多かったので、より臨場感のある仕上がりになったと思います。
たとえば、本作にはロナンがタバコを吸いつつしゃべるシーンがよく出てくるのですが、山寺さんはロナンがタバコをくわえているときは“くわえている芝居”をしてくれているんです。そういった細かい芝居をしていただけたのも映像があったおかげですね。
――塩川さんから何かリクエストはありましたか?
塩川:私からは、捜査モノなのでキャストで犯人の目星がつくようなキャスティングにはしないでくれ、と頼んだ程度ですね。
赤石沢:ひとりだけ大物キャストがいると、「あ、こいつが犯人かな?」と推測できることがあるじゃないですか(笑)。そうならないように、ということですね。
――では、最後に本作についてもうひと言、アピールをお願いします。
赤石沢:日本のお客様により愛していただける作品になるようローカライズ、カルチャライズしました。本作のストーリーにどっぷりと酔いしれてほしいですね。
塩川:開発における私のポリシーは“脱予定調和”です。ストーリーや見た目、設定、ゲームプレイなど、とにかく本作にしかないユニークなものを作りたいと思っていました。本作の最後には大きなサプライズが待っています。このサプライズは人から聞いたり、動画配信で見ただけでは驚きは半減以下になると思います。本作をプレイしてきたからこそ実感できる仕掛けになっているので、ぜひ最後までプレイして体感してください。
※『MURDERED 魂の呼ぶ声』公式サイト
(C)2014 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Co-Developed by SQUARE ENIX CO., LTD. and Airtight Games, Inc.
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